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モノカルチャーとは?歴史やメリット・デメリット、モノカルチャー経済との違いも

アフリカや東南アジアの植民地、大航海時代以後にヨーロッパ人が入植した南北アメリカ・オーストラリアでよく見られるモノカルチャー。

効率よく大量の農作物を生産できるため、まるで工業製品のように育て、出荷することが可能です。しかし、熱帯雨林を伐採して農園を作るため環境負荷が高い農業方法でもあります。さらには、モノカルチャーはごく一部の人だけに富が集中する貧富の差の拡大にもつながっています。

今回はモノカルチャーの歴史やメリット・デメリットを中心にまとめます。

モノカルチャーとは

モノカルチャーを英語で書くと「monoculture」となります。これを分解すると、「mono(単一の)」と「culture(作物)」となり、日本語では単一栽培、または単作と訳されます。つまりモノカルチャーとは、一つの作物のみを集中的に育てる農業を意味しています。

モノカルチャー経済とは

モノカルチャーと関連して、モノカルチャー経済という言葉がよく使われます。

モノカルチャー経済とは、国の経済が特定の一次産品の生産や輸出に依存する経済体制のことです。

一次産品とは

自然に直接働きかけて獲得する資源で、ほとんど加工が加えられていない商品のこと。小麦や牛肉のような農畜産物や木材などの林産物、魚や貝などの水産物、鉄や銅といった鉱産資源はすべて1次産品。*1)

モノカルチャー経済は開発途上国で多く見られる経済の仕組みで、スリランカの茶やキューバの砂糖、サウジアラビアの原油などが代表例です。

ヨーロッパ諸国による植民地支配で開始され、18〜19世紀に東南アジア中南米アフリカなどの地域で定着しました。ヨーロッパ諸国は本国で必要な品物を植民地に作らせ、原料供給地として利用しました。*2)

代表的な作物

モノカルチャーでは、以下のような換金性が高い農作物が大量に栽培されています。

  • さとうきび
  • コーヒー豆
  • カカオ豆
  • 天然ゴム
  • バナナ
  • 綿花
  • トウモロコシ
  • 小麦
  • ジャガイモ

これらの作物は、商品として市場に出荷される商品作物です。出荷された農作物は世界市場で取引され、各地に輸出されています。

モノカルチャーの歴史

モノカルチャーの歴史は、ヨーロッパ諸国による植民地支配と切っても切り離せない関係にあります。植民地支配の中で成立した大農園(プランテーション)は、ヨーロッパ本国の需要を満たすため同じ作物を大量に栽培するモノカルチャーを実施します。プランテーションとモノカルチャーの歴史を見てみましょう。

16世紀:プランテーションでモノカルチャーがはじまる

モノカルチャーの歴史は大航海時代にさかのぼります。15世紀から16世紀にかけて、イベリア半島の西にあったポルトガルは、積極的に海外に乗り出していました。1500年、ポルトガル人のカブラルが、現在のブラジル北東部に到着。このことをきっかけに、ブラジルの植民地化が始まります。

1530年代、ポルトガル植民地のブラジルで、サトウキビ栽培のプランテーションが始まりました。

プランテーション

植民地や半植民地で広がった大農園のこと。欧米の企業が、現地の労働力を使って商品となる作物を生産していたが、独立後も国の主要産業として存続するケースが多数存在している。*3)

ブラジルのプランテーションの場合、ポルトガル資本が現地に住んでいたインディオを安価に使用してサトウキビのモノカルチャーを行い、砂糖を生産します。1570年代にはアフリカの黒人奴隷も労働力として使役されるようになりました。低コストで生産された砂糖はポルトガルに莫大な富をもたらします。*4)

出来上がった砂糖はヨーロッパに運ばれます。そして、ヨーロッパの商人はアフリカの部族長らに武器を売り、奴隷を買い付け、ブラジルやカリブ海に送り込みました。こうして、サトウキビのモノカルチャーは当時の世界貿易に組み込まれました。

19世紀後半:欧米資本が近代的プランテーションをはじめる

19世紀に入ると、富を蓄えたヨーロッパ諸国は世界各地に進出し、武力を使ってアジアやアフリカを自国の植民地にしました。これを帝国主義※といいます。

帝国主義

国と大資本(大企業)が結びつき、世界各地を武力で支配しようとする動きのこと。欧米諸国は大企業の「原料を安く調達したい」「生産した商品の販売先を確保したい」という要望にこたえるため、世界各地を武力で征服し植民地とした。*5)

