#インタビュー

株式会社SAKURUG|どんな境遇でも選択肢を制限されない社会をつくる

株式会社SAKURUG

株式会社SAKURUG 軍地さん インタビュー

軍地 恵里子

2021年新卒入社。早稲田大学スポーツ科学部卒。在学中はスポーツ×社会学やマーケティング、コンテンツ制作を学ぶ。入社後はセールスを2年半経験し、現在は採用やブランド戦略、組織作りに携わる。2022年12月にリリースされたオウンドメディア『sakulog』の立ち上げを担当。その後はDEIレポートの公開や研修、人事評価制度の策定など、SAKURUGの組織づくりとその発信に取り組む。2024年、株式会社SAKURUG取締役に就任。

introduction

近年DEIに積極的に取り組む企業が増えていますが、株式会社SAKURUGもその一つです。利益を生み出す事業とは直接関係のないDEIに取り組むことは、ベンチャー企業にとってその成長の妨げにならないのでしょうか。今回、その取り組みについて、株式会社SAKURUGで採用や組織づくりを担当する軍地さんに、お話を伺いました。

企業として、ひとの可能性を開花させる

–まずは株式会社SAKURUGの紹介をお願いします。

軍地さん:

SAKURUGは、「IT事業」と「採用・組織支援事業」の2つを軸に事業を進める会社です。IT事業では、「QDXコンサルティング事業」として、アプリやウェブサービスなどの開発サポートをしています。

採用・組織支援事業では、Sangoportという採用マッチングプラットフォームを運営し、子育てや介護などの事情によりこれまで活躍の機会を逃していた方に対し、新しい働き方の選択肢を提供しています。

2つの事業を進める中で、「ひとの可能性を開花させる企業であり続ける」というビジョンを大切にしています。ビジョンは会社の在り方を示す根幹です。それを具体的な行動につなげるための目標として「テクノロジーとクリエイティブの力で世界中でDEIを推進する」というパーパスを、さらに具体的な行動指針として7つのカルチャーを掲げています。

私自身は特に「誰よりも楽しむ」というカルチャーがお気に入りです。これは楽しいことをやろうという意味ではなく、何かしらの困難に立ち向かう時にそれをどう楽しみながら乗り越えていくかだと捉えています。大変な時、このカルチャーを思い出して思考の転換を図っています。

また、弊社の大きな特徴として、社会貢献と利益の追求を両立していくことにこだわっていることが挙げられます。急成長を目指す企業をユニコーン企業と言いますが、SAKURUGは持続的な成長を目指すゼブラ企業であることを意識しており、社会課題の解決を軸に事業を展開することで持続可能な社会の実現を目指しています。また、SAKURUGは社会の課題に対してできることを少しずつ増やしたいと考えており、事業とは別の活動、例えば高校生インターンの受け入れにも力を入れています。

インターンシップで開花させる高校生の可能性

–詳しい事業内容に入る前に、高校生インターンシップについて教えていただけますか?

軍地さん:
SAKURUGでは、2017年から高校生インターンシップ「チェリスタ!」を運営しています。その目的は3つあります。一つ目は、高校生のうちから社会経験を積むことで、将来の可能性を広げること。二つ目は将来設計や成長機会の創出。三つ目は高校生インターンを日本中に広めることです。

インターンシップと言えば大学在学中に行うケースが一般的です。つまり、高校生はある程度進路を決めてから大学を選択する必要があります。そこで、高校生に社会という新しい環境を経験してもらうことで、その後の進路選択の幅を広げてもらいたいという想いで取り組んでいるのがチェリスタ!です。東京の本社で行う3日間のインターンシップでは、営業やデザイナー、エンジニアといったカリキュラムを経験することができます。遠方でも参加できるよう、オンラインでのインターンシップも開催しています。これまでも多くの高校生が参加してくれたおかげでSAKURUGとしても次世代を担う若者を受け入れる器が広がっていると感じます。

–インターンシップを経験した高校生に、大学卒業後にSAKURUGに入社して欲しいという想いもありますか?

軍地さん:
もちろんそのような結果になってくれると大変嬉しいとは思います。しかし、それが第一目的ではありません。SAKURUGが高校生インターンを受け入れる主な理由は、あくまで高校生が新しいことを経験することで、進学先の選択肢を増やしたり、気づきを得て新たなことに挑戦したりすることを期待しているからです。先ほどもお伝えしたように、SAKURUGはビジネスを通して社会課題の解決を目指す会社です。次世代を担う高校生に広い視野を持ってもらい、将来社会に向けた色々な活動を一緒にできればと思っています。

潜在的なタレント人材と、企業が求める即戦力をマッチングする「Sangoport」

 –ここからはSAKURUGの事業について伺います。今回は、Sangoportについて詳しく教えてください。

軍地さん:
Sangoportは、フルタイムはもちろん、時短やフレックス、フルリモートなど働き方に選択肢が持てるような仕事を紹介する採用マッチングプラットフォームです。既存の枠組みの中で活躍の機会を逃していた潜在的なタレント人材と、即戦力を必要としている企業を繋ぎ、多様な「はたらく」を実現することで、労使双方の課題解決を目指しています。

大きな特徴としては2つ挙げられます。まずは、子育てや介護などの時間的制約、場所的制約によってこれまで活躍の機会を逃していた方に特化した転職サポートであることです。もうひとつが、求職者との面談を通してキャリアや人生設計を一緒に考え、求めている人物像が合致する企業に紹介するなど、きめ細やかな転職のサポートを行なっていることです。

