東京立正中学校・高等学校|SDGs・PBLに特化したコースを開設!より主体的な生徒を育てたい

東京立正中学校・高等学校 原子桂輔さん インタビュー

原子桂輔 

先生東京立正中学校・高等学校 生徒会担当。SDGs委員会代表。国語科教諭。ESD(持続可能な開発のための教育)に取り組むイノベーションコース1期生の担任となったことをきっかけに、学校のSDGs活動全般のプログラムを作成。

introduction

東京都杉並区にある、東京立正中学校・高等学校。地下鉄丸ノ内線・新高円寺駅から歩いて8分程度の、緑豊かで閑静な住宅街に佇む私立の中高一貫校です。

2015年度に新設した「イノベーションコース」では、課題解決型学習(Project Based Learning・PBL)とSDGsに特化した教育を行っています。今回は、このイノベーションコースの1期生の担任をされた、原子桂輔先生にお話を伺いました。

きっかけは、PBL(課題解決型学習)

–早速ですが、学校の概要や特徴、生徒さんの雰囲気などを教えてください。

原子先生:

本校は、近隣にある妙法寺が母体となって運営している、仏教主義の中高一貫校です。元々は昭和元年に高等女学校として開校し、2002年より共学化しました。

建学の精神に「生命の尊重・慈悲・平和」を掲げ、教科学習・進路実現に向けた指導はもちろんですが、「心を育てる教育」にも力を入れています。

現在、生徒数は700名ほどで、人懐っこく素直な生徒が多いのが特徴でしょうか。地元杉並区をはじめ近隣から通う生徒が多いものの、中には他県から通ってきている生徒もいます。

元々部活動が盛んな学校で、加入率は90%を超えています。特に水泳部・男女バレーボール部・ソフトボール部・吹奏楽部・ダンスドリル部などが大会で活躍していて、水泳部は過去にオリンピックのメダリストを輩出、ダンスドリル部もアメリカの大会に出たことがあるんですよ。

カリキュラムは、大きく3コースに分かれています。中高一貫のイノベーションコースのほか、スタンダードコースと、難関大学合格を目指すアドバンストコースです。

また中学部ではクロスカリキュラム(教科横断学習)として、「畑の学習」を行っています。校内に畑があるのですが、ただ野菜を育てるのではなく、土壌作りから栽培、調理、試食まで行うことで、理科・社会・家庭科・保健といった様々な教科の内容を横断的に学習します。これが評価され、2015年にはユネスコスクールに認定されました。

–他校に先がけてSDGsに関連する取り組みを始めたようですが、何かきっかけはあったのですか。

原子先生:

2015年に、中高一貫のイノベーションコースが開設されました。このコースは当初、PBL(課題解決型学習)を教育の柱としたコースとしてカリキュラムが組まれました。

PBLとは

Project Based Learningの略。「課題解決型学習」や「問題解決型学習」と呼ばれる。

生徒自らが課題を見つけ、その課題を解決する過程を通して知識や技能を身につける学習のこと。

文部科学省が進める「アクティブラーニング」の教育方法として、注目を集めている。

反対に、教師が教科書に沿って授業をする従来のスタイルのことは、SBL(Subject Based Learning:科目進行型学習)という。

当時の校長が2015年9月に採択されたSDGsにも注目すると同時に取り組みも始めました。PBLを進めるにあたって、SDGsが相性が良かったということもあります。

私自身が、イノベーションコース1期生の高校3年間の担任だったのですが、最初はSDGsの基礎から勉強したり、関連イベントに参加したりするなど手探りでのスタートでした。

カンボジア研修で、生徒の将来が変わる

–イノベーションコースでは、具体的にどのような取組を行っているのでしょうか。

原子先生:

最大の特徴は、高校2年次にカンボジアで行う「課題解決型海外研修」です。

カンボジアの高校生との直接交流が最大の目的で、高校1年次から事前学習として、リモート交流を始めます。お互いの国の課題について英語で話し合う経験は、なかなか得ることのできないものです。

研修では現地高校生との交流のほかにも、孤児院やJICAカンボジア事務所への訪問、マングローブの植林なども行っています。いままで本やネットの世界でしか触れたことのない、開発途上国の孤児院の現状を自分の目で見たり、現地で活動する日本人の話を聞いたりする機会は非常に貴重なものだと考えています。

