エコ大国で知られるオーストラリアには、環境に優しい製品オンリーを取り扱っている雑貨店が存在します。
クイーンズランド州で生まれたBiomeは、廃棄物、プラスチック汚染、毒素、気候変動といった環境問題を解決すべく設立された雑貨店です。
環境負荷が大きい成分を含む製品を販売しないほか、顧客が手軽に環境保全に貢献できるような商品展開も意識しています。
この記事では、Biomeの理念、商品展開と店舗情報、実際に行っているエコ活動の事例について解説していきます。
Biomeの理念とは?
Biomeは、クイーンズランド州ブリスベンに本社を構える環境系の雑貨店です。
従来の雑貨が抱える廃棄物、プラスチック問題、森林破壊、有害物質、気候変動などの環境問題に向き合うため、エコな製品のみを取り扱う雑貨店として2003年にオープンしました。
「よりサスティナブルな雑貨を広く普及させたい」「雑貨を通して環境保護に貢献したい」といった想いで運営を続けており、2012年から2022年にかけてさまざまな環境に関する賞を受賞してきました。
また、長期的な環境保護には一人ひとりの意識や取り組みが必要であると考えていることから、購入するだけで環境負荷に繋がる製品の販売を心掛けています。
Biomeの商品展開や店舗情報
Biomeでは、スキンケア、ボディケア、洗剤、掃除用品、アクセサリー、文具、お菓子、おもちゃ、ランプ、雑誌をはじめとする多種多様な製品を提供しています。
販売する製品は全てエコ要素を含むものとなっており、環境に優しいグッズを詰め込んだエコギフトなども取り扱っているのが特徴です。
尚、Biomeの店舗があるのは、2023年12月時点でクイーンズランド州とビクトリア州の2つの州のみです。
クイーンズランド州はブリスベンを中心に3店舗、ゴールドコーストに1店舗を構えており、ビクトリア州ではメルボルン郊外に1店舗のみとなっています。
ブリスベンの店舗の中にはアウトレット専用ショップもあり、リーズナブルな価格帯でエコな製品を使いたい層から高い人気を集めています。
Biomeが行う環境に優しい取り組みとは?
ここでは、Biomeが行っているエコ活動について詳しく説明していきます。
パーム油不使用
環境に配慮しているBiomeでは、パーム油を含む製品を販売しないというポリシーを掲げています。
安価で汎用性が高いパーム油は、化粧品、スキンケア製品、洗剤、石鹸といった幅広い用途で使われています。
しかし、パーム油を製造するにあたって、原料となるアブラヤシのプランテーションの存在が必要不可欠です。
プランテーションの確保を目的に、インドネシア、マレーシア、アフリカなどのさまざま国において熱帯雨林の伐採が行われてきました。
広大な土地の自然が失われたことにより、森林や野生動物への影響が懸念されています。
また、過剰な農薬散布を取り入れているプランテーションも多く、周辺地域の生態系の崩壊を加速させる恐れがあります。
そういったパーム油の環境負荷を考えて、Biomeではパーム油に関連する製品を一切置いていません。
パーム油の不使用は、Biomeが特に力を入れている活動のひとつでもあります。
パーム油による自然破壊を食い止めるために、公式ホームページや店舗にてパーム油が及ぼす環境問題の詳細を啓発しています。
製品の98%がヴィーガン
Biomeでは、パーム油だけでなく動物由来の製品の排除も意識しています。
市場で販売されている美容製品やケア製品には、乳成分を使ったローション、哺乳類の胎盤から抽出したプラセンタ、馬油を含むトリートメントといった動物由来のものがあふれています。
動物由来の製品を作るにあたって、必要なのが畜産動物です。
しかし、畜産動物の飼育にはメタンガスの発生が付きものとなっており、オーストラリア国内だけでも年間5,500 万トンの二酸化炭素が畜産動物から排出されています。
スギの木40万本弱が1年間に吸収する二酸化炭素量に匹敵し、実にオーストラリアの二酸化炭素総排出量の10%を占めています。
畜産業による環境負荷が大きいことから、地球温暖化への影響を懸念したBiomeは98%のヴィーガン製品率を実現しました。
