最近、腕時計の代わりにウェアラブルデバイスを身に着けている人を見かけることも多くなりました。ウェアラブルデバイスの利用者は近年増え続け、今後も大きな注目を集めると予想されます。
この記事では、ウェアラブルデバイスとは何か、種類、注目されている背景、分野別活用事例、選び方、おすすめ9選、SDGsとの関係を解説します。
目次
ウェアラブルデバイスとは
「ウェアラブルデバイス」とは、手首や指、顔、足など、体の一部に装着して使用する電子機器のことです。(「ウェアラブル」は「着用(装用)できる」という意味)また、「ウェアラブル端末」や「ウェアラブルコンピューター」とも呼ばれています。
一般消費者向けのウェアラブルデバイスでできることは、主に通話やSNSの通知の確認、インターネット、健康管理、電子マネー決済、ゲームなどです。ただし、機種によってはできないこともあるので、購入する際には仕様を確認してください。
■【一般消費者向け】ウェアラブルデバイスでできること
- 通話
- SNSの通知の確認(機種によっては投稿も可能)
- インターネットの利用・心拍数や睡眠時間、移動距離や歩数、消費カロリーなどの生体情報による健康管理
- Suica、楽天Edy、iD、QUICPayなどでの電子マネー決済(一部の機種のみ)
- パズルゲームやシミュレーションゲーム、アクションゲームのほか、種類によっては現実世界にデジタル情報を重ね合わせたAR(拡張現実)技術を使ったゲームなど
ウェアラブルデバイスは生活がより便利になるほか、健康の促進に役立つのがメリットです。さらに近年は、産業界や医療業界などでも利用されています。詳しい活用事例については、後述の「【分野別】ウェアラブルデバイスの活用事例」をご覧ください。
ウェアラブルデバイスの初代は?
今では各メーカーからさまざまな種類のウェアラブルデバイスが発売されていますが、その起源はどこにあるのでしょうか。
ウェアラブルデバイスの歴史には、いくつかの説があります。その中でも注目したいのは、1980年代に日本が発売した腕時計型の情報機器です。[1]
1881年に創業した「セイコー」は、1984年にデータの管理機能を搭載する腕時計「腕コン」を発売しました。腕コンには2,000字までの文字を記憶する性能があり、電話帳や住所録として使用できます。さらに1カ月先のスケジュールを記憶し、アラーム音で知らせる機能を備えていました。
1984年、セイコーは世界初の腕時計型コンピューター「腕コン」を発売。腕コンは、携帯用情報機器の先駆けといわれている。
また同年、「エプソン」は腕時計型コンピューター「リストコンピュータ」を発売しています。これは、メモ検索やスケジュール入力、ワールドタイム表示ができるデバイスです。
その後も、日本をはじめアメリカなどでもウェアラブルデバイスの開発が進められました。そして2000年代初めにはアメリカの企業が、歩数や消費カロリー、睡眠時間などを記憶するリストバンド型の活動量計「Fitbit」を世界で発売します。(日本では2014年から)
日本では2014年に「Fitbit」が発売される
身に付けやすいリストバンド型の「Fitbit」は人気を集め、ウェアラブルデバイスが広く知られるきっかけとなったといわれています。そして今ではさまざまなメーカーが開発を進め、種類や機能も増えてより使いやすく便利になりました。
ウェアラブルデバイスの種類
ウェアラブルデバイスには、身に着ける部分によってさまざまな種類があります。その中でも個人が購入しやすい製品をタイプ別に紹介します。
腕時計型
腕時計の文字盤のような広い画面を備え、手首に装着するタイプが腕時計型です。一般向けのウェアラブルデバイスでできることのほかに、生体情報の高精度な測定やアプリを追加できるなどの高い機能を備えています。
リストバンド型
手首に装着するタイプで、腕時計型よりも画面が小さいのがリストバンド型です。腕時計型と比較すると、より基本的な機能に絞られています。価格も低めです。
メガネ型
メガネ型は、メガネをかけるように装着するタイプのウェアラブルデバイスです。通話や音楽を聴くスピーカー、レンズ部分に画面表示などの機能があります。
指輪型
指輪型は、指にはめて使うタイプのウェアラブルデバイスです。健康管理ができる製品や、電子マネー決済に特化したものなどが展開されています。
イヤホン型
イヤホン型は、本来の機能である音楽を聴くのはもちろんのこと、生体情報を集めて健康管理ができるウェアラブルデバイスです。ワイヤレスでスマホやパソコンとつないで使用します。
その他
その他のウェアラブルデバイスに、「クリップ型」「衣服型」「靴型」などがあります。いずれも生体情報の収集などができますが、ウェアラブルデバイスの機能を一部に絞って作られているのが特徴です。
ウェアラブルデバイスが注目されている背景
