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PJP Eye株式会社|サステナビリティを追求した植物カーボンバッテリーで世界を変える!

PJP Eye株式会社 翁さんインタビュー

翁 詠傑
取締役・C. インテリジェンス・オフィサー
世界をより良くする事に貢献できる人間になるために米国に留学。南カリフォルニア大学のマーシャル・ビジネススクールを卒業。​バッテリーの先端技術を活用し、世界中の人々に電気を届けて、持続可能な世界を作るビジョンに共感。​Laboratory 6のChief Intelligence Officer として、取締役に就任 

introduction

PJP Eye株式会社は材料や製造工程の全てにおいて、サステナビリティを追求した植物由来のカーボンバッテリーを製造しています。世界のさまざまな環境エネルギー問題や児童労働などの社会問題に対して最適なソリューションとともに商品を提供し、より良い未来づくりを目指すサステナブルエネルギー会社です。

今回はPJP Eyeの取締役兼チーフインテリジェンスオフィサーを務める翁 詠傑(おきな いんけつ)さんにお話を伺いました。

この地球(惑星)に住むすべての人々に電気を!

–まず始めに企業の紹介をお願いします。

翁さん:PJP Eyeは世界中に持続可能なエネルギーソリューションを届ける会社で、主にバッテリーを作っています。ただ、あくまでバッテリーはツールであって、目的ではないため、企業ミッションの中に「バッテリー」という言葉は入れておりません。

とはいえ現在の目玉商品はバッテリーですので、そちらの話をさせていただこうと思います。(実物提示)

【植物由来のカーボンを使用したカンブリアンバッテリー】

翁さん:このバッテリーには、

  1. 植物からカーボンを作る
  2. このカーボンをバッテリーにする
  3. バッテリーの革新的なソリューションの提供

といったポイントがあります。

植物からカーボンを作る

翁さん:植物からカーボンを作るというところですと、買収先の企業も含め弊社は「どんな植物をもカーボンに変える」ことを実現するため、九州大学と共に10年以上にわたり共同研究を行っております。

我々は現在コットンを使用していますが、サトウキビの搾りかす・オリーブの搾りかす・農業廃棄物などもカーボンに変えられるんです。

【植物由来の原材料でバッテリーのカーボンを作る】

翁さん:そしてこのカーボンをバッテリーに使います。

通常のバッテリーとの違いが伝わるよう、一般的に使われているリチウムイオンバッテリーについて簡単に説明します。

リチウムイオンバッテリーは、電池の正極と負極(プラスとマイナス)に使用する物質によって、性能が大きく変わります。

現在のマーケットシェアの70%から80%のリチウムイオンバッテリーはニッケル・コバルト・マンガンなどのレアメタルが正極側に使われているバッテリーです。一方、負極側に使われているのがグラファイトと呼ばれるカーボンで、要は鉛筆の芯(黒鉛)ですね。

このリチウムバッテリーは、

  • 爆発の危険がある(高温になりやすく、※熱暴走の危険のある物質も使用されている)
  • 充電速度が遅い(高温を避けるため高い電流を流せない)
  • 2~3年に1度廃棄し、再生産しないといけない
  • コストが見合わずリサイクルが進んでいない
  • 資源調達時の環境問題と人権問題

といった課題を抱えています。

※熱暴走…(ここではグラファイトの)結晶が脆い部分から酸素が漏れ、そこから内部の温度が連鎖的に500℃以上に達してしまい、爆発する現象。

1〜4はイメージしやすいと思うので、5の人権問題についてお話しします。

ニッケルやコバルトなどは、それぞれロシア(ニッケル)、中国(コバルト)がほぼ独占状態にあります。ロシアはニッケルの市場シェア1位ですが、アメリカ・イギリス・カナダなどから大株主が制裁対象になっており、今後の流通への影響が懸念されています。

中国もコンゴ民主共和国のコバルト鉱山の経営権をほぼ占有しており、コバルト生産をめぐる現地労働者の低賃金や児童労働などの深刻な問題があります。そのためニッケルとコバルトのサプライチェーンは、それらの国に属さないといけないメーカーにとって崩壊状態にあると言えます。

【一般的なリチウムイオンバッテリーの問題点】

翁さん:対して、弊社のバッテリーは、ニッケル・コバルトなどのレアメタルの代わりにアルミニウムや鉄といったコモンメタルを、グラファイトの代わりに植物カーボンを使用しています。

