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幸海ヒーローズ|コンブで地球をすくえ!横浜金沢文庫で立ち上がった海を守るプロジェクト

幸海ヒーローズ 富本さんインタビュー

富本 龍徳 (とみもと たつのり)

コンブを単なる食材と捉えず、森林に代表されるグリーンカーボンの約5倍のCO2を吸収する温暖化対策に寄与する海藻としての機能に着目。地元漁協と連携して、海の環境保全に貢献するコンブを栽培・活用する。2020年、横浜市環境活動賞受賞、環境省グッドライフアワード 環境大臣賞受賞。

CO2 排出削減を意識したメニューのアイデア・コンテスト アイデアキッチン 2022 in Yokohamaにて優秀メニューに選出。

introduction

「コンブで“GOOD”をリレーする」をミッションに掲げる幸海(さちうみ)ヒーローズコンブを通して、環境・社会問題を自分ゴトとして捉えてほしいという想いから結成しました。

今回は、幸海ヒーローズの富本さんに事業内容とコンブに秘められた可能性についてお伺いしました。

コンブは海を豊かにする救世主だった!

-はじめに、事業内容を教えてください。

富本さん:

わたしたち幸海(さちうみ)ヒーローズは、金沢漁港漁師の皆さんとNPO法人アジア環境整備機構協力のもと、横浜の金沢八景沖合でコンブを養殖しています。

コンブの養殖は珍しいですよね。どうしてコンブなのでしょうか。

富本さん:

コンブは地球温暖化対策になったり、海の生態系を保つ役割を果たしたりなど、昨今課題となっている環境問題の解決につながります。環境を守りたいと考えている私たちにとって、ぴったりのものでした。

ここがすごい!コンブが持つ2つのはたらき

コンブ海や地球環境にとって良い影響があるとは知りませんでした。詳しく教えていただけますか。

富本さん:

まず、地球温暖化対策になる点についてお話しますね。
コンブは光合成によって水中の二酸化炭素を吸収し、酸素を作り出します。陸地に生える樹木よりも二酸化炭素を吸収すると言われており、その吸収率は杉の木の5倍の量です。
続いて生態系を保つ働きについてです。
コンブにはプランクトンが集まってきます。するとプランクトンを食べるために小魚が寄ってきます。そして今度は、その小魚を餌とする大型魚も集まってくるんです。こうした食物連鎖の一番最初に存在するのがコンブなどの海藻類です。

コンブ様々な役割を果たしているんですね。

富本さん:

ただ、近年の温暖化の影響で「海水温が上がる」「海流が変化する」「頻繁に台風が発生する」などの理由で、海藻類が育たなくなっています。
また、海水温が上昇するとウニやアワビといった生物の食欲が増すんです。これによりコンブを食べ尽くしてしまい、その結果、食物連鎖のバランスが崩れて生態系に影響を及ぼしてしまいます。

いずれも地球温暖化が原因で起きていることなんですね。

富本さん:

はい。つまりコンブの養殖は、地球温暖化対策と海の生態系保護に貢献できるんです。
そしてコンブの養殖により豊かな生態系が実現すれば、漁師の仕事も持続可能になります。

コンブの養殖は、環境、社会、経済すべての側面から良い影響をもたらすんですね。

富本さん:

こうした相乗効果を広めていきたいという想いから、幸海ヒーローズは「コンブで”GOOD”をリレーする」というミッションを掲げ、2021年末から活動を始めました。

まさに海を幸せにするヒーローですね。

きっかけは、海の環境課題に取り組む先輩のアドバイス

続いては、コンブと出会ったきっかけを教えていただけますか?

富本さん:

以前、我々のメンバーの一人が、三重県で真珠の養殖業に関わっていました。
その時、過密な養殖によって海が汚れ、貝が育たず会社が倒産してしまったり、魚が減って漁師さんが困っていることを知ったんです。
その状況を知り、何か自分にできることはないかと、海洋環境保全に取り組んでいる先輩に相談したところ、「コンブが海を綺麗にするから養殖するといいよ」とアドバイスをいただいたのがコンブの魅力に気がついたきっかけです。

先輩のアドバイスがきっかけだったんですね。そこからなぜ横浜を活動拠点として選ばれたんですか。

富本さん:

そのメンバーと私がたまたま出会う機会があり、一緒にやろうということで意気投合しました。

富本さん:

また、横浜は中華街や八景島など観光地も多く、日本の中でも巨大都市なので、この地で生産から消費まで行えば地産地消ができ、地域活性につながると考えました。

横浜と聞くと都市のイメージがありますが、養殖業にも適しているのでしょうか。

富本さん:

そうですね。金沢漁港はもともと明治時代からコンブをはじめ、海苔、わかめの養殖が盛んでしたので、適した場所だと言えます。最近は環境への効果が分かり始めてきたので、環境保全のための養殖活動が増え始めていますよ。

養殖の意義が時代と共に変化してきたのですね。

コンブ養殖を通じてつながるプロジェクト

ここからはコンブを活用した具体的なプロジェクトについてお聞きします。養殖したコンブはどのように活用されるのでしょうか。

富本さん:

まずは食用です。コンブといえば北海道が有名ですが、水温の低い地域で育つコンブは身が厚いため、乾燥昆布として出汁用に使われることが多いと思います。
一方で、横浜のコンブは身が薄いため生食として食べられることが特徴です。コリコリとした歯ごたえで、噛むほどに磯の香りが広がりとても美味しいんですよ。

地域によってコンブの特徴も変わるんですね。

富本さん:

はい。最近は、食品メーカーによってクッキーやドレッシングなどの加工食品も販売されていて、お土産にも人気の商品です。

富本さん:

ただ、まだまだ横浜のコンブの認知度は高くないので、多くの方に知ってもらうために、2021年​6​月から「ぶんこのこんぶ」お料理コンテストというイベントを開催し​てい​ます。

>> ぶんこのこんぶ 第1回 お料理コンテスト概要はこちら

どういったコンテストなんでしょう?

富本さん:

私たちが育てた「ぶんこのこんぶ」を使ったお料理やおつまみ、デザートなど、オリジナルのアイディアレシピを写真や動画で応募し、入賞者を決定するというものです。

富本さん:

参加費は無料で、入賞者には賞金も用意されています。

美味しさはもちろん、コンブが環境に良いことを知るきっかけにもなりそうですね。食用以外の活用方法はありますか?

富本さん:

食用に適さないコンブを、豚や牛など家畜の飼料にしたり、野菜づくりの堆肥にしたりしています。他にも水族館にいるアオウミガメのエサとして活用していますね。

様々な面で活用できるんですね。特にアオウミガメのエサとして使われることに驚きました。

富本さん:

コンブの特徴として腸内を綺麗にする作用があります。ウミガメがコンブを食べることでエサと一緒に砂を飲み込んでしまっても排出を促すため、体内に砂が溜まらず体調が良くなっていると聞いています。

こうしたお話を聞くと、海の生態系を守るという言葉の意味がより理解できますね。

富本さん:

他にも”こんぶ湯”として銭湯に提供しています。

富本さん:

ほかには、横浜ゆるスポーツ協会のもと、「昆布で創る横浜ゆるスポーツ」といったイベントも開催しました。

コンブを用いたスポーツとは斬新ですね。

富本さん:

ゆるスポーツの主催者である「横浜ゆるスポーツ協会」が、老若男女・年齢関係なく誰でもゆるっと気軽に楽しめるスポーツをつくりたいということで、コンブを活用した競技を考えました。

どういった競技がありますか?

富本さん:

コンブに結び目をいくつ作れるかを競うもの、コンブを輪っかにして輪投げしたりとか、老若男女問わず楽しめる競技があります。

このような取り組みを進められてきて、周囲からはどのような反応がありましたか?

富本さん:

環境課題への取り組みが評価され、2020年12月に環境省から環境大臣賞をいただきました。コンブの養殖に関わってくださる漁師さんは本当に喜んでいます。
そして、この取り組みが日本全国に知れ渡り、海の環境を良くするためにコンブの養殖を始めたいという人が増えていると聞きました。

それは嬉しいですね。消費者の方からの反応はいかがでしょう?

富本さん:

少しずつですが、”ぶんこのこんぶ”って美味しいよねと嬉しい声を聞くようになり、横浜のコンブが認知されてきたと感じています。

コンブを通して環境問題を意識するきっかけに

最後に、今後の展望を教えてください。

富本さん:

環境問題って聞くと、少し難しく感じる方もいらっしゃると思います。でもコンブは料理にも使えますし私たちの生活に身近な存在です。
私たちの活動を通して、コンブが環境に良いということを知っていただき、街中で商品を見かけたり名前を見た際に、環境問題を意識するきっかけになってほしいです。

-今後も可能性が広がりそうですね。今後の活動を楽しみにしています。本日はありがとうございました!

取材 大越 / 執筆 Mayu Nishimura

関連リンク

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