世界各地で開催されているマーケット。
その土地ならではの食べ物や雑貨などを買えることも多く、観光スポットとして知られるマーケットもたくさんあります。
オーストラリアのタスマニア州で毎週開催されているサラマンカマーケットも、タスマニアを代表する観光スポットのひとつとして人気を集めています。
しかし、集客力が高いマーケットは廃棄物問題とも深い関わりがあることから、積極的に廃棄物削減への対策に力を入れることが大切です。
そこで今回は、サラマンカマーケットが廃棄物を減らすために行っている取り組みについて詳しく解説していきます。
サラマンカマーケットとは?
サラマンカマーケットとは、タスマニア州の州都・ホバートのサラマンカ地区にて行われるマーケットです。
1972年1月から開催されており、毎週土曜日の午前8時半から午後3時までオープンしています。
出店数は300にも及び、地元生産の農産物、雑貨、アート、服飾品、お菓子、工芸品、植物をはじめとするさまざまジャンルの製品が販売されています。
また、コーヒーやカフェメニューといった飲食系の屋台も多く、タスマニアの味をマーケットで手軽に楽しめるのも魅力的。
サラマンカプレイスと呼ばれるホバートの歴史的建造物が開催地となっていることから、散策ついでにマーケットに立ち寄る観光客もたくさんいます。
サラマンカマーケットが抱える環境課題
ホバートを代表する観光スポットのひとつでもあるサラマンカマーケット。
年間で最大100万人もの人が集まると言われており、1日で集まる廃棄物の量は1トンを超えています。
マーケットを運営するにあたって廃棄物は切っても切れない関係となっているため、サラマンカマーケットでは廃棄物の処理やマネジメントの強化に取り組むことが必要不可欠です。
ホバートが行う廃棄物管理戦略
ホバートが位置するタスマニアは、州全体が島となっています。
本土から完全に分離しているため、オーストラリア国内でも珍しい動植物や生態系が見られる地として知られています。
そんな大自然を守るべく、州都のホバートが力を入れているのが環境保全です。
特に廃棄物の削減を目指しており、「ホバート市廃棄物管理戦略2015~2030年(The City of Hobart Waste Management Strategy2015-2030)」に沿って2030年までにホバートの埋立地への廃棄物ゼロを目標に掲げています。
効果的に廃棄物を削減するため、具体的には有機廃棄物、リサイクルの促進、一般市民への啓発をはじめとする90以上の分野への取り組みが含まれています。
サラマンカマーケットが行うエコ活動
州の生態系を保護するため、環境保全に取り組むホバート。
もちろん、ホバート市内で開催されるサラマンカマーケットでも廃棄物管理戦略は適用されています。
ホバートの有名観光スポットとして認知されていることから、サラマンカマーケットではいち早く廃棄物削減への取り組みをスタートさせました。
2024年時点でサラマンカマーケットは持続可能なビジネスとして認定されており、観光地運営と環境保全の両方を実現しています。
以下では、そんなサラマンカマーケットが実際に行っている廃棄物削減のための取り組みについてチェックしていきましょう。
出店者用の段ボール箱
サラマンカマーケットのエリア内にあるのが、出店者用の段ボール箱回収スポットです。
さまざまな製品が搬入されるサラマンカマーケットでは、多くの店で膨大な数の段ボール箱が発生します。
サラマンカマーケットは効率的かつ正確に段ボール箱をリサイクルするため、出店者の段ボール箱を一括回収するエリアを確保しています。
集められた段ボール箱は廃棄物管理センターに送られ、工場内でリサイクルされる仕組みです。
有機廃棄物専用のゴミ箱の設置
サラマンカマーケットに設置されているのが、有機廃棄物専用の緑のゴミ箱です。
サラマンカマーケットでは有機廃棄物を全て堆肥化することで、埋め立て地へ送られる廃棄物量を削減しています。
