#インタビュー

みなとく株式会社代表取締役・沖杉様|目に見えない食品ロスを表舞台に

みなとく株式会社代表取締役 沖杉様

食品ロスの削減を目指した無人販売機「 fuubo(フーボ)」を展開しているみなとく株式会社。現在、新潟県庁・ネスカフェ原宿・那覇空港など、全国各地に設置されています。

今回は、みなとく株式会社の代表取締役・沖杉さん食品ロスに対する考え方や、事業の取り組みについてお話を伺いました。

みなとく株式会社代表取締役 沖杉様 インタビュー

みなとく株式会社代表取締役 沖杉様 

沖杉 大地

1988年2月9日生まれ/栃木県出身

早稲田大学在学中に世界一周するため休学。バックパッカーとして旅に出る。世界一周から帰国後、大手旅行会社に就職し、2年目で経営企画(社長室)に配属される。

その後、未来の起業家を育てる経営塾の1期生として入塾し、2年間のカリキュラムの中で、実店舗の運営や新規事業の立ち上げに努める。2017年に起業し、食品ロス削減することを目的にサービスを展開し経産省の実証実験などを受託。


2021年にネスレ日本やJR東海、電力会社や航空会社をはじめとした大企業や自治体向けに「fuubo」を展開している。

食品ロスをビジネスの力で解決したい

みなとく株式会社代表取締役 沖杉様

-はじめに、みなとく株式会社の事業内容を教えてください。

沖杉さん:

現在、「食品ロス削減BOX fuubo(フーボ)」を展開しております。fuuboは、非対面・非接触・キャッシュレスで商品を購入できる無人販売機です。”まだ食べられるのに廃棄してしまう商品”を弊社が買い取り、fuuboで販売しています。

-食品ロスを解決しようと思ったのはなぜですか?

沖杉さん:

世界に目を向けると食糧が足りていない国がたくさんあるのに、食べられるものが捨てられている国もある。そんな現状に課題意識を持ったからです。

日本では年間600万トンの食品ロスが出ていて、その半分は家庭から、残りが事業者からと言われています。ただこの数字には、農作物や生産物は含まれていないので、実際にはもっと多くの食品ロスが発生していると考えられています。

事業者からの食品ロスは、食品の流通における1/3ルールが主な原因です。

-1/3ルールとはどういったものですか?

沖杉さん:

食品の製造から賞味期限までの期間を三等分し、その1/3以内に食品メーカーから小売店舗に商品を納品しなければならないといった慣習です。それを1日でも過ぎると、賞味期限まで余裕がある状態でも廃棄となる可能性が高くなります。

一方、販売期限というものもありコンビニを例に説明すると、値札のところに棚から撤去するまでの時間が書いてあります。例えば「-2h」とあれば、廃棄する2時間前には商品を棚から回収しなければなりません。そして、食べられる状態であるにもかかわらず廃棄として処理されてしまいます。

-店舗としても売ることができない商品が増えると、売上低下に直結しそうですね。

沖杉さん:

実はそうでもないようなんです。

最近コンビニを経営するオーナーとお話する機会があったのですが、実はロスとして処理したほうがコンビニ本部としての売上があがる仕組みとなっているそうです。

そういった仕組みも、食品ロスが減らない一因になっていると思います。

-そうだったんですね。この食品ロスをビジネスとして扱おうと思ったのはなぜですか?

沖杉さん:

捨てるよりも、適正価格で売る方がみんなが得をすると思ったからです。会社名の”みなとく”に込めた、「みんながとくする社会を創る」を実現するためですね。作り手も、買い手も、まだ食べられるものが捨てられることを望んではいませんから。

食品ロス削減の意義を伝え、全国にfuuboを広めていきたい

-fuuboはどういったところに設置されているのですか?

fuubo

沖杉さん:

現在は、新潟県庁様や那覇空港など8箇所に設置いただいています。新潟県庁様では、県内の食品メーカーで出たロスを販売いただいており、県内の食品ロスの削減と企業への利益還元に貢献できているかなと思います。

-県の食品ロスが解消できるのは地方創生にもつながりますね。新潟県庁の導入にはどのくらいの期間がかかりましたか?

