海洋保護条約をめぐり、国際社会が動きをみせています。この条約は、地球の生命線である海洋の未来を左右する重要な国際的枠組みです。
2023年のBBNJ協定の採択から各国の反応、日本の対応まで、海洋環境保護の最前線をわかりやすく解説し、近年注目されている深海資源開発との両立や、公海ガバナンスの課題など、複雑化する海洋問題の現状と未来を考えます。海の豊かさを守るための私たちの役割とは何でしょうか?
海洋保護条約とは?

海洋保護条約とは、海洋環境と生物多様性を保護し、持続可能な利用を促進するための国際的な法の枠組みです。これらの条約は、
- 海洋生態系の保全
- 海洋資源の管理
- 海洋汚染の防止
などを目的としています。海洋保護条約は条約は、
- 全17部320条の本文
- 9つの附属書
- 第11部(深海底)の実施協定
から成っています。
主要な海洋保護条約
海洋保護条約の主な部分を具体的に確認しておきましょう。
国連海洋法条約(UNCLOS)
1982年に採択され、1994年に発効した国連海洋法条約は、「海の憲法」とも呼ばれる包括的な海洋法の枠組みです。この条約は、
- 領海
- 排他的経済水域(EEZ)
- 大陸棚
などの海域区分を定義し、各国の権利と義務を規定しています。また、海洋環境の保護や海洋科学調査の自由など、幅広い海洋関連事項をカバーしています。
生物多様性条約(CBD)
1992年に採択された生物多様性条約は、
- 生物多様性の保全
- 遺伝(生物)資源の持続可能な利用
- 遺伝資源の利用から生じる利益の公正かつ衡平な配分
を目的としています。海洋生物多様性の保護も、この条約の重要な要素の1つです。
BBNJ協定
最近注目を集めているのが、2023年6月に採択されたBBNJ協定(国家管轄権外区域の生物多様性の保全と持続可能な利用に関する国連海洋法条約の下での協定)です。この協定は、公海と深海底における海洋生物多様性の保護を目的としており、
- 海洋保護区の設置
- 海洋遺伝資源の利益配分
- 環境影響評価の実施
などを規定しています。
条約の下に設置された機関
海洋保護条約の実施を支援するため、いくつかの重要な国際機関が設立されています。
- 国際海底機構(ISA):深海底の鉱物資源の管理を担当
- 国際海洋法裁判所(ITLOS):海洋法に関する紛争解決を行う
- 大陸棚の限界に関する委員会(CLCS):沿岸国の大陸棚の外側の限界を検討
海洋保護条約は、海洋環境の保護と持続可能な利用のバランスを取る上で極めて重要です。特にBBNJ協定は、これまで法的な枠組みが不十分だった公海における生物多様性の保護に焦点を当てており、海洋保護の新たな時代を切り開くものとして期待されています。
このように、海洋保護条約は、海洋生態系の健全性を維持し、気候変動の緩和に貢献し、持続可能な漁業を促進するなど、多面的な役割を果たしています。これらの条約を通じて、国際社会は協力して海洋環境の保護に取り組み、次世代のために健全な海洋を残すことを目指しています。*1)
海洋保護条約の内容

海洋保護条約は、海洋生態系の保護から資源管理まで、幅広い分野をカバーしています。主な内容を見ていきましょう。
締約国の義務
海洋保護条約は、締約国に対して海洋環境を保護・保全する一般的義務を課しています。これには、海洋汚染の防止、海洋生物資源の管理、そして海洋保護区の設定などが含まれます。例えば、国連海洋法条約では、締約国は海洋環境を保護・保全するために必要なあらゆる措置を取ることが求められています。
海洋汚染の防止
海洋保護条約は、
- 陸上
- 船舶
- 海洋投棄
- 海底活動
など、さまざまな発生源からの海洋汚染を防止するための規定を設けています。特に注目すべきは、2023年6月に採択されたBBNJ協定で、プラスチックごみを含む海洋廃棄物への対応が盛り込まれたことです。
これにより、公海における海洋汚染防止の取り組みが、さらに強化されることが期待されています。
海洋生物資源の管理
持続可能な漁業の実現は、海洋保護条約の重要な目的の一つです。BBNJ協定では、公海における魚類資源の持続可能な管理が規定されており、乱獲や違法漁業の防止に向けた国際協力の枠組みが整備されつつあります。
