目次
Introduction
株式会社ケアリングジャパンは、2008年に化粧品受託製造業者として日本初となるEcocert(エコサート)認証を取得し、オーガニックの化粧品の受託製造しています。今回は、ファクトリーブランドとして沖縄の素材にフォーカスし、オーガニック認証「ECOCERT(エコサート)」を全製品に取得しているブランド・RUHAKU(琉白)について、担当の今泉さんにお話を伺いました。
琉白(RUHAKU)誕生は、担当者のパートナーが抱える肌の悩みから
–今日はよろしくお願いします。早速ですが、御社のコスメブランド・琉白(RUHAKU)が誕生した背景・経緯について教えてください。
今泉さん:
はい。まず、琉白(RUHAKU)というブランドは2009年に企画がスタートし、約3年間の開発期間を経て2012年4月に販売を開始しました。きっかけは、大切な人が抱えるお肌の悩みでした。
–身近な方の悩みがヒントになったのですね。
今泉さん:
そうなんです。琉白の創業者は男性なのですが、そのパートナーの女性が30代半ばになって、年齢によるホルモンバランスの崩れや、仕事での責任感などのストレスによって、ひどい肌荒れに苦しんでいました。今まで問題なく使えていたコスメやスキンケアが、さまざまな要因によって、急に楽しめなくなったのです。
–お肌の曲がり角は突然やってきますもんね。
今泉さん:
「肌の調子がよくなり、メイクを楽しみながらいきいきと働く姿を取り戻してもらいたい」という想いを抱いたことで、お肌の悩みを持つ方向けのコスメ作りに乗り出しました。
–琉白(RUHAKU)の商品には、どのような特長がありますか。
今泉さん:
月桃という沖縄の植物を使っているのが1番の特長です。
月桃とは、沖縄に自生するショウガ科のハーブで、ブルーベリーの約6.7倍ものポリフェノールが含まれていることから抗酸化作用に注目が集まっています。
–すごいですね!月桃に着目したのはなぜですか。
今泉さん:
創業者が沖縄に出張した際に、ある農家の方が「肌荒れにいいんだよ」と、月桃という植物の存在を教えてくださったそうです。農家の方は、葉を蒸留しただけのシンプルな蒸留水を譲ってくれました。
「ものは試し」ということで、パートナーに月桃の蒸留水を使ってもらうことにしました。すると、みるみるうちに肌の調子がよくなったのです。今までさまざまなコスメやスキンケア製品を試してきたにも関わらず、厳選された植物の蒸留水だけで肌の調子が改善され、本当に驚いたそうです。
–そこから月桃を使ったスキンケア商品が誕生したのですね。
今泉さん:
はい。あまりの効果に、ストレスやホルモンバランスの変化・エイジングの悩みをもった方々に届けなければと、開発に一層力が入ったそうです。
沖縄の恵みを使ったアイテムで、スキンケアを癒しと喜びの時間へ
–次に、RUHAKUの商品ラインナップについて教えてください。
今泉さん:
琉白(RUHAKU)の販売スタート当初から扱っているのは、固形石鹸と化粧水、美容オイル、保湿クリームの4点です。今では、クレンジングや日焼け止め、シートマスクといったアイテムを追加して、全部で11種類の商品を展開しています。
–お肌のケアに欠かせない商品ばかりですね。
今泉さん:
そうですね。また月桃以外にも、シークワーサーなど沖縄の植物を利用した、新しいラインナップも加わったんですよ。
–どの商品も、沖縄の植物を使っていますよね。なぜ沖縄の素材にこだわっているのでしょうか?
今泉さん:
沖縄で出会った月桃の効果の高さに驚いたことから、沖縄の植物が持つ成分に可能性を感じていることが大きいかもしれません。
琉球大学の先生に成分研究をお願いして、沖縄由来の植物が持つ成分への理解を深めるうちに、シークワーサーにも非常に高い美容効果のある成分があると分かったのです。そこで、月桃シリーズとは別の肌悩みを持つ方向けのラインナップを用意したという経緯です。
–科学的なエビデンスをもとに、沖縄の植物を使用しているのですね。
今泉さん:
そうですね。もうひとつ言えるとしたら、沖縄が持つイメージも含めたリフレッシュ効果も、沖縄の素材に着目した理由かもしれません。
–リフレッシュ効果ですか。
今泉さん:
はい。琉白(RUHAKU)誕生のきっかけになったのが、年を重ねることでのホルモンバランスの変化や、仕事やプライベートな場で受ける精神的ストレスが原因となる肌荒れです。
そのため、研究に基づいた成分による効果だけでなく、植物のもつ香りや使い心地も含め、ストレスなく癒されるようなスキンケアがテーマでもあります。
沖縄といえば、リフレッシュするための旅行先候補として常に人気がある場所でもありますよね。そのため、沖縄が持つイメージも含めてこだわっている部分はあります。
–なるほど。確かに沖縄と聞くとのんびりした時間をイメージしますね(笑)。では、使用している素材はほとんどが沖縄産なのでしょうか?
