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葉っぱビジネスとは?仕組みと成功要因・メリットと上勝町の現在を解説

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「葉っぱビジネス」という言葉を聞いたことがありますか?

葉っぱビジネスは、徳島県上勝町で生まれ、町の基幹産業へと成長しました。地域の活性化に繋がった成功した県は成功事例として注目を集めていますが、具体的にどのような仕組みのビジネスなのでしょうか。

この記事では、葉っぱビジネスの概要、種類や仕組み、課題や成功事例を紹介します。

葉っぱビジネスとは

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葉っぱビジネスとは、季節の葉っぱや花、山菜などを栽培・出荷・販売する農業ビジネスのことを指します。

葉っぱビジネスのうちの約8割が料理の飾りに使われる「つまもの」です。つまものはかつてから存在しましたが、それをメインに扱ってきた農家は存在せず、それぞれの飲食店が独自に入手するのが当たり前でした。この需要に注目して生まれたのが、葉っぱビジネスです。

近年、高齢者や女性が活躍するビジネスとして、注目を集めています。

葉っぱビジネスは1986年頃から徳島県上勝町で始まった

葉っぱビジネスは、徳島県上勝町で始まりました。当時、町の産業は林業や温州みかんの生産によって支えられていました。しかし、1981年に異常寒波が町を襲い、みかんの大部分が出荷不可能になってしまったのです。

そのような町の産業の危機に遭ったことで、当時町の農協職員だった横石知二氏は、地域でできる新しいビジネスについて考えました。そして、「つまもの」の需要と地域資源に注目し、1986年に葉っぱビジネスを行う会社「いろどり」をスタートさせました。

葉っぱビジネスの現在

上勝町で始まった葉っぱビジネスは、地域の資源を活かし町の経済を潤した事例として注目を集めました。現在で、国内の他の地域でも葉っぱビジネスをスタートさせた事例が見られます。

では、葉っぱビジネスはどのような仕組みとなっているのかを次で見ていきましょう。

葉っぱビジネスの仕組み

葉っぱビジネスは、飲食店や葉っぱや花を必要とする、顧客の需要を確認するところから始まります。その後、確認した需要に応じて農家が生産販売を行います。必要となる葉っぱは顧客によって異なります。そのため、農家は多種多様な葉っぱを取り扱わなければなりません。

上の図は、「株式会社いろどり」が実施する葉っぱビジネスの仕組みの例です。JAが受注や生産を担当し、農家が栽培・出荷・販売を実施、そして株式会社いろどりが市場分析や営業を行っています。作業を分担することで、それぞれの強みを最大限に生かすことができ、地域全体の産業発展につながっています。

ICTの活用が成功理由

上勝町の葉っぱビジネスが成功した理由のひとつにICT(情報通信技術)の導入が挙げられます。上勝町では、パソコンやタブレット端末を導入し、農家が専用HPで受注情報や市場情報をリアルタイムで確認できるようにしました。高齢者がパソコンやタブレットを駆使しビジネスを行う姿はテレビでも報道され、注目を集めたのです。

ICTの導入により、各生産者が市場情報や今後の予測を確認できることで、自ら生産量の調整といった計画を立てられるようになりました。また、POSシステムで上勝町の生産者の売り上げ順位を見れるようにしたことで、モチベーションを程よく上げることに成功しました。

葉っぱビジネスの種類

葉っぱビジネスの種類には大きく分けて、つまもの・縁起物・わさび菜の3種類が挙げられます。

つまもの

料理に添えられるつまものは、綺麗な形や色が重要視されます。そのため、美しい形の「南天(ナンテン)」や、青もみじが販売されます。

縁起物

縁起物の葉っぱは、イベントの時期に販売されることが多く見られます。「ゆずり葉」や「ナンテンの樹」が例として挙げられます。

わさび菜

葉っぱビジネスの3つ目の種類が「わさび菜」です。葉わさび・ミニ葉わさび・マイクロ葉わさびと異なるサイズがあります。生産者はサイズごとに販売を行っています。

葉っぱビジネスはなぜ注目されている?

