#インタビュー

株式会社RASHISA|虐待サバイバーの後遺症に配慮された社会を目指して展開する「被虐待者の雇用創出」と対・企業の「研修事業」

株式会社RASHISA

株式会社RASHISA 岡本翔さん インタビュー

岡本 翔

2017年1月23日に株式会社RASHISAを設立創業後2年半ほど新卒領域で事業を展開し、2019年4月にキャリアアドバイザードットコムをリリース。同年11月に事業売却後、事業をピボットし、虐待問題と向き合うことを決意。

introduction

「虐待が起きない社会の実現」にはまだ課題が山積みの世の中、まずは企業や社会の理解を深めようと新たな事業に取り組むRASHISA。様々なトライを繰り返すなかで、同社は経験と知見を積み重ねてきました。

今回は、創業者でもある岡本翔社長に、虐待サバイバーのみならず全ての「ステークホルダーの幸福度の最大化」を目指すRASHISAの過去と現在、展望などを伺いました。

虐待サバイバー(被虐待者)も「自分らしく」生きられる社会を目指す

-まずは「RASHISA」がどのような会社であるのか、その概略をご紹介ください。

岡本さん

私たちは、虐待の後遺症に配慮された社会を目指し、BPOサービス、営業支援などで被虐待者の雇用創出に取り組んでいる会社です。現在の具体的な営業支援事業は、幼少期に家庭環境でつらい思いをした方々を採用し、企業様から営業の仕事を受託して、その方々にリモートでお仕事をしていただくというものです。

この秋からは、これまでのノウハウを活かす二つの業務、すなわち「研修事業」・虐待関連とは異なる一般領域で企業様に「リモートで営業人材のリソースを提要する事業」がスタートします。

-創業のきっかけや背景、社名RASHISAの由来などをお聞かせください。

岡本さん

もともと起業に関心があり、2017年に会社を起こしたんですが、当時は学生さんの就活支援事業でした。楽しく、自分らしく生きられる人が増えたらいいな、という思いから社名をRASHISAとしました。

2019年秋から新しい領域で事業を立ち上げ、そこが虐待問題への取り組みのスタートになりました。その背景には、自分自身の幼少期の家庭環境が関係していて、虐待問題への課題意識はずっとあったんです。

前の事業で資金調達をする中で、ある投資家さんと面談を重ねている際、自分の家庭環境の体験などと合わせ、いつかは虐待問題に取り組みたいことをお話しました。意外なことに、投資家さんが「虐待問題に今から取り組みたいのなら、応援するよ」と言ってくださいました。ご本人が虐待問題に関心があったから、というのではなく、ずっと経営者向けのコンサルティングをなさっていた方なので、私の「経営者としての思い」をしっかりと汲み取ってくださった結果でした。

-現在のRASHISAが掲げられているビジョンやミッションはどのようなものですか?

岡本さん

弊社ではパーパス(目的)として「虐待が起きない社会の実現」を掲げていますが、これは実に難しい大きな課題ですし、現状としての取り組みはまだ何もできていないというところです。

私たちが達成すべきこととしてのミッションは「ステークホルダーの幸福度の最大化」です。会社経営を行う中では様々な関係者が存在します。人生の目的はそれぞれ異なりますし、みな尊いものだと考えます。その尊い目的がRASHISAと関わることによってより現実に近づくことを願いますし、そんな職場環境を目指しています。事業を作る者、すなわち経営側、従業員の人生がより明るくなれば、事業は自ずと成長し、お客様の未来ももっと明るくなります。結果的に虐待が起きない社会にも近づくでしょう。

私たちが目指す未来としてのビジョンは、「虐待サバイバーの方々が活躍できる社会を作り、日本の労働不足問題も解決する」というものです。

収益性を持ち、かつ働きづらさを抱える人に適する仕事は「テレアポ」「インサイドセールス」の営業代行

-虐待サバイバーの方々には、どのような後遺症で苦しむケースがあるのでしょうか?

岡本さん

弊社の従業員という範囲でお答えすれば、つい無理をしてしまう方、自分の限界を知らず期待されると頑張りすぎてしまう方、自分へのヘルプを出せない方が多いと感じます。また、変に勘ぐってしまう、言葉の裏を考えすぎるなど、ネガティブ思考に陥ってしまう方が多いというイメージです。

-事業の内容を具体的に教えてください。その業務において、虐待サバイバーの方々に適したものとしてどのような仕事を用意なさっているのでしょうか。

岡本さん

弊社は事業内容を何度か変更してきましたが、トライする中で様々な困難にぶつかりました。最初は、先ほど挙げたような特性を持たれる方々に適する仕事として、事務や簡易なデスクワークを受託した時期もありました。ところが、その業態ではなかなか利益がついてきませんでした。事業はサステナブルなものでなければならないと考慮した結果、収益性を持ち、かつ働きづらさを抱える方々に適していたのが、現在展開している営業支援です。具体的には、企業様から営業のテレアポとインサイドセールスを受託し、すべてフルリモートで代行するというものです。

