#インタビュー

MNインターファッション株式会社|紙糸でつくる服「WA.CLOTH® ESSENTIAL」でアパレル業界にサステナブルな選択肢を

MNインターファッション株式会社

MNインターファッション株式会社 米﨑尊路さん インタビュー

MNインターファッション株式会社 米﨑様

米﨑尊路

MNインターファッションでは、企画開発部部長 兼 マーケティング課課長を務め、同社が展開するサステナブルなジャパンメイドブランド「WA.CLOTH® ESSENTIAL」の製品統括や他ブランドのマーケティング全般に関わる。また、同社の子会社である株式会社デジタルクロージングにて、洋服の3Dサンプル事業を立ち上げ、サステナブル・DXの先進的な取り組みを行っている。

introduction:

環境負荷の問題や途上国での生産体制など、さまざまな社会課題を抱えるアパレル業界では昨今、サステナビリティへの配慮が求められています。

「WA.CLOTH® ESSENTIAL(ワクロス エッセンシャル)」は、主にマニラ麻を原料にした紙を加工した紙糸で作る衣服を展開するサステナブルなファッションブランドです。着心地や機能性も兼ね備えた、「着ていて気持ちがいい」を叶える「WA.CLOTH® ESSENTIALWA.CLOTH」。今回、「WA.CLOTH® ESSENTIAL」を展開しているMNインターファッションの企画開発部部長米﨑さんにお話を伺いました。

ファッション性と機能性を兼ね備える!紙糸素材でできた衣服「WA.CLOTH® ESSENTIAL」」

ーまずは会社の概要を教えてください。

米﨑さん:

MNインターファッション株式会社は、日鉄物産株式会社の繊維事業と三井物産アイ・ファッション株式会社との事業統合により、2022年1月から始動した新しい繊維商社です。ファッション・繊維事業を中心に、ブランドマーケティングや機能資材の開発など、幅広い領域でグローバルビジネスを展開しています。

OEM(Original Equipment Manufacturer:相手先ブランドの製品製造)やODM(Original Design Manufacturing:自社デザインの生産)を主要事業としてきた生産背景を活かし、自社ブランドも多数運営しています。

「WA.CLOTH」は運営ブランドのうちの一つで、マニラ麻を原料にした紙糸を使用したオリジナル製品を製造しています。私たち企画開発部では、「WA.CLOTH® ESSENTIAL」をはじめ弊社のD2C(Direct to Consumer:ECサイトを通し、消費者に直接製品を販売するビジネスモデル)のオリジナルブランド認知向上を目指して日々マーケティング活動をしています。

MNインターファッション株式会社 紙からできた糸

ー「WA.CLOTH®」は紙からできた糸を素材にしているということですが、特長を詳しく教えてください。

米﨑さん:

紙をシュレッダーのように細く切り、それを紙縒り(こより)のようにして糸にしていくんです。通常、紙は木からできているのでパルプが原料ですよね。「WA.CLOTH®」で使用している紙の原料はマニラ麻と呼ばれるアサ科の植物で、アバカといいます。すごく丈夫で美しい繊維が取り出せることや、成長が速いといった特長もあります。

このアバカを原料にした紙糸で作る衣服は、綿と比べて約1/3の軽さで、通気性が良く、着ていてとても気持ちがいいんです。消臭効果や耐摩耗性にも優れており、独特のシャリ感もあり見た目も美しいですね。

ー高い機能性を持っているんですね。パルプ原料ではないにしろ「紙」でできていると聞くと、水に弱いイメージでした。

米﨑さん:

それはよく言われます(笑)。ですが実際、耐水性は抜群に良いですよ。むしろ、溶ける紙というのはトイレットペーパーくらいです。あれは特殊な加工をして水に溶けるようにしているんですが、通常の紙は溶けません。

たとえば洋紙と和紙の違いを想像していただくと分かりやすいと思います。洋紙は書籍や雑誌、コピー用紙でよく使われています。一方和紙は、昔から雨傘や提灯、行灯など身の回りの生活品としても使われていた素材で、耐水性や耐久性に優れています。紙糸はこの和紙に近い機能を持っているということです。

実は、「WA.CLOTH® ESSENTIAL」で一番人気のある商品は靴下なんですよ。

耐水性に加え、繰り返しの使用でどれだけ性能を維持できるかという耐摩耗性テストでも、10,000回という高い結果を出しており、破れや擦り切れに強いということは実証済みです。さらに、吸放湿性によるドライ感と抗菌防臭効果にも優れているため、スポーツブランドメーカー様からもご好評をいただいております。もちろん、スポーツをされない方の普段使いとしてもおすすめです。

ただ、安い商品ではないので、ユーザー層としては若い方というよりも中高年の方が多いですね。

ー機能性というのは、原料のアバカの特性と、糸に加工するまでの技術によるものが大きいのですか?

