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認知症とは?主な症状や診断、治療方法をわかりやすく解説!

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だれでも1年に1つずつ年をとります。私たちの肉体やその機能も年を重ねていきます。古くなってしまったものは、なんらかの手当をしなければなりません。上手にメンテナンスすることで、よい状態をより長く保つことができます。

近い将来、認知症は4人に1人になると言われています。正しい知識と関連施設の上手な活用で対応できるよう、分かりやすく解説します。ぜひ一緒に考えていきましょう。

認知症とは

認知症とは、脳の病気により脳の神経の働きが徐々に低下し、記憶や判断力などの認知機能が低下して、社会生活に支障をきたした状態をいいます。

参考:知っておきたい認知症の基本 | 政府広報オンライン

認知機能の低下とは、記憶や判断力の低下の他に、

  • 言語障害:人や物の名前が出てこない
  • 視覚認知障害:知っているはずの場所で迷う
  • 実行機能障害:物事を計画立ててできない
  • 社会的認知障害:他人に共感したり同情したりできない

などがあります。

参考認知症とは(国立研究開発法人;国立長寿医療研究センター)

高齢化が進むとともに認知症の人は増加し、65歳以上の高齢者では2012年時点で7人に1人程、認知症前段階とされる軽度認知症者数も含めると4人に1人とされ、今後も増え続けることが予想されています。

正常に発達したはずの脳が、どんな病気で認知症状を引き起こすのかみていきましょう。

4種類の認知症とその特徴

グラフが示しているように、認知症の原因となる脳の病気はいくつもあります。最も多いと言われるのがアルツハイマー型認知症です。ついで血管性認知症レビー小体型認知症前頭側頭型認知症が多くなっています。

アルコール性」とは、アルコールに直接の原因があるのではなく、過度な飲酒を続けた結果、二次的に認知症に至る場合です。

では、代表的な4つのタイプについて、その特徴をみていきましょう。

①アルツハイマー型認知症

黄矢印の指す部分は海馬 出典:<認知症の画像検査について>(国立病院機構)

アルツハイマー型認知症は、1906年にドイツの精神科医アロイス・アルツハイマー博士によって初めて症例が報告され、彼の名に因んでつけられました。ADAlzheimer’s Disease)と記されることもあります。

症例としては最も多く、すべての認知症の中でも7割近くを占めています。

症状:記憶障害から

記憶障害から始まることが多く、その後

  • 失語:話や物の名前が音として聞こえても分からない。
  • 失認:視力に問題はなく、見えるのに情報として理解できない。
  • 失行:手足は動くのに、今までできていた動作ができない。

などが現れます。

原因:海馬への影響

脳にアミロイドβなどのタンパク質がたまり、脳内に血行障害を起こしたり部位を圧迫したりすることから起こると考えられています。

進行するに従い、脳内で記憶を司る「海馬」と呼ばれる部分の萎縮が目立ってきます。

②血管性認知症

血管性認知症は、名前の通り脳内の血管障害によって起こる認知症の総称です。VaDVascular;血管性、Dimentia;認知症)とも記されます。

症状:大きな変化と波

多くは他の認知症と同様の症状が見られます。血管障害を起こした場所と程度により症状は異なり、その現れ方には大きな変化や波があることが特徴です。

  • 発症のタイミング:大きな梗塞・出血を起こしたときは急激に発症し、小さなものはそれを繰り返す度に認知症も少しずつ進みます。また、突然症状が現れたり、急激に悪化したりします。
  • 症状の差できることとできないことの差が大きくなります。感情の起伏が大きくなることも多く、うつ症状が認められる場合もあります。
    このような特徴から、以前は「まだら認知 ※」と言われることがありました。
  • 身体的な症状:歩行障害、手足の麻痺、呂律が回りにくい、嚥下障害などが早期から見られることが多くなっています。
まだら認知

