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健康経営とは?取り組み事例とメリット・デメリットを解説【2023年版】

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今、「健康経営」に取り組む企業が増えています。以前は「体調管理は個人の責任」という考え方が当たり前でしたが、今後の企業の姿とされる「健康経営」とはどのようなものなのでしょうか?

あなたの身の回りでも、ランニングやウォーキングで体を動かす人が増えたり、体に優しい素材を使った商品が増えたりなど、世の中で健康への関心が高まっています。このような風潮とともに、健康経営が今注目されている理由、健康経営によって得られる効果やその取り組み事例を紹介します!

目次

健康経営とは

「健康経営」とは、働く人の健康管理を経営戦略の一部と考え、従業員と一緒に企業全体で健康の維持や増進のための取り組みを実践することです。

日本においては企業の規模に関わらず推進されている

日本では経済産業省が厚生労働省と連携して、企業の規模に関わらず健康経営への取り組みが推進されています。

つまり、国の方針として「企業は働く人の健康管理も視野に入れて経営を進めなくてはならない」としているのです。社会全体で健康の維持や増進に取り組むことは、現代社会の抱える多くの悩みへの解決策のひとつと言えます。

それでは、健康経営が社会全体に求められている具体的な理由に迫ってみましょう!

日本で健康経営が注目される理由

これまで多くの場合、企業は最低限の定期検診程度しか働き手の健康管理は行なっていませんでした。「自分の健康管理は社会人の常識」と言われるように、個人の健康管理は個人の責任だと考えるのが一般的だったのです。

しかし、日本社会は「今までの健康管理レベルでは足りない」深刻な問題に直面しています。

超高齢社会と人口減少

日本は世界でも類を見ない超高齢社会を迎えています。これは「健康で長生きしたい」という多くの人が持つ願いを世界に先駆けて実現したとも言えます。

しかし、人口は2008年のピーク以降、現在まで減少し続けており、同時に深刻な少子化も進んでいます。下のグラフは2015年時点の厚生労働省による今後の人口推移の推計です。明治時代後半の1900年頃から100年をかけて増加した日本の人口は、今後100年をかけて再び増加以前の水準に戻ると予想されています

【日本の長期的な人口推移(2015年時点)】

この推計を考えると、現在の社会の仕組みは人口が増加する前提でできているため、いずれ破綻してしまいます。日本は社会全体で少子高齢化に対応した社会の仕組みへの移行が必要なのです。

それでは、少子高齢化に対応した社会の姿とはどのようなものなのでしょうか。

増加する社会保険料の問題への対策

高齢者の割合が増えると、社会保険からの医療や介護への支出が増加します。一方で、労働人口は減少傾向にあるため、結果として企業や個人にかかる社会保険料の負担を増やさなくてはならない可能性があります。

また、下のグラフからもわかるように、日本では平均寿命の延びにともなって「健康寿命」も伸びていますが、平均寿命と健康寿命の差は縮まっていません

健康寿命とは
健康寿命とは、心身ともに自立し、健康的に生活できる期間

引用元:生命保険文化センター

つまり、寿命は伸びていても病気や介護状態で生活している人が増えているという結果になります。

【日本の平均寿命と健康寿命の推移(2014年)】

このような状況が続けば、企業の経営も働き手の不足や社会保険料の増額などに悩まされる可能性があります。健康寿命を延ばし、ひとりひとりが元気に働ける期間を長くして社会を支えるために、どの企業も真剣に健康経営に取り組む必要があるのです。

健康経営は今やリスクマネジメントの一環

このように少子高齢化が進む中、どの企業も働き手の確保が将来的に深刻な課題となることが予想されます。経済産業省の調べでは70歳以降も働くことを希望している60歳以上の人は8割ほどに達し、今後多くの企業はこの高齢者の労働力を活かしていくことが必須となります。

企業にとって健康経営に力を入れ、ひとりひとりの働き手をより長く大切に雇用することは、働き手が不足するという将来予想されるリスクへの対応策となります。高齢になっても元気に仕事ができるということは、多くの働き手にとっての願いであるとともに、企業にとっても経験豊富で信頼できる人材に長く活躍してもらえるというメリットを生み出すのです。

出典:厚生労働省『令和3年版 厚生労働白書』p.261(2021年)

出典:経済産業省『生涯現役社会に向けた雇用制度改革について』p.4(2018年10月)

【60歳以上の就業者は何歳まで働きたいと思っているか】

生産性の向上

近年コロナウイルス感染拡大などの影響もあり、社会的に次のような悩みを抱える企業が増えています!

