山口 良介
1970年神奈川県藤沢市生まれ。就職と共に横浜で一人暮らしを始め、仕事柄Mac(当時Apple Computer Macintosh)に出会い、独学でデジタルクリエイティブを習得する。その後、デジタルデザインプロダクションに転職。いくつかのデジタルアートコンペに入選したのを機に独立しフリーランスとなる。事業拡大のため、恵比寿に広告プロダクションを設立し法人化、経営者となる。その後、縁あって大手CMプロダクションのグループ会社の取締役となり、WEBとリアルプロモーションの融合、およびSNSプロモーションの黎明期に数多くのプロジェクトに関わる。その実績を活かし再度独立。スタートアップ事業を展開するホントノ株式会社を設立。東日本大震災を機に、社会や地域に自分のスキルを還元できないかと考え、現在の副理事長である志田と出会い、SIDE BEACH CITY.にジョイン。NPO法人化に尽力し現在は理事長を務める。
introduction
まちづくりエージェントSIDE BEACH CITY.(以下SBC.)は横浜を中心にまちづくりを支えているNPO法人です。強みであるIT面のサポートを活かして、人や地域の課題の解決を目指しています。
今回、理事長の山口さんに、どのような支援を行なっているのか、まちづくりへの想い、SDGsへの取り組みなどを伺いました。
−早速ですが法人のご紹介をお願いします。
山口さん:
SBC.は、「横浜のまちづくりを情報技術で促進する」をテーマに活動するNPO法人で、大きく分けて3つの支援を行っています。
1つ目はIT を使った地域の活性化を支援する情報技術支援事業。
2つ目は、社会課題の解決をする団体の立ち上げなどをサポートする中間支援事業。
3つ目は、上記の2つと比べてより地域性の高い事業を行う地域活性化支援事業です。
3つに共通するのは、私達が得意なIT活用をメインに支援することです。
というのも、私達は知識や専門スキルを持ったエージェントと呼ぶ専門家を70名以上抱えています。エージェントに登録してもらっている方々は様々なスキルを持ち、IT関連会社の経営者やエンジニアなど、普段は別の組織で働いている方々です。この方々のスキルを、我々のもとに寄せられた相談や課題の解決に活用しています。
現状、IT分野に強いエージェントが多くいますが、教育関係、福祉関係、起業支援などのスキルを持った人にも登録していただいているので、より細やかな支援が可能となっています。
デジタル格差の解消を目指して。お年寄りへの草の根活動
−それぞれの事業について詳しく伺います。まずは、情報技術支援の事業内容と事例を教えて下さい。
山口さん:
情報技術支援では、主にデジタルに拙い方の支援をしています。
具体的には、お年寄りの方が集まる施設に出向いてスマホの使い方を教えています。
ネットと断絶してしまっているこの世代は、「自分のアカウントを作る」とか「写真を送る」といった基本的なことから分からない状態です。そのため、SNSを使えるような他の世代とコミュニケーションが取れなくなってしまいます。そこで、アプリやネットの使い方といった初歩的なところから、丁寧にお伝えすることを心がけています。
お年寄りの方々は、これまで「面倒くさいしスマホなんて使えないままでいいや」と思っていたものの、コロナをきっかけにやる気を出されたそうで、支援を通して「孫とLINEで話せるようになった」「SNSの使い方がわかった」など喜んでいただいています。その一方で、我々の講座に参加したものの、「何を言っているのか全くわかりませんでした」という方もいます。
この場合は、遠慮せずに質問できる環境を整えるにはどうすればいいのかを考えたりしていますね。
他にも、地域における社会課題の解決を目指したプラットフォームを展開しています。例えば街中での問題を行政に報告できるシステム。街を歩いていて、「道路に穴が空いている」「街灯が切れている」「段差が危ない」などの問題をみつけても、どこに報告していいか分かりませんよね。
これにより、街中でトラブルをみつけても市民の方はなかなか報告できないんです。例え行政に報告しても「その話は◯◯課にしてください」というようにたらい回しにされるケースも見られます。
そこでこのプラットフォームを活用することで、適切な部署に手軽に街のトラブルを報告できるようになります。
人と人をつなげて拠点の立ち上げを後押し
−続いて、中間支援の事業内容と事例をお願いします。
山口さん:
中間支援では、法人やNPO・任意団体などの拠点の立ち上げやICTに関する課題解決のお手伝いをしています。
具体的には、SBC.と同じようにNPO法人を立ち上げたい人に向けて、サポートをしていることなどが挙げられます。
加えてホームページを自分たちで作れるように支援したり、そこで発信する情報についてもアドバイスします。団体によってはホームページよりもSNSのほうが仲間が集まりやすいこともあるので、適性を見極めながら的確なアドバイスが行えるように心がけています。
SBC.は非営利団体なので、これらの支援を最低限の費用で行っています。そのため、民間の専門的なコンサルを受けるよりも、費用が抑えられる点がメリットだと思います。
