#インタビュー

株式会社グーン|リサイクル事業を通じて国内外、サプライチェーン全体での脱炭素化に真摯に取り組む

株式会社グーン 池田さん インタビュー

株式会社グーン

代表取締役会長 兼 社長 …藤枝 慎治(フジエダ シンジ)

設立    … 2001年3月

本社住所   … 神奈川県横浜市金沢区鳥浜町17-3

資本金   … 5,500万円

従業員   … 80人(内、海外35名)

売上(2020)… 30億円 ※グループ全体

事業所   … 鳥浜本社/みなとオフィス/フィリピン支店

許認可一覧 … 

 産業廃棄物処分業、一般廃棄物処分業、ISO14001、神奈川県廃棄物再生事業者、木くずの再資源化事業者、

 神奈川県建設発生木材等再資源化指定業者、川崎市建設発生木材等再資源化指定業者、横浜型地域貢献企業

グループ会社 … 

・株式会社スマートコミュニティ(解体工事、メタル事業)

・株式会社 G-ロジスティスク(特別管理廃棄物収集運搬等)

introduction

2001年、神奈川県横浜市に創業した株式会社グーン。元プロ野球選手であった藤枝慎治氏が第2の人生のスタートを切ったのは、木材やプラスチックのリサイクル事業でした。今、ニュースを見れば“カーボンニュートラル”や“温室効果ガス”という単語をよく耳にすると思います。“カーボンニュートラル”とは、CO2やメタン、一酸化窒素、フロンガスなどの“温室効果ガス”を全体的にゼロにしようということ。創業から未来を見据えて、リサイクル業界を牽引してきた株式会社グーンの池田さんにお話をうかがいました。

循環型社会の重要性をいち早く肌で感じ、サーマルリサイクル分野で起業

–はじめに、株式会社グーンの事業内容をお聞かせください。

池田さん:

当社は主に、廃棄される木くずやプラスチックを再資源化してサーマルリサイクルに活用する事業に取り組んでいます。神奈川県横浜市の八景島エリアに近い鳥浜本社と、山下公園近くのみなとオフィス、そしてフィリピンに支店があり、これら3拠点で事業を展開しています。

サーマルリサイクルとは、廃棄物を燃やし、そこから出る熱エネルギーを回収して利用するリサイクルのことです。

当社は、解体現場から出る木くずや木パレットを粉砕して木質チップを作り、それを燃料として再利用できる企業へ供給しています。取引しているのは、バイオマス燃料を利用している製紙会社や木材で家具などを作っている企業です。

また、工場や商店から集めた廃プラスチックを粉砕し、選別、圧縮、梱包して、フラフ燃料を製造しています。それを製紙会社へ燃料として販売しています。

–サーマルリサイクル事業に注目されたのには、どんな経緯があったのでしょうか?

池田さん:

元々代表の藤枝は、住宅解体をしている株式会社萬世でリサイクル部門を担っていました。2000年に「循環型社会形成推進基本法」が制定され、各種リサイクル法が整えられました。その中のひとつが、「建設リサイクル法」です。

藤枝は「これからリサイクルの時代が来る」と肌で感じ、住宅の解体時に発生する木材のリサイクルに注目し、株式会社グーンの前身である萬世リサイクルシステムズ株式会社を創業しました。ちょうどその時横浜市では、人口増加に伴うごみ問題への取り組みとしてG30(横浜市一般廃棄物処理基本計画)が始まり、当社も協力するようになりました。

廃棄物の回収から再資源の提供まで、一貫してCO2削減に注力

–ここからはサーマルリサイクル事業について具体的に教えてください。木くずや廃プラスチックは全国の企業から受け入れているのでしょうか?また、再資源化した燃料はどのように提供されていますか?

池田さん:

リサイクルの基本として、回収から再資源化して納品するまで、なるべく近いところで行うのが良いとされています。遠くに運ぶほど、CO2が多くでてしまうからです。また、1980〜90年代に深刻化した産廃物の不法投棄の問題があり、ごみを他県から持ち込むための手続き等が大変なんです。それらの理由から、近隣県との取引が中心となっています。木くずは、神奈川県東部エリアから、廃プラスチックは、神奈川県を中心に東京や埼玉の南関東エリアから搬入されています。

再資源化した燃料材も同じ考え方で、木質チップは神奈川県や静岡県等の製紙会社のボイラー燃料や、バイオマス発電所の燃料として利用されています。将来的には火力発電所等にも燃料供給ができると良いですが、現在の火力発電所にはリサイクルされた燃料を使用できる設備が整っていないのが現状です。今後、廃棄物から油を抽出して燃料とすることができるようになると思うので、再資源化した燃料の活用の幅はさらに広がると確信しています。

輸送には船舶を積極的に採用しています。船舶活用の最大のメリットは、一度に大量の輸送が可能であり、CO2の発生量が少ないことです。しかし一方で、天候に左右されるというデメリットもあります。特に台風シーズンには船が予定通り運航できず、スケジュール変更をすることもしばしばです。