現地高校生と事前にリモートで意見交換

–最近は海外に修学旅行に行く高校も増えていますが、カンボジアのような開発途上国でこのような踏み込んだ経験ができるのは、生徒にとっても大きな刺激になりそうですね。

原子先生:

この研修旅行を通して、将来やりたいことの方向性がより明確になる生徒も少なくないんです。

たとえば、元々は何となく栄養学系の大学に進みたいと考えていた生徒が、「子ども食堂などで身の回りの子どもたちの支援をしたい」という目標ができたと語っていました。別の生徒は、研修旅行以前は将来のビジョンが全くなかったのですが、孤児院に行ったことで「海外の子供たちの就職支援のために日本語を教えたい」と日本語教師を目指すようになりました。

1期生の中には、この研修旅行をきっかけに、インドネシアの大学に進学した生徒もいるんです。彼は元々海外に興味はあったようなのですが、カンボジアに行ったことでその思いが固まったようです。将来的にはJICA海外協力隊などにも興味を持っていて、あえて都市部ではなく地方の大学を選び、自分自身ができることを模索したいと言っていました。

カンボジアの孤児院で子供たちと交流

地域の課題にも着目

–イノベーションコースでの学びが、生徒の今後の人生に深くかかわっているんですね。ところでコロナ禍では、カンボジアに行けていないのではないですか?

原子先生:

ここ3年は海外研修に行けていない状況が続いています。ただ生徒たちは最初こそショックを受けていたものの、早い段階で気持ちを切り替えていたのが印象的でした。

もともと、研修旅行に限らず、日々の身近な課題に気づける取り組みを心掛けています。課題解決型プログラムとして、外部NGOや平和財団の方と協力してワークショップを行ったりもしています。

加えて、生徒たちに身近なところにも課題があることに気づいてほしくて、学校のある高円寺地域に目を向け、子ども食堂や高齢者の支援センターと連携することにしました。単にボランティア活動をするだけでなく、子ども食堂の成り立ちやお金の流れなどについて、運営スタッフの方に来ていただいて授業をしてもらうこともしました。

–地域での取り組みは、具体的にどのようなことをされているのですか。

原子先生:

先ほどお話しした子ども食堂の他、高円寺駅100周年イベントでの募金活動、高円寺阿波踊りでの清掃ボランティア、地域の高齢者支援などを行っています。清掃ボランティアはイノベーションコースに限らず全校生徒に公募したのですが、教員の予想を上回る参加があり、とても嬉しかったです。

また高齢者支援の一環として、今年の春休みにイノベーションコースの高校1年生が中心となって「桜を楽しむ会」を行いました。高齢者を主とする地域住民約40人を学校にお招きし、満開の桜の下、軽音楽部の演奏や生徒が企画したゲームなどを楽しんでいただきました。企画段階から、地域の方や社会福祉協議会、ケア24(地域包括支援センター)の方に入っていただいたのも特徴です。

ほかにも、最近地域でケア24主催の「スマホ相談会」があったのですが、その際生徒がサポーターとして、高齢者にスマートフォンの操作方法を教える活動をしました。生徒の学びになるとともに、地域のデジタル格差の解消の力になれたのではないかと思います。

「桜を楽しむ会」の様子

先生・生徒・外部の協働で広がる取り組み

–生徒からの発案で企画がうまれることもあるんですね。

原子先生:

そうですね。生徒発信で、訪れる予定だったカンボジアの孤児院の子どもたちが作ったミサンガを、学園祭で販売して売上を寄付する活動も行いました。

また、昨年度からの取り組みとして「3校協働プロジェクト~GOALs~」を行っています。これは本校を含めた3校の私立中高でチームとなり、昨年度は各校の実践内容の発表や、その内容をチラシにまとめるなどの活動を行いました。

今年度はより発展的な取り組みとして、「福島から考える持続可能な未来」というテーマで活動をしています。福島県いわき市でオーガニックコットンの生産・製品加工・販売を行っている団体に協力してもらっているのですが、これも生徒のアイディアが活かされているんです。