海洋保護区の設定
海洋保護区(MPA)※の設定は、海洋生態系を保護するための重要な手段です。BBNJ協定では、公海上に海洋保護区を設置する枠組みが提供されており、これにより国家管轄権外の海域における生物多様性の保全が促進されることが期待されています。
科学的調査の推進
海洋の科学的調査は、海洋環境の理解と保全に不可欠です。海洋保護条約は、国際協力のもとでの海洋科学調査の自由を保障しつつ、沿岸国の権利との調和を図っています。
BBNJ協定では、海洋遺伝資源の利用から生じる利益の公正な配分についても規定されており、科学研究と開発途上国の利益のバランスを取ろうとしています。
海洋保護条約の内容は多岐にわたり、その実施には国際的な協力が不可欠です。合意に至っていない箇所もまだありますが、BBNJ協定の採択は、公海の保護に向けた画期的な一歩であり、今後の海洋保全の取り組みに大きな影響を与えることが予想されます。*2)
海洋保護条約に関する歴史

海洋保護条約の歴史は、国際社会が海洋環境の重要性を認識し、その保護と持続可能な利用に向けて協力してきた道のりを示しています。この歴史を通じて、海洋法の発展と環境保護の取り組みが密接に関連していることがわかります。
国連海洋法条約の成立
国連海洋法条約は、海洋法の歴史において最も重要な転換点の1つです。1973年に始まった第三次国連海洋法会議は、10年にわたる交渉の末、1982年に国連海洋法条約を採択しました。
この条約は、海洋汚染の防止や海洋生物資源の管理など、締約国の義務を包括的に定めています。1994年に発効し、2024年9月現在、169か国とEUが締結しています。
海洋環境保護の進展
1970年代以降、海洋環境保護に関する国際的な取り組みが加速しました。1973年には船舶による汚染防止のためのマルポール条約※が採択され、1983年に発効しました。
これにより、船舶からの有害物質の排出規制が強化されました。また、1972年に採択された世界遺産条約は、海洋を含む自然遺産の保護にも貢献しています。
海洋保護区の発展
海洋保護区(MPA)※の設定は、海洋生態系を保護するための重要な手段として認識されるようになりました。国連海洋法条約の枠組みの中で、各国は自国の管轄海域内にMPAを設定する権利を有しています。
近年では、公海における海洋保護区の設定も国際的な議論の対象となっています。
BBNJ協定の採択
2023年6月、国家管轄権外区域の海洋生物多様性(BBNJ)※に関する新たな協定が採択されました。この協定は、公海における海洋保護区の設定や海洋遺伝資源の利用から生じる利益の公正な配分などを規定しており、海洋保護の新たな時代を切り開くものとして期待されています。
海洋保護条約の歴史は、国際社会が海洋環境の保護と持続可能な利用のバランスを取るために、継続的に努力してきた足跡です。次の章では、海洋保護条約がなぜ必要なのかを考えていきましょう。*3)
海洋保護条約が必要な理由

海洋保護条約は、地球の生命線である海洋の健全性を維持し、人類の持続可能な未来を確保するために必要です。海洋が直面する複雑な課題と、それらに対する国際的な協調を目指して、今後も議論が続けられます。
海洋生態系の危機
海洋生態系は、
- 気候変動
- 乱獲
- 汚染
などの脅威にさらされています。特に公海では、国際的な規制が不十分であるため、生物多様性の損失が加速しています。
海洋保護条約は、これらの脅威に包括的に対処し、海洋生態系の回復力を高めることを目指しています。
資源の公平な利用
公海の海洋遺伝資源を「公正かつ衡平に」分配することは、条約の重要な目的の一つです。これは、先進国と途上国の間の技術格差を埋め、海洋資源の利用から生じる利益を公平に共有することを意味します。
この取り組みは、国際的な協力と持続可能な開発を促進する上で重要です。
環境影響評価の重要性
海洋保護条約は、海洋での活動に対する環境影響評価のルールを設定しています。これにより、開発プロジェクトや商業活動が海洋環境に与える潜在的な影響を事前に評価し、適切な対策を講じることが可能になります。