  • 従業員が疲れていて社内に活気がない
  • 従業員の平均年齢が上がっているが、若い世代が育っていない
  • 複数の従業員が病欠してしまい、業務に支障が出た

健康経営は年齢にかかわらず、身体の不調などで働き手が本来の能力を発揮できない問題への対策にもなります。病気や怪我、メンタルヘルスの不調により、長く欠勤が続いたり、仕事の質が低下したりすることを防ぎ、生産性を維持・向上させるために、企業は経営戦略的に働きやすい職場の環境を整え、働き手の健康を確保する必要があるのです。*1)

健康経営のメリット・効果

続いて、実際に健康経営に取り組むことによって得られる効果の例を見てみましょう!

働く人へのメリット・効果(企業内への効果)

社会はさまざまな企業や団体によって成り立ち、企業はそこで働く人々によって成り立っています。この最も基礎となる働く人ひとりひとりがより健康で長く元気に働くことができるようになると、以下のメリットが期待できます。

  • 従業員の活力向上
  • 生産性の向上
  • 組織の活性化
  • 従業員から企業への信頼・愛着の強化

このように、働く人たちが元気に仕事ができ、その成果が出ることは働く人にとってもやりがい自己肯定感につながり、幸福度が増します。

企業へのメリット・効果(主に企業外に向けての効果)

健康経営に積極的に取り組み、その状況を公開することで、企業のイメージアップにつなげることができます。つまり「ブラック企業ではない」ことをアピールできるのです。

また、健康経営に取り組み人材を大切にする企業は、「持続可能な経営と長期的に見た成長の可能性」という観点から、投資家にとって魅力的な企業と評価されるようになりました。人材・資源ともに大切にし、将来を見据えた経営戦略はすでに企業にとって必須の時代が到来したと言えます。

健康経営に取り組むことによる企業への効果を挙げてみましょう。

  • メリット1:働く環境が良いことを求職者にアピール
  • メリット2:人材確保・良い人材の長期にわたる活躍
  • メリット3:組織の活性化による業績向上
  • メリット4:企業のイメージアップなどによる株価向上
  • メリット5:自治体の※インセンティブ獲得
インセンティブとは

奨励・報奨。意欲を引き出すために外部から与えられる刺激のこと。

社会へのメリット・効果

国民の健康寿命の延びや企業の活性化は、社会全体の活性化につながります。

企業による健康経営の普及拡大による社会への効果は、以下のことなどが考えられます。

  • メリット1:国民全体の生活の質の向上
  • メリット2:ヘルスケア産業の創出
  • メリット3:国民医療費への適正な支出額の実現
  • メリット4:少子高齢化に適応した社会の仕組みを構築

【健康経営の効果】

こうして見ると、国・企業・働く人は深い関係があることがわかります。その基礎を担う働き手の健康は企業の業績向上、さらには日本社会の活性化につながるのです。*2)

健康経営の2つのデメリット

健康経営にはデメリットも存在します。

デメリット①従業員から理解を得なければならない

上層部がいくら「健康管理が大事」「生産性も上がる」から健康経営を取り入れようと言っても、「業務や課題が増える」と感じる従業員も少なからずいることでしょう。

また、例えば「毎日◯歩は必ず歩くように」といったタスクが追加されることでストレスを抱えてしまう従業員も出てくるかもしれません。

企業が取り組む際には、丁寧に従業員に健康経営の目的を説明し、理解を得ながら進める必要があります。

デメリット②効果が見えにくく、コストがかかる可能性も

健康経営は、取り組み始めてもすぐには効果が現れにくい側面もあります。そのため、社外に取り組んでいることをPRできたとしても、その効果を報告するには一定の時間が必要であることを理解しておきましょう。

