株式会社スリーハイ|ヒーターづくりでモノを温め、SDGsの取り組みで人と地域を温める

株式会社スリーハイ 徳江彩貴さん インタビュー

徳江 彩貴

1986年2月、東京都町田市育ち。新卒で求人広告の営業。大学時代から興味のあったCSRに携わりたいと、CSRレポート等の編集者に。大手飲食店の販促・広報・採用の部署で、店舗デザインやアプリ開発、プレス対応等を経験後、子育てとの両立をしやすいスリーハイに広報として入社。現在は経営企画室 室長。これまでの経験を活かし、自ら編集・ディレクションしたスリーハイ初のサステナビリティレポートを完成させたばかり。時短勤務のママ社員。趣味は、アウトドア・映画鑑賞・ヨガ。

introduction

工業用ヒーターのメーカー「株式会社スリーハイ」(横浜都筑区)は、CSR、SDGsにも熱心に取り組んでいます。とりわけ、近隣の子どもたちの工場見学ツアーや、地域住民にも解放する社内多目的カフェのオープンは、世代をこえて人々をつなぎ「温めて」います。

今回は、同社の経営企画室室長徳江彩貴さんに、SDGsに関連する様々な取り組みの状況を伺いました。

地域活動への従業員の困惑が、実地体験でワクワクに変わる

–はじめに、株式会社スリーハイがどのような会社であるかをご紹介ください。

徳江さん:

1990年に設立した、横浜都筑区東山田にある工業用電気ヒーターのメーカーです。ヒーターを扱うことからも、経営理念は「ものを思う。ひとを思う。モノづくりを通して、関わる人たちを温めていきたい」です。

製品はすべてハンドメイドで、ほとんどがオーダー製です。「工業用ヒーター」だけでは判りづらいかもしれませんが、レールやパラボラアンテナの凍結防止、ビュッフェの料理トレーの保温、洗面台の鏡のくもり防止など、身近なところで使われてもいます。

本業と共にCSR、SDGsの活動にも力を入れており、特に地域をつなげていくために、様々な取り組みを展開しています。

–メーカーの経営理念に「人」が二回登場していることが印象的です。現社長が制定した理念とのことですが、「人」を入れた理由を教えてください。

徳江さん:

モノだけではなく「人の心」も温めたい、という気持ちが基盤にあります。また、一般住宅と工場が混在する準工業地域に立地し、住人との関係性を良好に保つ必要性があることも背景となっています。

東山田準工業地域

従業員としての「人」にも丁寧な視線が注がれます。フレックスタイムの導入により「朝礼」では全員がそろわないため、「昼礼」を行っていますが、毎日、みんなの体調や状況を確認し、顔を合わせてコミュニケーションをとることを重視しています。

–御社は、2010年に横浜型地域貢献企業(後年は例年最上位の「プレミア企業」)に選ばれたのを皮切りに、CSR,、SDGsに関する様々な表彰や認証を授与されています。社長は「最初は従業員の理解を得られず、対話を重ねた」と語られていますが、そのご発言に、権威主義的にではなく、「人」を尊重するSDGs的精神を感じました。現在の「スリーハイ」に至るまでの、従業員の皆様の意識の変化をお聞かせください。

徳江さん:

社長が地域とのつながりを手がけ始めたあたりは、会社に不在の時間が増えました。当時、本業とは関係ない「地域」に時間を費やすことに戸惑いや抵抗を感じる従業員は多く、「それをやる意味は何?」という疑問が膨らんでいました。

社長は、本業と地域が無関係でないことなど、従業員たちへの説明や対話を重ねはしましたが、なによりも私たちの意識が変わるきっかけとなったのは、近隣の小学生の工場見学に駆り出された担当者たちが、そこに喜びを感じ始めたことでした。

モノづくりの現場や説明に目を輝かせる子どもたちと触れる喜びに加え、自分たちの仕事への誇りも芽生え、社員もパート従業員も、「これって楽しい!やりがいがある!」と感じた…つまり、おとなもワクワクしてきたのです。

子どもたちが地域に触れ、製造業とそこで働く人々を知る

「やらねばのSDGs」ではなく「喜び」は、基本理念にも添う理想の流れですね!工場見学「こどもまち探検」を始めたきっかけや具体的なツアー内容を詳しく教えて頂けますか?

徳江さん:

地域の活動を具体的に始めるきっかけとなったのは、2011年の東日本大震災です。それ以前、弊社は東山田地区にどのような企業があるかをほとんど知りませんでした。震災の日、この地区もかなり激しく揺れ、あわてて外に飛び出したときに社長が他の会社の人々と知り合い、情報を交換し合いました。この時、地域に様々な企業が存在することを実感し、後日、具体的につながり合うことができないかと考えたそうです。

その後2013年に、子どもたちに地域の企業への聞き取りボランティアをしてもらいながら、一枚の地域内企業マップを作りました。マップを作成するにあたり、たくさんの企業が協力してくださり、この頃から地域のつながりができ始めました。

同年、東山田準工業地域の工場約80社の中から10社ほどに参加して頂くかたちで、地域の子どもたちが工場を見学する『こどもまち探検』がスタートしました。ツアーでは、近隣の小学三年生が、校外学習として工場を三社ほど巡ります。製造業とはどんな仕事?どんな人々が働いている?そんなことを実際に見てもらいます。子どもたちは、様々なモノが作られる現場を好奇心いっぱいで見学し、多彩な質問も飛び出します。受け入れ工場の方々からも、子どもたちから元気をもらった、また来てほしい、などの嬉しい反応が返ってきます。