さらに前には「まだらボケ」などという言われ方もしたが、偏見を生む言葉であることと、定義のあいまいな呼び方であったため、現在では使われなくなってきている。

原因:脳への血流障害

血管障害により、一部の脳神経細胞に酸素や栄養が行きわたらなくなることで起きます。脳はたくさんの酸素と栄養を必要とする臓器なのです。

血管障害は、高血圧や高脂血などから動脈硬化に進んで起こるものが多く、生活習慣から生まれる原因も考えられます。

③レビー小体型認知症

レビー小体の「レビー」は、発見者の神経病理学者フレデリック・ヘンリー・レビー氏の名前に由来します。脳の神経内部に見られる小体で、パーキンソン病を引き起こす原因にもなっています。1976年に、認知症との関連を初めて発見・報告したのが日本の小阪憲司氏です。

レビー小体型認知症明らかになっていないことも多い病気で、DLBDimentia with Lewy Bodies)と表記されます。

症状:多い幻覚

レビー小体型認知症も、初期の段階では他の認知症と同様に、物忘れなどの症状が出ます。さらに特徴的な点として次の症状があげられます。

  • 幻覚症状:1番多いのが、実在しない人や物などが見える「幻視です。実在しない声や物音が聞こえる「幻聴」もときおり見られます。味や臭いについては多くはありません。
    また、いわゆる見間違え「錯覚」も起こり、ゴミを虫と間違えて殺虫剤を噴射し続ける、などの事例も報告されています。
  • パーキンソン症状:手足が震えたり、転びやすくなったりなど、パーキンソン病と同じような運動障害が見られます。
  • 症状発現の波:同じ対応をしているのに、日によってあるいは月単位で、調子や機嫌の良し悪しの差が大きく出ます。

原因:大脳皮質への影響

脳にαシヌクレインというタンパク質がたまり、大脳皮質にまで及ぶと発症すると考えられています。

それまで、レビー小体が脳幹に及んで身体のコントロールがうまくできなくなるパーキンソン病の原因とされてきましたが、脳幹部以外にも現れる病例が発見され、認知症状を伴うことが分かってきました。

④前頭側頭型認知症

出典:画像診断(MRI,SPECT,PET)(日本内科学会雑誌 第100巻 第 8 号)

<Alzheimer病は除外され,前頭側頭型認知症と診断された画像>

前頭側頭葉型認知症は病名の通り、脳の前頭葉と側頭葉が萎縮し血流が低下することによって引き起こされる認知症です。しかし前頭葉は人格・社会性・言語を、側頭葉は記憶・聴覚・言語を司る大切な部分です。そのためこの型の認知症を発症すると、日常生活に大きな支障をきたすことになります。

前頭側頭葉変形症FTLDFrontotemporal Lobar Degeneration)の1ケース(FLD:Frontotemporal Demetia)とされる分類もありますが、診断基準は揺れていて未解決な部分も多い型の認知症です。

症状:行動と言語に障害

特に目立つのは次の2つの障害です。

  • 行動障害:身だしなみに無頓着になったり、自分の行動を抑制できず暴力や軽犯罪を招いたりするなど、社会性が欠如してきます。
  • 言語障害同じ言葉を繰り返したり、自発的な言葉が出なくなったりします。

また他の認知症に比べ

  • 初老期に発症:40〜60歳に発症することが多く、働き盛りの年齢での発症は家族にとっても大きな問題です。

原因:Pick球?

前頭側頭型認知症は、タウ蛋白等の病的なタンパク質が蓄積することが原因と言われています。

球状体で蓄積されたタンパク質は、最初の報告者アーノルド・ピック医師に因んでピック(Pick)球と呼ばれています。ほとんどの前頭側頭型認知症にピック球が見られたことから、以前は前頭側頭型認知症=ピック病としていました。

しかしその後ピック球がない病例も報告され、現在ではピック病は前頭側頭型認知症の一つとして分類されています。

ある種のタンパク質が、なぜこのような病的な変化を起こすのかは、まだ明らかにされていません。

日本の4大認知症について特徴をまとめてきましたが、混合型や他の病気から二次的に引き起ってきた認知症もあり、明確な区別は難しいのが現状です。

認知症の初期症状

現代では、認知症はだれもがなり得る病気と言えます。初期症状に気付くことは、適切な対応への第一歩です。一緒に理解を深めていきましょう。

加齢によるもの忘れと認知症によるもの忘れ

年をとればだれでも新しいことが覚えにくかったり、人の名前などがすぐには思い出せなかったりします。しかし認知症によるもの忘れは、このような加齢によるもの忘れとは異なります。