沖杉さん:

かなりスピーディーでしたね。新潟県の食品メーカーさんの協力もあったおかげで、直接お話をしてからfuubo設置まで2~3ヵ月ほどでした。

-今後自治体にも普及していく予定でしょうか?

沖杉さん:

その予定です。しかし、いちベンチャー企業のサービスを自治体に導入してもらうのはかなり難しいことなんですよね。

でもそこで諦めず、食品ロスの削減、SDGsに則ったサービスであることをしっかり伝えていく必要があります。

県民や市民の方々に喜ばれるサービスであれば、いつかさまざまな自治体にも導入できると考えています。

-コンビニなどにfuuboを導入する予定はありますか?

沖杉さん:

いえ、今のところありません。

以前、小売店の食品ロス情報を配信するアプリをリリースしました。

食品ロスって同じ場所で解消しようとすると、単純に値下げしか方法がないんです。消費期限に余裕があるのと、あと2時間で切れるものを同じ値段で売ったらだいたいの人は余裕があるものを購入してしまいますから。

そうなると「半額」や「70%OFF」など、どんどん値引きしなければならなくなるんです。でもいったんそれを始めてしまうと、定価で売れなくなってしまって…。

メーカーや作り手からしたら、それは本望ではありませんよね。そうなると食品ロスは永遠に解消できません。

そこで私たちはfuuboを使って別の場所で売ることにしたんです。

企業活動の中にSDGsを取り入れることが当たり前の社会に

-fuuboはどのように運営しているのですか?

沖杉さん:

食べられるのに捨てられてしまう商品を、私たちが買い取り販売する形で運営しています。といっても、企業様には簡単に受け入れてもらえません。流通させていない商品を流通させることになるので、企業側にとってはそれなりにリスクや抵抗があるのは理解できます。なのでSDGsにつながる活動であることを丁寧に説明していくしかないと感じています

-確かにそうですね。SDGsに取り組むことの企業の責任についてはどう思いますか?

沖杉さん:

SDGsには17の目標があり、その中でも目標7~12は企業が中心となって取り組む必要があるものです。

とはいえ「SDGsがあるから取り組もう」ではなく、「環境を良くしよう」「環境に配慮している製品をつくろう」という気持ちからスタートするのが特に重要なのではないかと思うんです。

そのためにも、モノやサービスを提供する際には、環境への負荷も同時に考えていく必要がありますね。

-SDGsと事業を結びつけるポイントがあれば教えてください

沖杉さん:

SDGsの前身としてMDGsがありましたが、そこでは、うまく企業を巻き込めなかったという経緯があります。

対して、SDGsは策定段階から企業が参加しています。つまり、先進国だけでなく企業にも社会・環境・経済を持続可能なものにする責任があることを示しているんです。

事業として取り組まねばならない、当たり前のものとして行動していく社会にしていかなければならないと思っています。

-今後の展望について教えてください

沖杉さん:

むこう3年でfuuboの導入500台を目指しています。

fuuboがいくら広がっても、食品ロス全体の1~2%の解消程度にしかならないと思います。でも、fuuboがきっかけとなり似たようなサービスが増えていけば、市場自体が確立すると考えます。

メルカリさんはいい例ですよね。昔は物を購入し、不要になったら買取業者に売るという流れが一般的でしたが、メルカリさんのおかげで今はCtoCで売り買いできるようになりました。

食品ロスに関しても同様の流れがくるタイミングが必ずあると思います。

-本日は貴重なお話ありがとうございました!

インタビュー動画

株式会社みなとく各種リンク

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>>食品ロス削減BOX fuubo(フーボ)