『こどもまち探検』は見学のみですが、『オープンファクトリー』というイベントでは、廃材のシリコンスポンジなどを使ってスマホ置きなどの「モノづくり」をしたり、ヒーターでチョコレートを溶かしてチョコバナナを作ったりなどの体験もしてもらいます。

中高生の工場見学も受け入れていますし、大学生にはインターンシップというかたちで実際に働いてもらっています。こちらも若い人々からの刺激を受け、良い相互関係を築いています。

活動の目的の一つには、子どもたちや若者に製造業の魅力を知ってもらい、将来の担い手に育ってほしいという願いもありますね。

–たくさんの実地体験を経て、従業員の方々のSDGsへの意識も深まっていったのですね。

徳江さん:

当初は、「地域のつながり」「子どもたちとのつながり」への関心や喜びが深まったに過ぎません。社長の意識もCSR中心で、そこと重なりあう部分が多いとはいえ、SDGsへの認識と理解はあまりなかったのです。そこから世間での関心の高まりと同様に、弊社でも徐々にSDGsを学び始めました。

転機の一つとなったのは、2019年に全従業員を対象に一日を費やした「SDGsを学ぶ日」かと思います。SDGsのカードゲームでシミュレーション体験をしたあと、みんなで、「スリーハイ」としては何ができるか?を考える時間をもちました。

その後、「横浜市SDGs認定制度(Y-SDGs)」の上位認定や、神奈川県の「かながわSDGsパートナー」の認定を頂き、2021年には、これまでのCSR、SDGsの歩みをまとめたサステナビリティレポートを発表しました。現在では、従業員のSDGsへの意識はおおいに深まったといえます。

工場内のカフェDENは、地域のハブとなる多目的スペース

カフェDEN

–地域の子どもたちと歩んだ学びでもあったのですね、おとなを対象にした活動はあるのでしょうか?

徳江さん:

全世代の地域住民がつながりあえる場所として、カフェ&ファクトリーというコンセプトで、2016年に第二工場の一階にカフェDENをオープンしました。工房での作業が見えるカフェでは、火、水、木曜日はサンドイッチ、スープ、フライドポテトなどのDENランチを楽しんで頂き、第一・三金曜日には、地域のフードコーディネーターの方が、地元の農家から規格外品などを直接仕入れて地産地消のランチを提供しています。

現在は、このフードコーディネーターの方の「ごはん」で地域をもっとよくできないか?という企画を進めているところです。近隣の餃子工場や食肉加工工場で規格外となった食材を使った、フードロスをなくす弁当「東山田シェアごはん」というプロジェクトです。

地域のひきこもりの方々や1人暮らしの高齢者の方々に、地域のケアプラザを経由して提供させて頂く予定です。

DENは、カフェとしてだけではなく、ヨガや英会話、各種イベントなどの共有スペース、コワーキング、親子工作、カフェの一日店長、撮影など、自由な幅広い用途でご利用頂けます。地域のハブとなるコミュニティースペースとして、さらに発展させていきたいですね。

環境保全にも従業員の労働環境改善にも熱意をもって取り組む

–御社は環境保全の取り組みも熱心になさっているとのことですが、代表的なものをご紹介くださいますか?

徳江さん:

2022年3月、すべての電源で再エネ100%に切り替えが完了しました。来年度以降、20t程度のCO₂を削減できる見込みです。

廃材・端材は、希望される学校や個人に提供や寄付をしてきましたが、廃棄物削減の観点から、2020年より弊社の公式オンラインショップでの販売も開始しました。

また、以前からの取り組みとしては、原材料などが送られてくる段ボール箱を、当社製品の納入時に再利用しています。オリジナルのリサイクル表示シールを段ボール箱に貼ることで、お客様にも環境配慮の取り組みをお伝えできるSDGsの伝播効果もあります。

–「人」を大切にする御社として、働き方改革にも熱心に取り組まれていると思います。何点かご紹介頂けますか?

徳江さん:

勤務間インターバル制度(注:勤務と次の勤務の間隔を9時間以上あけることを義務づける法案)を法律施行に先駆けて2018年に導入し、残業時間が大幅に削減されました。弊社は女性が多く働き、子育て中の従業員も多数いますが、2020年にはフレックスタイムを導入し、現在はテレワークの環境も整備されたので、ライフステージに合わせた働き方が可能です。実は、私も名古屋在住でのテレワーク勤務です。

また、弊社の仕事をおおいに担っているのはパートの女性従業員です。「マダム」という呼称ですが、素晴らしい能力の「凄腕マダム」ばかりです。全員が、自身の力を発揮しつつも互いに支え合う、良い企業文化ができあがっています。

–素晴らしい環境ですね!最後に今後への展望をお聞かせください。

徳江さん:

SDGsでいえば、これまでの活動に加え、他企業、他組織との情報共有の環境も整い、サステナビリティレポートによって情報を開示したことで、新しいステークホルダーとのつながりもできつつあります。現在は第二ステージがスタートしたという認識です。

これまでの取り組みを継続しつつ、自社の事業そのものでも、さらに環境に配慮した製品をつくることで、SDGsを浸透させていきたいと思っています。

–長い時間をかけてのSDGs活動の実りを感じます。今日は貴重なお話をありがとうございました。

関連リンク

株式会社スリーハイ:https://www.threehigh.co.jp/