この予防的アプローチは、長期的な海洋の健全性を確保する上で不可欠です。
海洋汚染への対応
海洋廃棄物、特にプラスチック汚染は、海洋生態系に深刻な影響を与えています。海洋保護条約は、この問題に対する国際的な取り組みを強化し、汚染者負担の原則に基づいた対策を推進しています。
これは、海洋環境の保護と持続可能な利用のバランスを取る上で重要な要素です。
持続可能な漁業管理
魚類資源の持続可能な管理は、食料安全保障と海洋生態系の健全性の両方にとって重要です。海洋保護条約は、過剰漁業を防止し、科学的な管理計画に基づいた漁業活動を促進することを目指しています。
長期的な水産資源の維持によって、漁業に依存するコミュニティの生計も確保することができます。
海洋保護条約は、これらの複雑な課題に対する包括的なアプローチを提供し、国際社会が協力して海洋の未来を守るための枠組みを提供しています。この条約の実施は、海洋生態系の保護、持続可能な資源利用、そして人類の福祉に不可欠です。*4)
海洋保護条約の問題点

海洋保護条約、特に最近採択されたBBNJ協定は、海洋環境の保護と持続可能な利用を目指す画期的な取り組みですが、その実施には多くの課題が存在します。これらの問題点は、
- 国際社会の複雑な利害関係
- 科学的知見の不足
- 既存の法的枠組みとの整合性
など、多岐にわたります。
締約国間の利害対立
BBNJ協定の交渉過程で最も顕著だったのは、先進国と途上国の間の利害対立です。特に海洋遺伝資源の利益配分をめぐる議論では、途上国が「人類共同の財産」原則に基づく公平な配分を主張したのに対し、先進国は自由な利用を望みました。この対立は、海洋資源の利用と保護のバランスをどう取るかという、根本的な問題を浮き彫りにしています。
深海資源開発と生物多様性保護の両立
深海底鉱業の規制は、BBNJ協定の重要な焦点の1つです。深海の生物多様性保護と資源開発の両立は難しい課題であり、環境保護団体は深海底鉱業が海洋生態系に与える悪影響を懸念しています。
一方で、鉱物資源の需要増加を背景に、深海資源開発への期待も高まっています。この相反する利害をどう調整するかは、今後の大きな課題となるでしょう。
公海ガバナンスの複雑さ
公海は、伝統的に「自由」の原則が適用される海域です。しかし、IUU(違法・無報告・無規制)漁業※の横行や、海洋環境の継続的な悪化は、より強力な国際的管理の必要性を示しています。
BBNJ協定は、公海における海洋保護区の設定など、新たな管理手法を導入していますが、既存の地域漁業管理機関や国際海事機関との権限の調整が課題となっています。
科学と政策の乖離
海洋生態系の複雑さと科学的知見の不足は、効果的な保護政策の立案を困難にしています。特に深海の生態系については、まだ多くが未解明です。
この科学的不確実性が、保護区設定にあたっての課題となっています。また、科学的な推奨事項が必ずしも政策に反映されないという問題も存在し、科学と政策の乖離を埋めることが重要です。
グローバルガバナンスの限界
BBNJ協定の実効性を確保するためには、国際協調が不可欠です。しかし、国家主権の原則と国際的な規制の間のバランスを取ることは容易ではありません。
また、条約の実施・監視体制の構築や、違反に対する制裁メカニズムの確立など、グローバルガバナンスの限界に直面する課題も多く存在します。
これらの問題点を克服し、海洋保護条約を実効性のある枠組みとして機能させるためには、継続的な国際協力と柔軟な対応が必要です。経済システムと環境保護の矛盾を解消し、持続可能な海洋利用を実現するためには、さらなる議論と取り組み、科学的知見が求められています。*5)
海洋保護条約に関する各国の動き・反応

海洋保護条約をめぐる各国の動きは、海洋環境保護と経済利益のバランスを反映しています。各国の立場や対応は、その地理的特性や経済状況、環境への取り組み姿勢によって大きく異なっています。
EUの積極的な姿勢
EUは海洋保護条約の推進に最も積極的な立場を取っています。2024年11月、フランスがBBNJ協定の批准を承認する法案を可決し、EU加盟国の中でも先駆的な役割を果たしています。
EUの積極姿勢は、環境保護への高い意識と、海洋技術における競争力を背景としています。