ポイントは、メタ認知力です。つまり自分を客観的に、あるいは俯瞰的に見られるかどうかです。「買ってくるべき物を忘れやすい」という自覚症状があれば、メモをとる等の方法をとることで、日常生活に支障はなくなります。認知症では、そのメタ認知の障害がみられ、自分がものを忘れること自体を認めることができません。

中核症状と周辺症状

中核症状とは、どの認知症にも共通して認められる症状で、

  1. 記憶障害
  2. 見当識(時間・場所・人物の認識)障害
  3. 判断・実行機能障害
  4. 失語・失認・失行

などの種類があります。

さらに、メタ認知障害から、自分の病状を認識できない「病識欠如」という症状も加わります。

判断・実行機能障害の例としてよく言われるのは、料理です。料理は、献立を決めて材料をそろえ、順序だてて作業しなくてはなりません。料理が得意だった方が認知症になると、うまくできなくなります。

中核症状は病気から直接的に発症しますので、1つでも該当すれば要注意です。

周辺症状中核症状から現れる二次的な症状で、本来の性格や環境等が影響して現れるものです。最近ではBPSDBehavioral and Psychological Symptoms of Dementia:認知症の行動・心理症状)と言われます。

妄想、不眠、幻覚、意欲の低下などの症状があり、下のグラフにあるように、認知症の各種類の特徴につながります。

(日本サイコネフロロジー学会雑誌 1:1-7, 2022 谷向 仁)

このような症状が見られたら、医療機関に相談することをお勧めします。専門医でも地域の相談窓口でもどちらでも大丈夫です。地域包括センターでは、相談にのったり、介護や医療の受け方を教えてくれたりします。

認知症の診断について

初期症状から認知症を見つけたり疑ったりした後、どのように診断がすすめられるのでしょう。この章では、専門医による診断の流れや方法についてまとめていきます。

診断は、大きく分けて2段階の流れで行われます。

第1段階:医師の問診とチェックリストでの検査

他の病気と同じように、医師は受診者や家族の話を聞き、質問票やチェックリストを使って判断していきます。血液検査や一般身体所見診断等も行われます。

チェックリストの1つに長谷川式簡易スケールがあり、日本では多くの医療機関で利用されてきました。

また近年は、疾患の診察に加え、身体機能や認知機能、社会・家庭環境なども含めて評価する高齢者総合機能評価CGAComprehensive Geriatic Assessment)を行うことが定着しています。

第1段階はスクリーニング(ふるい分け)を大きな目的としています。

第2段階:本格的な画像検査、体液・遺伝子検査

スクリーニング後は、画像検査などさらに専門的な検査に進みます。

MRI検査

最も代表的な画像検査は、頭部MRIMagnetic Resonance Imaging:磁気共鳴画像検査です。脳の形状を見ることができるので、損傷部位や損傷の度合いを確認することができます。

CT検査

頭部の撮影にはCT(Computed Tomography:コンピュータ断層撮影)もよく使われます。

MRTと比較すると検査に時間がかかりませんが、X線を照射する検査なので、ペースメーカーなどの金属が体内にあると利用できません。

SPECT検査

他にも、微量の放射線を出す検査薬を投与して血流の様子を画像化する脳血流SPECTSingle Photon Emission Computed Tomography:単一光子放射断層撮影検査があります。

画像検査は、病理の様子を可視化するので、部位画像の様子から認知症の原因を特定しやすくなります。

バイオマーカー検査

最近ではバイオマーカー検査という方法で、より正確に検査できるようになってきました。

バイオマーカー検査とは、血液、尿、唾液、細胞組織などのたんぱくや遺伝子を、指標となる生物化合物(バイオマーカー)を使って調べる検査です。すでにがんの診断に利用されてきています。