欧米諸国の中で特に強い力を持った国は列強と呼ばれるようになりました。*6)世界史上で列強に数えられるのは以下の国々です。

  • イギリス
  • フランス
  • ドイツ
  • オーストリア・ハンガリー
  • ロシア
  • アメリカ

欧米列強は、アフリカの内陸部やインド・スリランカなどの南アジア、そして東南アジア諸国を次々に武力で支配し植民地とします。植民地に乗り込んだ欧米企業は、広大な土地を確保して大農園を建設。現地労働力を低賃金で酷使して、商品作物を生産するモノカルチャーを展開しました。

中でも、オランダがインドネシアで実施した強制栽培制度※は現地の人々に大きな犠牲を強いました。

強制栽培制度

1830年~1860年代にジャワ島で実施された制度。米作地の5分の1で指定した作物(コーヒー・サトウキビなど)のモノカルチャーを行わせ、安価で買い上げる仕組み。オランダ本国に莫大な富をもたらしたが、米不足による飢饉を誘発したため、1870年に廃止された。*7)

第二次世界大戦後:プランテーションの国有化

第二次世界大戦後、アジアやアフリカの国々は欧米諸国から独立を勝ち取りました。これにより、欧米資本が所有していたプランテーションの多くが国有化されたり、活動が制限されたりしました。

しかし、プランテーションが完全に解体されたわけでも、モノカルチャーがなくなったわけでもありません。モノカルチャーで栽培された商品作物は独立後も国の経済を支え続けました。

タイ・インドネシア・マレーシアの天然ゴム、フィリピンのバナナ、コートジボワールのカカオ豆、ブラジルのサトウキビコーヒー豆は、いまでも重要な輸出品であり、それらの作物を栽培するモノカルチャーは健在です。*8)

企業的農業の発展

ヨーロッパ諸国が、アフリカやアジアで行ったプランテーション以外にもモノカルチャーが行われている地域があります。それが、南北アメリカやオーストラリアです。これらの地域では、大規模な農家が機械を使って小麦などを大量に生産する企業的農業がおこなわれています。

広大な農地で飛行機や大型機械を使用して行う農業で、高い生産力を誇っています。企業的農業を行う事業者は生産力を武器として、市場で有利な立場に立ち、高い収益率を維持しています。*9)

モノカルチャーのメリット

これまでは、プランテーションや企業的農業などモノカルチャーを行ってきた欧米などの農業の歴史について整理しました。ここからは、モノカルチャーのメリットを3点とりあげます。

効率よく生産できる

1つ目のメリットは効率よく生産できることです。1つの土地で複数の作物を育てると生育時期や収穫時期にバラつきが出るため、非効率になります。対してモノカルチャーは、栽培する作物が一つであり、同じ栽培技術で育てることが可能です。

また、栽培に必要な肥料などの物資の種類も少なくて済むので、コストを安く抑えられます。資金を投入して機械化を進めると、さらに生産効率をアップできます。

こうした仕組みが作られたのは、モノカルチャーが本国の要求によって作られたからです。本国が必要としていたのは安価な原料供給地であり、その要求を満たすためモノカルチャーを実施して効率よく大量生産できるようにしたといってもよいでしょう。

高収益を上げられる

2つ目のメリットは高収益を上げられることです。モノカルチャーで栽培されるのは商品価値の高い作物(商品作物)ばかりです。中でもコーヒーやカカオ豆は嗜好品として人気があり、高値で取引されます。タイミングよく売却できれば大きな利益を手にできます。

また、地政学的リスク※により価格が高騰した際も大きな利益を上げられます。2022年2月に始まったウクライナでの戦争は、小麦をはじめとする穀物価格の高騰をもたらしました。アメリカを始めとする小麦のモノカルチャー事業者は、より高く売却できるタイミングを探っています。

地政学的リスク

地理学と政治学を合成した学問を地政学という。地政学的リスクとは、地理的な位置関係や政治・軍事・社会的な緊張の高まりにより、地域や世界経済に悪影響を及ぼすこと。*10)

安定した買い手がいる

3つ目のメリットは、安定した買い手がいることです。小麦や大豆、トウモロコシは食料・飼料として引く手あまたです。

2000年以降、穀物需要は増大の一途をたどっています。2017年以降は生産量と消費量がほぼ同じで、需給がひっ迫していました。そして2022年には、消費量が生産量を上回る事態となっています。

このように安定した取引先があるため、モノカルチャーで作物を大量生産をしても利益が出る構造となっています。

モノカルチャーのデメリット・問題点

作物を安く効率的に生産するのがモノカルチャーのメリットでした。しかし、そのメリットと引き換えに無視できないデメリットや問題点が発生しています。ここからは、モノカルチャーが抱える3つの問題点を整理します。