また、従業員のデータを収集するためにシステムを導入しなければならない可能性もあり、想定していないコストが発生することもあります。

健康経営促進のための日本政府の取り組み

健康経営促進のため、日本政府は積極的に健康経営の普及拡大に取り組んでいます。どのような取り組みを行っているのか具体的に見てみましょう。

日本政府は経済産業省が中心となり、ひとりひとりが心身の健康状態に応じて経済・社会活動に参加し、社会の一員として役割を持ち続けることのできる「生涯現役社会」の構築に向けて取り組みを進めています。関係省庁だけでなく、医療・介護関係者、民間企業など幅広い団体が協力し合って、日本全体が長期的に持続可能で成長し続けることのできる経済・社会の仕組みへの移行を目指しているのです。

経済産業省は、生涯現役社会構築に向けて、以下の3つを重要としています。

  1. 産業・まちづくり・コミュニティなどの環境を見直すことによる健康インフラづくり(一次予防)
  2. 職域と地域が連携した気づきと重症化予防のサービスづくり(二次予防・三次予防)
  3. 上の2つを促進するインセンティブ(刺激・動機付け・誘因)の整備

健康経営の普及拡大はこれらの生涯現役社会構築の目的になくてはならないものです。いつまでも多くの企業が働き手を使い捨てのように酷使し、健康を害してリタイヤする人が続出しては、社会の労働人口は少子化の影響によりどんどん減少してしまいます。

では、現在行われている政府による健康経営普及拡大のための取り組みの中から、先ほどの3.インセンティブの整備について、具体的にどのようなものがあるのか、代表的なものを確認してみましょう。

健康経営銘柄の選定

健康経営銘柄とは、経済産業省が東京証券取引所の上場企業の中から健康経営に優れた企業を選定することです。健康経営銘柄企業には、健康経営を普及拡大していくアンバサダーのような役割が求められます。

健康経営のアンバサダーの役割は、健康経営によって得られる生産性の向上や企業のイメージアップ効果を関係者に向けて積極的に発信し、アピールしていくことです。健康経営銘柄企業は「長期的な視点からの企業価値の向上」という面で魅力のある企業として投資家に紹介されます。

これにより、さらなる企業間での健康経営への取り組みの活発化が期待されています。

健康経営優良法人認定制度

【健康経営優良法人認定ロゴマーク】

健康経営優良法人認定制度とは、特に優良な健康経営を実践している企業を認定し、表彰する制度です。大企業を対象とした「大規模法人部門」と中小企業などを対象とした「中小規模法人部門」の2つの部門が設けられています。

健康経営優良法人に認定されると、「健康経営優良法人ロゴマーク」の使用が可能となり、「従業員の健康管理を経営戦略の一部と考え、実践している企業」として社会的にアピールできます。この制度による健康経営に取り組む優良な企業の見える化は、従業員・求職者・関係企業・投資家・金融機関からの企業の評価向上と健康経営の普及拡大につながります。

【健康経営優良法人・中小規模法人部門の申請数と認定数の推移】

※上のグラフからもわかるように、健康経営優良法人の申請数・認定数ともに、2017年の開始以来増加しています。健康経営への取り組みは中小企業にも広がっています。

健康経営度調査

健康経営度調査とは企業の健康経営の取り組み状況と経年での変化を分析するために、経済産業省が電子メールでのアンケートに回答する形で行なっている調査です。健康経営度調査は健康経営銘柄の選定や健康経営優良法人の認定にも活用されます。

「健康経営に関心はあるが何から始めれば良いのかわからない」といった悩みを持つ企業も、まず健康経営度調査に回答することによって、健康経営の実践にあたって何が重要視されているかを知ることができます。この調査はすでに7回実施されており、統計データとして国内企業の健康経営の取り組み度合いや推移の分析にも役立てられています。*3)

