医療法人社団翔和仁誠会|患者に寄り添う格差のない医療を目指して、地域に根差しつつ、三宅島や中国、カンボジアにも診療支援

医療法人社団翔和仁誠会 理事長 高松さんインタビュー

高松俊輔(たかまつしゅんすけ)
医療法人社団翔和仁誠会 理事長
たかまつ耳鼻咽喉科クリニック 院長
株式会社EL CASTELL
国立山梨医科大学(現山梨大学)卒業後、東京大学耳鼻咽喉科学教室に入局。
医局人事で様々な病院での勤務を経て平成14年東京都多摩市にたかまつ耳鼻咽喉科クリニックを開院。これまでに20院の開業経験を持ち、現在、東京・神奈川に短期入院手術施設(サージセンター)を含む15院を運営する。海外診療支援や島嶼部診療支援を行うなど医師として活動の場を広げる傍ら、医療経営コンサルティングに特化した株式会社EL CASTELLを設立。新規開業支援や既存医院に対する経営改革支援など、より流行るクリニックへ支援活動を行っている。

Introduction

子ども時代に読んだシュバイツアー博士の伝記が原点となり、医師を目指した高松俊輔さん。学生時代にはバックパッカーとして世界をまわり、様々な貧困の状況も目にしました。耳鼻咽喉科の医師となった現在は、東京、神奈川に15のクリニックを開院。法人理事長としても理念の伝達に努め、各地域のみならず、常駐医のいない僻地や医療水準の低い国への支援も行っています。

今回は高松俊輔さんに、ご自身の理想を反映した医療活動の状況やご展望を伺いました。

患者にとって最も安心・安全な地域医療を目指す

早速ですが、翔和仁誠会がどのような医療法人であるかをご紹介ください。

高松さん:

翔和仁誠会は、東京都と神奈川県で開院する15の医院による医療法人です。2002年に私が多摩市で「たかまつ耳鼻咽喉科クリニック」を開院したのを皮切りに、当院の理念や医療活動に賛同してくれたドクターが集まりました。

現在は、耳鼻科だけではなく、皮膚科、泌尿器科、小児科、内科など複数科にわたるグループに成長しました。耳鼻科に関しては、短期滞在型手術を専門とするサージ(手術)センターも含まれ、外来から手術までを扱える総合的な医療を構成しています。

–翔和仁誠会が掲げる理念はどのようなものなのでしょうか?また、その理念の背景などもお聞かせください。

高松さん:

法人として、次の4項目を理念に掲げています。

一、患者様の安心、安全を第一に考えた医療をご提供します
二、患者様と同じ目線に立った温かい医療を行います   
三、専門性、先進性を追求し、最良の医療を目指します  
四、全従業員がやりがいを持って働ける職場環境を整えます

私は、開業するまでは大病院の耳鼻科の医局に所属していました。大病院では最先端の医療が受けられる反面、待ち時間が長く、一日がかりになることもあります。そんな状況を目の当たりにして、患者にとってより良い医療はなにかと考えました。

そして出した答えが、患者が近隣のクリニックに気軽に通え、温かな対応が得られ、なおかつ大病院と変わらない治療が受けられるなら、最も快適な地域医療となりえるということです。悪性腫瘍や難治性疾患などのクリニックでは扱えないケースのみ、大病院で治療すればいいんです。

通常、耳鼻科では、手術が必要な場合は全例大病院に紹介しますが、当法人のサージセンターは、耳科手術、鼻科手術、喉頭微細手術などの手術を扱えます。大病院で一週間の入院が必要なものが、一泊か二泊、時には日帰りさえ可能です。

時間的、経済的に患者が節約でき、距離の近さで精神的にも安心な地域の病院が、大病院に引けをとらないクオリティで医療サービスを提供する……そんな理念に共感してくれる医師たちが法人に参加してくれました。

–「患者と同じ目線に立った温かい医療」という理念に基づく具体例をご紹介頂けますか?

高松さん:

日本では高齢化が進み、病院に通うことが困難な患者が増えています。当法人には往診活動をしている医院があり、今後も精力的に取り組みたいところです。ただ、解決すべきハードルもあります。

往診は医療者には効率の悪い診療システムです。また、国民皆保険制度は素晴らしいとしても、日本人はちょっとの不調でも病院にいく傾向があります。世界中で、これほど病院に行く国民は珍しいんです。結果、医師が往診に出る時間がとれない状況も生まれます。

医療費も社会保障の中の枠組みですし、医療資源の無駄遣いによる負担は、結局国民に返ってきます。高齢化に向けて往診システムを確立していくためにも、医療者、患者、国が自覚をもって考えねばならないことはたくさんあります。行政には仕組みづくりをしっかりしてもらいたいですね。

現時点では、当法人の往診はまだ不十分ですが、補いとしてオンラインの診療や電話診療も行っています。

問診票から男女の性別記入をなくす

–翔和仁誠会は、SDGsに熱心に取り組まれていますね。地域医療の充実という理念も、SDGsの「すべての人に健康と福祉を」や「住み続けられるまちづくりを」に当てはまります。高松さんがSDGsに関心をもたれたきっかけや、活動の具体例を教えてください。

