#インタビュー

株式会社SANCHAI|『ヒマラヤ生まれのピーナッツバターで作る幸せのカタチ』

株式会社SANCHAI

株式会社SANCHAI 仲 琴舞貴さん インタビュー

仲 琴舞貴

1978年生まれ・福岡県出身。
家業などを経て、2009年大手コンビニでマーケティングに携わる。その後、IoTサービスを提供するベンチャー企業に入社。
2016年、子どもの学びを寄付で支援するIoTプロジェクトのためネパール東部コタンへ。現地視察後「寄付よりも親の経済的基盤作りが必要」と一念発起。
2017年、ネパール現地法人『Bipana Inc.』を設立。同年12月、コタンにピーナッツバター工場を立ち上げる。
2019年、日本法人「株式会社SANCHAI」を設立。現在、ネパール、日本で「SANCHAI PEANUT BUTTER」を販売中。今後はシンガポールなど、海外での販路拡大を目指している。

introduction

株式会社SANCHAI(サンチャイ)は、ネパール東部の山岳地帯コタンに工場を建て、品種改良のされていないローカルピーナッツを使用したピ-ナッツバター「SANCHAI PEANUT BUTTER」を製造・販売しています。

コタンに工場を作ったのは、起業やピーナッツでの事業が目的ではなく、現地の人達の「地元が大好きでここで生きていくのが幸せ」という気持ちを守りたいと思ったからと代表の仲琴舞貴(なか ことぶき)さんは語ります。

今回、仲さんに事業にかける思いや、ローカルピーナッツ・ピーナッツバターについてお話をお伺いしています。

コタンの人達の幸せを守るため、ピーナッツバター工場を設立

–はじめに株式会社SANCHAIのご紹介をお願いします。

仲さん:

株式会社SANCHAIは、ネパールのヒマラヤ山脈の麓にあるコタンという山岳エリアで、農家が栽培した希少なローカルピーナッツを直接買い取り、現地に建てた工場で地元のスタッフを雇用し、手作業を中心とした製法で作ったピーナッツバターを取り扱っています。

「SANCHAI」はネパール語で、「How are you? ・元気ですか?」のような意味です。

メイド・イン・ネパールを素晴らしいものとして世界に発信し、ネパールの人達が商品を誇れるようなものにしたいと考え、会社名もネパール語の馴染みのある言葉にしました。

–なぜネパールのコタンで起業しようと思われたのか、きっかけをお聞かせいただけますか。

仲さん:

私は元々、IT系のスタートアップで働いていました。その会社のプロジェクトで、「IoTを使ったコミュニケーションツールによる寄付の仕組み」を作るために初めてコタンへ行きました。

コタンは首都のカトマンズから車で15時間。行くのも大変な陸の孤島のような僻地で、産業化できるようなものは何もない発展していない場所です。

寄付の仕組みを考えているうちに、寄付に頼らない仕組みを作りたいと思うようになりました。

《コタンの風景》

そして、経済的なインパクトを作るには、そこにあるものをお金に変えるのがいいのではないかと考えました。

コタンの土地はとても乾燥していて、取れる農作物はピーナッツくらいしかありません。「じゃあどうやってピーナッツをお金に変えていくのか」「それにあたっての課題は何か」ということを模索すべく、地元の農家にいろいろ聞いて回りました。

その中で、ある農家のおじさんが「ここは凄くいいところでしょ。僕はここに生まれ育ち、この場所が大好きで、ここで暮らせるのは本当に幸せ。家族もここが好きだけど、学ぶ場所も働く場所もないから、ゆくゆくはここを離れないといけないんだ。」と言ったんです。

それを聞いて、彼らの求めていることは「ここでみんなで働き、ここで生きていきたい」ことなんだと確信しました。

それで、コタンに工場を作ろうと決めたんです。

《コタンの地元の方》

よく勘違いされるんですが、私は起業したかったわけでも、ピーナッツを事業にしたかったわけでもありません。

重要なのは、現地の人達が感じている『この場所に暮らしている幸せ』をどうやったら守れるかということです。事業そのもの、雇用を生み出すことは、あくまで手段でしかありません。雇用を生んでもその結果、彼らが不幸になるんだったらやらないほうが良いですよね。

日本に長く住んで来た私には、山奥の不便な場所を心から愛し、そこで家族みんなで暮らすことに幸せを感じるということは『目からウロコ』だったので、彼らの幸せのカタチを作っていきたいと思いました。