中国の条約推進姿勢
中国は公式に条約推進の姿勢を示しています。世界最大の漁業国である中国にとって、海洋資源の持続可能な利用は重要な課題です。
同時に、海洋技術開発においても世界をリードしたいという野心が、この姿勢の背景にあると考えられます。
アメリカの消極的な態度
2024年の大統領選挙でトランプ氏が再選を果たし、アメリカの海洋保護条約への姿勢は消極的になっています。トランプ政権は環境規制の緩和を重視し、BBNJ協定への参加に慎重な態度を示しています。
この姿勢は、条約の実効性に大きな影響を与える可能性があり、国際社会から懸念の声が上がっています。
日本の検討姿勢
日本政府は、各国の批准動向を見極めながら、批准の是非を判断する姿勢を示しています。島国である日本にとって、海洋資源の持続可能な利用は重要な課題です。
一方で、深海資源開発への期待もあり、環境保護と経済利益のバランスを慎重に検討しています。
小島嶼国の切実な要請
ツバルなどの小島嶼国は、海面上昇による国土消失の危機に直面しており、海洋保護条約の早期発効を強く求めています。これらの国々にとって、海洋環境の保護は国家存続にかかわる重要課題です。
【海面上昇など気候変動の影響を大きく受けているツバル】
ロシアの懸念表明
ロシアは条約採択時に懸念を表明しました。広大な北極海沿岸を持つロシアにとって、海洋資源の利用は重要な経済的利益につながります。
条約による規制強化が、これらの利益を制限する可能性を懸念していると考えられます。
海洋保護条約をめぐる各国の動きは、環境保護と経済利益のバランス、そして国際協調と国家主権のせめぎ合いを反映しています。条約の実効性を高めるためには、これらの多様な立場を調整し、共通の目標に向けて協力していくことが不可欠です。*6)
海洋保護条約に対する日本の具体的な動き

日本は海洋国家として、海洋保護条約、特にBBNJ協定に対して慎重かつ積極的な姿勢を示しています。この姿勢は、環境保護と経済発展のバランスを取ろうとする日本の戦略を反映しており、今後の日本経済の方向性を考える上で重要な指標となっています。
国内法整備と技術開発の推進
日本政府は、BBNJ協定の採択を受けて、国内法の整備を進めています。特に、環境影響評価の制度化や海洋保護区の設定に関する法律の改正が検討されています。
同時に、海洋生物資源の持続可能な利用に向けた技術開発にも力を入れています。例えば、NEDOは2024年5月に「ブルーカーボン/ブルーリソース分野の技術戦略」※を策定し、海洋資源の持続可能な利用と気候変動対策の両立を目指す新技術の開発を推進しています。
国際協力の強化
日本は、海洋保護条約への取り組みにおいて国際協力の強化に取り組んでいます。例えば、2019年に日本が議長国を務めたG20大阪サミットでは、「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」を提唱し、2050年までに海洋プラスチックごみによる新たな汚染をゼロにすることを目指す国際的な取り組みを主導しました。
また、日本は国連海洋科学の10年(2021-2030)にも積極的に参加し、海洋観測や海洋データの共有を通じて国際的な海洋研究に貢献しています。
産業界との対話
日本政府は、BBNJ協定が海洋産業に与える影響を慎重に評価しています。特に深海資源開発や遠洋漁業への影響が懸念される中、環境保護と経済活動の両立を目指し、産業界との対話を重視しています。
例えば、経済産業省は「海洋生分解性プラスチック開発・導入普及ロードマップ」を策定し、産業界と連携して海洋プラスチック問題に取り組んでいます。また、水産庁は持続可能な漁業と海洋環境保護の両立を目指し取り組みを続けています。
日本の海洋保護条約に対する姿勢は、環境保護と経済発展の両立を目指す「ブルーエコノミー」の実現に向けた取り組みとして捉えることができます。BBNJ協定の批准に向けた検討過程は、日本の海洋政策の方向性を示すだけでなく、今後の日本経済の成長戦略にも大きな影響を与えるでしょう。
今後の日本の動向は、海洋保護と経済発展の両立を目指す世界のモデルケースとなる可能性があり、国際社会からも注目されています。*7)