このようにさまざまな種類の製品が登場し、ウェアラブルデバイスへの注目度は高まっています。「情報通信白書令和5年版」によると、一般消費者向けのウェアラブル端末の世界市場規模は、2022年に379.3憶ドル(日本円で約5.4兆円)に上り、将来的にはさらに大きくなる予想されています。[2]
■世界のウェアラブル端末市場規模の推移および予測
過去にさかのぼると、2021年からの伸びは特に大きいことが分かります。この背景には、主に3つの理由があります。
低価格になり購入しやすくなった
2016年までのウェアラブルデバイスは、高価な製品が中心だったため、利用しているのは一部の人でした。しかしその後、アジア系メーカーが参入して価格が下がり、2018年以降の市場規模は拡大し続けています。
現在の製品は、安い製品では数千円から購入することが可能です。手に入れやすい価格になったことが、消費者からの注目を浴びる1つの要因になったと考えられます。
技術の発展により使いやすくなった
以前のウェアラブルデバイスは、大きくて重いなどの使いにくさがありました。その後、技術が発展したことにより小型化や軽量化が実現し、快適に装着できるようになりました。
また、スマートフォンやインターネットに接続できるようになったこと、健康管理に必要なデータを大量に収集・蓄積できるようになったことも理由の1つです。
健康への意識が高くなった
近年、健康への意識が高まっていることも挙げられます。日本のインターネットの利用率は8割を超え、多くの人が健康に関する情報を容易に得られるようになりました。こうして健康に関する知識が増える中で、ウェアラブルデバイスにも注目したと考えられます。
また、新型コロナウイルスの広がりにより、免疫力の高い健康的な体作りにも積極的になったこともひとつの要因です。ウェアラブルデバイスが、健康を管理するツールの1つとして使われている背景があります。
【分野別】ウェアラブルデバイスの活用事例
では、ウェアラブルデバイスは、産業界でどのように活用されているのでしょうか。製造、物流、医療、観光、警備業における事例を見ていきましょう。
製造
製造の分野では、主に次の用途で使われています。
- 【事故防止】作業員の心拍数や作業時間、移動距離、歩数などの生体情報を収集する
- 【作業効率の向上】画像や音声により遠隔で作業内容の指示を行う
- 【安全性の向上】作業員が撮影した現場の映像を遠隔の監督者が確認する
事例
実際に使用されている例としては、化粧品メーカーであるダイセルがあります。ダイセルは、製造ラインを撮影した画像を解析し、作業者が通常とは異なる動作をすると監督者のウェアラブルデバイスに通知するシステムを導入しています。品質管理や不具合発生時の影響の最小化に効果を発揮しています。[3]
物流
物流の分野では、主に次の目的で使われています。
- 【事故防止】作業員の心拍数や睡眠時間、移動距離、歩数、消費カロリーなどの生体情報を収集する
- 【作業効率の向上】商品の取り出しやバーコードの読み取りを行う
事例
物流会社のSBS東芝ロジスティックスでは、リストバンド型のウェアラブルデバイスを使用して作業内容と実績工数を記録しています。その結果、改善策を短いサイクルで実行することができ、荷役の工数を以前と比べて17%削減できました。[4]
医療
医療の分野では、主に次の目的で使われています。
- 【患者の健康管理】心拍数や睡眠時間、移動距離、歩数、心電図などの生体情報を収集する
- 【医薬品の開発】患者の生体情報を収集・分析する
事例
医薬品メーカーの中外製薬は、ウェアラブルデバイスから得られた患者の生理学的データを解析しています。このデータは、治療や予防の成果を可視化することや、医薬品の効果や安全性、費用対効果などを明確にすることに使われています。[5]
観光
観光の分野では、主に次の目的で使われています。
- 【疑似的な観光体験】ARやVR(仮想空間を現実のように体験できる)技術を使用する
事例
旅行会社のJTBでは、コロナ禍で中止になった修学旅行に代わる思い出作りの創出を目的として、中学・高校生向けに「バーチャル修学旅行360」を提供しています。360度VR映像を通じて、京都・奈良、日光の歴史や文化、自然などが体験できます。[6]
※2024年1月8日現在、京都奈良編は、新規受付を停止しています。
警備
警備の分野では、主に次の目的で使われています。
- 【人材不足の解消】カメラや警備ロボット、ドローンなどから得られた映像や信号をコントロールセンターで解析し、その結果を警備員に報告する
事例
綜合警備保障(ALSOK)では、監視カメラや警備ロボット、ドローンのカメラで撮影された映像を情報ガードセンターに集め、メガネ型のウェアラブルデバイスを装備したガードマンと共有するシステムを採用しています。[7]
ウェアラブルデバイスの選び方
ウェアラブルデバイスには多くの種類があります。初めて購入する人にとっては、何を基準に選べば良いか悩むこともあるかもしれません。そこで、押さえておきたい3つのポイントを紹介します。