とはいえ、その時はまだ電気も通っていない場所だったので、工場を建てようなんて無謀なことに思えますが、できるかできないかではなく、どうやったらできるのかだけを考えて行動しました。

品種改良されていない完全無農薬のローカルピーナッツからできるピーナッツバター

–では、どのようにピーナッツバターを作っていらっしゃるのか、お聞かせください。

仲さん:

現在6人の現地の女性を雇用して、ほとんど手作業でピーナッツバターを作っています。

作業工程を考える時に重視したのが、どうすれば少しでも多くの人を雇えるかです。どれだけの人手をどこにかけるかを良く考えて、オペレーションを組みました。

現在では、殻剥きやロースト・選別などは手作業で、ピーナッツを潰す部分などは機械を使っています。

具体的な流れを説明すると、まずは硬い外殻を剥きます。

通常は大きな機械で撹拌しながら外殻を砕き、殻と種子を分けるのですが、それだと種子の外側に傷ができて酸化し、味が落ちてしまいます。丁寧に手で美味しい状態を保ってペースト状にできるんです。

ローストは、ツボのようなフライパンで、少量ずつ煎ります。気温や時間でロースト具合が変わりますが、すべて彼女達が調整しながらローストします。

その後に薄皮を剥いて、必ず全て半分に割って中身をチェックし選別します。ピーナッツはアフラトキシンというカビ毒が発生してしまうため、その危険性があるものはここで排除しますので、 品質管理も安全性の担保もできています。

その後、ミキサーで撹拌してペースト状にします。

はじめは電気が通っていないため、手ですりつぶす事を考えていたのですが、とろみや旨味が全然出なくて。植物油を足すことも考えましたが、圧倒的に美味しくなくなるんです。

悩んでいたところ、奇跡的にオープンの3ヶ月前に送電が始まりました。そこでミキサーを使用したところ、そのままでもトロトロの、ものすごく旨味の強いピーナッツバターができました。電気の力ってすごいなって、改めて思いましたね(笑)

こうして出来上がったピーナッツバターは、日本では、ECやお取扱い店舗に加えて、マルシェなどでもご紹介しています。実際に食べていただくと、多くの方が『人ってびっくりした時にこういう顔するんだな!』っていう顔になるんです(笑)。なので試食してもらえれば、味の違いや美味しさはわかってもらえると思います。

本当に濃厚で、頭の中のピーナッツバターの印象と全く違うので「こんなピーナッツバター食べたことない」と言われます。タンパク質が非常に多く、ねっとり感も強いんです。

普段ピーナッツバターを食べ慣れているアメリカからの旅行者達でさえも、「普段食べているものと全然違う!」と言って、買って帰ってくれることも多いですね。

ピーナッツバターが苦手な方でも、美味しいとハマってくれることもあります。

–ピーナッツバターに使っているローカルピーナッツとはどのようなピーナッツなんでしょうか。

仲さん:

コタンは、山の斜面に段々畑があり、そこでピーナッツが栽培されています。広い畑ではないので、人の手か水牛にクワをつけて作業をしています。

《ピーナッツ畑》

この地で栽培されているピーナッツは大粒品種と小粒品種の2種類あります。大粒の方が量が増すのでこちらを販売用にたくさん作っていました。

しかし、弊社が使うのは小粒品種のピーナッツのみです。これは、人為的な品種改良がされていない、非常に原種に近いピーナッツです。どの農家に行っても皆「これが美味しいんだよ」と教えてくれました。

正直私は、品種改良していないということと、美味しさが結びつきませんでした。

例えば果物であれば、甘く美味しいように品種改良されますよね。「品種改良したほうが美味しいんじゃないの?」と思ったんです。

ピーナッツに詳しい専門家に尋ねたところ、ピーナッツのような種子の場合は、「土地が変わったときに環境の変化で枯れて絶滅しないようにすること」が品種改良の基本原則だそうです。つまり、美味しさ基準での改良ではないということです。

陸の孤島のようなコタンでは、発展しなかった地域だからこそ、大きな改良もされない原種に近いピーナッツが残っていたんじゃないかと思います。発展して失われてしまい、元に戻せないものもたくさんありますから、そこがこのピーナッツのすごく面白いポイントだなと思います。

さらに、これまで一度も農薬が使われていない土地で栽培されるので、完全無農薬栽培であるところも魅力です。

ローカルピーナツの使用を決めた後は、今まで彼らが取引していた値段よりも高い値段で、直接農家から買い取っています。

自分を・人生観を変える仕事

–コタンの方達は、地元に工場ができたことをどのように捉えていらっしゃいますか。

仲さん:

農家の人達はすごく喜んでくれていて、自分達の作ったものが遠い日本で認められていることはとても嬉しいみたいです。「僕達もあなた達の会社の一員だよ」と言ってくれます。

《コタンの農家の方達》

工場で働いている女性達は、「幸せ、幸せ、私達は本当に幸せ」と口にしています。

彼女達は、自分の人生には働けるチャンスはないと思って生きてきました。

《コタンの女性達》

ずっとこのまま家事や育児・家畜の世話をしながら生活をしていくんだろうって。

そんな中で働いてお給料をもらい、一番変わったのは「自分の人生にも変化が起こせる」という概念だったと思います。環境よりも自分自身が変わったというのが大きな違いなのではないでしょうか。

–現地の方々を採用するにあたって、大変なこともあったのではないでしょうか?

仲さん:

ネパールでは約束を守らない、時間を守らないなどは当たり前で、圧倒的に日本とは違います。ですから、採用する人達には、こちらの当たり前を押し付けるのではなく、彼女達が自らやりたいと思えるように伝える必要があると考えました。

採用試験の前に一人ずつに声をかけ、私たちの事業の主旨を説明し、その上で「成長したい、仕事をしたい」という意思がはっきりあった女性を採用しました。

一度も働いたことのない女性ばかりでしたから、働くとはどういうことか、衛生管理とはどういうことかなど勉強会を開いて、なぜそうしないといけないのかを理解してもらうことから始めました。

今では、彼女達には仕事をする上で、きちんと当事者意識があります。

実際に、これを象徴するような出来事がありました。ある女性が、体調が悪いと嘘をついて仕事をよくサボっていたんです。そのことについて他の女性達から相談がありました。

私は、多分その女性をかばうだろうなと予想したんですが、「あなた達はどうしたいの?」と聞くと「彼女には何回も注意をしたけれど直そうとしなかった。だから彼女のためにも会社のためにも1回やめてもらった方がいい。」と全員が言ったんです。とてもびっくりしました。

それからは、一緒に働く人の人選は彼女達に任せています。

基準は真面目で一緒に頑張れる人ではありますが、おそらく職を得ることで、その人の人生や生活が良い方向に行くだろうなという人にチャンスを与えたいと考え選んでいるようです。

相手に喜んでもらえる循環を生み出す消費活動の仕組みを作る

–では最後に、今後どのように事業を展開していきたいか、展望をお聞かせください。

仲さん:

工場を立ち上げた後、働いている女性達が「幸せ、幸せ」と言ってくれましたが、結局一番強く幸せを享受しているのは私だなと気づきました。そこにこの事業の可能性を感じたんです。

彼女達の幸せを守り続けるには継続が必要です。そのためには、購入してくれるお客様がいて初めて継続できます。ですから、今私が感じている幸せを、私以上にお客様にも感じていただきたいと考えています。

実際に、お客様がコタンの人達の幸せを作って支えているということを感じてもらえる仕組みを作ることが、今一番やらなければいけないことだと思っています。

私は、働いている女性達に日本のお客様が喜んでいる様子や感動の声などをダイレクトに知らせることができます。

頻繁に出店しているマーケットにいつも買いに来てくれる小学生の男の子は、うちのピーナッツバターが大好きで、毎朝スプーン一杯食べるそうです。その子の写真を彼女達に見せて話すと、写真を奪い合って見るほど喜んでくれたんです。そして、その様子をお母さんを通して男の子に知らせると、やっぱりとても嬉しそうだったと聞きました。

このように、自分の楽しみのためだけの消費活動ではなく、相手に喜んでもらうというところでの循環が産み出せるような仕組みを構築できるといいなと考えています。気持ちのつながりや、そこでできた関係性を継続する状態をどう作っていくのかが、弊社の目指すべきところかなと。

そのためにもどれだけ価値を感じて、理解してもらい、提供できるかが大切だと考えています。今後は日本だけでなく、世界へと販路を広げていくため、インターナショナルな活動にも注力していきたいと思います。

–とても魅力的なコタンのピーナッツバター、ぜひ食べてみたいと思います。貴重なお話をありがとうございました。

関連リンク

株式会社SANCHAI 公式ホームページ :https://www.sanchai-inc.com/jp

SANCHAI ONLINE STORE :https://sanchai-gift.shop-pro.jp/