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北九州市立大学 永末さん|地域の課題解決に取り組む官民連携のSDGs【後編】

北九州市立大学 基盤教育センター准教授 永末さん インタビュー

永末 康介

福岡県生まれ。California State University, Fresno 大学院言語学科修士課程修了。福岡大学大学院博士後期課程修了。博士(文学)。2007年に北九州市立大学基盤教育センターに着任し、現在同センターの准教授を務める。SDGs達成を推進するための「北九州SDGsクラブ」内におけるプロジェクト「学びのスクランブル交差点」の提案者。北九州地区の高校における探究活動(「総合的な探究の時間」など)の支援に加え、「探究型修学旅行」や高大社連携を見据えた活動を行っている。

introduction

大学で行われるSDGsの取り組みにフォーカスしインタビューする本企画。今回は、SDG大学連携プラットフォーム(SDG-UP)に参加する北九州市立大学の牛房先生と永末先生へインタビューさせていただきました。

北九州市立大学 牛房さん|地域の課題解決に取り組む官民連携のSDGs【前編】

後半では、教育分野におけるSDGsの取り組みに注力されている永末先生にお話をお伺いしました。

北九州市が取り組むSDGsクラブにおいて教育プロジェクトを進める

–永末先生、よろしくお願いします。最初に永末先生が取り組まれている活動や始めたきっかけを教えてください。

永末さん:

北九州市内でSDGsへの関心があったり、関連する事業を行う企業が集まった組織北九州SDGsクラブの中で、教育に特化した活動を行っています。

北九州市役所の方と話をする中で「北九州SDGsクラブの中で教育に関係するプロジェクトがあっても良いのでは?」ということになったのがきっかけです。

私はもともと、教養教育を扱う基盤教育センターに所属していて、高校と大学の接続や連携した活動に興味を持っていたこともあり、参加を決めました。

–具体的にはどういった活動をしていますか?

永末さん:

2020年度から、北九州SDGsクラブ内で「学びのスクランブル交差点」というプロジェクトを始めました。

高校の探究活動への支援を行う「学びのスクランブル交差点」

「学びのスクランブル交差点」は、未来の社会を支える人材の育成や社会全体の人たちと共に教育に関する対話や交流ができる場を創ることを目的としています。

具体的には大学とその一歩手前にある高校との連携を意識しながら、2022年度から高校で必修となる「総合的な探究の時間」の支援を中心に活動しています。大学の教員だけでなく、高校の教員や行政、SDGsなどの社会課題に関心のある企業の方たちにも多く参加していただけるような取り組みを目指しています。

–まさに地域を支える産学官民が一体となった取り組みですね。

永末さん:

幸い北九州市がSDGsに積極的に取り組んでいることもあり、「SDGsを通して高校に何か良きものを還元したい」、あるいは「高校のOB/OGのために何かやりたい」という思いでご参加いただく方も多く、大変ありがたいなと感じています。

交流や体験を通した「知る機会」の創出

–これまでの活動を通して、どのような効果を実感されていますか?

永末さん:

京都市立西京高校との取り組みについてお話させていただきますね。コロナの影響で海外への修学旅行が実施できなくなったため、国内の探究型修学旅行(フィールドワーク)で北九州市を訪れていただきました。(なお「SDGsに熱心に取り組んでいる地域」という理由で、高校生たち自身が北九州市を訪問地として選んでくれたそうです。)

本学を訪問するということになったので、地域活動に積極的に取り組む本学学生と交流する機会を作りました。私がそこで感じたのは、交流活動を通して高校生の目の輝きがどんどん変わっていくということです。自分が本当にやりたいことを見つけ、楽しんで取り組んでいるのが伝わってきました。

高大連携で行う取組の場合、年齢の近い高校生と大学生との交流が生まれることで、やはりどちらにとっても通常の授業では得られない生き生きとした学びがあるのではないかと感じています。

–おもしろいですね。実際に関わっている行政や企業の方たちも何か変化がありましたか?

永末さん:

活動を支援してくれている方たちも同じで、社会貢献の活動を通して自分たちの活動が理解してもらえたこと、あるいは自分の普段の仕事を相手に伝えることで仕事に対しての充実感が得られたという感想もいただいています。

私もそうですが、このプロジェクトをきっかけに様々な人が繋がり、体験を通して「知る機会」を作ることができている点が一番の効果だと感じています。私自身が一番楽しんでいるのでは、と勝手に思っています。

大学をSDGsの達成に向けた「知の拠点」とする

–SDGsの達成に向けて、大学はどのような役割が求められているとお考えですか?

永末さん:

大学関係者の多くの方は、大学が「知の拠点」であるという認識をお持ちだと思います。一方で社会人の方がそういった認識を持って大学を活用していただけているかというと、まだまだなのではないかと思うんですよね。

–たしかに大学に対して少し距離を感じてしまいがちですよね。

永末さん:

そういった距離をなくすことも意識して、北九州市立大学ではi-Designコミュニティカレッジを立ち上げました。これは社会人向けの教育プログラムです。SDGsと連動させながら、大学生よりもっと上の年代の方にも大学を「知の拠点」として活用していただけたらと思っています。そうすることで、大学としてSDGsの達成に少しでも貢献できるのではないかと考えています。

SDGsの活動を通して「大人になることの楽しさ」を伝えたい

–SDGsの取り組みの展望について教えてください。

永末さん:

抽象的な内容になってしまいますが、SDGsの取り組みを通して、若い世代に「大人になるのは楽しいよ」ということを少しでも伝えていきたいと考えています。

–なぜそのように考えるようになったのですか?

永末さん:

以前、探究活動の中で高校生から「大人って楽しいですか?」と質問されて、すごく衝撃を受けたことがきっかけです。

おそらく同年代の若い人も、大人を見て「あんな大人になりたくないな…」と思ってる方が一定数いるのではないかと感じました。そして、そう感じさせてしまっているのは大人に責任があるのではないかなと思ったんですよね。

ですので、今取り組んでいる「学びのスクランブル交差点」などの活動を通して、大学の教員や企業の方たちと一緒に、仕事の楽しさや、大人になっても学び続けることの楽しさというのを伝えていきたいなと感じています。

–未来の社会を支える人材を育てるという視点で一番大切な部分かもしれないですね。

永末さん:

そうですね。もちろん高校生だけでなく、シニア層の方に向けて学び直しの機会を創出することで、100年時代を楽しく生きることにも貢献していきたいと思っています。そのために、今後も北九州市と協力しながら進めていきたいです。

私としてはSDGsの目標を達成するという世界観より、「楽しんで取り組んだ結果、目標を達成していた」という変化がたくさん生まれることを期待しています。

今後も、一人一人が頑張るのではなく、大学という一つの組織として工夫しながらSDGsの取り組みを進めていきたいです。

–今後の発展を楽しみにしています。永末先生、本日はありがとうございました。

インタビュー動画

関連リンク

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