非営利型一般社団法人Silva|人類を救うために土地本来の森を再生する〜Silvaの挑戦〜

非営利型一般社団法人Silva 川下さんインタビュー

川下 都志子
1969年4月新潟県新潟市生まれ、2007年に横浜国立大学名誉教授・宮脇昭先生と出会い植生復元の実践を積み重ねる。2011年3月 社会福祉法人進和学園の営業窓口へ入社、『いのちの森づくりプロジェクト』リーダーへ就任。2015年独立し、(社)Silvaの前身である任意団体「みんなの森づくり総研」を設立。同年に神奈川県有地 湘南国際村めぐりの森 混植・密植方式植樹推進グループ 実行委員長に就任し、植物生態学に基づく既存の緑化方法へ土壌動物学・自然地理学を取り入れ実験開始。土壌動物相を用いた土壌環境の健全性指標を取り入れて、現在のSilva独自の「生態系機能回復式 植生復元」の素地を確立した。2016年10月、㈱家具の大正堂「る~たん♪の森」森林再生事業(弊社クライアント) 環境大臣賞受賞。2017年3月、法人格を取得し、非営利型一般社団法人Silva(シルワ)を設立し代表理事に就任。同年10月、神奈川県有地 湘南国際村めぐりの森 混植・密植方式植樹推進グループ グループ長就任。2019年4月、かながわSDGsパートナー登録。2020年2月、内閣府推進「地方創生プラットフォーム」参画。2021年3月、環境省より「生態系機能回復式 植生復元」の実績により、第3回環境カウンセラー環境保全活動表彰【低炭素社会貢献賞】受賞。2022年1月、環境省「森里川海」及び「30by30」へ参画し、法人の全事業を連動宣言し、承認を得る。

introduction

「地球が危ない。もう後がない。」

危機感を露わにするのは非営利型一般社団法人Silva代表理事の川下都志子さん。幼少期の原体験から都会での生活、そして闘病を経てたどり着いたのは、持続可能な森の開発を進めることでした。「次の世代に続く持続可能な緑の復元」という理念のもと、土地本来の植物による森づくりや緑化活動を行うSilvaの取り組みに迫りました。

気候変動を緩和するには森の復活しかない。

–まずは事業内容についてお聞かせください。

川下さん:

私たちは、植物たちの本当の力や地球上に誕生した役割を知ってもらうために、植樹活動などの森づくりや、関係者へのスキル体験型の教育に取り組んでいます。小学生から大学生くらいまでの若い世代にも、経験と座学の両輪を伴った学びを提供しています。

現在、気候変動の問題が取り沙汰されています。この問題には、人類も含めた生物共同体の生き残りをかけて取り組まなければなりません。

人類は、地球上の消費者と言われていて、地球上のエネルギーを使うことでしか生き延びることができません。寄生者とも言われます。

それに対して、たくさんの生物を生き永らえさせてくれる森は生産者とも言われます。寄生者を含めた生命共同体が生き残るためには、この生産者と言われる森を復活させることしか解決の手立てはありません。

具体的には、気候変動を緩和してくれる原生林に近い森を再生していくことが必要です。ホームページ上でも謳っているのですが、Silvaの最終目標は、「照葉樹林文化の復活」です。

照葉樹林というのは、幅が広く日光を照り返すような葉も持った木々のことです。それに対して、松や杉、檜みたいに葉が針のようにツンツンしている木々を針葉樹林と言います。かつて日本の山岳地帯は、照り葉の照葉樹の木々で覆われていたはずなのです。

古来、日本人は森の民で、水と親しんで暮らしていくことによって数多の生物の神が宿るという考え方を持っていました。本来は、自然と共生して生きていくスキルを身につけていた土着の農耕民族だったのです。

しかし、戦後の高度経済成長期の中で資本主義の波に飲み込まれることによって、すっかりその価値観をなくしてしまったようです。

私たちは森づくりを通して、その価値観を変換していきたいと思っています。そして、それが個々の生活スタイルに浸透して、行動が変わっていくようなきっかけづくりとして、森の再生に注力しています。

あと5年しかないのなら、オリジナルの森づくりをしたい

–どのようなきっかけで事業を始めたのでしょうか?

