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株式会社山翠舎(さんすいしゃ)|お客様とのパートナーシップを大切に、古木・古民家に新たな息を吹き込む

山翠舎

株式会社山翠舎 代表取締役社長 山上さん インタビュー

株式会社山翠舎 代表取締役社長 山上さん 

山上 浩明

大学卒業後、2000年にソフトバンクに営業として入社。社長賞を受賞するなどの結果を残した。2012年に(株)山翠舎 代表取締役社長に就任、従来の「工務店」としての枠を飛び越え、空き家古民家の社会問題解消を目指し、「古木(こぼく)を活用した事業」に特化したビジネスモデルへシフト。2018年には世界的な起業家顕彰プログラムである「スタートアップアントレプレナー表彰プログラム”EOY JapanStartup Award 2018″(主催:EY Japan)」の甲信越代表に選出されている。さらに、2019年には世界的な森林認証制度である「FSC認証」において、古木で世界初の認証を取得。

2020年 には「古民家・古木サーキュラー・エコノミー」でグッドデザイン賞(審査委員 井上裕太氏の選んだ一品)・ウッドデザイン賞(奨励賞【審査委員長賞】)受賞

2021年  「古民家・古木サーキュラーエコノミーがつくりあげる「循環型社会」」 で 信州SDGsブランドアワード2021 受賞

2022年 小諸市サテライトオフィス事業の採択と長野市スマートシティプロジェクト 採択

introduction

「山翠舎」長野県長野市に本社を置く、古木建築・古民家買い取り・再生などを専門に行う建築会社です。設計・デザインから施工・流通まで全ての工程を一貫して行う、ワンストップ体制が特徴で、トータルコスト削減に向けた提案も行います。

今回は、山上浩明社長に、詳しい事業内容パートナーシップを大切にしたオリジナルのサービス今後の展望について伺いました。

「もったいない」の精神から古木・古民家専門の建築会社へ

株式会社山翠舎 
インタビュアー
インタビュアー

早速ですが、山翠舎(さんすいしゃ)について教えて下さい。

山上さん
山上さん

長野県長野市に本社を置く建築会社です。1930年の創業以来、様々な建築に携わってきましたが、常々、解体される古民家や廃棄される古木が非常にもったいないと感じていました。

そこで、2006年から古木の買取販売を始めました。

山上さん
山上さん

現在は、それらの古木を活用したり、古民家のリノベーションをするかたちで、店舗の設計施工をメインの業務に据えています。対象は、飲食店・物販店・オフィス・旅館など、多岐にわたります。

インタビュアー
インタビュアー

「もったいない」という精神が、現在の山翠舎を創ったのですね。

山上さん
山上さん

そうですね。私自身、幼いころから実家の木工所の廃材で遊び道具を作るなど、自然に親しんだ生活をしてきました。また、大学では環境問題について学び、森林破壊の現状についても知りました。こういった経験が「もったいない」という想いに繋がっています。

また、もったいないのは古民家や古木の「資源」だけではありません

インタビュアー
インタビュアー

というと?

山上さん
山上さん

古い建物歴史的な価値があり、人を惹きつける魅力もあります。

古民家の前で足を止めて眺め写真に収めている人を時に見かけます。そんな魅力がたくさんあるのにも関わらず、古民家が空き家として社会問題になっていたり、高いコストをかけて解体している現状にもったいなさを感じています。

山上さん
山上さん

そこで、さらに魅力的な建物に造り替え、新たな価値を提供したいと考え、古木専門の建築会社として事業を行っています。

インタビュアー
インタビュアー

リノベーションした古民家や古木の建物は、どのように活用されているのでしょうか。

山上さん
山上さん

カフェや居酒屋、レストラン、旅館などとして生まれ変わっています。さらに、古民家や蔵を移築することもあります。

例えば、2020年夏には、埼玉県川越市の築122年の蔵を、東京都日本橋へ移築しました。鉄骨の新築建築物の中で組み直した蔵が、ニューバランス社のコンセプトストア、T-HOUSE New Balanceとなったのです。