尚、現在進行形で残り2%の削減にも努めており、より環境に優しいブランドを目指しています。
DIY用素材の量り売り販売
Biomeで特に人気の製品が、バスソルトやデオドラントのDIY用素材です。
市販されているバスソルトやデオドラントには、化学成分を含む有害物質が含まれているものもたくさんあります。
環境はもちろん、身体に悪影響を及ぼす可能性も高く、サスティナビリティに欠けるとBiomeでは考えています。
そこで登場したのが、顧客が自由に素材をブレンドできるDIYです。
Biomeでは多彩な素材を店頭やオンラインにて販売しており、必要に応じて顧客へのアドバイスやアシスタントも行っています。
素材は量り売りなので、顧客が使いたい分だけ買える仕組みが構築されています。
また、店舗では瓶や紙袋も用意されており、プラスチック削減と包装素材が廃棄物になる可能性を下げているところもポイントです。
化学成分による水質汚染や土壌汚染を防ぐと同時に、廃棄物削減にも貢献している販売方法です。
コンポスト化可能な布巾
Biomeで近年注目されている商品が、コンポスト化可能な布巾です。
一般的な布巾の多くには、ポリエステルなどの合成繊維が使用されています。
しかし、合成繊維は洗濯の際にマイクロプラスチックを放出するという特性があり、海洋生物をはじめとする環境への影響がデメリットです。
そんな中、Biomeでは100%生分解性の布巾を販売しています。
洗浄してもマイクロプラスチックが出ないのはもちろん、使用後はコンポスト化して堆肥としても活用できます。
有毒化学物質ゼロのトイレ用ブラシ
マイクロプラスチックの問題を受けて、近年木製のトイレ用ブラシが普及しています。
しかし、木製のトイレ用ブラシの多くは木材処理の際に有毒化学物質を使用しており、水質汚染の影響が大きいところが懸念点です。
一方、Biomeでは有毒化学物質ゼロのトイレ用ブラシを販売しているため、マイクロプラスチックと水質汚染の両方の問題にアプローチしています。
長く使える包装の導入
Biomeは、ミニサイズの石鹸や小物をセットで販売しています。
その際、プラスチック素材で製品をまとめるのではなく、麻袋などのエコな包装を使用しています。
オーストラリアの包装素材の年間廃棄量は、約670トンです。
「ビニールの袋をわざわざ再利用しようとは思わない」「紙の包装だと破れてしまうからすぐにゴミになる」といった理由から、包装素材を自宅で使う国民は少ない傾向にあります。
しかし、麻袋であれば、ポーチとして長期的に愛用できる可能性も高くなります。
Biomeは単にプラスチック素材を削減するたけでなく、より多くの顧客が再利用できる包装素材を採用しているのです。
再生紙とFSC認証紙を使ったパッケージ
Biomeでは、販促資材を含むマーケティング資材やパッケージに再生紙とFSC認証紙を使用しています。
再生紙を使うことで、伐採される木材の削減に繋がります。
また、FSC認証紙は、適切に森林管理された木材を使った紙のことです。
違法伐採によって生まれた紙の使用を避けることで、サスティナブルな方法で製造された紙がより広く普及するチャンスを作れます。
未来の森を守る一環として、Biomeでは再生紙とFSC認証紙を積極的に使用しているのです。
生分解性の漂白剤
Biomeは、環境に安全な生分解性の酸素漂白剤を販売しています。
最終的に漂白剤が自然に循環される仕組みを広く顧客に啓発し、環境負荷が少ない漂白剤の普及に努めています。
まとめ
環境問題に立ち向かうべく設立されたBiomeは、パーム油の熱帯雨林破壊、廃棄物、畜産業の二酸化炭素排出、有害物質による汚染、マイクロプラスチック、違法伐採による紙の供給など、多方面における環境問題への解決に力を入れています。
自社内でできる取り組みはもちろん、顧客への啓発や意識改善に繋がる活動も行っており、サスティナブルな未来を目指したビジネスプランを掲げています。
雑貨は、私たちの生活にとっても身近な存在です。
雑貨に潜む環境問題への理解を深め、より環境に優しい代替品について考えることからはじめてみましょう。