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タイムパフォーマンスとは?具体事例やメリット・デメリットなども

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「タイムパフォーマンス」という言葉を聞いたことはありますか。「あまり知らない」という人もいるかもしれません。しかし実は多くの人が、タイムパフォーマンスを意識した行動を日常的にしています。

この記事では、タイムパフォーマンスとは何か、具体事例、なぜ定着したのか、メリット・デメリット、企業はタイムパフォーマンスの向上に取り組むべきなのか、SDGsとの関係を解説します。

タイムパフォーマンスとは

タイムパフォーマンスとは、費やした時間に対して得られる成果や満足度の割合を表す言葉で、時間対効果を指します。タイパともいわれ、Z世代を中心に人々の考え方や行動に影響を与えています。辞書を編む人が選ぶ「今年の新語2022」に、「タイパ」が選ばれたことでも関心を集めました。このような背景から、近年では、マーケティングや企業運営などにも取り入れられています。

知っている人は半数超

タイムパフォーマンスという言葉は、どのくらい知られているのでしょうか。ここからは、日本インフォメーション株式会社が行ったタイムパフォーマンスに関する調査を交えながら解説を進めていきます。

16〜59歳の男女1,000を対象に行われた2023年の調査によると、タイムパフォーマンスという言葉を知っている人は、全年代で半数を超えています。

■「タイムパフォーマンスという言葉を知っているか?」

日本インフォメーション(株)調べ1

性別や年代に注目して見ると、知っている人の割合は男性が高く、中でも20代が最も多いという結果でした。一方、言葉だけ知っているという人は2〜3割ほどです。言葉はある程度知られていても、意味まで理解している人は多くないと言えるでしょう。

しかし多くの人は、意識することは少なかったとしても、日常生活のさまざまな場面でタイムパフォーマンスに関連した行動をとっています。言葉になじみがなくても、実は生活に身近な尺度になっているのです。

コストパフォーマンスとの違い

タイムパフォーマンス(タイパ)に対して、コストパフォーマンス(コスパ)という言葉があります。コストパフォーマンスは、費用対効果という意味で、支払った金額に対して得られる成果や満足度の割合を言います。タイムパフォーマンスが時間を費やすのに対して、コストパフォーマンスは費用を支払うところが異なります。コストパフォーマンスも、人々の考え方や行動に影響を与えている指標です。

タイムパフォーマンスの具体事例

タイムパフォーマンスが日常生活のどのような場面で行われるのかを具体的に見ていきましょう。

先の調査で、タイムパフォーマンスを意識して行っていることを聴取したところ、最も多かったのは「ながら動画視聴」、次に「ネットショップ・ネットスーパーの利用」でした。

■「タイムパフォーマンスを意識して行っていることは?」

日本インフォメーション(株)調べ1

上位には、

  • ながら視聴
  • ネットショップ
  • 動画の倍速視聴

などが挙げられます。なかでも、近年特に定着した、「ながら視聴」「リモートワークの実施」について説明します。

ながら動画視聴

最も多かったのが「ながら動画視聴」です。ながら視聴とは、何か別のことをしながら動画視聴をすることを指します。例えば、動画を再生しながらSNSを見る、ウェブを見る、音楽を聴くなどです。スマホやタブレットには、動画を視聴しながら別のアプリを使える機能を備えている機種もあります。

リモートワークの実施

仕事に関連する項目の中で一番多かったのは、「リモートワークの実施」です。通勤に多くの時間を使っている人もいるでしょう。また、商談や打ち合わせなどで外出する場合もあります。こうした移動の時間を減らすことができれば、時間対効果を上げることにつながります。

なぜタイムパフォーマンスが定着したのか

タイムパフォーマンスの具体事例を見ていくと、決して特別なことではなく、広く一般的に定着しているものばかりです。それではなぜ、こうしたタイムパフォーマンスが定着したのでしょうか。3つのポイントから理由を考えてみます。

デジタル技術の発達

1つ目は、デジタルの発達です。動画視聴やネットショップの利用は、インターネットを通じて行います。そしてインターネットを利用できるスマートフォンを保有している世帯は、97.3%と高い数値です。(2021年)

タイムパフォーマンスの定着は、このデジタル技術のソフトとハードの両面が発達したことにあると考えられます。

働き方の多様化

もう1つは、働き方の多様化です。2020年に新型コロナウイルス感染症が広がり、自宅で仕事ができるリモートワークという働き方が浸透しました。また、働き方改革により、時間や場所にとらわれない柔軟な働き方も推進されています。

こうした働く環境の変化により、タイムパフォーマンスをより追求できるようになったことも事実です。また、リモートでの仕事を可能にしたデジタル技術の発達ももちろん貢献しています。

タイムパフォーマンスが向上することによるメリット

タイムパフォーマンスを向上させることで、実際にどのようなメリットがあるのでしょうか。調査の結果から、詳しく見ていきましょう。

生活の質の向上

1つ目は、生活の質の向上です。調査では、日常生活の中でタイムパフォーマンスを意識している人は4割弱でした。そして意識している人の約6割が、生活の質が上がったと回答しています。

■「タイムパフォーマンスを意識している?」「タイムパフォーマンスの意識により生活の質に影響があった?」

日本インフォメーション(株)調べ1

タイムパフォーマンスを意識することの魅力は、新たな時間が生まれることにあります。こうした時間を有効に利用すれば、より多くの物事をこなすことが可能です。そしてその分満足感を得られることが、より豊かな生活につながっていると考えられます。