高松さん:

若いころから、人類は地球というひとつの大きな宇宙船の乗客なんだ、という意識がありました。地球の差し迫った問題が頻繁に報道され始めたころ、自分にも医療で貢献できることがないかと考えました。

SDGsで初めに取り組んだのが、医療格差をなくすための活動です。三宅島の僻地診療所に耳鼻科の常勤医がいないので、年に数回私が診療に通っています。生活保護者の診療も積極的に受け入れています。

自分たちの労働環境では、ライフワークバランスを考慮し、ノー残業デーを導入しました。また、病院は女性の働き手が多い業界です。そのため、出産育児に合わせた時短勤務のシステムをつくり、子どもの病気などによる急な欠勤にも、気持ちよくフォローしあえる企業風土を育て、女性が働きやすい環境を整えています。

また、スキルアップしたい人には、事務からの入職であれ、能力に応じて管理部門のマネージャーなどにキャリアップできる体制を構築しています。

多様性ということでは、問診票から男女の性別をいち早くなくしました。そんな問診票が存在することで、スタッフのジェンダーへの理解も深まります。周囲への啓発活動のひとつでもありますね。

カンボジア医療支援の最終目標は、現地医療水準の引き上げ

–翔和仁誠会は、外国への出張診療も実施されてきましたが、そのきっかけと、どのような活動であるかをお聞かせください。

高松さん:

自分が医者を目指した原点は、子どもの頃に伝記で読んだシュバイツアー博士なんです。医療のないアフリカに人生を捧げた博士の生き様がずっと心にありました。また、学生時代はバックパッカーとして、アジアや南米などの貧しい国も旅しました。「日本での生活が当たり前ではないんだ」、「貧しくて衛生状態が悪く、充分な医療を受けられない国がこんなにあるんだ」と衝撃を受けました。

カンボジアのブノンペンと中国の上海への医療支援を決意したのも、そんな背景があったからです。カンボジアを選んだのは、医療水準の低さに加えて、日本の医師免許が通じる国であるからです。さらに、カンボジアは内戦が長く続き、働き盛りの医師の数が少なくなっていることも、支援理由の一つです。

現在はコロナ禍で中断していますが、基本的に毎月、当法人から輪番制で医師が出向き、現地のクリニックで3日ほどの診療を続けてきました。カンボジアでは、とりわけ耳鼻科の水準が低いため、現地の医師やスタッフ、看護師への教育も実施していました。

患者を診察して終わるのではなく、私たちの最終目標は、現地医療の水準をボトムアップし、その地域の医師が患者に高品質の医療を提供できるようになることです。現地の医療スタッフも、「自国をよくしよう」、「医療水準をあげて患者を助けよう」という目的意識が高く、私たちの活動を大変喜んでくれるんです。それが大きな励みとなっています。

患者さんたちも、何日も前から楽しみに待っていてくれるそうです。「長年の鼻づまりが解消した」、「自分の病気の原因が初めてわかった」などと喜びを伝えてくれるのも嬉しいですね。

また、日本の医師免許が通用しないインドネシアやタイは、医師や看護師を対象の講演や現地病院へのコンサルテーション支援で何度か訪問していますが、受け入れ側の目的意識も情熱も素晴らしいものでした。

街のクリニックが存在しない上海で在留日本人の診療支援

–上海は大都市ですし、医療水準が低いとは思えないのですが、なぜ医療支援をされているのでしょう?また、支援されている国がほかにあったら教えてください。

高松さん:

上海は、日本人が以前は多い時で10万人ほど、現在も4万人以上住む都市です。その中で日本人のクリニックはほとんどなく、常勤の耳鼻科医もいない状況です。そもそも、中国には街のクリニックというものが日本に比べ非常に少なく、医療システムとして大病院が中心であるため、そこで診察となれば大変な待ち時間ですし、保険制度が不十分な為、非常に高額な医療費がかかるという感じなんです。

基本的に、一般の方は病気になれば薬局で薬や漢方を買ってしのぐことが多いため、私たちの毎月の診療支援は、現地の日本人の方々に大変喜ばれました。

–コロナ禍がおさまって支援が復活する日を、現地の皆さんは心待ちにしていますね。最後に、今後へのご展望をお聞かせください。

高松さん:

まずは、出来ることのベストをつくし、患者様の笑顔が見れるように、地域に根差した医療のホスピタリティとクオリティを日々あげることを目指します。同志たちには、働きがい、やりがい、生きがいをもって働いて頂きたい。それをベースとして、コロナが落ち着いたら海外への支援も再開したいですね。

沖縄も耳鼻科医が不足していて、後継者がいないご高齢の医師から、病院を継いでくれないかという話などもあります。翔和仁誠会には志の高い医師がたくさんいますので、皆で医療の地域格差を是正できるように、これからも頑張っていきます。

–地域に頼れる良い病院があるというのは、「住み続けられるまち」にも住み続けられる世界にも不可欠なことだと心から思います。今日は貴重なお話をありがとうございました。

関連リンク

医療法人社団翔和仁誠会 http://sho-jin.or.jp/