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【SDGs未来都市】石川県小松市 | 環境や女性に配慮した暮らしやすいまちづくり

石川県小松市 経営政策課 江口様インタビュー

江口 駿

1984年5月21日、石川県小松市生まれ。大学卒業後、民間企業での勤務を経て2010年10月に小松市役所に入庁。福祉、農林水産等の部署を経て、2019年より経営政策課においてSDGsに関連する業務に携わる。庁内の各部署の連携体制の構築に努めるとともに、他の自治体や民間企業の活動を情報収集し、最新SDGsの動向について勉強している。

Introduction

石川県小松市は、人口約10万7,000人の全国の標準的な規模の都市です。雄大な霊峰白山と海のある自然の風景が楽しめると同時に、日本海側財布代の小松空港や、2024年には北陸新幹線も小松市を通る利便性の高い街でもあります。また、現代の世界的建設機械メーカーを始めとしたものづくり産業が集積し、県全体の製造品出荷額の約2割のシェアを占める産業都市でもあります。

一方、安心して子育てできる地域社会が形成されていることで、あらゆる世代・性別の就労は全国に比べ大変高く、家族3世代・4世代での住まいも多い。また、教育に対する関心も高く、幼児期から国際理解、理科科学、自然や伝統文化など様々な学習機会が提供されている。こうしたことから、東洋経済新報社の「住みよさランキング」でも全国トップクラスに位置しています。

今回、このような特色ある小松市で持続可能なまちづくりに関する業務に携わる経営政策課の江口さんに、SDGsや環境、人々の生活向上のための取り組みを伺いました。

「ふるさと小松を未来へつなぐ」条例がSDGsの考えと重なった

-本日はよろしくお願いします。まずは、小松市がSDGsに力を入れ始めたきっかけを教えてください。

江口さん:

実は「SDGsをやろう!」といって始めたわけではないんです。もともと、小松市では豊かな自然環境や伝統文化、産業、そして人々の思いや技術の継承を未来につなぐことが重要と感じていて、その思いを条例化し、2016年に「ふるさと小松を未来へつなぐ条例」を制定しました。その後、この条例がSDGsの考えと重なる部分が多いことに気づいたんです。それであればSDGsも取り入れて展開できるよね、となったのが始まりです。

-なるほど。その流れで2019年のSDGs未来都市に応募されたんですね。

江口さん:

そうですね。「ふるさと小松を未来へつなぐ条例」をベースに、「環境」「社会」「経済」の三側面を統合した、SDGs未来都市計画「国際化時代に ふるさとを未来へつなぐ「民の力」と「学びの力」〜PASS THE BATON〜」を策定し、選定されたという流れになります。

小松市の取り組み

小松市では、SDGsの基本理念である「環境・経済・社会」の分野で取り組みをしています。それぞれの分野での取り組み内容を伺いました。

【環境分野】木場潟の再生

-環境分野では、どのような取り組みをされているのでしょうか?

江口さん:

白山のふもとに木場潟という潟があり、白山を望む景色と美しい水環境が魅力でした。しかし、高度成長期以降の農業生産拡大に向けた周辺湖沼の干拓や生活排水などが原因で水質汚染が深刻な状態となり、湖の有機汚濁度を表わすCOD値(化学的酸素要求量)が、1990年には全国181の湖沼中ワースト2位になってしまったんです。

それに伴い、潟に住む動植物の数も減ってしまっていて。元々あった美しい風景を未来に残していきたいという市民の声も上がり、小松市ではこの木場潟の再生に力を入れることになりました。

-具体的にはどのようなことを行っているのでしょう?

江口さん:

パートナーシップも重視している小松市では、潟の再生のために、行政だけでなく大学、企業、市民団体と連携してプロジェクトを実施しています。人工浮島による水質浄化システムを導入し、水質汚濁の原因の一つである水中の窒素、リンを除去しています。

-官民学が連携することで、効果的に環境問題に取り組めるんですね。

江口さん:

はい。また2015年には上皇、上皇后両陛下のご臨席も賜り、木場潟で全国植樹祭が開催されました。多くの市民が集まり、環境保全や植物の数を再生する取り組みを広く知っていただけたと感じています。

【経済分野】女性が活躍できるまちづくり

-続いては経済分野について教えてください。

江口さん:

小松市では、女性の働く場づくりにも力を入れています。小松市は産業の街ですが、製造業だけだと若い女性の働く機会が少ないことが課題でもありました。そこで、6次産業を活発化するために里山の商品を利用したり、ワーケーションの場を提案したりすることで、女性の働く場を広げていこうとしています。

-小松市は2021年の日本経済新聞・東京大学による「働きやすさランキング」で、1位になっていますよね。女性の働きやすさへの取り組みも、関係しているんでしょうか?