販売価格が不安定である

「高収益を上げられる」「安定した買い手がいる」といったメリットがある反面、販売価格が不安定で収入も安定しないデメリットがあります。

出典:国際緑化推進センター「3.4 カカオ豆(フィリピン) – 77 –」*12

カカオ豆の価格を例として取り上げると、1960年代は1キログラム当たり0.5ドル前後で推移していたものが、1970年代後半に3.5ドルまで上昇します。その後、価格は1ドルから3ドルの間を変動し、なかなか安定しません。

東南アジアやアフリカのプランテーションで栽培されるモノカルチャー作物は嗜好品が多く、価格が安定しません。そのため、栽培している農家の収入が不安定になります。

企業的農業で栽培される小麦やトウモロコシも天候による収穫量の増減や、地政学的リスクによる価格高騰などがあり、価格が不安定です。

環境破壊の原因となる

2つ目のデメリットは環境破壊の原因となることです。モノカルチャーでは単一作物を効率よく栽培するため、森林を破壊したり、水資源を枯渇させたりするなど環境破壊が発生しやすいのです。

インドネシアやマレーシアなど東南アジア諸国のプランテーションを例に見ていきましょう。この地域では、アブラヤシのモノカルチャーが行われています。アブラヤシを栽培する目的は、ヤシの実からパーム油をとるためで、農園の拡大が進められてきました。これにより、以下のような問題点をもたらしました。

  • 熱帯雨林の伐採
  • 煙害
  • 生態系の破壊
  • 先住民とのトラブル

アブラヤシのプランテーションを作るには、もともと存在していた熱帯雨林を全て伐採しなければなりません。それによって、熱帯雨林が減少します。煙害は森林火災や泥炭地※での火災によって発生します。プランテーション開発時に行う野焼きも煙害の原因の一つと考えられます。

泥炭

植物の遺骸がある程度炭化したもの。褐色で大量の水分を含む土で、空気に触れると泥炭の分解が進み、二酸化炭素など温室効果ガスを排出する。*14)

熱帯雨林の伐採や火災により、数々の野生動物が住み家を追われ生態系が破壊されてしまいます。そして、土地の所有権などをめぐって開発業者と先住民の対立が深まったり、先住民の文化が破壊されたりします。*15)

先進国に有利な価格になりがち

3つ目のデメリットは先進国の有利な価格になりがちなことです。たとえば、先進国の企業は開発途上国に対し技術や資金を提供する代わりに、その地でモノカルチャー栽培によって生産される農作物をすべて買い取るといった進出方法があります。

そうなると、農作物の価格は先進国企業によって決められるため、先進国に有利な価格に決められてしまい、開発途上国はいつまでたっても豊かになれません。近年では、先進国と発展途上国の貿易を公平に行うべきだとするフェアトレードが行われるようになりましたが、先進国有利な状況に変化がありません。*16)

まとめ

今回はモノカルチャーやモノカルチャーに縁の深いプランテーション、企業型農業についてまとめました。一つの作物を大量に栽培するモノカルチャーは経済的な効率を優先した仕組みで、植民地を支配してきた欧米の企業や現在の農園所有者に大きな富をもたらしてきました。

その一方、農家や労働者の収入が不安定になることや環境破壊の原因になること、先進国に有利な価格設定となり貧富の差の拡大要因になるなど無視できないデメリットを有しています。

今後はフェアトレードなどの取り組みを通じて貧富の差の拡大を抑えるとともに、環境負荷の高いモノカルチャー以外の農業を追求する必要があるのではないでしょうか。

〈参考・引用文献〉
*1)山川出版社『地理B用語集』一次産品
*2)環境用語集「モノカルチャー」2015年1月23日
*3)帝国書院『新詳資料 地理の研究』プランテーション農業
*4)世界史の窓「砂糖プランテーション
*5)山川出版社『世界史B用語集』帝国主義
*6)浜島書店「アカデミア世界史」
*7)山川出版社『世界史B用語集』強制栽培制度
*8)帝国書院『新詳資料 地理の研究』プランテーション農業
*9)帝国書院『新詳資料 地理の研究』企業的農業
*10)三井住友DSアセットマネジメント「わかりやすい用語集
*11)農林水産省「穀物の生産量、消費量、期末在庫率の推移
*12)国際緑化推進センター「3.4 カカオ豆(フィリピン) – 77 –
*13)共同通信アグリラボ「できるか需要拡大 国産小麦に期待 前田佳栄 日本総合研究所創発戦略センターコンサルタント
*14)WWFジャパン「インドネシアの煙害(ヘイズ)問題、乾季に多発する泥炭火災について
*15)ボルネオ保全トラスト・ジャパン「パーム油白書
*16)千葉商科大学「【こどもにもわかりやすく】フェアトレードとは? 定義やしくみ、関連用語まとめ付き