川下さん:

私は元々四国の愛媛に住んでいました。お遍路参りをご存じの方も多いと思いますが、四国には88ヶ所の寺社があります。

私の実家の周りにも、そのような社寺がトライアングルのように3ヶ所ありました。日本古来の社寺林のことを「鎮守の森」と言うのですが、そこが子どもの頃からの遊び場で、肝試しをしたり、鬼ごっこをしたりと本当に身近な存在でした。

そこにそびえ立つ土地本来の木々というのは、樹高が20〜30メートルくらいの高さになります。幼い子どもが見上げたら、知らず知らずのうちに畏怖の念を抱くほどの神々しさがありました。

転機は主人の転勤で横浜に引っ越したことです。あまりの開発ぶりに驚いてしまって。ちょうどその時に妊娠していたので、出産後に子どもが遊べるような、地元の社寺林のような場所を探したわけですね。

ところが、個人で探す範囲では、神奈川にはそのような場所がみつかりませんでした。その後は、関東圏まで広げて探したのですが、ほとんど人の手が入っていて、土地本来の樹木が失われていました。小川を見たら、アメリカザリガニがいて、メダカがいない。オタマジャクシもいない。一体どうなってしまったんだろうと恐ろしくなったのを覚えています。

そこで私は、きっとこれは日本だけのことではないだろうと思いました。同じように、世界中で経済活動が行われて自然が駆逐されていったはずなので、地球が今どうなっていて、これからどうすべきかということを知る必要があると気付き、地道に勉強し始めました。

具体的には、大学の教授に直接聞きに行ったり、公開されている博士のシンポジウムに参加したりして、当時発信されていた新しい情報を自分で掴みに行きました。

そこで気付いたのが、このままでは人類が危ない。人類どころか地球に存在している生物共同体の存続自体が危ういということを悟ったのです。

そこから手探りで十数年時間を要しましたが、たどり着いたのが「森の再生」でした。それからもう14年目になりますね。

–すごい行動力ですね。何がそこまで川下さんを駆り立てたのですか?

川下さん:

実はこの時、私は余命宣告されていました。癌が全身に転移していて、2019年までしか生きられないと診断されていたのです。2015年のことでしたので、あと5年しかないのであれば、やっぱりオリジナルの森づくりをやりたいと思いました。そこで立ち上げたのがSilvaの前身である任意団体「みんなの森づくり総研」です。

当時、私たちの森づくりは、土づくりから始めて、大型重機を使わず人の手だけで進める新しい手法だったのですが、残念なことに利権が絡んできて反感を買われることも多く、ある意味、四面楚歌状態でした。

その中でも、引き立ててくださる方や応援してくださる方もいらっしゃって、2017年に法人格を取得して本気でやっていこうと決意して今の団体があります。

ちなみに、奇跡が重なりまして、手術をせずに癌を根治することができ、現在もこうやって活動することができています。

広がり続ける「めぐりの森」と資源の再利用を徹底した「るーたんの森」

–主要事業である「湘南国際村めぐりの森」の植樹活動はどのような方々が参加されているのでしょうか。

川下さん:

めぐりの森で行っている植樹祭には、本当にいろんな方々が参加されています。会社員や学生の方、ご家族で参加される方もいます。また、知的障がいや自閉症などや高機能障がいのある方も参加されています。参加者は、そのような方々とは知らずに混ざり合って植樹を体験するんですよ。

例えば、健常者が福祉施設の方々のことを理解しようと思えば、見学を申し込んで実際に紹介者を介して施設を訪問して交流する。そういう決められた枠の中でしか交流できないのですけれども、森づくりのシーンでは、オリンピックや自然界に垣根がないように、老若男女・障がいの有無に関わらず皆さんが交流できるようになっています。

-参加者同士の交流もフラットなのですね。めぐりの森の植樹を続ける中で、森を取り巻く環境にはどのような変化がありましたか?

川下さん:

この辺りは三浦半島のちょうど真ん中にある山岳地帯で、その麓の地域の大事な水源林になっていました。ところが、25〜28年くらい前のバブル期に水源林を伐採して、めぐりの森を含めて330ヘクタールが一気に開発されてしまったのです。

すると源流の水だけでなく、支流に繋がっている前田川などの様々な川の水量が減り、水も濁ってきました。

14年前に植樹活動を始めて以降、7万本近く植樹ができて、約2ヘクタールほど緑化されておりますので、支流の水位も上がってきて川の水自体も綺麗になりました。

そういうところはやっぱり、地元に住んでいらっしゃる地域の方々が真っ先に気付いてくれます。感謝の声やボランティアへ参加したい方も増えており、応援者が少しずつ増えてきています。