認知症には、異常なタンパク質の蓄積が大きな原因になっている場合が多いと言われています。そのため、この検査で認知症の型をより正確に診断できる可能性があります。バイオマーカー検査だけで判定することはできませんが、他の検査法と組み合わせて総合的に判断することで、治療方法を決める大きなてがかりとなります。

認知症の治療方法

検査で結果が出たらそれに基づいて治療が始まります。認知症が治る病気なのかどうかは最も心にかかるところではないでしょうか。ここからは、予防も含め認知症の治療方法について話を進めます。

薬物治療:代表格ドネペジル(商品名アリセプト)

日本では、いくつかの種類の抗認知症薬が使われていますが、最も多く使われているのが、ドネペジルを主成分とするアリセプトです。「アリセプト」はエーザイ製薬の製品で、認知症の中核症状である認知・記憶障害を改善する薬です。

錠剤、ゼリー状、顆粒、液状等の形状の他、パッチ型のもの ※ もあります。

※:画像右端の「リバスタッチ」は、リバスチグミンを主成分とするパッチ型の抗認知症薬。米国製薬会社の商品名。

周辺症状を改善するための薬も併用されることがあります。例えば、暴言・暴力がひどい場合は抗精神病薬、睡眠障害が見られる場合は睡眠導入剤の服用などです。

周辺症状の緩和には、漢方薬も選択肢の1つです。主に精神や言動を落ち着かせるために使われます。

進む新薬の開発:レカネマブ登場

2023年、認知症の抗認知症新薬として「レカネマブ」が話題になりました。

エーザイ製薬が同年9月に承認を受け、12月に発売されました。製品名はレケンビ、点滴静注型の薬です。

今までの薬と大きく違う点は、

  • 今までの薬:病変の認められた神経を補修したり残った神経の強化したりする
  • レカネマブ:神経を痛める直接の原因となるアミロイドβにはたらきかける

といった点です。

アミロイドβが主な原因の認知症はアルツハイマー型認知症です。従ってこの新薬の対象は、アルツハイマー型認知症初期段階の患者とされています。高価ではあるものの保険適応可能ともなり、大いに期待されている新薬です。

課題は、発売間もないので、処方についてのガイドブックなども発行されてはいますが、まだ対応できる医療機関が限られていることです。この点も今後に期待がかかります。

参考:アルツハイマー病の新しい治療薬について |厚生労働省

非薬物治療

薬をつかわない治療法もあります。次のような方法がよく使われています。

  • 回想法:認知症になっても残っている過去の記憶を、思い出したり話したりすることで、脳が刺激され精神を安定させる効果が期待できます。
  • 音楽療法:特に覚えている昔の音楽を、歌ったりリズムをとったりすることで、回想法と同じ効果が期待できます。
  • 運動療法・作業療法:脳は衰えても、残っている機能である体を使って、運動や、園芸・手芸などの作業を行います。無理のない運動をすることは、転倒を防いだり心肺機能が向上したりするといったメリットがあります。
  • アニマル・セラピー:動物との交流を通して心の癒しを図ります。
  • 化粧療法:化粧を楽しみ、前向きな気持ちを引き出します。

これらの方法は、認知症を根本的に治すわけではありませんが、周辺症状を和らげることによって介護がスムーズにいくと考えられます。また薬物療法と組み合わせることで効果を発揮します。

早期発見が大事

認知症は進行性の病気のため、時間の経過とともに悪化していきます。残念ながら、認知症を確実に予防や治療できる方法はまだ確立されていません。しかし、早期に発見し、適切な治療を行えば、進行を遅らせることができます。

近年は、認知症と正常の間に「軽度認知障害」という段階を設けています。物忘れが多くなったなど「正常者と比べて認知症状の頻度や程度がひどいが日常生活に支障がある程ではないし自覚がある、しかしこのまま進むと認知症に進む可能性が高い」といった認知症の前段階のことです。

