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サンワード株式会社|消防用ホースや廃車地下鉄車両の吊り革を「楽しいカバン」にリユース

サンワード株式会社 代表取締役社長 池田さんインタビュー

池田 智幸

中学・高校と陸上競技に明け暮れ、大学在学中は大阪の某お笑い事務所に属し、現在タレントとして活躍中の芸人さんと活動ののち社長を夢見て就職活動に励み三井物産レザー販売(現・三井物産プラスチック)に入社。入社後カバン・縫製業界での営業を経て、平成11年7月 33才の時にサンワードの株式購入により代表取締役に就任。「皆が笑顔になる物作り」をモットーに斜陽状況にある縫製業界を立て直す為、近年は毎年学校卒業したての女性を積極的に採用し、蓄積された縫製技術の継承を行っている。またその若手工員の感性から生まれたアイデアを積極的に商品化し「世界を笑顔にする商品」を作り出すことを目指している。

Introduction

サンワード株式会社(以下、サンワード)は、受託生産をメインとしたカバン・袋物の縫製メーカーです。SDGsという言葉が認知されるよりもずっと前から、規格外になった消防用ホースや、引退した鉄道車両の部品に着目し、カバンなど新たな製品に生まれ変わらせています。その背景には、産業廃棄物の削減を目指すとともに、一風変わった商品で「お客さんに楽しんでもらいたい」という思いがありました。

サンワードの池田社長に、こうしたリユース商品を作り始めたきっかけや、今後のSDGsへの取り組みについて伺いました。

「世の中のため」を追求していたらSDGsがついてきた

–本日はよろしくお願いします。まず始めに、事業内容について教えてください。

池田さん:

僕たちはカバン・袋物の縫製メーカーで、受注生産(OEM)を専門に手掛けてきました。規格外の消防用ホースなどの廃棄予定の資材をもとに自社企画のカバンを作るようになったのは、今から10年くらい前のことですね。

–SDGsという言葉がまだ認知されていない時から取り組まれていたのですね。

池田さん:

より消費者の方に喜んでもらうために、受注生産でカバンを作るのみでなく、今まで培ってきた技術を活かして自社ブランドを立ち上げようと思い立ったのがその頃でした。

流行を追いかけるのではなく、企業として少しでも社会に貢献できるコンセプトでものづくりをしたいと考えていたときに、規格外として廃棄される消防用ホースの存在を知ったんです。

規格の厳しさゆえに規格外として廃棄される消防用ホース

–消防用ホースが大量廃棄されていたのですか。

池田さん:

はい。消防用ホースは人命に直接つながる物のため、規格がとても厳しいです。製造の過程で少しでも傷がついたり、厚みが違ったりするだけで、消防用ホースとしての使命は果たせなくなってしまうのです。

–一度も使われていないホースが、大量に捨てられるのはもったいないですね。

池田さん:

そうなんです。それに消防用ホースは産業廃棄物となるため、環境に良くありませんし捨てるだけで莫大な費用がかかってしまうという話もお聞きしました。

–それで消防用ホースをカバンに生まれ変わらせることにしたのですね。

池田さん:

はい。消防用ホースは、カバンに適した3つの特性があることに気づきました。まずは丈夫で耐久性に優れていること。そしてホースなので耐水性もありますよね。また様々な色のホースがあり、カラフルな所もカバンに最適だと感じました。

–消防用ホースをカバンに仕立てるのは難しくなかったですか。

池田さん:

消防用ホースには、赤やオレンジ、水のイメージの水色など、もともとカラフルな素材も多いです。そのカラフルな色の消防用ホースをそのまま使用することで、出来上がったカバンも他にはない鮮やかな商品となりましたね。

ただ消防用ホースは大変丈夫にできていますので、最初縫うことにも一苦労でしたし、元々筒状のホースを平面にする所にも手間と時間を費やしました。

「これ何でできているの?」と大反響!さらなる進化へ

–商品をお客さんに見せた時の反応はいかがでしたか?

池田さん:

お客さんからは、「これ何でできているの?」と大反響でした。百貨店で期間限定ショップを開いたのですが、みなさんに楽しんで頂けたのが嬉しかったです。

–他にも、廃棄予定の素材を活用する取り組みを始められたんですよね。

池田さん:

はい。廃車になった地下鉄車両の部品を使ったカバンが今春発売の予定です。

これは大阪メトロの「廃車再生プロジェクト」の一環として取り組んでいるものです。地下鉄の車両は30~40年で廃車になるのですが、そのつり革・貫通幌などを回収し、洗浄、消毒を経てカバンに生まれ変わらせようと試作中です。

–こうしたリユース商品の売り上げは、全体の何割を占めていますか?