江口さん:

そうですね。小松市は子育て支援にも力を入れていて、待機児童ゼロなどの保育環境が評価されました。また、福祉施設の充実度、住宅の広さなどでも最高点をいただいています。3世代同居の世帯も多く、地域社会との結びつきが強いのも小松市の特徴です。子育てと仕事を両立しやすい環境が整っていることが、このような結果につながったのでは、と感じています。

【社会分野】高齢者がいきいきと暮らせるまちづくり

-では、社会分野についてもお聞かせください。

江口さん:

小松市では「いきいきシニア率」という小松市独自の指標を高めようと取り組んでいます。これは75歳以上の男女で、介護認定を受けていない男女の割合のことです。2020年時点で小松市の「いきいきシニア率」は70.5%でしたが、2030年には75%に高めることを目標にしています。高齢者が元気で介護の必要なく暮らせるように、様々な取り組みを進めています。

-具体的にはどのようなことを行っているのでしょうか?

江口さん:

高齢者の健康増進のために、健脚推進ボランティア、食生活改善推進員、いきいきサロンなど、ボランティア団体や地域単位での自主的活動が盛んに行われています。

また、小松市は「予防先進」の街も目指しています。高齢者が病気になってから対応するのではなく、生活習慣病などを予防することを重視しているんです。そのために、小松市民病院が拠点となり、地域医療や高度医療とも連携して取り組んでいます。病院や薬局、福祉施設のネットワークが結ばれることで、高齢者をはじめとした市民の暮らしを支えられると考えています。

人材育成に力を

-その他にも取り組んでいることはありますか?

江口さん:

小松市では「人づくり」も大切にしており、特に、未来を担う子供たちへの教育に力を入れています。例えば、市内の小中学校のSDGs特別授業として、吉本興業の芸人さんに子どもでもわかりやすいような内容で、なおかつ楽しい授業をしてもらっているんです。

-SDGsって、大人でも難しく感じることもありますよね。それを芸人さんの力で楽しく子ども達に教えるんですね。

江口さん:

はい。また、これからの取り組みとして「小松市SDGs1校1プラン」といって、各学校でSDGsの知識を深めたり実践したりする総合的な学習にも取り組んでもらおうと計画しています。

-市のHPを見ると、学校以外に、市民の方々がSDGsに触れ合う場の提供にも力を入れられている印象でした。

江口さん:

そうですね。大人でも学べる場として、公立小松大学、小松商工会議所、まちづくり市民財団、社会福祉協議会、市が連携して、「こまつ市民大学」を運営しています。ここでは、さまざまなテーマから興味のあるテーマを選んでいただき、セミナー形式での勉強会が開催されています。

江口さん:

他にも、2020年からは「SDGs宣言」といって、市内の事業所や団体に活動の宣言をしてもらっています。宣言の証書を飾ってもらったり、市のホームページに掲載したりしていて、2021年現在では、90以上もの事業所に参加いただいているんです。

取り組みの効果

-ここまでご紹介いただいたように、様々なことに取り組んでいる小松市ですが、効果は感じられていますか?

江口さん:

まず木場潟の環境は目に見えてよくなっていると感じます。野鳥など一時的にいなくなっていた動植物が戻ってきて、COD値も少しずつ改善してきているんです。まだまだこれからですが、今後も企業、大学と連携して取り組んでいきます。

江口さん:

また、SDGs宣言をする事業所も増え、徐々に認知度が上がってきていることも感じています。こちらも引き続き行っていきたいですね。

今後の課題

-今後の課題は何かありますか?

江口さん:

SDGsの認知度が上がってきたとは言え、まだまだ全市民にまでは浸透していないと感じています。市民のSDGs認知度をもっと高めることが今後の課題ですね。

とはいえ、行政主体ではなく、市民の方からも広まっていってほしいという気持ちもあります。たとえば小学校の授業でSDGsについて学んだ子ども達が、家に帰ってお父さんお母さんに話をする。そこから全世帯に広まってくれたらいいなと。

SDGsは難しいことではなく、みんなが身のまわりからできることなんだと知ることで、具体的な行動を起こしやすくなるのかなと。そのお手伝いができるよう、今後も市としてできることに取り組んでいきます。

-本日はありがとうございました。

取材・執筆/ あぬ

インタビュー動画

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