法人でも団体でもスタートアップの段階は初期費用がかかりますから、コストを少しでも抑えつつ、気軽に相談できる窓口になれればいいですね。
ただ、誰でも支援が受けられるかというとそうではありません。SBC.が支援するかどうかを判断する際に、公共性があるか?もしくは、SDGsを1つの基準にしています。「社会課題を解決するために事業をやっている」「事業が非営利である」という場合は積極的にお手伝いしています。
横浜に根ざしたコミュニティ作り。立ち上げから軌道に乗るまでサポート
−地域活性化支援事業の事業内容と事例を教えて下さい。
山口さん:
まちづくり関連のことであれば基本なんでもやっていますが、情報支援事業や中間支援事業と異なるのは地域に根ざしているという点です。
具体的には、横浜でコミュニティのハブとなる拠点を立ち上げたい・うまく運用したいという人へのアドバイスや、市内の困っている人に寄り添った事業や拠点を展開したいという人への支援などが挙げられます。
地域コミュニティ拠点は地域の人が集まって交流できる場として非常に有効です。が、行政の支援が受けられれば別ですが、独立して運営するとなるとかなり大変なんです。そこで、ITを中心とした運営手法はもちろんのこと、どのようにコミュニケーションを促進できるかといったアドバイスもしています。
情報支援事業と組み合わせて、コミュニティ拠点らしいホームページ作りやSNSでの情報発信のサポートも行ったり、オンライン配信による、活動の活性化も進めています。
地域の困っている人に寄り添った事業に対する支援としては、例えばシングルマザー支援を立ち上げた方のサポートなどが挙げられます。
具体的には、その手の専門家を繋いだり、すでに同様の事業を展開している人と話す機会をセッティングしてきっかけづくりなどをしています。
今となってはそれらの団体は、大きな組織に成長し活動の活発化が進んでいます。
地域との連携を大切にしたSDGs活動
–ここまでお話を伺い、事業そのものがSDGsに直結していると感じましたが、他にも何か取り組まれていることはありますか?
山口さん:
SDGsへの具体的な取り組みとしては、逗子海岸でのビーチクリーンをはじめ、SDGsを学べる啓発イベントの開催、課外授業による中学生へのSDGs啓発活動などを行なっています。
逗子海岸でのビーチクリーンは、2018年に逗子海岸営業協同組合とNPO法人 iPledgeが主催する「Eco Station」に参加し、海岸のゴミ拾いと同時に活動をサポートしました。
SDGsを学べる啓発シリーズイベント「Facelook」は、2019年から開始したイベントです。関内のコミュニティスペースを中心に、専門テーマを軸にSDGsを学べるというもので、廃棄食材や賞味期限切れの食材を用いて料理をするサルベージパーティーを実施したこともありました。
また、SDGsを実践する企業への訪問課外授業を設けている中学校があり、そこの学生を積極的に受け入れています。「SDGsとは?」といった基本的な内容から、「事業とSDGsをどう結びつけているのか?」といった実践的な説明、さらには生徒が「どうすれば普段の行動からSDGsを結び付けられるkのか?」といった質問に回答するなど様々な議論を交わしています。
生徒の皆さんは真剣に取り組んでいて、若い方は非常に感度が高いと感じました。
こちらでは、Yocco18とコラボして作ったSDGs教材「Yocco18と学ぶSDGs」を紹介しました。Yocco18とは、横浜の魅力を伝えるために活動している団体が作成した、横浜18区の特徴を表した18の妖精キャラクターです。
「Yocco18と学ぶSDGs」は、このキャラクター達とSDGs17の目標を重ね合わせたパズルで、視覚的に分かりやすく、地域を知ることができる教材となっています。
このように、地域の様々な団体や企業と連携を取りながら、SDGs及び地域活性化のための取り組みを進めています。
イベントを通してSGDsの啓発に取り組み、様々な団体を巻き込んで推進したい
−地域のために様々な取り組みを展開しているSBCですが、今後の展望について教えて下さい。
山口さん:
事業に関しては、エージェントとの連携をより強固なものにして、より多くの課題を解決できるような仕組みを整えていきたいと考えています。
SDGsに関しては、リアルイベントを復活させていきたいと思っています。ビーチクリーンやFacelookなどの啓発イベントは、コロナ禍をきっかけに実施しにくくなってしまいました。少しずつ状況が戻りつつあるので、今後は実際に顔を合わせて対話を深めながらの活動を増やしていきたいです。
他にもYocco18のようなコラボ企画をどんどん展開していくことも考えています。SDGsを意識しながら、みんなで、一丸となって地域活性化のための取り組みを進めていきます。
将来的には、横浜で成功したモデルを日本の他の地域にも水平展開していけるといいですね。
−本日はありがとうございました!
まちづくりエージェント SIDE BEACH CITY.:https://sbc.yokohama/