明確な数値で区切られるものではありませんが、この段階で対策を練ることができれば、認知症の発症や進行を遅らせることにつながります。

物忘れ外来」といった窓口を設けている医療機関や、総合的な健康施策としてフレイル(未病、進行すれば介護が必要)対策を呼びかけている公共団体も増えています。

家族が認知症になったら

ご自身はまだ大丈夫でも、ご両親や近しいご親族に心配な方がいる場合も多いはずです。この章はそんな方々に役に立てばと思い、まとめていきます。

<もしも>

出典:もしも(厚生労働省)

この「もしも」は、「本人やご家族に向けた、ヒントとなる情報をまとめた絵本のような冊子」です。この冊子の第3章が家族に向けた章になっています。

キーワードは「傾聴と観察」「地域包括センター」です。

傾聴と観察

認知症は徐々に進行します。初期の段階では「おかしいな」と気付いているのはまず本人です。しかし性格や家族環境によって自分ではなかなか認められない、言い出しにくい、といった方が多くいます。

傾聴する姿勢は、そんな方の正直な気持ちを引き出します。また意識しなければ自分が以前と違った言動をしていることに気付かない場合もあります。ダメ出しや禁止の前によく観察することで、ご家族が気付く変化があります。

傾聴と観察姿勢が早期発見につながります。

地域包括センターを頼りに

専門医を知っている場合は直接相談することもよいでしょう。そうでない場合は、高齢者福祉を担当する役所の相談窓口を利用します。47都道府県すべてにある地域の相談窓口は「地域包括センター」です。

地域包括センターには専門職が常駐し、無料

  • 本人・家族の相談にのってくれます。
  • 専門医・関連施設を紹介してくれます。

きっと力になってくれるはずです。

関連施設の1つに、認知症に関心のある人は誰でも訪れることができる認知症カフェがあり、全国に広がっています。月1回程度開かれ、100円から200円のコーヒー代がかかりますが、専門家もいて話を聞いてくれます。

認知症に関してよくある疑問

今までお読みいただいて、近年の認知症についてご理解をすすめてくださったことでしょう。この章ではより具体的な疑問にお答えしていきます。

一気に進む原因は?

認知症の進行は一人ひとり異なりますが、なかには一気に進むこともあります。原因を3つにまとめました。

  1. 急激な環境の変化:引っ越しや入院、家族との死別などがあげられます。

生活の大きな変化はストレスを生み、神経細胞に悪影響を及ぼすことが多くなります。

  1. 考える機会が減った:家事を自らしなくなったり、オムツにして排泄に気を使わなくなったり、家計管理を家族に任せっきりにしたりなどです。

脳への刺激が減り、脳が老化しやすくなります。

  1. 行動の制限:外出できなくなったり、ケガで思うように動けなくなったりすることで、ストレスを生みます。また、ミスを過度に責められると、萎縮して行動意欲が低下してしまいます。

参考:認知症が一気に進む3つの原因(社会医療法人博友会)及びみんなの介護

顔つきも変わる?

表情の変わる方は確かにいます。どのように変わるかは個人差がありますが、多く見られるのは2種類です。

  • 無表情・暗い表情:周辺症状によく見られる表情です。人と会ったり考えることが減ったりするため、顔の筋肉も機能が低下することが多くなり、口角が下がりボーッとしたような表情が増えてしまいます。
  • パーキンソン症状:レビー小体型認知症のように運動障害が伴う型は、手足ばかりでなく、顔の筋肉にも障害がおよぶことがあります。

参考:認知症になると顔つきが変わる?特徴や変化の原因を解説(朝日生命)および顔認証で認知症を早期診断へ研究(サイカルジャーナル;NHK)

認知症と痴呆症の違いは?

