小児がんとは?種類や初期症状、治療法についても

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2024年1月、国立がん研究センターは、がんにかかった小児と若年層の10年後の生存率を初めて集計・公表しました。この報告書によると、14歳以下の10年後の生存率は70~90%と高く、大人を含めた全体の53.5%を大きく上回っています。[i]

小児がんは大人のがんとは異なり、身近な病気ではないため、分からないことも多いでしょう。そこでこの記事では、小児がんの現状、種類、症状、治療、よくある疑問、SDGsとの関係について解説します。

小児がんとは

小児がんとは、小児がかかるさまざまな種類のがんをまとめた呼び名です。国立がん研究センター「がん情報サービス」によると、わが国では0~14歳の子どもにおいて、1年間に約2,500人が小児がんと診断されています。
2021年の全国がん登録の統計では、15歳未満の小児がん罹患率は人口10万人あたり約14人前後で推移しており、毎年一定数の子どもが新たにがんと診断される状況が続いています。

■がんの年齢階級別罹患率(2019年)

一方、2009〜2011年の小児がんの罹患率は12.3[ii]と、近年のデータに比べて大きな差はなく、毎年一定数が小児がんになっているのが現状です。

次に、小児がんによる死亡率を見てみましょう。2021年の年齢別の死因と死亡割合をまとめたのが次のグラフです。小児がんは、グラフの赤色の部分「悪性新生物<腫瘍>」と表示しています。

■0~14歳までの死因(上位3位)と死亡割合(それぞれの年齢別死亡数を100とした場合の割合)

令和3年(2021)人口動態統計(報告書)を元に作成

0歳:がんは上位5位にない

 1~4歳:がんは死因の2位

 5~9歳:がんは死因の1位

 10~14歳:がんは死因の2位

小児がんは1〜14歳までの死因の上位3位に入っており、大きな割合を占めているのが実態です。

何歳以下が該当する?

小児がんの「小児」がどの年齢を指すのかという厳密な規則はありませんが、一般的に15歳未満にみられるがんを小児がんと言います。なお、がん医療の分野では、15歳未満の「小児」に対して15〜39歳までを「AYA世代」(adolescent and young adult;思春期・若年成人)と呼んでいます。 

✑参考:「小児」は何歳から何歳まで?
「小児」という言葉自体に年齢の枠はありません。しかし、省令により定義されている場合があります。
医療法施行規則:小児科において診療を受ける者であり、具体的に何歳から何歳までと限定しない[iii]旅客及び荷物運送規則:6歳以上12歳未満の者
このように、分野ごとに小児の年齢が規定されている場合があります。そのため、1つの規則で小児の年齢が規定されていても、それが他の分野にも当てはまるというわけではありません。

小児がんの種類

小児がんには、大人と同じ種類のがんがあるほか、ほとんどが子どもにしかみられないものもあります。中でも、白血病(32.3%)、脳腫瘍(25.1%)、リンパ腫(9.8%)は、小児がんの種類の割合で上位3つに入るがんです。

■小児がんの種類の割合

これら上位3つのがんと、子どものときに発症しやすい胚細胞腫瘍、神経芽腫、網膜芽腫を簡単に確認していきましょう。

白血病(はっけつびょう)

白血病は、白血球系細胞が無限に増殖する血液のがんです。小児から高齢者までのすべての年齢で発生するがんです。がん化した細胞の種類により、骨髄性白血病、リンパ性白血病などに分類されます。

検査方法には、血液検査や骨髄検査、染色体検査・遺伝子検査などがあります。

脳腫瘍(のうしゅよう)

脳腫瘍は、細胞の塊が頭蓋骨の中にできるがんのことです。脳腫瘍が大きくなると、脳浮腫という脳のむくみが起きることがあります。これらは、脳の機能に影響を与えます。

脳腫瘍の検査は、問診してから神経学的診察を行います。その後、CTやMRI検査などの画像検査などを行います。脳腫瘍も、小児から高齢者までのすべての年齢で発生するがんです。

リンパ腫(りんぱしゅ)