米﨑さん:

そうですね。アバカによる紙糸素材自体は昔からあり、現地のフィリピンでは古くから船のロープにも使われていたほど強い繊維を持っています。ドライ感や消臭性などの現代的な機能を持ちあわせていましたが、更に細くスリット出来るようになり汎用性が広がり洋服用の布地を作ることが出来ました。それが「WA.CLOTH® ESSENTIAL」ブランドです。

アバカは成木するのが速く栽培による環境負荷が小さいなど、サステナビリティの実現にも貢献します。

紙糸素材で、アパレル業界の構造改革を推し進める

「WA.CLOTH®」

ー紙糸は昔からある素材ということですが、改めてそこに着目したきっかけを教えてください。

米﨑さん:

少子化の進む日本では、服を買う人口がどんどん減っていますので、世界を視野に入れた商品開発や事業を進める必要があります。そこで、日本古来のものでもある紙糸に目を付けました。

これまで紙糸で作られていたものというと、和紙など民芸品が中心で、用途が限られていました。そこで、日用品として使えるものを作れば、世界にも通用する、より多くの人の手に取ってもらえるものになるのではと考えたんです。また昨今では、アパレル業界が抱える環境負荷や人権問題などが取り上げられることも多くなりました。紙糸を使ったファッションの提案は、それらの観点からもアパレル業界の構造改革にもつながります。

もう少し詳しく話すと、アパレルは需要の予測が非常に難しいので、途上国の安価な労働力を使って大量生産を行い、売れ残ったものは廃棄する。この過程で出るCO2などの環境負荷や、途上国での厳しい労働条件など、人権にも関わる大きな課題を抱えています。そのためAIを活用した需要予測も取り入れていますが、今のところ完全な対策にはなっていません。

とはいえ、繊維工業は途上国において重要な役割として発展してきたのも事実です。もちろん人権への配慮は大前提ですが、たとえば、機械化やAI化がさらに進むことによって、仕事自体が減ってしまった場合、元々その仕事に従事していた人の生活を大きく変えてしまうことになります。

加えて、サステナブルな商品を追求した場合、その多くは価格が高く、消費者が手を出しづらくなるという側面もあると思います。

ー消費者により手が届きやすくなるためには、どんな仕組みや解決へのアプローチがあればいいのでしょうか?

米﨑さん:

一番簡単な解決策は、必要としてくださるお客様に必要な分だけ作るということですよね。これが一番難しいことなのですが。

加えて、長く着られるものを作り、長く着ていただくことも重要だと思います。若い世代を中心に巻き起こった古着ブームが象徴的ですね。

その意味でも、耐摩耗性や耐久性を活かした「WA.CLOTH®」の服作りは、一番のアプローチになります。物によってはシーズン問わず使えますし、特に靴下の場合はデザインや流行に左右されるものでもないので、破けることなく履き続けられることは大きなメリットの一つですね。

デジタルサンプルによる服作りを推進、認知と需要拡大を目指す

「WA.CLOTH®」

ーデジタル領域へは、どのような取り組みを展開されていらっしゃいますか?

米﨑さん:

5年ほど前からデジタル化によるサンプル作成とアーカイブ保存を進めています。新素材を開発すると、仕様や構成確認のためにサンプルを作るのですが、多いと年間3,000点にのぼるんです。

それがどんどんたまっていくと倉庫も圧迫し、何年かしたら廃棄せざるを得ません。でも廃棄した後にサンプルが必要になる場面も多くて。

その解決策として、デジタル化を進めています。実物保管ではなくなることで、倉庫の省スペース化はもちろん、同時に複数人にサンプル貸し出しや提供が可能ですし、膨大なサンプル量を半永久的にデータ蓄積することができます。製品製造する前段階で、仕様や構成ミスが分かるというのも大きいですね。

とはいえ実際はまだまだで、実物と画面上で色が違うなど、実用化には課題があります。とはいえ、アバターと言われるものにフィッティングさせることができますので、サイジングの改善もしやすいです。様々な体験を先にデジタル上で試すことで、生産現場にも大きな影響を与えるだろうと思います。

ー実用化されたときのインパクトに期待できますね。それらも踏まえて、今後のビジョンや展望を教えてください。

米﨑さん:

「WA.CLOTH®」最大の特徴は、やはりサステナブルと機能面を両立する素材の良さです。今後も研究開発は進めていきますし、この価値を適正に供給していくことが私たちの使命だと考えています。

インテグリティという面で、取引先と誠実な関係性を構築することに加え、一般消費者の方とのコミュニケーションを大切にしながらより多くの方にブランドを知っていただきたいですね。

そのためには、製品としての良さを体験してもらう機会をどんどん増やしていこうと思っています。市場での認知向上はもちろんですが、マーケット全体の需要を高めるような取り組みを意識しています。商品数をたくさん作ろうというわけではなく、素材の良さを体感してもらい、需要を喚起していきたいです。

「WA.CLOTH®」

その一環として、プレゼントキャンペーンを定期的に開催しています。2023年3月時点で、今年すでに2回実施しました。SNSを通じて募集をしているんですが、予想以上に応募をいただき、反響の大きさに驚いています。手に取ってくださる方の反応が楽しみです。商品紹介やプレゼントキャンペーンもSNSで積極的に発信しているので、ぜひチェックしてみてください。

ーお得な情報もゲットできるなんて気になりますね、早速フォローしてみます。本日はありがとうございました!

関連リンク

MNインターファッション株式会社:https://mn-interfashion.com/

「WA.CLOTH® ESSENTIAL」インスタグラム@wa.cloth_official