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TMI総合法律事務所|企業がSDGsに取り組む決定的な理由と意識すべき2つのポイントとは?

TMI総合法律事務所 パートナー弁護士 北島さんインタビュー

北島 隆次(きたじま たかつぐ)

1972年生。1994年東京大学教養学部教養学科卒業。レンゴー㈱(段ボール製造業)、監査法人系コンサルティング・ファームでの環境・サステナビリティコンサルタント(8年)を経験後、2010年東京大学大学院法学政治学研究科(法曹養成専攻)修了。2012年弁護士登録後現職。専門は企業法務、特に環境・サステナビリティ。事業会社、コンサルティング・ファームでの豊富な現場経験をベースに、「企業を守る」、「企業と創る」、「企業を繋ぐ」業務に従事。環境省、業界団体等の委員を歴任。国連大学SDG大学連携プラットフォーム事務局長、SDG企業戦略フォーラム事務局長。

https://www.tmi.gr.jp/people/t-kitajima.html

introduction

2030年を達成年度とするSDGs。今、すべての企業にSDGs達成に向けた取り組みが求められています。

今回はTMI総合法律事務所のパートナー弁護士、北島さんをお迎えし、企業がSDGsに取り組むべき理由と、持続可能な社会の実現という潮流の中で企業が今すべきことをお話頂きました。

「守る・創る・繋ぐ」企業に安定を提供することが私たちの使命

-本日は宜しくお願い致します。北島さんは現在弁護士として活躍されていますが、主にどのようなお客さんを担当されていますか。

北島さん:

企業向けの法律サービスを提供しています。

具体的には、企業をあらゆるトラブルから「守る」、新しいビジネスを「創る」サポートをする、そして様々な業態で活躍する企業や研究機関をマッチングさせて事業を展開しやすいよう「繋ぐ」といったサービスを提供しています。

「繋ぐ」という分野では、このサイトを運営しているエレビスタ株式会社さんともお付き合いがありますね。企業はそれぞれ得意分野が異なりますから、それぞれの持つ強みをマッチングさせることで新しい事業が誕生するきっかけになります。

ー最近ですと、これまでの事業にプラスして新しく事業を始める企業が増えているのでしょうか。

北島さん:

増えています。SDGsやサスティナビリティへの取組みが求められる中で、「我が社も環境ビジネスを始めたい」「社会課題に取り組みたい」とお考えの企業は多いのですが、ビジネスとして新しい事業を始めるのは労力が要りますし、トラブルに巻き込まれないよう法律も意識しなければなりません。そこで私たちがどんな法律をクリアしなければならないかといったリーガルサポートをしています。

ー心強いサポーターがつくことで安心して事業に取り組めますね。

北島さん:

もう一つ、「今世界ではどんなサービスが求められているのか」といった世の中の動きも伝えるようにしています。

ー法律に関わることだけではなく、ビジネスを進めるための有益な情報を得られるんですね。
ところで、個人向けではなく企業に注力されているのは何か理由があるのでしょうか。

北島さん:

きっかけは、従来の社会の在り方に危機感を覚え、企業活動そのものを変える必要があると感じたからです。また、そもそも事業会社で働いており、またコンサルティングファームで企業がお客様だったので、企業との仕事が長かったというのもあります。

異常気象が通常になってきていることへの危機感

ーどういった現状に対してそう感じられたのですか。

北島さん:

環境問題がまったく解決されてない、それによって経済格差や社会の不平等が明るみになってきていることですね。コロナ禍において、さらに浮き彫りになりました。

ーどのような環境問題が解決されていないのですか。

北島さん:

例えば、近年頻繁に起きている異常気象があまりに頻繁に起きすぎて、もはや「異常」ではなく「通常」となりつつあることが挙げられます。

こうした予測は2000年ごろには既に指摘されていました。それがまさに今現在起こってしまっているのは私たちが有効な策を講じてこなかったからともいえると思います。

<主な天候の特徴・気象災害>

出典:気象庁

北島さん:

もともと環境に関して興味がありましたし、環境を”志”事(しごと)にしたいと思って、環境やサスティナビリティに関するコンサルタントとして8年間従事し、もっとやれることがないかと考えた結果、現在はESGやサスティナビリティに関わる弁護士になりました。

ーSDGsが社会に浸透し始め、認知度も高まっていますが、北島さんは企業とSDGsの関係をどのようにお考えですか。

北島さん:

全企業がSDGs達成に向けて取り組むべきだと考えます。ここからはその理由を2つお伝えしますね。

「やらない以外の選択肢はない」企業の生き残りを懸けたSDGs

ー早速ですが、企業がSDGs活動に取り組むべき理由をお聞かせいただけますか。

北島さん:

SDGs達成に取り組むことは、将来のビジネス拡大の大きなチャンスとなるからです。言い換えると、SDGsやサステナビリティを意識した経営の重要性が飛躍的に高まっているといえます。

ー企業が生き残れないということは、どういうことでしょうか。

北島さん:

今の経済活動が続けば、社会が不安定化し、企業活動の基盤が崩れるということです。

先ほどお伝えしたように、近年異常気象が通常化しています。

北島さん:

それにより住む場所を失ってしまったり、国によっては海面上昇によって街が浸水し移住せざるを得なかったり、もしくは干ばつにより作物が育たなくなったりと、衣食住すべてが急激に変化しています。

ー人々の生活が不安定になっているということですね。

北島さん:

はい。さらにこの状態というのは短期間で起きていることが特徴です。

実際にヨーロッパではわずか3か月で人口が大きく移動しており、経済・社会が短期間かつ劇的に変化しています。

<TMI総合法律事務所提供>

北島さん:

人間は多少の変化には耐えられますが、急激な変化が起きると混乱を招きます。

ーその混乱が企業活動の基盤を不安定にさせるということですか。

北島さん:

その通りです。企業活動の基本は「安定」です。社会が安定しているから人々は消費活動を行えるし、企業はサービスを提供できます。

では、社会を安定させるために何をすべきかというと、SDGsに掲げられた目標に沿って企業活動をすることです。脱炭素、脱プラスチックなどに目を向けるのです。

ーそうなると、根本から事業内容を見直す必要がありますね。

北島さん:

生き残りを懸けて変える必要がありますね。

変えない限り間違いなく社会は不安定化します。そうすると企業活動も成り立っていかないし、人間も社会も成り立っていかないし、地球も成り立っていきません。

SDGsの活動をやらない以外の選択は、もはやないのです。

ESG投資や融資が受けやすくなる

ーもう1つの理由を教えてください。

北島さん:

SDGsに沿った活動をする企業ほどお金を調達しやすくなるということです。

ESG投資という言葉を聞いたことありますか。環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)の3つの観点から企業の将来性や持続性などを評価した上で、お金をどの企業に投資するかを選ぶ投資方法です。

<TMI総合法律事務所提供 ESG・サスティナビリティとは>

北島さん:

今、世界のESG投資残高は35兆ドルあり、企業はこのお金を取り込むことでさらなる事業拡大が見込めます。世界の投資家がESGに取り組む企業を評価する傾向が特に長期志向の投資家の間で強くなるためです。

一方でESGに取り組まない企業はそうしたファイナンス(投資、融資)が受けにくくなっていきます。

ー企業に対する評価の基準が変わっていくんですね。

北島さん:

はい。例えば石炭火力に関わる企業はそれをやめない限りお金が回ってこない、事業継続が困難になるという現実を突きつけられています。

今はコロナ禍の影響もあり、緊急対策としてお金を借りやすい状況となっていますが、この状況もいずれなくなります。

それがなくなったとき、やはりESG投資が何より大きな役割を持つため、企業はSDGsやサスティナビリティに注力する必要があるのです。

ー将来を見据えて企業はSDGsに取り組まなければ生き残れないということが理解できました。こうした理由を踏まえて、企業は何から始めることが賢明なのでしょうか。

北島さん:

ここからは、企業がすべきことをお話しますね。

持続可能な社会の中で企業が生き残るために意識すべき2つのこと

ー企業が生き残るためにやるべき2つのこととは、どんなことなのでしょうか。

北島さん:

まずは消費者含め、サプライチェーン全体のお客さんの声にしっかりと耳を傾け、それを実行することです。

世の中のニーズを理解しサービスを提供する

ー一見当たり前のようなことですが、そこが一番大切なことなんですね。

北島さん:

そうですね。企業が長く生き残ることって実はすごいことなんです。

そうした企業に共通することは、お客さんの声を聞いてサービスを提供する、ニーズに合わせてものを作れる、納期に柔軟に対応できることで評価を得てきています。

SDGsを始めようと、エコ活動をする、労働環境を変える、これも重要だとは思いますが、やはり大事なのは関わるサプライチェーンがどんな状況にいるのかを把握することですね。

ーSDGsに関して言うと、今はどういったニーズが増えていますか。

北島さん:

温室効果ガス排出量実質ゼロを目指す企業が増えています。

北島さん:

これをサプライチェーンネットゼロと言いますが、脱炭素を公言する会社が増えていけば、それに沿わないと判断された取引先はお付き合いが続きません。

ー中小企業ですと、なかなかすぐに事業転換をしづらいという場合もあるかと思いますが、そうした際はどうすればいいでしょう。

北島さん:

腹をくくって、現状の中で「うちのSDGs活動はこうです」と説明できるものを作っておくことが重要ですね。

SDGsの事業を始めることだけでなく、何か新しいことを始めるにはお金がかかります。だからこそ、企業が生き残るためには、利益が取れる企業にどう変身していくかを考え抜き、かつどういったSDGsの活動をしているかの説明力の強化が重要となります。

ー考え抜くという意志と取引先を説得する説明力が必要だということですね。
とはいえ、SDGs実現に向けて新しく事業を始めようと頑張っている企業にとって課題になってくるのが、相談できる場所がないという不安です。
先ほどお話頂いた、新しく「創る」という点で、何をどう注意しながら始めるべきか分からないという企業が多いと思います。

北島さん:

そうした場合にすべきことは、専門家の協力を得ることです。私たち弁護士の仕事から言うと、あらゆるリスクから企業を「守る」という部分を活用頂くということですね。

世の中の動きを客観視できるアドバイザーの協力を得よう

ー専門家の協力を得て守りの部分を強化する重要性について詳しく教えてください。

北島さん:

新しいことを始めるときはリスクがつきものです。

環境にやさしいことを始めましたと言えば、実は人権に悪かったとか、そうしたことが起きやすくなります。

そのリスクを未然に回避するには、横串の目で見てリスク判断ができる人材が重要になってきます。

横串目線で物事を見られる人材が必要ということですね。

北島さん:

はい。これからの企業には、チーフ・サステナブル・オフィサーを設置する必要があります。

ーどういった役割を持つのでしょう?

北島さん:

単に社会貢献活動をします、というチームではなく、横串の目で物事を見られる役割を担う存在をおくということです。

ー横串目線とはどういったものですか?

北島さん:

社会の状況を俯瞰して把握し、起こりうるリスクを事前に予測し回避するということです。

例えば、環境問題をクリアした商品を販売するとします。しかしその商品が地域の地理的な位置関係によって政治的や社会的な影響を与えるものであることも意識しなければなりません。

これを地政学的リスクといいます。

法的なこと以外にも地理的要素も配慮しないといけないということです。

ーかなり専門性の高い分野になりますね。

北島さん:

そうですね。なかなか一般の方だと知り得ない情報があるからこそ、専門家の協力を得る必要があります。

北島さん:

実際に、アメリカではウイグル自治区で生産された品目を原則輸入禁止するという法律が2021年にできました。

そういった情報は事業部内だけ、会社内だけでは得られにくいですよね。

だからこそ横串目線でリスク判断できるアドバイザーを作っておく必要があります。

ー知らなかっただけでは済まされない、知らないと社会から選ばれなくなるということが理解できました。

北島さん:

はい。企業が生き残っていくためには、SDGsの活動が必須です。そしてその進め方も、法律や世界情勢を総合的に意識しながら取り組む必要があります。

ー本日は貴重なお話をありがとうございました!

取材 大越 / 執筆 Mayu Nishimura

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