ワークライフバランスの実現

もう1つは、ワークライフバランスの実現です。先に事例としてリモートワークの実施を取り上げました。タイムパフォーマンスを意識して行っている人のうち、リモートワークをトップ5に挙げたのは、40、50代の男性です。

■「タイムパフォーマンスを意識して行っていることは?」(トップ5)

日本インフォメーション(株)調べ1

タイムパフォーマンスを意識している項目には、メディアや買い物、家事に関することが多い中、40、50代の男性が仕事に関する項目を挙げているのは特徴的です。

この背景には、50代のワークライフバランスが理想と異なっている現実があると考えられます。調査によると、50代の半数はプライベートを重視したいと考えていますが、現実は7割が仕事を重視しているという実態があります。(Job総研調べ※)

タイムパフォーマンスは、ワークライフバランスの実現につながる側面もあるのは1つの事実です。

※Job総研による『2023年 ワークライフ実態調査』を実施 理想はプライベート重視7割 実際は仕事に偏りギャップ顕著 | パーソルキャリア株式会社のプレスリリース

タイムパフォーマンスに関するデメリット

タイムパフォーマンスにはメリットもある一方で、デメリットになりうる場合もあります。

足並みが揃わないことがある

自身がタイムパフォーマンスを求めていたとしても、相手もそうとは限りません。仕事での商談であれば、直接会ってじっくり話し合いたい商談相手に対して、リモートでの提案をしてもうまくいかないかもしれません。

プライベートであれば、友人やパートナーがゆっくり買い物したい・動画を観たいと思っているケースもあるでしょう。

つまり、誰もがタイムパフォーマンスを重視しているわけではなく、時と場合に応じた選択をしなければならないことに注意しておく必要があります。

企業はタイムパフォーマンスの向上に取り組むべきなのか

タイムパフォーマンスは日常生活の中で意識されていますが、企業はタイムパフォーマンスの向上に取り組むべきなのでしょうか。

企業はこれまで、デジタル化の推進、労働時間の削減などの効率化を進めてきました。そして引き続き努力を続ける必要があるでしょう。しかしこうした取り組みは、タイムパフォーマンスと重なる部分があることに気づきます。効率化は、業務の効果を最大限に得るための手段という意味で、タイムパフォーマンスやコストパフォーマンスも含んでいるのではないでしょうか。

つまり、これまでのように効率化を進めていくことに変わりはありません。ただし、タイムパフォーマンス(時間対効果)に注目する場合、何らかの方法で測定や数値化を行い、効果の有無を監視していくことも必要でしょう。

ここでは、タイムパフォーマンスを取り入れることで成果の期待される、生産性の向上と労働力確保について触れていきます。

生産性の向上の手段として

生産性は、タイムパフォーマンスを意識することで、大きな成果を得られる可能性があります。現状の所要時間と成果物の量を把握した上で効率化の可能性を探り、目標値を定めるなどして取り組むことも有効です。

日本の時間当たりの生産性は52.3ドルと、OECD加盟38カ国中30位です。(2023年)理由は、1つの仕事に携わる従業員数が多いことなどにあるといわれています。国際的な競争力を身に付けようとする場合は、生産性の向上は特に必要な要素になるでしょう。

労働力の確保のため

労働力人口は、労働参加が2022年と同水準で推移した場合、2022年の6,902万人から、2030年には6,556万人、さらに2040年には6,002万人に減少すると予想されています。企業が経営規模を維持していくためには、労働力の確保が課題と言えるでしょう。

そこで企業は、従業員にとって魅力的な労働環境を作る努力を続けています。今後も残業時間の削減や従業員の望むワークライフバランスの実現を進めていくなら、そのプロセスにタイムパフォーマンスの観点を取り入れることも1つの方法です。

タイムパフォーマンスとSDGs

最後に、タイムパフォーマンスとSDGsとの関係について確認します。タイムパフォーマンスは、生活の質の向上やワークライフバランスの実現につながることから、目標3「すべての人に健康と福祉を」、目標8「働きがいも経済成長も」、目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」の達成に助力します。

目標3「すべての人に健康と福祉を」

目標3「すべての人に健康と福祉を」は、健康的な生活と福祉を推進することを掲げています。タイムパフォーマンスは、活用の仕方により心身の健康を促進することも可能です。

目標8「働きがいも経済成長も」

目標8「働きがいも経済成長も」は、生産的な雇用や働きがいのある仕事をつくり出すことを定めています。タイムパフォーマンスによりライフワークバランスを実現することは、働きがいにつながります。

目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」

目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」は、イノベーションを推進することを掲げています。タイムパフォーマンスという視点は、新たな技術や仕組みなどを創出する可能性を秘めています。

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まとめ

タイムパフォーマンスという言葉になじみがないという人もいるかもしれません。しかし多くの人が、タイムパフォーマンス(時間対効果)に関わる行動をしています。その意味では、私たちの生活に身近な行動指針と言えるでしょう。

タイムパフォーマンスを意識すると、生活の質の向上やワークライフバランスの実現、企業の生産性につながるというメリットがあります。日常生活や仕事の中で上手に活用してみてはいかがでしょうか。