池田さん:

自社ブランドの売り上げは、全体の1割もいきません。ただコロナ禍を経験する中で、自社企画の商品に対する考えが変わってきていて、今後更に力をいれて進めようと思っています。最終的にはOEMと半々の売上比率にすることを目指しています。

–自社ブランドを拡充していくんですね。

池田さん:

良くも悪くも、お客様から意見が直接聞こえてくるので、やりがいや楽しみがあります。今後も、家族や友達に思わず話したくなるような商品を増やしていきたいですね。私たちの商品を中心に、笑顔や会話が広がっていけばいいと思います。

–ここ数年でSDGs関連商品のニーズは増えましたか?

池田さん:

ニーズについてはまだぴんと来ていません。ただ、マスコミなどからの問い合わせがすごく増えました。SDGsに特に関心を持っているのはZ世代の皆さんだと思っていますので、そういう皆さんが僕たちの取組んでいる商品を見てくれればいいなと思っています。

被災地で障がいを持つ方とはじめたボタン作り

–他にもSDGsにまつわる取り組みはなさっていますか。

池田さん:

障がい者の皆さんと共に歩んでいくプロジェクトがあります。一つは東日本大震災の被災地、福島県の障がい者の皆さんとの取組みです。

またもう一つは、本社のある大阪府下や工場のある滋賀県で自閉症やダウン症の皆さんが描いたデザインを使用したバッグを作っているんですよ。

–どのようなきっかけで障がい者支援を始めたのですか。

池田さん:

消防用ホースのカバンを作った直後に起こった東日本大震災がきっかけです。小さな会社なので、大手企業のように支援金を出すことはできないのですが、何かしたいと思い現地に足を運びました。

現地の方から話を伺うと、健常者の方はもちろんですが、障がい者の方も経済面でとても困っていることがわかりました。

そして、福島県の須賀川市にある障がい者施設に木を削る機械があるとわかり、その機械を使って木のボタンを作ってもらうことにしました。

–木のボタンですか。

池田さん:

はい。それをカバンに装飾して、新たなブランド「モンガ・クナップ(スウェーデン語でたくさんのボタン)」として展開していくことにしました。大きなことはできませんが、僕たちができることをやっていきたいと思っています。

–滋賀県での取り組みについても、ぜひ教えてください。

池田さん:池田さん:

工場の近くでお付き合いのあった作業所にいらしたダウン症の女性の絵を見せていただいたのですが、とても感動しました。

そこで、その描かれた絵をカバンなどのデザインとして使わせてもらい、「RAU-RAU-G-YUKA」ブランドとして商品化させてもらいました。

そして商品の売り上げの一部を、ロイヤリティーとして御本人にお戻ししています。

SDGsに沿った事業を成功させ中小企業に勇気を与えたい

–今後の展望を教えてください。

池田さん:

SDGsという取り組みにおいて、中小零細企業でもきちんと利益を出し、ビジネスモデルとして成功できることを示すのが僕たちの使命だと思っています。

–中小零細企業にとって、SDGsに取り組むのは難しいことなのでしょうか。

池田さん:

大手企業は利益が出る、出ないにかかわらず、企業の社会的責任(CSR)として取り組んでいるところも多いでしょう。

一方で人や経営資源の少ない中小零細企業の場合は、「そんな時間、お金、余裕はない」と考えていることが多いと思います

–コロナ禍で経営が大変な企業も多いでしょうから、最近は尚更そうですね。

池田さん:

はい。先行きの見通しが立たない中でも、SDGsがビジネスモデルとして成り立ち、利益を生むことを証明できれば、取り組みたいけれどできていなかった企業も、真剣に事業化を検討するようになるでしょう。

新規事業としての選択肢が増えるのではないかと思っています。

–事業として継続できなければ、一過性の流行りになってしまいますもんね。

池田さん:

そうですね。最近はSDGsという言葉をよく耳にしていますが、数年たったらSDGsという言葉がなくなっているかもしれません。

SDGsという言葉自体がなくなっても、日常で当たり前のようにそういう取り組みができる社会になることがを願っています。

–貴重なお話をありがとうございました!

インタビュー動画

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