この事業を立ち上げた背景は、以前、弊社で短時間勤務制度を利用する社員(以下時短社員)を募集したところ、想定外にも優秀な能力を持った求職者が集まったことが関係しています。

彼女達になぜ弊社に応募したのかを聞くと、もちろんSAKURUGの理念に賛同したからというのもありましたが、短時間勤務という条件で働ける求人が他に無かったという声が聞かれたのです。この経験から、受け入れ側が少し柔軟に配慮することが、優秀な方を採用することに繋がるということを発見することができました。これがSangoport事業のきっかけの1つとなり、当時新卒2年目の社員が事業を立ち上げました。

Sangoport事業を利用することは、制約条件を持った求職者だけではなく、企業側にも利点があります。今、日本では少子高齢化に伴う労働人口の深刻な減少が問題となっています。そのような中で企業存続や企業拡大を図るためには優秀で即戦力となる人材を確保することがとても重要です。そこで企業側が時短社員やフルリモートの社員を受け入れるという選択肢を追加することで、潜在的な即戦力人材を採用できる可能性があります。また、フルタイムの20代30代の社員の採用単価が高騰する中で、時短社員を採用することは採用単価を抑えることにもなります。

–Sangoport事業が抱える課題やそれに対する取り組みについてもお聞かせください。

軍地さん:

マッチングプラットフォームには現在約200社の求人を掲載しており、短時間勤務やフルリモートしかできない求職者に対する、企業側の理解は少しずつ広まっていると感じます。ただ、そのような求職者の採用に踏み切れていない企業がまだまだ多いのが実情です。今後は、その障壁になっている部分を取り除くことで、提携してくださる企業を今後もっと増やしていきたいと考えています。

これを実現するために、弊社では2つの取り組みに力を入れています。まずはこの事業を知っていただくための認知活動です。弊社の約2割の社員は時短で働くママさん達です。時短社員が多く所属するSAKURUGの事例をまとめた受け入れガイドを公開したり、弊社の支社がある和歌山県白浜町などで多様な人材の活躍推進に関するセミナーを開催したりしています。もう1つの取り組みは、実際に提携してくださる企業への制度面でのサポートです。SAKURUGでのオンボーディングの方法を紹介したり、弊社の担当者がクライアント企業の組織で人事労務のフォローをしたりということもしています。

誰もがどんな境遇でも活躍できる社会を目指して

–ここからはDEI(Diversity,Equity,Inclusion/多様性を尊重し、公平性を追求し、誰もが受け入れられる包括的な組織や社会を実現しようとする取り組み)についてお伺いします。DEIに関連する受賞も複数されているSAKURUGの取り組みについて教えてください。

軍地さん:
SAKURUGは、多様なバックグラウンドを持つメンバーが個々のバリューを最大限発揮できる組織を目指すことがビジョン「ひとの可能性を開花させる企業であり続ける」の礎になると考えています。そのような考えから2020年にDEI推進室を社内に設置し、DEI推進に積極的に取り組んでいます。

とはいえ、DEIという言葉が注目されるようになる前から、SAKURUGは事業に直接関係がない活動や価値観を大切にしてきました。DEI推進室はそのようなこれまでの活動をさらに推進しているという側面もあります。

その中でも、社内のDEI推進を第一にしています。社内での多様な働き方を推進することはもちろん、社員がDEIの重要性について学ぶ機会を設けています。例えば外部の専門家やDEIを推進している他の会社の経営者、当事者から話しを聞く「DEIラーニング」の機会を定期的に設けています。

他にも、社外に向けた活動もしています。ビジネスとしてはSangoport事業を通して多様な働き方の推進。ボランティアとして、社会の架け橋としてDEIを推進する活動もしています。例えば既に紹介した高校生インターンシップもその活動の一つですし、他にも障がい者支援施設に出向いてSAKURUGが持っているデザイン技術の体験をしてもらうこともしています。これらの活動は、どんな境遇にいても選択肢を制限されることなく活躍して欲しいという想いで続けているものです。

昨年、これまでSAKURUGが取り組んできたDEIに関する活動についてレポートを一般公開したところ、ありがたいことに社外からも多くの反響が寄せられました。このことによりDEIに関する活動をすることはもちろんですが、同時に活動をしているということを社外に伝えることも大切だと改めて思いました。

(FY2024社内統合報告書より)

–最後に今後の展望を教えてください。

軍地さん:

ITと人材の2本柱で事業展開をしてきましたが、今後は事業の多角化を視野に入れており、これまで弊社がDEIへの取り組みを通して培った知識や経験を事業に昇華し、社会に還元したいと考えています。SAKURUGは時価総額1,000億円の達成など、2030年までに実現したい15の目標を「2030年計画」に掲げています。13期目を迎えた今年は、2030年計画を達成するためのターニングポイントとなるべく始動します。将来的には、SAKURUGが強みとしてきたITや人材雇用のノウハウを使って、アジアやアフリカでの海外展開や、地方創生の分野でも貢献したいと考えています。

–営利企業でありながら社会課題の解決を真剣に考えているからこそ、DEIの推進を通して事業以外の様々な活動をしているということが良く分かりました。この度はとても勉強になるお話を、ありがとうございました。

【関連リンク】

・株式会社SAKURUG https://sakurug.co.jp/

・Sangoport https://sangoport.tokyo/

・高校生インターン「チェリスタ!」 https://cherista.sakurug.co.jp/