海洋保護条約とSDGs
【SDGsのポスター】
海洋保護条約、特にBBNJ協定は、SDGsの目標達成において重要な役割を果たします。この条約は、公海における生物多様性の保全と持続可能な利用に関する法的枠組みを提供し、SDGsの海洋関連目標の実現を後押しします。
特に貢献が期待できるSDGs目標を確認してみましょう。
SDGs目標14:海の豊かさを守ろう
【SDGs目標14】
BBNJ協定は、SDGs目標14「海の豊かさを守ろう」の達成に最も大きく貢献します。具体的には、以下の活動が挙げられます。
海洋保護区の設定
公海における海洋保護区の設置は、目標14.5「沿岸域及び海域の10パーセントを保全する」の達成を促進します。
海洋汚染の防止
協定に基づく環境影響評価の実施は、目標14.1「海洋ごみや富栄養化を含む海洋汚染を防止し、大幅に削減する」の実現に貢献します。
持続可能な漁業管理
IUU(違法・無報告・無規制)漁業の防止に関する規定は、目標14.4「過剰漁業や違法・無報告・無規制漁業及び破壊的な漁業慣行を終了する」の達成を支援します。
これらの活動を通じて、BBNJ協定はSDGs目標14の実現に向けた具体的な行動枠組みを提供し、海洋の持続可能な利用と保全に大きく貢献します。
SDGs目標17:パートナーシップで目標を達成しよう
【SDGs目標17】
海洋保護条約は、SDGs目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」の達成にも重要な貢献をします。具体的には以下の点で影響を与えます。
国際協力の促進
BBNJ協定は、公海における生物多様性の保全と持続可能な利用のために、国際的な協力体制を構築します。これは目標17.16「持続可能な開発のためのグローバル・パートナーシップを強化する」の実現に直接つながります。
技術移転と能力構築
BBNJ協定には、海洋科学技術の移転や途上国の能力構築に関する規定が含まれており、これは目標17.9「開発途上国における能力構築の実施に対する国際的支援を強化する」の達成を支援します。
データ共有と知識交換
BBNJ協定は、海洋生物多様性に関するデータや知識の共有を促進します。これは目標17.6「科学技術イノベーションに関する南北協力、南南協力及び地域的・国際的な三角協力を強化する」の実現に貢献します。
これらの活動を通じて、海洋保護条約はSDGs目標17の達成を促進し、持続可能な開発に向けたグローバルなパートナーシップの強化に貢献します。*7)
>>SDGsに関する詳しい記事はこちらから
まとめ

海洋保護条約は、地球の生命線である海洋の健全性を維持し、持続可能な未来を確保するための重要な国際的枠組みです。特に2023年6月に採択されたBBNJ協定は、公海における生物多様性の保全と持続可能な利用に焦点を当てた画期的な取り組みとして注目されています。
2024年9月に開催された「持続可能な海洋経済の構築に向けたハイレベル・パネル第6回会合」では、BBNJ協定の早期発効と実効性のある実施に向けた議論が行われました。ここでは、国際社会が海洋保護の重要性を認識し、具体的な行動に移行しつつあることが示されています。
しかし、海洋保護条約の実施には、
- 先進国と途上国の利害対立
- 深海資源開発と生物多様性保護の両立
- 公海ガバナンスの複雑さ
など、解決すべき問題は山積みです。これらの課題を克服するためには、国際協調の強化、科学的知見の充実、そして柔軟な政策立案が不可欠です。
私たち一人ひとりにできることは、海洋環境への理解を深め、日常生活での環境配慮を実践することです。プラスチックごみの削減や持続可能な水産物の選択など、小さな行動の積み重ねが大きな変化をもたらします。
海洋保護は、地球規模の課題であると同時に、私たち一人ひとりの未来に直結する問題です。今日から、海洋のために何ができるかを考え、行動に移しましょう。
私たちができることからはじめる小さな一歩が、豊かで健全な海洋を次世代に引き継ぐ大きな一歩となるのです。*8)
<参考・引用文献>
*1)海洋保護条約とは?