今泉さん:
いえ、ローズヒップやザクロ、アルガンといった一部の植物は、オーガニック認証を受けた海外からの原料です。ただ、化粧品の大部分を占める原料は、月桃をはじめ沖縄の海洋深層水、海ブドウといった沖縄産にこだわっています。
国内初!エコサート認証の基準が「当たり前」になる商品づくりを実現するまで
–琉白(RUHAKU)では、すべての商品でECOCERT(エコサート)認証を取得していますね。国内で初めて取得したということもあり、大変なことも多かったのではないでしょうか?
今泉さん:
そうですね。今となってはもう慣れてしまったのですが(笑)、製品開発時に初めて審査を受けたときは、とても大変でした。最初の関門として、有機JASを持つ農家や、無農薬で厳密に管理できる農園を探すのにとても苦労したんです。
–認証をクリアできるような農家が少なかったのですか。
今泉さん:
当時は、沖縄で月桃といえば美容・健康効果を持つハーブというよりも、身近な植物のイメージの方が強かったですからね。サトウキビ畑やゴルフ場、庭先に育つ防風林のような存在でした。
エコサートでは、土壌や水質管理まで厳しく審査されるので、日本では有機JASに準じたレベルでないといけません。今ではそういった農園も増えましたが、当時はほとんどいませんでした。
–原料以外もエコサートでは審査対象になるのでしょうか。
今泉さん:
商品を製造する工場も審査の対象に入ります。商品の企画を始めたのは2009年でしたが、当時は国内でエコサート認証を取得した企業がまだなかったので、グローバルスタンダードをクリアできるオーガニックコスメを作れる工場を探すのは本当に大変でした。
–具体的に、どういった部分で化学成分が制限されますか?
今泉さん:
製品の原料に入れるのはもちろんNGですし、製造に使用する窯などの設備を合成洗剤で洗うのも禁じられています。一度でも化学成分の入った洗剤を使ってしまうと、製造工程の中で商品の中に混入する可能性があるからです。
–窯を洗う洗剤にもチェックが入るのですね!
今泉さん:
また、原料や製造工場以外にも、商品を入れるパッケージやデザイン、物流、広告といった過程にまで審査が入ります。
商品の仕様や外装が決まった時点で都度審査を受けるので、許可が下りるまで次の工程に入れません。そのため本製造のスケジュールがどんどん遅くなってしまい、マーケティング部門泣かせといってもいいかもしれませんね(笑)。
–相当大変だったことが想像できます。
今泉さん:
ただ、必要なものが揃ったら、後はルールにのっとればよいだけ。毎年、認証の更新のために監査がありますが、今はもう「面倒くさい」とか「難しい」とは感じていません。もちろんとても緊張はしますが(笑)。それに、エコサート認証の基準に準じたルールを「当たり前」と感じるくらい商品にこだわり、コツコツと努力を積み重ねていくことが、取得後の維持のためにも大切といえます。
植物や自然のパワーを借りて、肌の悩みだけでなく環境問題をもクリア
–エコサート認証を取得していますが、オーガニックコスメらしい処方や成分はなにがありますか?