日本企業の健康経営取り組み事例

では、健康経営に取り組んでいる企業はどのように実践しているのでしょうか。健康経営優良法人の中小規模法人部門で認定を受けた企業から、3社の取り組み事例を紹介します。

ネッツトヨタ山陽株式会社

「いつまでも健康で活き活きと働ける社員が会社の原動力!」

ネッツトヨタ山陽株式会社は岡山県岡山市で10代〜20代の若者向けの車種を扱うトヨタ車のディーラーです。健康経営に取り組むきっかけは「働きやすい職場づくり」「人財づくり」に取り組む中で、従業員の満足度を高めるためでした。

「給料が良い」「休みがとりやすい」ことも大切ですが、それ以前に従業員の健康こそが重要だと考え、健康経営に取り組み始めたと言います。ネッツトヨタ山陽株式会社が健康経営の一環としておこなっている、運動の機会を従業員に与えるための「けんこうプログラム」と食生活の改善のための「社員食堂での健康意識の向上」の2つを紹介します。

運動機会の増進に向けた取り組み「けんこうプログラム」

  • 社員に万歩計を持ってもらい、歩いた歩数を個人・部署別に集計して結果を毎月公表
  • ウォーキングコンテストを実施し、楽しみながら継続して運動する環境づくり

【社員食堂の様子】

食生活改善に向けた取り組み「社員食堂での健康意識向上」

  • 社員食堂を笑顔でゆっくり食事ができるようリニューアル
  • カロリー別におかずを選べるヘルシー仕出し弁当の提供

【店舗内の健康コーナー】

ネッツトヨタ山陽株式会社はこれらの取り組みにより、従業員の健康面だけでなく、

  • 岡山市「桃太郎のまち健康推進応援団」への登録
  • 岡山県「おかやま健康づくりアワード」での入賞
  • 地元新聞やディーラーの業界誌に掲載される

など、社外へのアピールという面でも大きな効果がありました。

県内の企業や他のディーラーから健康経営について問い合わせを受けることもあり、他社とのつながりを作るきっかけにもなりました。また、店舗スタッフにとっても、健康をテーマに顧客とのコミュニケーションを深めることができるようになるなど、健康経営で得られる効果は良い連鎖を生んでいます。

株式会社笠間製本印刷

「人にも地球にも優しい企業へ」

株式会社笠間製本印刷は石川県白山市の印刷会社です。健康経営に取り組むきっかけは発注先に※CSRなどに力を入れているかを気にする金融機関が多いことでした。

Corporate Social Responsibilityの略語。企業の社会的責任のこと。

株式会社笠間製本印刷はCSR活動として健康経営だけでなく環境への配慮・地域貢献などに積極的に取り組んでいます。その中で健康経営への取り組みは「残業時間の削減」「経営層の積極的な関与」の2つをポイント明確にして実践されています。

2つのポイントの具体的な内容は以下の通りです。

ポイント1:残業時間の削減(適切な働き方実現に向けた取り組み)

  • 従業員の技能教育の推進年始に残業時間を含めた部署の業績目標を設定
  • 定刻になると管理職のパソコンを強制的にシャットダウン
  • ルーチンワークのRPA化(ロボットで自動化)によるシフトの柔軟化

【「残業時間の削減」に向けてのポスター】

ポイント2:経営層の積極的な関与

  • 外部の健康経営セミナーに参加するなど教育機会の設定
  • 市民マラソンに参加するなど運動機会の増進
  • スポーツジムとの法人契約を結び従業員に利用を呼びかけ

これらの健康経営への取り組みにより、中途採用の面接の際に「笠間製本印刷は福利厚生がしっかりしている」という志望動機の声もありました。残業時間の大幅な削減にも成功し、「さらに高い目標に挑戦する」という意欲的な姿勢です。

健康経営の実践には経営層の積極的な関与が重要です。株式会社笠間製本印刷では「うちも(健康経営優良法人の)認定を取ろう」と代表が積極的に関与することにより、健康経営が推進され、効果も得られています。