このように、これまで500件以上の商業施設を手がけてきました。

山上さん
山上さん

さらに、お店を持ちたい人古民家の紹介も始めています。それと同時に古木の仕入れ、建築やリノベーションの企画、設計、施工、流通などを自社一貫体制で整えています。

インタビュアー
インタビュアー

それはなぜでしょうか。

山上さん
山上さん

街中にはまだまだ空き家の古民家がたくさんありますが、使われていないケースが多い。これはもったいないと感じており、「お店として活用できないか?」という想いで古民家の物件を紹介しています。

山上さん
山上さん

とはいえ現状、「古民家の改修にいくらかかるか分からない」、「改修費が高くなりがちなので工事したくない」といった人が多い傾向にあります。そこで我々が状態の良い古民家を探し、インフラ面などの工事も行うことで、リスクなく出店できる環境を整えています。

お客様とのパートナーシップを大切にした「ワンストップ体制」

株式会社山翠舎 
インタビュアー
インタビュアー

設計・デザインから施工・流通まで全ての工程を一貫して行う、ワンストップ体制を整えたのには、どのような理由があるのでしょうか。

山上さん
山上さん

お客様にとって何が一番ベストなのかを考えた結果です。すべてを一社に託すことで、時間やエネルギーも節約できますし、初期費用が重なる無駄も省けますよね。

山上さん
山上さん

さらに、近年では事業計画の提案資金調達開業後の運営までサポート体制を完備しました。お客様の事業がスムーズに進むよう、トータルコスト削減なども日々考え、提案しています。

料理人からの支持NO.1のサービスも展開 良いモノは、良い人間関係の中で生まれる

インタビュアー
インタビュアー

お客様に寄り添い、パートナーシップを大切にしていることが伺えます。

さらに、2021年度から新たなサービスを展開しているんですよね。

山上さん
山上さん

そうですね。飲食業界が混迷するコロナ禍で、新たな出店をサポートする「OASIS(オアシス)」という出店エージェントサービスを開始しました。

インタビュアー
インタビュアー

詳しく教えてください。

山上さん
山上さん

オアシスは、飲食店出店までをトータルでサポートするサービスです。物件が借りられない、初期費用が高い、融資を受けるのが難しいといった出店時の問題点を解決することができます。例えば初期費用が大幅にかかる、物件探し・契約山翠舎が行うことで、保証金を最大でゼロ円にするケースもあります。

山上さん
山上さん

また、時間や労力がかかる事業計画書の作成のサポートもしますし、開業後のフォローアップも行います。山翠舎が手がけたお店は、普通の設計施工でも継続率は83.7%と嬉しい結果が出ているのですが、オアシスでは100%を目指しています。

インタビュアー
インタビュアー

お客様にとって非常に心強い存在ですね。また、徹底してお客様へ向き合う姿勢が伺えます。

株式会社山翠舎 
山上さん
山上さん

古木・古民家で飲食店を構えようとすると、一般的な飲食店建設資金よりも高めになります。これから商売を始めようとするお客様の目線になれば大きな不安を抱えて当然です。その不安に寄り添い、解消していくことが一番の肝だと考えています。

インタビュアー
インタビュアー

「OASIS」の反響はいかがですか。

山上さん
山上さん

大きな手応えを掴んでいます。実績を積み重ねていった結果、2022年4月「料理人が選ぶ、こだわったデザインのお店が実現すると思う 開業・移転サービス 部門」NO.1を獲得しました。

インタビュアー
インタビュアー

お客様の意見でNo. 1に選ばれたのは嬉しいですね。

山上さん
山上さん

私たちには、良いモノは良い人間関係の中で生まれるという信念があり、繁盛店を作っています。共通しているのは、打ち合わせがエキサイティングしていることです。

ジャズでは、ジャズ特有のリズムの「躍動感」や「ノリ」のことを表す言葉として、「スウィングする」とか「スウィングしている」というように使われますが、この打ち合わせがまさにそれなのです。

そこから、FAET.(フィーチャリング/共演)という、ユーザーと共に新たな価値を創っていく構想が生まれました。お好きな音楽を検索すると、有名なアーティストが「◯◯ feat. △△」といった形を目にすると思います。音楽ではfeat.がよく使われて、タッグを組んでこれまでと異なる魅力を引き出すといった意味合いで使われています。