高齢者がICTを活用し行う葉っぱビジネスは、テレビで報道されたり2012年には映画化されたりと、話題を呼びました。ですが、葉っぱビジネスが注目を集めた理由は、ICTの活用だけではありません。

地域資源を上手に活用した事例だから

上勝町は、今まで「ただの葉っぱ」と見過ごされてきた地域資源を活用したことで、地域経済を活性化させることに成功しました。自分達のすぐ近くにある環境や、物の価値にはなかなか気づきにくいものです。しかし、その需要に気づいたことで、原価ゼロ円のビジネスを生み出すことができました。

そのため、特に過疎化が懸念される地方で活かせるビジネスモデルとして注目を集めています。

女性や高齢者が取り組みやすいから

葉っぱビジネスの大きな特徴のひとつに、商品が軽量で取り扱いやすい点が挙げられます。出荷関係のビジネスとなると、重い荷物を運ぶ作業が含まれてしまうことも多々あります。対して、葉っぱビジネスの場合は商品が軽量のため、女性や高齢者でも運営ができると注目されています。

高齢者が活躍し続けられる葉っぱビジネスは、高齢化が進む現代ビジネスのモデルケースとも言えるでしょう。

続いては、葉っぱビジネスのメリット・デメリットを見ていきます。

葉っぱビジネスのメリット

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葉っぱビジネスには、大きく2つのメリットがあります。

メリット①年収が安定する

年齢に関係なく続けられる葉っぱビジネスは、高齢者の年収の安定につながります。上勝町では年間売上が約1,000万円の高齢者もいるほどです。

日本の高齢者の多くは年金で生活をしています。しかし、年金で生活するのは苦しく、生活保護受給者が増える要因ともなります。+αの収入が生まれることで、生活が楽になり地域に活気が生まれます。

メリット②地域福祉の発展につながる

高齢者でも続けられるビジネスの活性化は、地域福祉の発展にもつながります。上勝町では、定年を迎え仕事がなくなった高齢者がやりがいを持って栽培・出荷・販売を行うことで、外に出る機会が増え、健康維持や寝たきり予防ができるようになりました。

また、葉っぱビジネスではタブレットの使用や、パッケージに入れる細かい作業が求められるので、脳の活性化も期待できます。

葉っぱビジネスのデメリットや課題

葉っぱビジネスには、デメリットや課題も存在します。新型コロナウイルスの感染拡大も葉っぱビジネスに大きく影響しました。

デメリット①コロナ禍による売上減少

葉っぱビジネスは、会席料理店や居酒屋といった顧客をターゲットにしています。そのため、コロナ渦で外食する人が減ったことで、需要が減り大きな打撃を受けました。例えば株式会社いろどりの年商は平常時は約2億円でしたが、コロナ渦で2020年には1億5,000万円まで落ち込みました。

また、葉っぱビジネスは他の農業と同じく、自然状況に左右されます。現在はコロナ禍は落ち着きを取り戻しつつありますが、葉っぱビジネスが決して100%安定した産業ではないという課題が残ります。

デメリット②後継者問題

葉っぱビジネスの主な需要はつまものであり、若者にとっては今後ビジネスを成長させる余地が小さいと感じてしまうかもしれません。インターンシップで訪れる若者も増えてはいるものの、地方の人口減少は止まらず、後継者問題は大きな課題です。

葉っぱビジネスだけでなく、若い移住者が定住したいと思う町作りが必要です。

葉っぱビジネスの成功事例

最後に、葉っぱビジネスの取組事例を紹介します。

【株式会社いろどり】葉っぱビジネスの生みの親

既に記事の中で紹介した株式会社いろどりは、葉っぱビジネスの生みの親として、現在も活動を続けています。現在では、300以上の種類の葉っぱを全国に出荷しています。農家向けにタブレットの使い方を解説する機会を設けたり、後継者育成のための農業体験の受け入れを行っています。

【フレッシュファーム奥本】ドクダミの育成と農業体験

「フレッシュファーム奥本」は、ドクダミの葉っぱを販売しています。ドクダミは薬草としても有名で、収穫・販売だけでなく収穫体験も開催しています。地域の特性を活かし、ただ栽培して出荷するだけではない、新たなビジネスモデルを導入した事例です。

まとめ

既に地域に存在した葉っぱを販売するという斬新なアイディアは、葉っぱビジネスという新たなビジネスモデルを生み出しました。

ICTと地域の資源、そして地元の高齢者の知恵とスキルを活かした産業の成功事例です。今後ビジネスを開拓していきたい事業者にとって、参考になる点が多いのではないでしょうか。