これまで、3校の代表生徒が月に1回程度集まって様々な課題について話し合ってきました。

2学期には実際に福島に出向き、団体の方とのミーティングなどを行ったり、学園祭で製品の委託販売を行ったりする予定です。

大人とのミーティングも積極的に行う

–本当に多様な取り組みをされているのですね。前例のないものも多く、プログラム作りには苦労されたのではないでしょうか。

原子先生:

最初は本当に試行錯誤の繰り返しでした。

1期生の担任を任されるとなった時に、校長の勧めで五井平和財団という団体が主催するイベントに参加させてもらったんです。そこでSDGsに取り組む企業の方や他校の教職員と出会うことができたのですが、その時のつながりから偶発的に人脈が広がっていき、様々な取り組みに繋がっています。

また地域とのつながりも、本校の職員の元々の人脈を活用しました。

こういった経緯があるので、人とのつながりは今後も大切にしていきたいと考えています。

SDGsに特化した入学試験も開始

ワークショップ型授業の様子

–イノベーションコースは中高一貫のコースとのことですが、高校から入学する生徒もいるのですか。

原子先生:

基本は中高一貫なのですが、高校入学の生徒も毎年若干名募集しています。

イノベーションコースを志望する高入生は、地域交流や国内外の課題について考えたいという目的意識をもって来る生徒が多いですね。外部の中学でSDGsに関する活動を行っていた生徒や、バックボーンの異なる生徒が集まることによって、中高一貫の生徒への刺激ともなっています。さらに、SDGsの学習や考え方の幅が広がっていることも実感しています。

–中学校から入学する生徒も、SDGsへの関心が強い生徒が多いのですか。

原子先生:

本校の中学校は従来から、特定の部活動を目的に入学を希望する受験生が多く、それは今でも同じような傾向にあります。

ただ最近は中学入試で「SDGs入試」をはじめたこともあり、SDGsに関心のある受験生も増えてきています。

–SDGs入試というのは初めて聞きました。どのような入試なのですか。

原子先生:

私も、周りでやっている学校はあまり聞いたことがないです。

教員がSDGsに関する講義を行った後に、写真やイラストをみて課題を発見し小論文を書いたり、あらかじめ準備してきた自由研究発表をしたりするといった内容です。

今年度は、SDGs入試で2人の新入生が入学しました。

イノベーションコースでの実践を全校に広めていきたい

校内の大きな会場でプレゼンテーションする機会も

–イノベーションコースでの6年間の教育を通して、育てたい生徒像を教えてください。

原子先生:

「自分の目標」を自ら見つけ、それに加えて「他者のために何かしたい」という社会貢献の気持ちをはぐくむ教育をしたいと考えています。

–イノベーションコースが出来て8年目ですが、教育プログラムはまだまだ進化し続けているのですね。

原子先生:

もともと学校が想定していた以上に活動の幅が広がっています。そして、生徒たちも活動を通してより主体的に育ってきている実感があります。

他の教職員も、イノベーションコースで育った生徒たちを見ているからこそ、様々なアイディアを受け入れる雰囲気が学校全体に広がってきていると思います。これまで以上に、教職員一丸となってPBLやSDGsについて考えていける環境にしていきたいです。

–最後に、学校とイノベーションコースの今後の展望をお聞かせください。

原子先生:

イノベーションコースは、できるだけ早くカンボジア研修が再開できればと考えています。そして海外研修が再開した後も、コロナ禍でうまれた地域とのつながりを維持しつつ、これらをミックスした学びを展開していきたいです。

また学校全体としては、他コースの生徒たちも課題意識を持てるような活動を展開していきたいと考えています。そのためにも、まずはイノベーションコースの実践を全校で発信する機会を作っていきたいです。

部活動単位でできることがないかも模索中です。中高生にとって部活動での上下関係はとても大きいので、そこを上手く使えばより浸透できるのではないかと考えています。

今後もより多様な取り組みを行っていきたいので、ご協力いただける方やアイディアのいただける方、ぜひお声がけください!

–本日は興味深いお話をありがとうございました!

関連リンク

協力者募集ということでしたので、もしご興味のある方は学校公式サイトの問い合わせフォームからご連絡ください。

東京立正中学校・高等学校へのリンク:https://www.tokyorissho.ed.jp/