ゴミ箱は生ごみ、コーヒーカップ(蓋を含む)、カトラリー、ストロー、テイクアウト用の容器をはじめとするさまざまな廃棄物を対象としており、有機廃棄物はサウスホバートに位置するマクロビーズガリー廃棄物管理センター(McRobies Gully Waste Management Centre)へ送られます。
その後、約3ヶ月間という長い時間をかけて分解し、認定有機堆肥になる仕組みです。
認定有機堆肥は高品質の園芸用堆肥に分類されており、ホームセンターなどで一般の堆肥と共に販売されています。
廃棄物の削減に繋がるのはもちろん、堆肥は市内の植物育成にも直結することから、多方面において環境保全に貢献している取り組みです。
尚、サラマンカマーケットは有機廃棄物専用のゴミ箱の設置以来、毎年24トンを超える廃棄物を堆肥に作り替えています。
リサイクル用のゴミ箱の設置
サラマンカマーケットでは、有機廃棄物の堆肥化だけでなくリサイクルにも力を入れています。
エリア内には黄色のリサイクル専用のゴミ箱が設置されており、廃棄物を分別する上で必要不可欠な存在です。
ゴミ箱に投入されたリサイクル素材は分別され、毎年20トン以上の廃棄物がリサイクルされています。
ウォーターサーバーの設置
サラマンカマーケットがあるホバートで行われているのが、「GOOD WATER PROJECT」と呼ばれる環境プロジェクトです。
ペットボトルの消費を減らすことを目的としており、サラマンカマーケットのエリア内に2つのウォーターサーバーを設置しています。
ウォーターサーバーにはタスマニア産の水が入っているのが特徴で、「ペットボトルの水より美味しい」「地元産の水を手軽に飲めて嬉しい」と市民からも高評価を得ている取り組みです。
市民が自ら率先してウォーターサーバーを利用する機会が増えることにより、サラマンカマーケット内で販売及び廃棄されるペットボトルの量の削減に直結しています。
ビニール袋の不使用
サラマンカマーケットでは、2019年7月よりビニール袋の提供を禁止しています。
国内のほかの地域よりも早い段階からプラスチック問題について懸念しており、サラマンカマーケットの出店者に対してビニール袋を買い物袋として使わないように警告してきました。
ビニール袋の代わりに、出店者は紙製の袋や再利用可能な袋などを顧客に提供しています。
袋は出店者自身がデザインしたオリジナルのものが多く、袋を集めて買い物袋として愛用する顧客もいるほどです。
また、サラマンカマーケットでは出店者だけでなく、マーケットのインフォメーションブースでも買い物袋を販売しています。
麻素材の丈夫な袋で、マーケット内だけでなく顧客が日常的かつ長期的にさまざまな場所で使える仕様になっています。
ビニール袋で作ったベンチ
サラマンカマーケットでは、エコを意識したアートの展示も行っています。
マーケットの開催地であるサラマンカの芝生エリアに置かれているのが、ビニール袋で作られた緑色のベンチです。
2019年、サラマンカマーケットにてプラスチック製品が完全に撤退されました。
それまで使っていたプラスチック製品を紙や堆肥化可能な素材へ切り替えるにあたって、市がサラマンカマーケットの出店者から回収たのがビニール袋です。
集まったビニール袋は数千枚にも及んだため、サスティナブルなマーケットとしてのメッセージ性を持つアートの材料に使われることになりました。
ビニール袋はプラスチック製品の再加工を行っているReplas社に送られ、2つの緑色のベンチとして生まれ変わりました。
デザインにはサラマンカマーケットのイラストが描かれており、マーケットに関わる全ての人々が一丸となって環境保全に取り組むという決意が表明されています。
まとめ
環境問題と深い関わりを持つマーケット。
しかし、サラマンカマーケットは観光スポットとしての役割も果たしており、市民の雇用機会を守るためにもマーケットを封鎖するわけにはいきません。
サスティナブルな地球をつくっていくには、エコフレンドリーなマーケットを運営することが大切です。
サラマンカマーケットは運営体制を見直すことで、環境に配慮した持続可能性の高いマーケットづくりに成功しています。
私たちも環境問題に直面した場合は、単に取りやめるのではなく現状の見直しや改善策を考えることからはじめてみましょう。