ゴリラガードギャランティ株式会社

「運動量の少ない警備員の健康を守る」

ゴリラガードギャランティ株式会社は宮城県仙台市の警備会社です。警備員という仕事は、立ち仕事ですが運動量が少なく食事もおにぎり・パン・ラーメンなど炭水化物に偏りがちで、メタボリックシンドロームや高血圧などで苦しむ従業員が多くいました。

そこで幹部社員が中心となり、会社の仲間たちの人生をより良くするための取り組みを始めました。2021年も健康経営優良法人に認定されたゴリラガードギャランティ株式会社の主な取り組みを見てみましょう。

  • 勤務時間内にYouTubeを使ったエクササイズを行う
  • 全社員に食物繊維(難消化性デキストリン)を配布
  • 会社でヨーグルト食べ放題
  • 勤務時間に自由に病院に通える
  • 自由意志で平日も休みに設定できる

会社の仲間たちに「仕事をしていたら健康になった」「ゴリラガードで働いていたから幸せになれた」と思ってもらえる会社を目指した積極的な取り組みが評価され、健康経営優良法人の中でも日本でTOP500社に入る「ブライト500」にも選ばれています。*4)

株式会社 KOMPEITO

株式会社KOMPEITO

小さなスペースでも導入できる置き型社員食堂「OFFICE DE YASAI(オフィスで野菜)

株式会社KOMPEITOが提供する「OFFICE DE YASAI」は産地直送の新鮮な野菜やフルーツ、60種類以上の料理が楽しめるサービスです。

専用の冷蔵庫や冷凍庫を設置できるスペースがあれば利用できるので、社員食堂の導入が難しい企業でも気軽に取り入れることができるのが特徴です。
商品管理はスタッフの方が行なってくれるので、最初に設置をすれば手間もかかりません!

「社員の食生活を改善したいけれど、社員食堂を導入するスペースがない…」

といった悩みを抱える企業の方は、省スペースの社員食堂「OFFICE DE YASAI」を取り入れてみてはいかがでしょうか。

健康経営はSDGsの目標達成にも貢献する

健康経営への取り組みはSDGsの目標達成にも貢献します。特に目標3・5・8に深い関わりがあります。

その前に、SDGsについて簡単に確認しておきましょう。

SDGsとはSustainable Development Goalsの略語です。「持続可能な開発目標」として2015年の国連サミットで採択されました。

SDGsは2030年までに持続可能でより良い世界を目指すために、世界中の全ての人々が取り組む国際的な目標です。17のゴール・169のターゲットから構成され、地球上の誰一人取り残さないことを誓っています。

SDGs目標3「すべての人に健康と福祉を」

SDGsの目標3はすべての人に健康と福祉をです。誰もが健康で幸せな生活を送れることを目指します。

この目標は、今病気に苦しんでいる人を救うだけでなく、病気や怪我を未然に防ぐことも含まれます。健康経営により働き手が健康で幸せになることは、目標3の達成に特に予防の面で貢献します。

SDGs目標5「ジェンダー平等を実現しよう」

SDGs目標5はジェンダー平等を実現しようです。男女平等を実現し、すべての女性と女の子の能力を伸ばし可能性を広げることを目指します。

日本でもジェンダー平等はまだ実現しているとは言えません。少子高齢化に直面する日本では、人財戦略としてジェンダーの多様性・平等を図り、多様性のある人材(ダイバーシティ)を獲得していく必要があるのです。

目標5と健康経営のつながりは一見、理解しにくいかもしれません。しかし、不平等がまかり通っている企業で働くことが幸せといえるかを考えてみると良いかもしれません。

いかなるジェンダーの人も安心して働ける職場は、倫理面でも社員が安心して働ける職場なのです。したがって、ジェンダーの平等が認められた企業の方が社員の満足度が高く、より幸せに仕事ができていると言えるでしょう。