リンパ腫は、白血球中のリンパ球ががん化する血液のがんです。リンパ節や胸腺、脾臓、骨髄、肺などの臓器に発生します。リンパ系組織は全身にあるため、あらゆる部位に発生する可能性があります。

リンパ節や腫瘍の一部を採取して診断する病理検査や、血液検査、尿検査、胸部X線検査、超音波(エコー)検査などにより診断します。

胚細胞腫瘍(はいさいぼうしゅよう)

胚細胞腫瘍は、胎児のときに出現する原始胚細胞から発生する腫瘍をまとめた呼び方です。精巣や卵巣などの生殖器や腹部内、脳などに発生しやすいといわれています。

検査は、採血による腫瘍マーカー検査、超音波(エコー)検査、CT検査、MRI検査などが行われます。10〜30歳代に多く発生する病気です。

神経芽腫(しんけいがしゅ)

神経芽腫は、神経由来の臓器である副腎や背骨の周辺にある神経組織にできるがんです。神経になる前の未熟な組織が、がん化することで発病します。

検査は、視診や触診、尿検査、血液検査、超音波(エコー)検査、CT検査などが行われます。多くは、乳児期から5歳未満で発症する病気です。

網膜芽細胞腫(もうまくがさいぼうしゅ)

網膜芽細胞腫は、目の一番奥に広がっている網膜に発生する悪性腫瘍です。片方の眼球にできる片眼性(へんがんせい)と両方の眼球にできる両眼性があります。

網膜芽細胞腫は、網膜を調べる眼底検査や超音波(エコー)検査により診断されます。95%が5歳までに発見されるといわれています。

小児がんの症状

小児がんには、どのような症状があるのでしょうか。実は、小児がんに特有の症状といったものはほとんどありません。そのため発熱や体の痛みなど、日常生活の中で経験する体調不良と変わらない場合もあります。

次に紹介するのは、小児がんの症状の例です。これらの病状が重い、症状が長く続く、進行している場合は、医療機関に相談してください。

1.発熱

さまざまな症状の中でも、小児がんの発見のきっかけとして多いのが発熱です。発熱と解熱を繰り返す場合もあるほか、一般的にはその他の症状を伴います。

2.頭痛

脳腫瘍の症状として知られているのが、嘔吐(おうと)を伴う頭痛です。この場合、脳神経の異常に関連した他の症状が出ることもあります。

3.リンパ節の腫れ

リンパ節が腫れる病気はさまざまありますが、がんでもまれに首、耳の後ろ、顎の下、足の付け根にあるリンパが腫れる場合があります。痛みはありません。

4.⾻や関節の痛み

白血病や骨に発生するがんの骨肉腫などが原因で、骨や関節の痛みが起こります。神経芽腫が転移すると、肩から腕の痛みを感じることがあります。

5.筋⾁・胸・おなかのしこり

手足や鼻、喉、生殖器のほか、⽩⾎病、リンパ腫、神経芽腫などでは胸にしこりができることがあります。おなかのしこりがある小児がんは、1〜5歳に多く見られる症状です。

6.貧血

白血病は、貧血により顔色が悪い、元気がない、疲れやすいなどの症状があります。また、あざができる、出血が止まりにくくなるという場合もあります。

7.その他

脳腫瘍では、歩行がおぼつかない、顔面がゆがむ、視力の低下、話すことが不自由になるなどの症状があります。網膜芽細胞腫は、眼の奥が白く光って見える場合があります。

このように、がんの種類などにより症状はさまざまです。気になる症状が続く、いつもと様子が違うというときは、医療機関を受診しましょう。

小児がんの治療について

小児がんの治療方法には、薬物療法、放射線治療、手術治療などがあります。これらは大人と同じ治療法ですが、子どもの場合には、同じ病名でも異なる方法が取られることもあります。3つの治療法と、治療の補足的な役割を持つ支持療法・緩和ケアについて見ていきましょう。

薬物療法

薬物療法は、薬を飲む、注射を打つなどによって、がんを治療する方法です。がんを治すほか、進行を抑えたり症状を和らげたりする目的で行われます。小児がんは大人のがんに比べて薬物療法の効果が高いことが分かっています。