「スマホのOSに合わせて」選ぶ
ウェアラブルデバイスには、
- 単体で使用できる製品
- スマホと連携する製品
の2つのタイプがあります。②の場合、ウェアラブルデバイスがスマホのOSに対応している必要があります。購入を検討する際には、最初に確認しましょう。
■スマホのOSの種類は次の2つ
- iPhone(iOS)
- Android
「機能」で選ぶ
ウェアラブルデバイスには、主に電話・メールの通知、健康管理、フィットネス管理、電子マネー決済などの機能があります。さらにフィットネス管理でも、データの記録に対応しているエクササイズの種類は機種によって異なります。「ウェアラブルデバイスでやりたいこと」をある程度決めておくと、製品選びがスムーズです。
「デザイン」で選ぶ
職場や家庭、休日の外出など、ウェアラブルデバイスは日々の生活の多くの時間に身に着けるものです。快適に着用できるデザインであることや、職場に適しているかも選定のポイントになります。利用する場面をイメージして選びましょう。
【2024年1月最新】おすすめウェアラブルデバイス9選
ウェアラブルデバイスは多くの種類が発売されていますが、その中からおすすめ9選を紹介します。特に「初めて使う」「使い心地を試したい」「やりたいことが特に決まっていない」という人に向けて選んでいます。選定したポイントは次の2つです。
- 初めてだからこそ、さまざまな機能を備えた機種を使ってみる
- 日々進化するウェアラブルデバイスの最新の技術に触れて、新しい体験をする
ここでは、最も利用されている「時計型」と「リストバンド型」からそれぞれピックアップしました。
製品名の横にあるカッコ内は、製品の画面のおおよその直径または一番長い部分を表しています。 例)1.Galaxy Watch6(40mm・44mm)→40mmと44mmの2種を展開している |
時計型
まずは、時計型を紹介します。
1.Galaxy Watch6(40mm・44mm)
Galaxy Watch6は、iPhoneとAndroidの両方に対応しているほか、ウェアラブルデバイスでできることの多くが盛り込まれています。画面が広いことに加えて、厚さが9.0mmと他の時計型と比べて薄いので、身に着けやすいのもポイントです。
- iPhone・Android※LTEを搭載した機種は単独での使用が可能
- 電話・メール着信通知・通話
- 睡眠・健康・フィットネス管理
- Suica・iD・QUICPay対応
メーカー公式サイト価格:50,160円(税込)から
→商品の詳細は公式サイトへ
2.HUAWEI WATCH GT 4(41mm・46mm)
HUAWEI WATCH GT 4は、腕時計に近いデザインが特徴です。41mm・46mmのサイズでそれぞれ雰囲気の異なるベルトも用意されています。腕時計のような感覚でウェアラブルデバイスを着用したい人におすすめです。
- iPhone・Android※iPhoneでは一部の機能が利用できません
- 電話・メール着信通知・通話
- 睡眠・健康・フィットネス管理
メーカー公式サイト価格:32,780円(税込)
→商品の詳細は公式サイトへ
3.Apple Watch Series 9(41mm・45mm)
Apple Watch Series 9は、iPhoneユーザー向けのウェアラブルデバイスです。主な機能を備えていることに加えて、衝突事故により転倒したときに緊急通報サービスに知らせる機能を備えているなど、安全性にも配慮して設計されています。
- iPhone
- 電話・メール着信通知・通話
- 睡眠・健康・フィットネス管理
- Suica・iD・QUICPay・PASMO・ICOCA・WAON・Visa/Mastercardのタッチ決済対応
公式サイト価格:59,800円(税込)から
→商品の詳細は公式サイトへ
4.Google Pixel Watch 2(41cm)
Google Pixel Watch 2は、Androidスマホのユーザー向けのウェアラブルデバイスです。Googleアシスタントを搭載しているので、「OK Google」と話しかければ、健康とフィットネスに関するデータを確認できます。
- Android※LTEを搭載した機種は単独での使用が可能
- 電話・メール着信通知・通話
- 睡眠・健康・フィットネス管理
- Suica・iD・QUICPay・Visa/Mastercardのタッチ決済対応
公式サイト価格:51,800円(税込)から
→商品の詳細は公式サイトへ
5.Fitbit Sense 2(40.5mm)
Fitbit Sense 2は、主な機能を備えていることに加えて、AmazonのAlexaを搭載しているので、話しかければ天気予報やニュースなど確認できます。また、12分の充電で1日分のバッテリーをチャージできることが特徴です。
- iPhone・Android