「認知症」という名称が使われ始めたのは、2004年です。それまでは一般的に「痴呆症」「痴呆」という言葉が使われていました。

「痴呆」という言葉が、侮蔑的な意味を含んでいることや、正確な基準を持っていないことなどから、厚生労働省が新たに決めた名称が「認知症」です。

認知症とSDGs

最後に認知症とSDGsの関連をみていきましょう。

17のSDGs目標のうち1番深く関わるのは、

です。

SDGs目標3「すべての人に健康と福祉を」との関わり

少子高齢化の傾向が顕著な日本では、高齢者を含むすべての人の健康対策は大きな問題です。高齢者が健康でいられれば、労働人口不足の一助になり経済活動の維持・発展に大きく貢献します。

また認知症患者が増えれば社会の医療費の負担も増え、若者・働き盛り世代への影響も少なくありません。認知症を早期発見できれば、進行を止めることで本人も助かり、家族も少ない介護で済み、地域や国も負担の少ない社会を築くことにつながります。

SDG目標11「住み続けられるまちづくりを」との関わり

外出などの行動制限は認知症の進行を早めてしまうことにつながります。しかし家族にとっては、長時間の見守りは大きな負担です。認知症の方が安全かつ快適に、地域に出歩くことのできる環境づくりは、本人の心身の健康のためだけでなく、家族の方々の安心につながります。

そして認知症の方が出歩きやすく安全で快適なまちは、認知症でない人にとっても快適ですべての人が利用しやすいまちと言えます。

まとめ

認知症について、症状や原因・治療法を整理してきました。ご家族の対応のポイントもお話ししてきました。SDGsとの関連も深いことがご理解いただけたことと思います。

ご自分が、あるいはご家族が「認知症になったら・・・」と、考えない方は最早に少ないはず。筆者もその例にもれず、両親は人生の終盤で認知症状が明らかでしたし、現在は自分自身を心配する年齢になりました。

半世紀程前に出版された「恍惚の人」 ※ に愕然とした方も、「レカネマブ」のニュースには明るい光を感じられたのではないでしょうか。

iPS(induced pluripotent stem:人口多能性幹細胞)をはじめ、再生医療の研究も進んでいます。認知症の解明や治療法もますます期待できそうです。今後に期待しながら、正しい知識や今利用できる方法・施設を活用していきましょう。

恍惚の人

有吉佐和子作。1972年出版。認知症の舅とその家族の様子を描いて、まだ認知症が広く認識されていなかった社会に衝撃を与えた。

<参考資料・文献>
知っておきたい認知症の基本 | 政府広報オンライン
全国もの忘れ外来一覧 | 認知症を知る(公益財団法人;認知症の人と家族の会)
介護サービス情報公表システム(厚生労働省)
若年性認知症ハンドブック(社会福祉法人;仁至会)
認知症施策推進大綱について |厚生労働省
一般社団法人 日本認知症本人ワーキンググループ-JDWG
もしも(厚生労働省)
アルツハイマー病の新しい治療薬(前編)レカネマブについて(国立研究開発法人;国立長寿医療研究センター)
パンフレット(同センター)
認知症ケア法-認知症の理解(厚生労働省)
DLBとは? | レビー小体型認知症サポートネットワーク
レビー小体と関連疾患(昭和大学医学部会誌72巻 2012年;大塚成人)
画像診断(MRI,SPECT,PET)
前頭側頭型認知症・認知症の周辺症状 | 健康長寿ネット(公益財団法人長寿化科学振興財団)
神科医からみたBPSD対応:怒りに焦点を当てて日本サイコネフロロジー学会)
認知症の診断と治療|大阪大学 老年・総合内科学
「レケンビ®点滴静注」(一般名:レカネマブ) | エーザイ株式会社
アルツハイマー病の新しい治療薬について |厚生労働省
認知症が一気に進む3つの原因(社会医療法人博友会)
みんなの介護
認知症になると顔つきが変わる?特徴や変化の原因を解説(朝日生命)
顔認証で認知症を早期診断へ研究(サイカルジャーナル;NHK)
レビー小体型認知症がわかる本:川端信也(法研)
認知症にやさしい環境デザイン:C・カニンガム・M・マーシャル編;井上裕訳(鹿島出版会)
認知症いま本当に知りたいこと101:阿部和穂(武蔵野大学出版会)
専門医が語る認知症ガイドブック:池田健・小阪憲司(金剛出版)