そのため、

  • レアメタル調達時の環境問題や人権問題が発生しない
  • 爆発しない(植物カーボンの原子構造がグラファイトより安定しているため)
  • 10倍速で急速充電が可能(爆発の危険がないので10倍の電流を流すことができる)
  • 寿命が5倍ほど長い(試験結果では15年から20年の使用が可能)
  • リサイクルがしやすい

といった特長があり、一般的なリチウムイオンバッテリーの問題を全て解決したバッテリーと言えます。

もう少し詳しくお話しますね。植物カーボンは表面積が広く、グラファイトに比べてより結晶構造の結び付きが強固で安定した原子構造です。そのため、電流をながしても熱暴走が起こりにくく、耐久性も高いのでグラファイトのような劣化によるショートが起きにくいのです。

弊社の植物カーボンを負極に使ったバッテリーは※高いサイクル性能を実現しており、レアメタルを使用せずバッテリーを作ることができます。そのうえ、100%リサイクルが可能なのです。

このバッテリーはすでに量産しており、※電動パーソナルモビリティや蓄電池として、すでに商品化しています。2025年からは電気自動車や※電気飛行機用に量産する予定です。

※サイクル性能…循環する性能のこと。この場合では、充電と放電を繰り返す性能。
※(電動)パーソナルモビリティ…1人乗りのコンパクトな移動支援機器。
※電気飛行機…動力に電動機を使用する航空機。有人・無人どちらも制作されており、次世代の交通手段として注目されている。

PJP Eyeの目指すものとは

翁さん:先ほどのバッテリーに加えて、弊社には2つ目のデュアルカーボンバッテリーというバッテリーがあります。これが量産できたらノーベル化学賞を取れる程の技術です。デュアルカーボンバッテリーには正極と負極どちらにも植物カーボンが利用されるのですが、リチウムイオンバッテリーなどのシングルカーボン(一定の方向にしか電流が流れない)と比べ、

  • 両極に植物カーボンを使っているという独自性
  • ハイボルテージ(電圧:5.2V)
  • 化学反応の違い(※デュアルイオン)

といった大きな違いがあります。

実はこのデュアルカーボンバッテリーはまだ世界で実用化した例はなく、弊社が一番商業化に近いところにいて、2025年に量産化できるように動いています。

この技術が実現すれば、様々な課題もクリアでき、社会に与えるインパクトも大きいと思います。例えばEV車であれば、最も大きな問題は資源です。デュアルカーボンバッテリーは、資源の問題と全く関係なく生産できるので、世界を変える、と。テスラ以上になりますね!

デュアルイオン

正極と負極それぞれに合わせた2種類のイオンが移動する電流の仕組み。この方法を採用したバッテリーでは、様々な材料が利用可能で、従来のリチウムイオンバッテリーのように負極に適した正極の材料などは必要なく、レアメタルを含まない化合物が利用可能で、正極の材料として毒性の高く高価なコバルトを使用せずに製作できる。

出典:東京大学『新方式二次電池「デュアルイオン電池」の開発 安価な電池の開発に向けて』(2014年3月7日)

【シングルカーボンバッテリーとデュアルカーボンバッテリーの比較】

–夢のある話ですね!気になるのが植物に目をつけた理由です。

翁さん:まあ、たまたまです(笑)。コットンにしたのは偶然の出会いからで、初めはカーボンデトックスというサプリメントからはじまりました。その過程でたまたまバッテリーに出会って。

我々のバッテリーが爆発しないとか、リサイクルしやすいとか、これら全てを弊社の代表が全部計算してやっているわけではなくて、偶然が積み重なって今があります。

–話は変わりますが、代表の仁科さんは格差格差や貧困をなくすことについての想いを強く語られていますよね。

翁さん:約8年前、元々IT起業家だった仁科は、イラクの難民キャンプで支援活動をしていました。

電気もない、十分な医療もない、極限の状態で子供たちは絶望の中で生きている。この現状を肌で感じて、難民キャンプに電気を届けたいと、ポケットマネーでバッテリー会社の技術を買ってPJP Eyeができた、という経緯です。

ですから、弊社にとってバッテリーは重要ですが、弊社の根本的な目的としては、これを用いてどう、世界的・社会的課題を解決するかということです。

冒頭でも触れましたが、弊社はサステナブルエネルギーソリューション会社であって、バッテリー会社ではありません。このサステナブルな技術は海外では高く評価されていて、主にイギリスが中心ですが、たくさんの賞を受賞しています。