- 電話・メール着信通知・通話
- 睡眠・健康・フィットネス管理
- Suica・Visa・Mastercardのタッチ決済対応
公式サイト価格:32,800円(税込)
→商品の詳細は公式サイトへ
リストバンド型
続いては、リストバンド型を紹介します。
1.Fitbit Charge 6(40.5mm)
Fitbit Charge 6は、40種類以上のエクササイズモードを備えているウェアラブルデバイスです。生体情報を記録して体調を把握した上でフィットネスを行うなど、運動や健康を管理して毎日の生活を充実させたい人におすすめです。
- iPhone・Android
- 電話・メール着信通知
- 睡眠・健康・フィットネス管理
- Suica・Visa/Mastercardのタッチ決済対応
公式サイト価格:23,800円(税込)
→商品の詳細は公式サイトへ
2.GARMIN vívosmart 5(18.5mm)
GARMIN vívosmart 5は、ベルトの長さに応じてS/MとLの2つのサイズを展開しています。いずれも幅は10.7mmとスリムなため、目立ちにくいウェアラブルデバイスを探している方におすすめです。電子マネー決済には対応していません。
- iPhone・Android
- 電話・メール着信通知
- 睡眠・健康・フィットネス管理
公式サイト価格:21,800円(税込)
→商品の詳細は公式サイトへ
3.Huawei Band 8(43.45mm)
Huawei Band 8は、バンドの最薄部8.99mm、重さ約14gと薄くて軽いので、着け心地にこだわりたい方に最適です。また、5分充電するだけで約2日間の使用が可能という高速充電もできます。電子マネー決済には対応していません。
- iPhone・Android
- 電話・メール着信通知
- 睡眠・健康・フィットネス管理
公式サイト価格:7,480円(税込)
→商品の詳細は公式サイトへ
4.Xiaomi Smart Band 8(48mm)
Xiaomi Smart Band 8は、手首に装着するストラップのほか、別途販売しているアクセサリーを購入すればペンダントにもできる製品です。また、150種類以上のワークアウト・スポーツモードを搭載しているので、自分の好みに合わせて使用できます。
- iPhone・Android
- 電話・メール着信通知
- 睡眠、健康、フィットネス管理
- Mastercardのタッチ決済対応
公式サイト価格:5,990円(税込)
→商品の詳細は公式サイトへ
ウェアラブルデバイスとSDGs
最後に、ウェアラブルデバイスとSDGsの関係を確認します。ウェアラブルデバイスは、個人のほか、産業界などでも広く利用されている電子機器です。個人でも産業界でも、健康やフィットネスを管理する機能を利用することで、健康を支えている点が共通しています。このことは、SDGsの目標3「すべての人に健康と福祉を」に該当します。
また「バーチャル修学旅行」の例から分かることは、教育にも役立つことです。ウェアラブルデバイスがあれば、どこにいても修学旅行を体験できることから、目標4「質の高い教育をみんなに」の達成に貢献します。
製造や物流、警備などの分野では、作業の効率化や労働者の安全性を促進することから、目標8「働きがいも経済成長も」の実現に関係しています。
まとめ
ウェアラブルデバイスは、手首や指、顔、足など、体の一部に装着して使用する電子機器です。腕時計型やリストバンド型、メガネ型などの種類があります。主にできることは、通話やSNSの通知の確認、インターネット、健康管理、電子マネー決済、ゲームなどです。近年では、低価格になり購入しやすくなったことや、技術の発展により使いやすくなったこと、健康への意識が高くなったことでウェアラブルデバイスが注目され、産業の分野でも利用されています。
「ウェアラブルデバイスのことをもっと知りたい」「試してみたい」という人は、選び方やおすすめを参考に購入を検討してみるのはいかがでしょうか。日常の生活に良い変化をもたらしてくれる頼れるツールになってくれるでしょう。
[1] セイコー腕時計の歴史 The history of Seiko watches
[2] 総務省|令和5年版 情報通信白書|データ集
[3] 工場スマート化の現在地を知る羅針盤で、確実で安全な航海を!:コラム・インタビュー:インダストリー:日立
[4] 活動量計を活用 庫内作業で17%の工数削減を実現|物流サービス・事例 |SBS東芝ロジスティクス
[5] デジタルバイオマーカーへの取り組み|CHUGAI DIGTAL|会社情報|中外製薬
[6] リアル×VR 新感覚体験プログラム「バーチャル修学旅行360」 | 交流・体験プログラム | 中学・高校向け オンラインプログラム | サービス | 学校・教育機関向け | JTB 法人サービス
[7] IoT×セキュリティ|綜合警備保障(ALSOK)