植樹祭に参加するには、SilvaのHPから「Silvaボランティア隊」に申し込んでいただいた方に、メーリングリストで開催日程をご連絡させていただいています。ボランティア隊へのご参加や、「森林再生指導認定研修」を受講していただける方は随時募集しています。Silvaの公式Instagramからも応募できます。

インスタグラムより
https://www.instagram.com/p/ChYqnnEP7bJ/?utm_source=ig_web_copy_link

めぐりの森での植樹活動に参加されて、森の価値を知っていただいた方々が、この活動を竜巻の目にしてさらに一歩踏み出してほしいという思いがあります。

例えば、地域の防災林を作るとか、学校の森づくりをしたいとか、自分たちで植樹祭を開催することですね。

若い人たちがこの記事を読んでくださって、また輪が広がってくれることを切に願っています。

–「家具の大正堂」様と植樹された「るーたんの森」も代表的な事業かと思います。その時の様子をお聞かせいただけますか?

川下さん:

家具の大正堂さんとは、東日本大震災以降から防潮林構想で携わらせていただき、渋谷社長とのご縁があったのがきっかけです。

渋谷社長から、自社の空き地の裏の雑木林が薮化して蚊がはびこっているので、森にすることはできないかということで相談を受けました。

その森を拝見し、虫の息ではあったものの、土地本来のケヤキやシラカシがしっかり息づいていました。そこで森づくりに耐える素地はあると判断して森づくりを始めました。

ここでの森の再生方法は、「生態系機能回復式 植生復元」と言って、土の中の生物のポテンシャルを損なわずに、ボトムアップを兼ねた土づくりから始めます。そして、大型重機を使わず、社員や関係者の方々の手作業で進めました。

この時、山の斜面に棚田を形作るイメージで、土が動かないように手当てをしなければなりませんでした。その時に使った資材は全て、使用済みの家具の端材を再利用しています。例えば、こたつ板ですとかベッドの横板ですね。1つも新しい資材を購入せずに、再資源化を徹底した現場になっていまして、SDGsにつながる取り組みができたかなと思います。

その取り組みが自治体から評価されて、2016年の11月に「環境大臣賞」を頂くことにもなりました。

これからはとにかく次世代継承。私たちのスキルを伝えたい。

–今後の展望についてお伺いできればと思います。

川下さん:

この団体は、私が余命宣告をされている中で立ち上げたわけですから、若い人たちに自分のスキルやノウハウ、知識をとにかく継承して全うしなければならないと思っています。そのため、森林再生指導員研修は学生の受講料を無料にしています。

そこで実は、私たちが今一番難しいと感じていることは、若い人たちにSilvaの存在を知ってもらうことなのです。

コロナ禍が始まる前は学生の方が多かったのですが、リモート学習が始まってから学校へ行くことがなくなり、貼り紙をして呼びかけても案内を見てもらえなくなってしまったんですね。

どんなにいいことも続かなければ意味がありません。そのためには、腹の底から、その価値に気付いてくれる若い人たちを育てていかなければなりません。そうした理由から私は何よりも次世代継承が重大な課題であると思っています。

この記事を読んでいただいた皆様のご参加をお待ちしています。

インスタグラムより
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歴史的に見ると、コロナ禍のようなパンデミックも、人間が環境に過干渉してしまうと定期的に発生しているんですよね。約200年前から産業革命が始まって、スペイン風邪が流行りましたよね。どんどん環境が疲弊すればするほど、ウイルスがより強くなって人間を襲ってくるようになります。このコロナ禍は、環境問題にも直結しているということも知っていただきたいです。

植物たちというのは、太陽エネルギーを吸収して、二酸化炭素を吸収して酸素を供給して、それだけでなく大気や水を浄化して土を作るんですね。そのサービスを無料でやってくれるわけですよ。こんなありがたい機能はないじゃないですか。

それだけ機能を持っている植物を街づくりに使わない手はないと思うのです。

人間が本当に叡智を持っているのであれば、いい加減そろそろ人工物で塗り固めるのをやめて、大地が、川が、水が息の詰まるようなことを街づくりの中に取り込まないでいただきたい。全ての物質とエネルギーは循環していますので、その循環を止めないようにすることがわたしたち人間ができる最善の行動だと思います。土地本来の森の再生は、そうした生態系のエネルギー循環をスムーズにしてくれる最高の環境貢献活動なのです。

–最後に素敵な読者へのメッセージも、ありがとうございました!

関連リンク

非営利型一般社団法人Silva:https://www.silva.or.jp/

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