また、船舶での輸送には立地が重要です。工場が港から遠い場所では、さらに自動車輸送が必要になり、CO2の削減になりません。当社は、横浜市の金沢木材埠頭から近いので、船舶輸送が容易です。また、取引先も同じような条件の立地になります。それにより、船舶活用のメリットを最大限に活かすことができています。

このように、商材自体が社会のカーボンニュートラル実現に貢献するものであるだけでなく、当社における廃棄物の回収から再資源化したあとの燃料材の納入まで、CO2排出削減を意識して取り組んでいます。日本国内でリサイクルしたものは、日本国内で使う。リサイクル製品も大切な資源ですので、国内で活用するのがいいと考えています。

脱炭素化に向け、一歩先へ行く新たな取り組み

–基幹事業において徹底的なCO2削減の姿勢で取り組まれていることがよくわかりました。2022年には、マテリアルリサイクル化もスタートされるとのことですが、今後どのように展開されていくのでしょうか?

池田さん:

当社は、元々廃プラスチックを燃料へリサイクルしていたわけですが、プラスチックに戻せるものは戻していこうという取り組みをしています。

不純物の多いプラスチックと純度の高いプラスチックに分けて、それぞれを活用していきます。純度の高いプラスチックはペレットと呼ばれるプラスチックの原料として製造(原材料化)し、プラスチック製造事業者へ販売します。不純物の多いプラスチックは従来どおり、燃料としてリサイクルします。

廃棄されたプラスチックを原材料化することで、これまで以上にCO2の削減が可能となり、サプライチェーン全体での脱炭素化にも貢献することができます。

さらに、当社では再資源化プロセスにおける「実質再エネ100%」をめざして、カーボンフリーエネルギーの全面導入を決めました。

全事業所を実質再生可能エネルギー100%化するため、まずは、当工場で使用される軽油などの燃料使用量の効率化を行っています。より環境に配慮する燃料への転換を進めていきます。

そして、工場へ供給する電力を「非化石証書付 再エネ電力」にする、もしくはそうでない場合も「Jークレジット制度」を使ってCO2排出量を相殺する取り組みを行っています。

これらの取り組みを通じて、2020年を基準年として、2030年までにCO2を42パーセント削減する目標を立てています。

この目標については、国際的なイニシアチブであるSBTi(ScienceBacedTargets)により認定を取得しました。

Jークレジット

省エネルギー設備の導入や再生可能エネルギーの利用によるCO2削減量を国が「クレジット」として認定する制度。「クレジット」は他企業に販売することができる。

非化石化証明書付 再エネ電力

バイオマス燃料や風力、水力、太陽光エネルギーなどを利用した再エネ電力は目に見えないため、証明書を付けて可視化したもの。

脱炭素化に向けた取り組みを加速させていくのですね。グローバル事業展開についてもうかがいます。フィリピンに拠点をお持ちとのことですが、この場所を選ばれたのはなぜですか?

池田さん:

2012年、横浜市はフィリピン共和国セブ市と水環境分野において技術協力を約束しました。そのご縁で当社は、セブ市でこれまでのノウハウを活かしたリサイクル事業をスタートしました。

フィリピンでは、インフラや廃棄物管理において問題が山積しています。特に廃プラスチックはこれまで処理されず埋立て処分されており、環境汚染の一因にもなっていました。そこで、当社の廃プラスチックリサイクルのノウハウを活かしてフラフ燃料を製造し、現地のセメント会社へ販売する事業を展開しました。現地での雇用も発生し、廃プラスチックのリサイクルにも貢献しています。

また、第2弾の事業に向けた調査もスタートさせます。食品リサイクルの技術のある他の企業と連携し、食品廃棄物や厨芥(ちゅうかい)ごみを廃棄物燃料や土壌改良剤として活用するリサイクル事業です。また、高品質な食品廃棄物から飼料の製造が可能であるか調査する予定です。

まだまだこれからも当社のノウハウを活かし、さまざまな問題解決へ向けて邁進していきます。

20年以上のノウハウを活かして環境保全に貢献していく

–御社のリサイクル事業はさまざまなSDGs目標に貢献できるものと思いますが、それらもふまえて今後の展望を教えてください。

池田さん:

当社は20年以上、地球環境の未来のためにリサイクルの研究・開発に尽力してきました。その中でSDGsについてできることは、目標12「つくる責任、つかう責任」を中心とした課題ですが、それに付随して、いくつかの目標も達成できると考えています。資源のリサイクルを通じて目標12以外のさまざまな課題解決にも貢献していきたいですし、これまで積み上げてきたノウハウを活かし、今後も国内外の企業や自治体と協力して、地球の環境保全に取り組んでいきたいと思います。

–持続可能な社会の実現に向け一歩先をいく、株式会社グーンに今後も注目させていただきます。ありがとうございました。

関連リンク

株式会社グーンHP:http://www.guun.co.jp/