Oceans and Law of the Sea『United Nations Convention on the Law of the Sea of 10 December 1982 Overview and full text』(2024年6月)
United Nations『Agreement on Marine Biodiversity of Areas beyond National Jurisdiction BBNJ Agreement』
国際連合j広報センター『海洋の3分の2以上における生物多様性の保全と持続可能な利用を目指す、歴史的な協定採択(2023年6月19日付プレスリリース・日本語訳)』(2023年7月)
国際連合広報センター『世界海洋デー(6月8日)に寄せるアントニオ・グテーレス国連事務総長メッセージ』(2024年6月)
環境省『プラスチック汚染に関する法的拘束力のある国際文書(条約)の策定に向けた第3回政府間交渉委員会の結果概要』(2023年11月)
環境省『プラスチック汚染に関する法的拘束力のある国際文書(条約)の策定に向けた第5回政府間交渉委員会の結果概要』(2024年12月)
環境省『生物多様性国家戦略 2023-2030~ネイチャーポジティブ実現に向けたロードマップ~』(2023年3月)
防衛省『第5節 海洋をめぐる動向』
防衛省『排他的経済水域(Exclusive Economic Zone:EEZ)の基礎知識』(2012年1月)
内閣府『海洋基本計画』(2023年4月)
日本国際問題研究所『国連海洋法条約の歴史的意味』(2012年12月)
国立極地研究所『国連海洋法条約でペンギンを守る!〜国の管轄を超えた海洋生物多様性保護の必要性を科学的に証明~』(2022年3月)
日本経済新聞『EEZとは 資源開発や漁業の権利を沿岸国に認める水域』(2021年2月)
nikkei4046『領海と排他的経済水域~海の国境について知る』(2016年9月)
外務省『海洋の国際法秩序と国連海洋法条約』(2024年11月)
CNN『公海での海洋生物保護、約200カ国が条約案に歴史的合意』(2023年3月)
日本経済新聞『公海に大規模な海洋保護区を 国連が初の国際条約作り』(2018年1月)
日本経済新聞『「海の憲法」国連海洋法条約 権益・紛争解決手段を規定』(2024年6月)
Reuters『公海の生物多様性保護で新協定、国連で100カ国以上が協議』(2023年3月)
国際連合広報センター『条約の下に設置された機関』
*2)海洋保護条約の内容
United Nations『UNITED NATIONS CONVENTION ON THE LAW OF THE SEA AGREEMENT RELATING TO THE IMPLEMENTATION OF PART XI OF THE CONVENTION (Full texts)』
Oceans and Law of the Sea『Save our Ocean,Protect our Future』
Oceans and Law of the Sea『About the 2022 UN Ocean Conference』
Oceans and Law of the Sea『Chronological lists of ratifications of, accessions and successions to the Convention and the related Agreements』(2024年7月)
国際連合広報センター『海洋法』
国際連合広報センター『海洋法 条約の影響』
環境省『 海洋生物多様性保全戦略目次 第1章 背景』
環境省『沖合域における海洋保護区の設定のあり方(とりまとめ)』
同志社大学『海洋法に関する国際連合条約』
国際連合広報センター『国境を越えて:なぜ新たな「公海」条約が世界にとって不可欠なのか(UN News 記事・日本語訳)』(2023年7月)
外務省『海洋の国際法秩序と国連海洋法条約』(2024年11月)
外務省『ロンドン条約及びロンドン議定書』(2024年2月)
BBC『海洋保護の歴史的条約、草案に各国が合意 10年間協議の末』(2023年3月)
日本国際問題研究所『国連海洋法条約と海洋環境保護』(2012年12月)
国土交通省『1 海洋法条約の採択』(2020年3月)
参議院『海洋汚染損害に対する責任及び補償等に係る国際ルール― バンカー条約及び難破物除去ナイロビ条約の概要 ―』(2019年4月)
国際農研『807. 国家の管轄権の及ばない海洋地域の保全と持続性に向けた歴史的な合意』(2023年6月)
Reuters『国連、公海の生物多様性保護協定を採択 初の法的拘束力も』(2023年6月)
*3)海洋保護条約に関する歴史
Oceans and Law of the Sea『United Nations Open-ended Informal Consultative Process on Oceans and the Law of the Sea」(2025年1月)
Oceans and Law of the Sea『The United Nations Convention on the Law of the Sea
(A historical perspective)』(2024年5月)
Oceans and Law of the Sea『Report of the 2022 United Nations Conference to Support the Implementation of Sustainable Development Goal 14:Conserve and sustainably use the oceans,seas and marine resources for sustainable development』(2022年7月)