今泉さん:
やはり、日焼け止めの紫外線吸収剤や、クレンジングオイルに使っている界面活性剤が挙げられます。
–そういった成分にも、制限がかかるのでしょうか。
今泉さん:
はい。紫外線吸収剤は、環境への負担を防ぐ観点からエコサートのルールで禁じられています。
沖縄では特に必需品と思われる日焼け止めですが、多くの製品に含まれている紫外線吸収剤は、環境への負担がかかるといわれています。例えば、サンゴをはじめとする海の生態系を崩してしまったり、海そのものを汚してしまったりといった影響が、すでに多くの専門家によって指摘されているのです。
そのため琉白(RUHAKU)では、紫外線吸収剤の代わりにミネラル由来の原料を使用しています。今でも、国内産でSPF50+を実現したエコサート認証付きの商品は、琉白(RUHAKU)くらいだと思います。
–自然由来の成分を使っているのに、SPF50+を実現できるのはすごいですね。
今泉さん:
そうですね。さらに、琉白(RUHAKU)で取り扱っているクレンジングオイルには、植物由来の界面活性剤を配合しています。ウォータープルーフの効果が相当高い場合でない限り、きれいに落とせますよ。
そして、顔や全身に使える石けんには、沖縄で昔から親しまれてきたクレイの一種・クチャが入っています。油脂を吸着し、うるおいを残しつつ、すっきりと洗い上げるので、敏感肌はもちろん脂性肌の方にも使いやすいアイテムです。
–石けんは、性別に限らず誰でも使えそうですね。オーガニック製品の場合、防腐剤が含まれていないと思うのですが、保存期間について教えてください。
今泉さん:
琉白(RUHAKU)に限らず、オーガニックコスメ全般にいえることですが、未開封なら3年、開封後は3か月以内に使い切っていただくようお願いしています。
ただ、今は技術がどんどん進歩しているので、化学的な防腐剤や保存料を入れなくても、植物由来のパワフルな防腐成分が開発・発見されています。私たちは保存の面でも、化学成分に頼らず常にアップデートを続ける努力をしています。
肌の悩みと、環境問題を同時に解決できる選択肢を
–琉白(RUHAKU)を購入・使用するお客様の動機や反応についてはいかがですか?
今泉さん:
もともとオーガニックや環境への意識が高い方も、そうでない方も、ご満足いただけています。オーガニックコスメが好きな方にとっては、国産でオーガニック認証をとっており、品質の高いアイテムである点への支持が厚く、リピーターの方も多いです。
発売したての頃は、オーガニックコスメといえば輸入品が多く、高価で、安定供給への不安や、国や文化の違いによる使い心地への違和感と折り合いをつけながら使わなければなりませんでしたから。
–良い品質のコスメが安定的に使える安心感は、気持ち的にもとても助かりますね。
今泉さん:
そうですね。単純にコスメとしての効果が好きで購入してくださってるお客様も多いのですが、そういう方には、琉白(RUHAKU)のブランドブックを通してコスメに託している想いやエコサート認証のことを伝えています。
その結果、自分だけでなく環境や作り手、未来のことを考えた買い物をしようと、徐々に意識の変化がみられた方もいらっしゃるんですよ。環境問題について詳しくないお客様にも「自分のために使っているつもりだけど、実は環境や社会全体にとってよい買い物だった」とポジティブな変化を増やせたらいいな、と思っています。
–沖縄の植物が持つ力で肌を綺麗にしつつ、環境についても知ってもらう活動をなさっているのですね。
今泉さん:
そうですね。元々、様々なストレスにさらされて繊細になっている肌に対する悩みを解決し、充実した日々を過ごすための一助となれば、という願いから誕生したブランドですから。
創業当初は、環境問題への解決というより、「厳選された月桃の効果を、いかにシンプルな状態で届けるか」を追及してきました。その過程で、肌や環境の負担になることを極力避けてきたイメージです。
今では女性に限らずほとんどの人が、仕事や家庭、プライベートで忙しく、美容にじっくりと時間をかけられないのではないかと思います。
でもやはり、自分の肌がきれいだったりメイクが映える状態だと自然と気持ちが明るくなりますし、色々なことに対してポジティブに向き合えるようになるはずです。
そういったご機嫌の積み重ねが自信やこころの余裕につながって、ご自身の「今」だけでなく、未来や他の人・環境といった自分を取り巻く様々なものごとも大切にできる。やさしさが循環する1つの起点となれればと思っています。
「自分にも環境にもよい」から「地球をもっとよくする」へ
–琉白(RUHAKU)の今後の展望を教えてください。
今泉さん:
はい。まずはもっと認知度を上げて、ひとりでも多くの方に琉白(RUHAKU)を届けたいですね。さらに、環境を守るだけではなく、もっと豊かできれいな地球を目指す方向にも力を入れたいと考えています。
一般的な商品に比べて、琉白(RUHAKU)は少し値段が張るかもしれませんが、品質の良さに対し価格を抑えております。そうすることで、少しでも手に取ってくださる方が増えて、環境配慮のささやかなアクションに繋がればいいなと思っています。
価格を抑えていることで今は利益を製造に携わる方までしか循環できていませんが、販売数を伸ばすことで、利益をより地球環境を豊かにするような活動にも使うことができたらと思っております。
時代や個人によって考え方や生活スタイルはさまざまですし、琉白(RUHAKU)がオーガニックコスメの絶対的な正解・正義だとは思っていません。私も一個人として悩みや矛盾を抱えながら、その時ベストだと思うことを実直に積み重ね、未来の地球やそこに住む人のこころの豊かさに貢献できればと思います。
–本日は貴重なお話をありがとうございました!