#インタビュー

【SDGs未来都市】京都府京丹後市| 市の未来を担う次世代とSDGsを身近にする取り組みを実施

【SDGs未来都市】京都府京丹後市

京丹後市 青木 滉人さん インタビュー

青木 滉人(あおき ひろと)

滋賀県草津市出身。大学で京丹後市をフィールドにゼミ活動を行なったことから京丹後市に興味を持つ。大学院では、京丹後市に移住し、地域の協議会で地域活性化活動に取り組みながら、京丹後市の地域コミュニティの現状について研究を行う。その後、2022年に入庁。政策企画課に配属となる。現在は、SDGs推進業務、大学連携業務、地域間連携業務等を担当する。

introduction

丹後半島にある京都府京丹後市には、丹後ちりめんに代表される産業や、日本海の豊かな自然が育む高級ガニを目当てにたくさんの観光客が訪れます。

そんな京丹後市は、京都府内で舞鶴市と亀岡市に続いて3番目にSDGs未来都市に選定され、地域の中高生や企業などと協力しながら「もっとSDGsを自分ごとにしてもらう」活動を進めてきました。

今回、京丹後市役所の政策企画課 青木さんに京丹後市の取り組みについてお伺いしました。

京都府内で3番目にSDGs未来都市へ

–京丹後市について紹介をお願いいたします。

青木さん

京都府の最北端に位置する京丹後市には、現在約5万人が暮らしています。日本海に面した豊かな自然があふれ、美しいビーチや多様な地質・地形が織りなす山陰海岸ジオパーク、1匹4〜5万円の間人蟹、温泉を求めて、多くの観光客が訪れる地域です。

産業では「しぼ」と呼ばれる表面のでこぼこが特徴の絹織物「丹後ちりめん」が有名です。高級で質も高いことから、パリコレの作品にも使用されたことがあります。国内シェアも高く、日本の絹織物生地の6~7割は丹後ちりめんが占めています。全盛期には「ガチャッ」と1回織るだけで1万円も稼げたことから「ガチャマン景気」と言われた時代もありました。

また、農業も盛んで、特Aランクのコシヒカリや、砂丘の土地を生かした「砂丘メロン」などのフルーツも作っています。

–SDGsに力を入れて取り組むようになった背景について教えてください。

青木さん

京丹後市は令和3年5月に、SDGs未来都市に選定されました。これは京都府内で、舞鶴市と亀岡市に続いて3番目の事例です。

それまでも企業や団体、市役所それぞれでSDGsの活動をしていました。ただ、各々で取り組んでいたものが、この選定をきっかけに「オール京丹後」として進めていこうという姿勢になりましたね。

7つのロゴマークを京丹後市SDGsのシンボルに

–京丹後市様のSDGsの具体的な取り組みについてお伺いできますか?

青木さん

令和4年度までに実施したSDGsへの取り組みをご紹介したいと思います。

まず、SDGs未来都市に選定されてすぐに、市民の方と一緒にSDGsの取り組みを進めるためのシンボルとなる、京丹後市版のSDGsオリジナルロゴマークを作成しました。京丹後市には6町ありますので、6町+市全体の合計として7つのロゴマークを作成しています。

作成の過程としては、市内の障害者施設の利用者や外国人市民の方にワークショップに参加いただき、19の原案を作り上げました。これには、「誰ひとり置き去りにされない」社会を実現したいという思いを込めています。

そこから小学生、中学生、高校生の投票により、7つのロゴマークを決定しました。ばら寿司や丹後コシヒカリなどの特産品、夕日ヶ浦の夕日や経ヶ岬灯台・立岩といった絶景など、京丹後市の特徴を捉えたものが選ばれています。

次に紹介するのが、令和3年度からスタートした「SDGsチャレンジ支援事業補助金」制度です。これは、市民の活動団体や企業に、SDGsに関する活動をさらに進めてもらうことを目指しています。

事例としては、「ゆるりら」という市民団体の子育て支援があります。京丹後市のお母さんたちが安心して子育てできる環境を整えるために、産後ケアや子育てサロンを開いたり、おむつの提供などをしたりしています。

他にも、久美浜町の蒲井・旭活性化協議会での「自然共生のシンボル ツリーハウスを核とした 蒲井・旭活性化プロジェクト」に補助金が活用されています。

この地域ではツリーハウスを持続可能な発展や環境保護を進めるシンボルとして、この活動が行われてきました。あるビールのCMでロケ地として採用され話題にもなりましたね。

補助金は、ツリーハウスの下にキャンプ場を整備する活動に使っていただいています。

また、峰山町に伝わる伝統的な踊り「峰山おどり」の大会運営費にも活用いただいています。

「丹後万博」は、京丹後市の未来を担う次世代が運営・企画

青木さん

そして、私たちが最も力を入れている取り組みが、京丹後市内の峰山高校、丹後緑風高校網野学舎、丹後緑風高校久美浜学舎、清新高校の4校の高校生が企画・運営をするSDGsの祭典、「丹後万博」です。2022年度は「つながり、つなげる」、2023年度は「守ろうで、丹後のええもん」というテーマで開催しました。

この丹後万博のアイディアを出してくれたのも高校生でした。2021年11月に開催した「SDGs未来都市・ゼロカーボンシティ推進フェアin京丹後」の中で、高校生から提案されたことを受けて市が予算化し、2022年からスタートしたという経緯です。