Oceans and Law of the Sea『A Constitution for the Oceans』
Oceans and Law of the Sea『United Nations Convention on the Law of the Sea of 10 December 1982 30th Anniversary (1982 – 2012)』(2024年5月)
Oceans and Law of the Sea『25th anniversary of the conclusion of the United Nations Convention on the Law of the Sea of 10 December 1982』
United Nations『Sustainable Fisheries and the Sustainable Fisheries and the 1982 UN Convention on the Law of 1982 UN Convention on the Law of the Sea』(2007年10月)
United Nations『About UNOC 2025 2025 UN Ocean Conference』
国土交通省『1 海洋法条約に対応した国内法制の整備及び管轄海域の確定』
富岡 仁『海洋環境の国際的保護に関する法制度』(1992年)
阿曽 薫『1 胴国連海洋法条約』
村角 美絵『国連海洋 法条約の成立とその意義』
本田 悠介『海洋法における「持続可能な開発」概念の展開――国家管轄権外区域の海洋生物多様性の保全と持続可能な利用をめぐる議論を素材として――』
*4)海洋保護条約が必要な理由
Oceans and Law of the Sea『Issues with respect to article 4 of Annex II to the Convention』(2024年4月)
United Nations『2025 UN Ocean Conference Nice, France | 9 June – 13 June 2025』
United Nations『Small Island Developing States』
United Nations『Secretary-General’s message 2024』(2024年6月)
United Nations『Expert Group Meetings for 2025 HLPF Thematic Review』
United Nations『Conservation and Sustainable Conservation and Sustainable
Use of Marine Biodiversity』
United Nations『Maritime Security and Safety Maritime Security and Safety』(2007年10月)
国際連合広報センター『海の豊かさを守ることはなぜ大切か』
国際連合広報センター『2024年の優先課題に関するアントニオ・グテーレス国連事務総長の総会発言』(2024年2月)
防衛省『国際海洋司法裁判所(ITLOS)の暫定措置命令- MOX プラント事件にみる海洋紛争解決 -』
内閣府『2 特集 我が国の排他的経済水域等を取り巻く状況』(2010年)
NATIONAL GEOGRAPHIC『国連が公海の保護条約協議へ、「海洋版パリ協定」』(2017年12月)
水産研究・教育機構『「国連海洋法条約」と水産資源研究』
衆議院『国際海底ケーブルの保護についての法制に関する質問主意書』
環境省『海洋生物多様性保全戦略目次 第1章 背景』
環境省『海洋生物多様性保全戦略』(2011年3月)
環境省『生物多様性保全のための沖合域における海洋保護区の設定について』(2019年1月)
環境省『令和2年版 環境・循環型社会・生物多様性白書 第3節 海洋プラスチックごみ汚染・生物多様性の損失』(2020年6月)
国土交通省『海洋管理のための離島の保全・管理・利活用のあり方に関する検討委員会 報告書』
国土技術研究センター『国土を知る / 意外と知らない日本の国土』
平和政策研究所『日本の海洋政策はどうあるべきか ―海洋文化資源の視点から―』(2016年12月)
*5)海洋保護条約の問題点
環境省『プラスチック汚染に関する法的拘束力のある国際文書(条約)の策定に向けた第5回政府間交渉委員会の結果概要』(2024年12月)
環境省『生物多様性条約第26回科学技術助言補助機関会合(SBSTTA26)及び第4回実施補助機関会合(SBI4)の結果について』(2024年6月)
経済産業省『海底下CCSに関する国際的な枠組みと国内法ーロンドン条約96年議定書と海洋汚染防止法の概要ー』(2022年3月)
日本経済団体連合会『ダイヤモンド・プリンセス号の事例に即して海洋法の課題を聴く』(2020年11月)
国際法学会『BBNJ 協定採択の意義と課題』(2024年3月)
岡野 正敬『外交における条約の役割の変化』
青木 望美『排他的経済水域における海洋保護区設定の課題と展望
──西アフリカの準地域漁業委員会の要請による国際海洋法裁判所の
勧告的意見を素材に──』
日経サイエンス『これでいいのか海洋保護区』(2018年6月)
平和政策研究所『国家管轄権外区域の生物多様性の保全と持続可能な利用に関する国連海洋法条約の下での協定(通称BBNJ協定)の意義と今後の課題』(2024年10月)
日本国際問題研究所『海洋秩序の再編 海洋汚染等防止法』(2018年9月)
日本国際問題研究所『欧州連合(EU)の海洋生物多様性保護政策の展望』(2021年3月)