【サステナブルなテクノロジーにおいて数々の国際的な賞を受賞している】

COP…締約国会議(Conference of the Parties)の略。気候変動枠組条約に加盟している国が、地球温暖化対策を具体的に話し合う定期的な会議。PJP Eyeはここでも受賞している。

将来の展望

–将来実現したいことを教えてください。

翁さん:デュアルカーボンバッテリーの開発が成功した暁には、現在主力のシングルカーボンバッテリーの作り方を、世界中に公開しようと思っています。現在のリチウムイオンバッテリー生産のサプライチェーンは中国とロシアが中心です。でも、我々のこの技術なら、そこに頼らずにバッテリーの生産ができるので、世界中で使ってもらうことができます。

ただ、カーボンの作り方は公開しないため、それを購入していただくという計画です。そこからエネルギーのデータを取得し、※カーボンクレジット化につなげます。

そして、このカーボンクレジットをキャッシュ化して、それを元手に銀行業をやる、というのが今の構想ですね。

カーボンクレジット…森林の適切な経営や省エネ機器の導入などにより実現したCO2をはじめとする温室効果ガス削減量を、クレジットとして発行し、クレジット購入者は努力しても削減が難しい温室効果ガスの排出量を埋め合わせることができる(=カーボンオフセット)。

【PJP Eyeの成長戦略】

–この取り組みにより途上国で仕事が生まれたり、鉱物紛争・児童労働の解決にもつながったりしそうですね。

翁さん:そうなんです。例えば今、フィリピンとかタイから工場を作りたいという話があります。一般的な会社ですと、技術的な観点や、レアメタルの調達に伴う中国依存により難しいと思います。しかし我々は、それができるポジションにいます。

先ほどの弊社代表の難民キャンプでの話に戻りますが、代表は元々、電気が不足している難民キャンプにキヨスクのようなものを作り、ソーラーパネルと※パワーバンクを置いて電気を賄うことがしたいと考えていました。

途上国では電気の売り買いがあって、例えば1チャージ10円、という感じで売られているんです。

コンゴ西共和国でマイニング(採掘)して働いている現地の人たちの時給は1時間10円くらいです。それよりも電気を売って、電気を使ったほうがいいじゃないか、という考えです。

それを※マイクロパワーグリットで統合する、というのが弊社の代表の元々やりたかったことなのです。

パワーバンク…一般的にはモバイルバッテリーのこと。蓄電池など電気エネルギーを貯めておく設備。
マイクロパワーグリッド…大規模発電所に頼らず、コミュニティ単位でエネルギー供給設備を持つ小規模・分散型のエネルギーネットワーク。災害時の停電被害も軽減でき、それぞれの地域に適した再生可能エネルギーの導入や循環型の経済システムの構築につながる。

–国内での取り組み事例はいかがですか?

翁さん:色々やっています。例えば丸石サイクルという自転車屋さんと共同で電動自転車を作ったり、某上場企業と提携してモーターサイクル・電動スクーター・電動三輪車・電動自転車などを作ったりしています。

次世代型モビリティというところでは、車の運転ができなくなったお年寄りの移動手段提供のために、北九州で11月にモビルティの展示・体験会を予定しています。災害というところでは、災害時にそれらの電動モーターサイクルからバッテリーを取り出して充電するというような、移動型電源としての活躍が期待できます。

–先ほど銀行業、と言うお話がありましたが、今後の展望をお聞かせください。

翁さん:ここ1、2年は研究開発や製造業を頑張っていきます。ものづくりが一番大切で、しっかりと商品をお届けするという意味でも、売上見込みを達成していくということですね。

ものづくりを頑張って、それが成功すれば、いろいろなところから引き合いが来ると思います。そうしたら、来年ぐらいはものすごく忙しくなるんじゃないかなと。

クリエイティブでサスティナブルなソリューションを入れたり、日本だけじゃなく世界も見たりして、様々な製品にどんどん弊社の商品を組み込んでいきたいですね。その結果、テスラ以上の時価相額になると思います。

–本日は貴重なお話ありがとうございました!

取材:大越
執筆:松本

関連リンク

PJP Eye株式会社 : https://pjpeye.tokyo/