放射線治療

放射線治療は、がんの部分に放射線をあてて、がんを治療する方法です。手術前に腫瘍を小さくしたり、手術後の再発を防止したりする補助的な意味で行われることもあります。放射線治療についても、小児がんは大人のがんに比べて効果が高いことが分かっています。

手術療法

手術療法は、がん腫瘍やがんのある臓器を切り取って、がんを治療する方法です。脳腫瘍や神経芽腫などの腫瘍ができるがんに用いられることの多い治療方法です。

【補足】支持療法・緩和ケアについて

がんを治すための直接的な「治療」とは別に、「支持療法」と「緩和ケア」という方法があります。支持療法とは、がんによる症状や治療に伴う副作用、合併症、後遺症を予防したり軽くしたりするための治療、ケアです。例えば、薬物療法の副作用として吐き気や嘔吐がある場合は、吐き気止め剤を使用することが当てはまります。

一方、緩和ケアとは、患者やその家族の身体的・精神的な苦痛を和らげる治療、ケアのことです。がんによる体の痛みを軽くする薬剤を使用したり、心のつらさや家族の心配などに寄り添う治療、ケアを行ったりしています。

小児がんに関してよくある疑問

小児がんに関してよくある疑問をまとめました。気になることや分からないことがあれば、参考にしてください。

初期症状は?

小児がんの初期症状には、次のような子どものサインがあります。

■小児がんのサイン[iv]
発熱、頭痛、食欲不振、体重減少、不機嫌、骨・関節の痛み、歩きたがらない、筋肉・胸・おなかのしこり

特に乳幼児といった小さな子どもは、自分で症状を伝えることが難しい場合もあります。そのため、子どもの異変に周りの大人が気づくことも必要です。子どもが出すサインに「何かおかしい」と感じたら、医療機関を受診しましょう。

小児がんを発見するチェックリストはある?

専門知識のない一般の人が、小児がんを発見するチェックリストはありません。小児がんの初期症状だけでなく、気になる異常がある、またそれが続くなどした場合は、医療機関に相談しましょう。

小児がんになる原因は?

大人のがんは、喫煙や食生活などの生活習慣や、ピロリ菌などのウイルス感染などが主な原因です。一方、小児がんが発生する仕組みは、成長・発達の過程で異常な細胞が変化して増えるといわれています。また、網膜芽細胞腫など、一部の種類は遺伝によるがんもあります。

小児がんの発生する仕組みは解明されているものの、大人のような直接的な原因は分かっていません。そのため、予防することも難しいのが現状です。

小児がんの生存率は?

小児がんの10年後の生存率は、がんの種類により異なりますが、およそ70〜90%の範囲にあります。
国立がん研究センターの最新集計によると、2011年に診断された小児がん患者の10年実測生存率は、白血病で86.2%、脳腫瘍で71.5%、リンパ腫で90%台前半、胚細胞腫瘍や神経芽腫などでは60〜90%台前後と報告されています。
これらは、5年生存率と大きく変わらず、診断後5年以降も生存率が大きく低下しにくい傾向が指摘されています。

この数字は、「死因に関係のないすべての死亡」を基準に計算した10年後の生存率とほとんど変わりません。つまり、小児がんの生存率が、他の死因に比べて特別に低い・高いということはないことが分かります。

小児がんになりやすい子はいる?

小児がんになりやすい子どもの特徴はありません。なぜなら、大人のように生活習慣やウイルス感染などの直接的な原因により発病することが少ないためです。そのため、予防することも難しいのが現状です。

母親が原因?