「SDGsを身近に感じてもらう機会にしたい」そして、「将来京丹後市を担う世代に、『京丹後市をどんなまちにしたいか』を考えてもらう機会にしたい」という、大きく2つの狙いで実施を決定しました。もちろん、2025年の大阪・関西万博にむけて機運を高めていこうという目的もあります。

市役所は事務局として、4月から10月までの約半年間、4つの高校それぞれと打ち合わせをしながら、生徒と一緒に全体のコンセプトを決めたり、イベントの盛り上げ方を考えたりしていきました。

イベント運営の中心となってくれたのは、4校から集まった実行委員会です。会長も高校生が務めました。チラシのデザインから、記者会見、FMラジオの出演まですべて高校生が中心で動いてくれましたね。

–具体的には、どのような催しが行われたのでしょうか?

青木さん

例えば、清新高校からは、「ジェンダーレス×アップサイクル」をテーマに、使われなくなった着物をリメイクしてファッションショーを披露してもらいました。また、峰山高校からは、世界各国の民族衣装を外国人市民の方と紹介するファッションショーを披露してもらいましたね。京丹後市には、ベトナムなどのアジアを中心に働きにきている外国人の方も少なくありませんので、外国人市民と多文化交流を進めていく機会にしたいと考えました。

また、丹後半島に流れ着いた海岸漂着ごみを活用したキーホルダー等を販売するブースや、地元企業と連携しながら、大きさや形が規格外の野菜・果物を活用したハンバーガーなどの販売をするブースもありました。京丹後市の獣害を考えるきっかけづくりとして、ジビエカレーの提供をした高校もありましたね。

2023年度もファッションショーを実施したほか、高校生、外国人市民、地元吹奏楽団による、国や団体を超えたコラボバンドでの演奏をしたり、昆虫食としてコオロギパウダーを使ったクッキーを提供したりしました。

他にもイベントに来場できない方向けに、メタバース空間でのバーチャル丹後万博も開催し、当日ステージのライブ配信や出展ブースの紹介動画を楽しんでもらいました。

デジタル技術の活用という面では、今年は、行方不明者の捜索などに利用できる福祉アプリの「みまもりあいアプリ」を活用して、各ブースに設置されたQRコードを読み取るデジタルスタンプラリーを実施しました。アプリをダウンロードしてスタンプを3つ集めると、高校生が作ったスイーツが景品としてもらえるというものです。イベントを盛り上げるためだけでなく、普段福祉アプリに触れる機会が少ない方にも、ダウンロードをしてもらい、万博が終わった後も使ってもらう目的で活用をしました。

–丹後万博のほかに、学生との取り組みはされていますか?

青木さん

中高生向けの夏休み企画として、課題発見DAYを開催しました。これは、京丹後市が協定を締結している、「一般社団法人Sustainable Game」という団体が主催しているプログラムです。

具体的には、中高生に京丹後市のまちを自由に歩きながら、社会課題を見つけてもらいます。そして、持ち帰った課題に対して同世代でワークショップをすることで、「まちをもっと良くするためにはどうしたらいいか」を考えてもらうという企画です。

私が同行したチームでは、京丹後市の商店街を歩き「商店街が衰退している」という話を聞いたり、ビーチクリーンをしている方に話を聞きに行ったりしていました。

オール京丹後として取り組むために

–市内の企業や団体との取り組みには、どのようなものがあるのでしょうか?

青木さん

「オール京丹後」としての活動を推進するため、SDGsに取り組む市内企業や団体、個人の交流・情報交換・連携の場を提供しようと、令和4年に京丹後市SDGs推進市民会議を設立しました。令和5年8月時点で、地元の企業や銀行、エコ活動をしている団体や中学生・高校生など、幅広い業界から30団体、そして個人1名が会員になっています。

キックオフミーティングでは会員の久美浜中学校の生徒会メンバーに、ペットボトルキャップを集めて途上国のワクチン接種費用として寄付したり、アルミ缶を集めて福祉施設に備品購入費を寄付したりといった活動を発表してもらいましたね。

また、この活動の一環として、SDGs特設サイトを開設しました。サイト内では、SDGs市民会議の会員の活動事例を中心に、取材記事の掲載をしています。

–京丹後市では、SDGsの条例も制定されていますね。

青木さん

「京丹後市SDGsとともに創生・発展するまちづくり推進条例」を制定しました。SDGsを掲げる条例としては、京都府内では初めての事例です。

これは、行政だけでなく市民や事業者にSDGsの考えを取り入れた活動をしてもらい、協力協働しながらまちづくりを推進していくための「シンボル」として制定しました。市役所で素案を作成した後、市民会議で説明して話し合う他、市民からのパブリックコメント、意見の募集もしました。

現在は、「京丹後市では、SDGsをどう進めていきたいのか」を示す指針として、条例が役立っていると感じています。

–今後の展望について教えてください。

青木さん

今回お話させていただいたように、京丹後市ではSDGs未来都市に選定されてから、市役所としてさまざまな取り組みを実施してきました。そのなかで、「市民の方と一緒に進める」ことの難しさと大切さを実感しています。

今後も、将来世代の人たちを中心に協力をしながら、もっとSDGsを身近に考えてもらえるような取り組みを進めていきたいと考えております。

ー貴重なお話をお聞かせいただきありがとうございました。