釣田 いずみ,松田 治『日本の海洋保護区制度の特徴と課題』(2013年12月)
環境省『海底下CCSに係る制度の現状と課題について』(2023年10月)
*6)海洋保護条約に関する各国の動き・反応
国際連合広報センター『世界海洋デー(6月8日)に寄せるアントニオ・グテーレス国連事務総長メッセージ』(2024年6月)
環境展望台『欧州委員会、公海の生物多様性に関する条約における世界の合意を発表』(2023年3月)
Europian Union『Protecting the ocean, time for action』
在日フランス大使館『フランス、BBNJ協定の批准を承認する法案が国会で可決』(2024年11月)
Harvard University『BBNJ Treaty Marine Genetic Resources of Areas Beyond National Jurisdiction』
世界経済フォーラム『Governing Marine Biodiversity Beyond National Jurisdiction: Roles and Opportunities for the Private Sector』(2024年9月)
BBC『Ocean treaty: Historic agreement reached after decade of talks』(2023年3月)
外務省『海洋の国際法秩序と国連海洋法条約』(2024年11月)
環境省『海洋環境保全に関する国際的動き・国内の動き』
NEDO『ブルーカーボン/ブルーリソース分野の技術戦略策定に向けて』(2024年5月)
BBC『プラスチック規制の世界的合意、まとまらず 産油国が反対』(2024年12月)
Reuters『アングル:領土沈んでも国として存続を、水没危機のツバルが国際社会にアピール』(2024年9月)
Reuters『ロシア、バルト海での妨害行為でNATO試す=ポーランド軍高官』(2024年12月)
日本経済新聞『海洋汚染だけでないプラ問題 温暖化への影響めぐり論議』(2024年3月)
日本経済新聞『14カ国が合意、持続可能な海の管理 日本参加の意義』(2021年1月)
環境金融研究機構『地球上の「公海」保全のための国際条約「国連公海条約」締結で各国が合意。公海の30%を海洋保護区に、海底資源開発等に環境アセスメントや漁業乱獲防止等で国際ルール化(RIEF)』(2023年3月
環境省『ツバルにおける気候変動の影響』(2014年)
*7)海洋保護条約に対する日本の具体的な動き
首相官邸『海洋保護区のさらなる拡大と管理のあり方に関するスタディグループ(SG)報告書』
環境省『生物多様性国家戦略 2023-2030~ネイチャーポジティブ実現に向けたロードマップ~ 』(2023年3月)
環境省『第4章 海洋生物多様性の保全及び持続可能な利用の基本的視点』
環境省『第5章 海洋生物多様性の保全及び持続可能な利用の施策の展開』
環境省『令和4年版 環境・循環型社会・生物多様性白書 第6節 海洋環境の保全』(2022年6月)
環境省『令和6年版 環境・循環型社会・生物多様性白書 第4節 国際的取組に係る施策
1 地球環境保全等に関する国際協力の推進』(2024年6月)
環境省『海洋プラスチック汚染を始めとするプラスチック汚染対策に関する条約』
経済産業省『バイオプラスチック導入ロードマップ~持続可能なプラスチックの利用に向けて~』(2021年1月)
政策情報資料センター『海洋生分解性プラスチック開発・導入普及ロードマップの概要図』(2019年5月)
水産庁『水産政策の改革について』(2025年1月)
国土交通省『国際海運のGHG削減のための更なる対策の導入に向けた議論が進展
~国際海事機関 第81回海洋環境保護委員会(3/18~3/22)の開催結果~』
内閣府『海洋環境の維持・保全について』
外務省『G20大阪サミット(結果概要)』(2019年6月)
文部科学省『持続可能な開発のための国連海洋科学の10年(2021-2030)』(2021年3月)
日経BizGate『世界第6位の海域を持つ国が、海になにを返すか 産官学で取り組む海洋保全』(2023年7月)
日経BizGate『海の保全、業界超え産消連携を』(2023年12月)
日本経済新聞『プラスチックごみ削減条約、官民で探る難路脱出』(2024年12月)
日本経済新聞『深海の生態系 法で守る、海洋保護区10%目指す』(2019年5月)
日本経済新聞『公海の生態系保護へ初協定 国連政府間会合で採択』(2023年6月)
*8)海洋保護条約とSDGs
resources for sustainable development』
United Nations『Oceans and Seas』
United Nations『Small Island Developing States』
United Nations『14 Conserve and sustainably use the oceans, seas and marine
外務省『グローバル指標(Sustainable Development Goal indicators) 14: 海の豊かさを守ろう』
*9)まとめ
国際連合広報センター『気候危機:2025年に注意すべき5つのこと』(2025年1月)
BBC『COP29閉幕、年46兆円超の気候対策支援で合意 「あまりに不十分で手遅れ」と途上国は非難』(2024年11月)
国際法学会『BBNJ 協定採択の意義と課題』(2024年3月)
外務省『持続可能な海洋経済の構築に向けたハイレベル・パネル第6回会合』(2024年9月)
日本経済新聞『公海の生態系保護へ初協定 国連政府間会合で採択』(2023年6月)