小児がんと母親との関係は、現時点では詳しくは分かっていません。ただし、母親の子宮頸がん(しきゅうけいがん)が子どもに移行する現象があるという報告はあります。*

子宮頸がんは、子宮の入り口にある子宮頸部(しきゅうけいぶ)にできるがんです。子どもが生まれて初めて泣いたときに、母親の子宮頸がんのがん細胞が含まれた羊水を肺に吸い込むことで、肺がんになったケースが見つかりました。そのため小児がんと母親は無関係ではないと言えるでしょう。

*母親の子宮頸がんが子どもに移行する現象を発見|国立がん研究センター

小児がんと SDGs

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最後に、小児がんとSDGsの関係について確認します。小児がんは、発見や治療という視点に立つと、目標3「すべての人に健康と福祉を」に関わりがあります。

目標3「すべての人に健康と福祉を」

目標3「すべての人に健康と福祉を」は、2030年までに、新生児の死亡率を出生1,000人当たり12人以下に、5歳児未満を25人以下にすることをすべての国々が目指すことが盛り込まれています。

日本では、0〜4歳の死亡率は人口10万人あたり100人前後と低く、出生1,000人あたり25人というSDGs目標3の5歳未満死亡率を遠く下回っています。

0〜4歳の死因の上位には依然として小児がんが含まれているため、小児がんの早期発見や治療の充実は、さらに死亡率を下げ、子どもの健康と福祉の向上に寄与します。

死因を見てみると、1〜4歳までの上位3つに挙がっているのが小児がんです。5歳児未満の死亡率を下げるためには、小児がんの発見と治療が欠かせません。

一方で、小児がんの10年後の純生存率(ネット・サバイバル)は、がんの種類により異なりますが、全体で70〜90%と高くなっています。小児がんの医療は、子どもの健康と福祉に大きく貢献していると言えるでしょう。

まとめ

小児がんとは、一般的に15歳未満の小児がかかるさまざまな種類のがんをまとめた呼び名です。毎年2,100人程度が小児がんにかかり、70〜80%以上が10年後も生存している状況です。

小児がんの種類には、白血病や脳腫瘍、リンパ腫、胚細胞腫瘍、神経芽腫、網膜芽細胞腫などがあります。症状は、発熱や頭痛、リンパ節の腫れ、骨や関節の痛み、筋肉・胸・おなかのしこり、貧血などです。小児がんの治療は、薬物療法、放射線治療、手術療法があります。

また、小児がんの発見と治療は、SDGsの目標3「すべての人に健康と福祉を」に関係があります。小児の死因の上位にあるがんの医療を整えることで、子どもの健康と福祉を推進します。

小児がんは身近な病気ではありませんが、毎年一定の子どもに発生しています。小児がんの10年後の生存率は70〜90%程度と高く、多くの子どもが治療後も長期間生存している状況です。

気になる症状があれば、医療機関に相談しましょう。

 <参考>
国立がん研究センター がん情報サービス
国立がん研究センター中央病院
日本赤十字社医療センター
神奈川県立こども医療センター 小児がんセンター
[i]小児がん、10年生存率7~9割 大人より高め、長期支援必要―国立センター初集計:時事ドットコム
[ii]国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」(全国がん罹患モニタリング集計(MCIJ)
[iii]医療法施行規則第十六条に関する疑義について 医療法の疑義について
[iv]小児がんとは? 症状・診断・治療・支援について – NHKすくすく子育てch
[v]がん 小児・AYA世代 5年後10年後の生存率 白血病 リンパ腫など種類別 2024年公表 | NHK
[vi]厚生労働省 令和3年(2021)  人口動態統計月報年計(概数)の概況

国立がん研究センター がん情報サービス「小児がんの患者数」
厚生労働省・国立がん研究センター「令和3年全国がん登録罹患数・率報告/がんの統計 2024」
国立がん研究センター「院内がん登録 2011年 10年生存率集計 公表 小児がん」
日経新聞・読売新聞など、小児がん10年生存率70〜90%についての報道記事
「がんの統計 2024」における小児・AYA世代の生存率
厚生労働省「令和3年(2021)人口動態統計月報年計(概数)の概況」
国立がん研究センター「院内がん登録 2011年 10年生存率集計」
小児がん10年生存率70〜90%に関する報道記事・解説

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この記事を書いた人

池田 さくら ライター

ライター、エッセイスト。メーカーや商社などに勤務ののち、フリーランスに転身。SDGsにどう取り組んで良いのか悩んでいる方が、「実践したい」「もっと知りたい」「楽しい」と思えるような、分かりやすく面白い記事を書いていきたいと思っています。

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