幼少期に虐待を受けた方々は、繊細な心を持つ場合が多いんです。そのポジティブな面での特性として、例えば相手と対面したり、Zoomなどによる画面がなかったとしても、声を聞くだけで相手の感情を察することができたりします。そんな経緯で「電話による」インサイドセールス代行業務を開拓しました。

無作為の架電などというゴリゴリのテレアポ業務ではありません。お客様が保有しているハウスリスト(すでに関係性を有している人々や企業などのリスト)を対象として、代行でお電話をするプロジェクトです。ハウスリストという守られた環境であれば、電話でお客様と丁寧な関係性を構築することができる方々が多いんです。そのような特性が活かせ、かつ産業、職種として経済面でも伸びる可能性があることから、この形態に行きつきました。

蓄積してきたノウハウを基にした「研修事業」と「営業人材のリソース提供」

-この10月(2024年)からスタートするという事業についてご紹介ください。

岡本さん

新たに展開する二つの事業の基盤となるのが、弊社がこれまで蓄積してきた二種のノウハウです。一つ目は「被虐待者の方々の働きづらさやその対処への対策」という、虐待サバイバー領域のもの。このノウハウからは、被虐待者の方々の働きづらさを軸として、D&I領域で企業様を対象に研修事業を行っていきます。

これまでのノウハウを「合理的配慮ハンドブック」というかたちで自社でまとめています。それを基盤としながら、企業様の管理職、現場スタッフ、人事の方々などを対象とした研修を行います。ちなみに、このハンドブックはどなたでも無料でご利用いただけます。現在、90名ほどの方にダウンロードいただいていますが、ご関心ある方々の参考になれば幸いです。

虐待サバイバーが存在する会社を特定することは難しいのですが、どこにでもそのようなバックグラウンドを持つ方々がいる、ということを事業の前提としています。弊社の研修を導入することで、虐待サバイバーの後遺症を持つ方のみならず、様々な生きづらさを持つ人々への配慮がある社会の実現の一助となることを願っています。

研修を受けてくださったり、仕事を発注してくださったりした企業様のことを「アドボケイト(支持)カンパニー」と定義し、「虐待を受けた方が働きやすい会社」ですよ、ということを社会で証明していってもらうという流れです。

二つ目は、フルリモートで営業支援を行う中で培った「フルリモートにおいて営業の人材をマネジメントする」ノウハウです。このノウハウを基盤とし、企業様に対して「営業人材をリモートでアサインする」という事業を展開します。リモートで人材提供を行うだけではなく、リモートワークの営業組織をしっかりとマネジメントする弊社のノウハウも提供しつつ、企業様の伴走をするというサービスです。

営業人材のリソース提供を「誠実営業」というサービスで行い、日本一誠実で日本一愛される人材の提供を目指します。ここでの営業はプロ人材であり、虐待支援とは関係のない事業となります。

「虐待サバイバーが働きやすい会社」を増やす

-これまでのプロセスで、従業員の方々に変化は見られましたか?

岡本さん

私はそもそも、当事者が変わる必要はないと考えているんです。その方々が悪いわけではありませんから。後遺症を持つ方々を受け入れられるように、企業や環境の方が変わる必要があります。ただ、サバイバーを「優遇」してほしい、ということではありません。色メガネをつけて区別するのは逆に良くないと感じています。「優遇」ではなく「配慮」をしていくという意味ですが、そのような中で、弊社の従業員に限れば、やはり変化は見られました。自身の体調などをコントロールできるようになったり、少しずつ会社に対して意見を言ってくれるようになってきましたね。

-虐待がおこってしまう原因にはどのようなものがあるとお考えですか?また「虐待がおきない社会の実現」のために何ができるのでしょうか?

岡本さん

虐待に繋がる要因はそれぞれ異なるでしょうが、基本的には、貧困、親の孤立、望まない妊娠、パートナーシップの不仲などが挙げられると思います。虐待をめぐる課題は解決するにはあまりに大きすぎるものであり、取り組めば取り組むほどに、難しさを感じています。

先に挙げたような要因の一つ一つを、事業によってや法律を変えることで解決していく必要があると考えています。福祉の領域でもあるため、政治とは密接に関わっています。働きかけるべきはやはり国の法律だと考えていますので、来年くらいからは、政治家に対してのロビー活動などもやっていきたいですね。

-将来の展望をお聞かせください。

岡本さん

私自身は、個人として虐待の問題にずっと関わりたいと思っています。会社でいえば、この四年間、「被虐待者の雇用創出」で事業をやってきたので、これからは、このノウハウをもとに虐待サバイバーの方々が働きやすい社会のために二つのことをやろうとしています。一つは、「虐待サバイバーの方々が働きやすい会社」を増やすことです。それはすなわち、私たちの研修を導入した「アドボケイトカンパニー」を増やすことに繋がります。

もう一つが、「虐待を受けた人たちの後遺症に配慮した法律を作る」ということです。現在、障がい者の雇用というところでは、合理的配慮という考え方があります。それに近いかたちで、虐待を受けた人たちが働きやすい、配慮ある職場を持つ会社を作る法律ができるように働きかけていきたいです。

-本日は、貴重なお話をありがとうございました。

関連リンク

株式会社RASHISA公式HP:https://rashisa123.com/

https://rashisa123.com/seijitsu-eigyo