だからこそ、パートナーシップ非常に大切にしているのです。お客様が単なる消費者ではなく、古民家や古木のファンになって頂ければ嬉しいですね。

株式会社山翠舎 

※国内最大規模の調査会社、日本コンシューマーサービスが料理人にアンケート実施した結果より。

長野県内の古民家を活用したシェアオフィスも展開

株式会社山翠舎 合間
合間(aima)
インタビュアー
インタビュアー

2022年度からシェアオフィス・コワーキング施設の展開にも挑戦されていると伺いました。

山上さん
山上さん

長野県内の古民家を活用したシェアオフィス「FEAT.space(フィート・スペース)」を長野市に2拠点オープンさせます。すでに小諸市では、コーポラティブオフィス「合間(aima)」を1拠点オープンさせています。

長野市の「FEAT.space(フィート・スペース)」は、新しいビジネスを成功させてゆくためのコーワキングスペースを兼ね備えたシェアオフィスです。小諸市には「合間(aima)」は、人と暮らしをつないでゆくためのシェアオフィス・コワーキング施設になります。

インタビュアー
インタビュアー

コワーキング施設でもあるということは、「共働」のためのオープンスペースも充実しているのですね。

山上さん
山上さん

はい。居間のようにくつろげる小上がりの畳談話スペースなども備えています。

イベントや会議、個人での仕事ができる個室もありますが、小諸の施設は、コーポラティブスペース、すなわちたまり場的な役割も担います。人と暮らしの間をつなぐ、という意味をこめて、名称を『合間』としました。

インタビュアー
インタビュアー

古民家を活用したシェアオフィス・コワーキング施設とは魅力的ですね!なぜ、このような事業を展開しようと思ったのでしょうか。

山上さん
山上さん

私は、昨年事業構想大学院を卒業しました。この大学院ではゼミがとても良かったんです。毎週発表してゼミ生と教授からフィードバックをもらうことを繰り返すことで、OASISの新規事業が生まれました。

その後、シェアオフィス・コワーキング施設によって人と人とのつながり、パートナーシップが生まれる場になればと考えました。何事も、一人で解決するよりは、シェアし協力しあうことで、いいものが生まれていくということを私自身も実感しています。

インタビュアー
インタビュアー

個別に場所を借りるだけではなく、多くの人が交流できるような場にするということですね。

山上さん
山上さん

そうですね。例えば、大学生と企業、異業種同士など、異なる所属の人同士が共演する場所となり、長野の活性化にもつなげていきたいと感じています。

単なるシェアオフィスではなく、コミュニケーション、情報交換が盛んに行われるコーポラティブオフィスとして多くの方に使用して頂ければと思います。

古民家・古木で循環型社会をつくる

株式会社山翠舎 合間
インタビュアー
インタビュアー

2030年創業百周年を迎えられるということですが、まさにSDGsのゴールの年と重なります。将来の展望について教えてください。

山上さん
山上さん

2030年までに、古民家・古木で循環型社会をつくっていきたいですね。古民家や古木、職人の技、手仕事の素晴らしさを伝え、見直されるようにしたいです。

山上さん
山上さん

いい材料木材の加工は、機械では全部できません弊社の使命は、温古創新。歴史・伝統を温(たず)ね、新たな価値を創ることです。

インタビュアー
インタビュアー

古いものの中に、新しい価値を見出すということですね。

山上さん
山上さん

はい。また、もう一つの展望は、単なる建築会社ではなく、建築「サービス」会社になる、ということです。

注文にただ応えるだけではなく、一歩先を見据えてお客様に寄り添うことをしていきたいと考えています。住宅であればお客様の家族構成を聞き、将来は貸せるかたちで造ったらどうですか、と提案したり、建築以外の部分でも徹底してサポートしたり等を積極的に行っていきます。

山上さん
山上さん

商業施設であれば、補助金を含めた資金調達や、開店後の集客まで考えたお店づくりをしていきたいですね。格好良いものを高くつくるのではなく、売上・収益が生み出せる空間をお客様と一緒につくっていく会社になりたいと考えています。

山上さん
山上さん

2030年に向けて、古民家・古木で循環型社会を実現できる、建築「サービス」会社へとさらに発展していきたいですね。

インタビュアー
インタビュアー

本日は貴重なお話をありがとうございました。

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