少し深い話ですが、このように健康経営は目標5の達成にも貢献できるのです。

SDGs目標8「働きがいも経済成長も」

SDGs目標8は働きがいも 経済成長もです。みんなの生活をよくする安定した経済成長を進め、誰もが人間らしく生産的な仕事ができる社会を目指します。

この目標は健康経営についてここまで学んできたあなたなら、そのつながりの強さがわかるでしょう。また、目標8では同じ仕事にはジェンダーに関係なく同じだけ給料が払われるようにするというターゲットを含みます。

先ほど紹介した目標5と健康経営の関係は、ここでもつながっているのです。*5)

まとめ:今後は健康経営が当たり前になる!

以前の「仕事」といえば、何よりも業務が優先で、残業は当たり前、あなたの健康はあなた自身が責任をもって管理しなければなりませんでした。もちろん、これからもあなたの健康維持の最終責任者はあなたであることはかわりません。

【健康経営のメリット】

しかし、これからやってくる超高齢社会少子化社会に向けて、国や企業は働き手から健康を搾取するような経営方法はもうできないのです。ひとりの人を大切な財産として育て、守り、長く元気に働いてもらうために、健康経営がこれから当たり前のものとなっていくでしょう。

経営陣であれば積極的に関わって自社の健康経営を進めましょう。従業員であれば、これからの時代は「働く環境の悪い企業は選ばない」「職場の働く環境改善への意見を経営陣に出す」などの行動が必要です!

「人生100年」の時代が訪れようとしています。私たちは私たちの親の世代よりも長く生き、長く働くことを想定して今後の人生の計画を立てましょう!

「やりがいのある仕事を、元気に長く続けるために健康であり続けたい」という願いに応えるのが健康経営です。持続可能な社会生涯現役社会の実現には日本の生き残りがかかっています。

そのために必須である健康経営にあなたも関心を持ち、社会全体で健康増進を目指しましょう。*6)

〈参考・引用文献〉
*1)健康経営が求められる理由 
厚生労働省『平成28年版 厚生労働白書』p.5,p.12,p.13(2016年)
経済産業省『生涯現役社会に向けた雇用制度改革について』p.4(2018年10月)
経済産業省『健康経営啓発チラシ』
*2)健康経営に取り組むことで得られる効果
経済産業省『健康経営の推進について』p.9,p.38(2021年3月)
3)健康経営促進のための政府の取り組み
経済産業省『健康経営の推進について』p.8,p.28(2021年3月)
経済産業省『健康経営優良法人認定制度』
経済産業省『健康優良法人 取り組み事例集』p.3(2020年3月)
経済産業省『健康経営度調査について』
4)企業の健康経営取り組み事例
経済産業省『「健康経営優良法人2022」認定法人が決定しました!』(2022年3月)
経済産業省『健康優良法人 取り組み事例集』p.9(2020年3月)
株式会社笠間製本印刷『会社概要』
経済産業省『健康優良法人 取り組み事例集』p.7(2020年3月)
ゴリラガードギャランティ株式会社ホームページ
ゴリラガードギャランティ株式会社BLOG『経済産業省・日本健康会議により健康経営優良法人2021ブライト500の認定を受けました』(2021年3月)
経済産業省『健康経営優良法人2021(中小規模法人部門)認定法人 取組事例集』p.13
*5)健康経営はSDGsの目標達成にも貢献する
国際連合広報センター『SDGsのポスター・ロゴ・アイコンおよびガイドラン』
国際連合広報センター『SDGsのアイコン』
外務省『2015年版開発協力白書 日本の国際協力』
経済産業省『SDGsとESGの社会的(Social)側面 事務局説明資料』p.35,p.36,p.37(2019年2月)
国連大学『平等とエンパワーメントの問題』
unisef『SDGs CLUB 目標8 働きがいも 経済成長も」
*6)まとめ:今後は健康経営が当たり前に!
経済産業省『健康経営の推進について』p.51(2021年3月)
経済産業省『健康経営優良法人2021(中小規模法人部門)認定法人 取組事例集』背表紙