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統合失調症とは?症状や原因、治療などについてわかりやすく解説!

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有名人のカミングアウトなどで、ときどきメディアでも話題になる統合失調症

どのような病気か、あなたは正しく理解できていますか?

統合失調症は、幻覚や妄想、思考障害などの症状が現れる精神疾患です。世界保健機関(WHO)によると、世界で約2,500万人が統合失調症と診断されています。

統合失調症を正しく理解しておくことで、もしものとき、あなたやあなたの大切な人を救うかもしれません!統合失調症の症状や原因、治療などについてわかりやすく解説します。

目次

統合失調症とは

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統合失調症は精神疾患の1つです。この病気は、

  • 幻覚や妄想
  • 混乱した思考
  • 感情の鈍化

などの症状を引き起こし、ときに日常生活が送れないほどの深刻な状況になることもあります。

統合失調症の代表的な症状

統合失調症の症状は大きく分けて、陽性症状陰性症状の2つに分けられます。統合失調症によってどのような症状が出るかは、人それぞれ異なりますが、主なものとしては以下が挙げられます。

陽性症状

陽性症状は、現実とは異なる体験を伴うことが特徴です。主な陽性症状には、

  • 幻聴:存在しない音や声が聞こえる
  • 妄想:現実とは異なることを信じる(誇大妄想※・被害妄想※など)

などがあります。

誇大妄想

誇大妄想とは、自分の能力や資質が優れていると過大に評価したり、大げさに空想したりする妄想のこと。誇大妄想は、統合失調症や双極性障害などの精神疾患の症状として、また、薬物乱用や脳の損傷などが原因で現れることがある。

被害妄想

自分は悪意を持った人々から攻撃されていると思い込む妄想のこと。被害妄想は、統合失調症や妄想性障害などの精神疾患の症状として、また、薬物乱用や脳の損傷などが原因で現れることがある。

陰性症状

陰性症状は、通常の機能が低下したり欠如したりするものです。主な陰性症状には、

  • 感情の平板化:感情の表現が乏しくなる
  • 無気力:活動や行動に対する興味や意欲が低下する

などがあります。

統合失調症は完治するの?

統合失調症の完治については、医学的な視点から見ると、現状では難しいとされています。統合失調症は、症状が軽くなっても再発する可能性があるため、「完治」という診断をされることはありません。

しかし、「再発の可能性がある」だけであって、安定した状態で再発せずに過ごせる可能性もあります。適切な治療とケアにより、症状が大幅に改善し、日常生活が送れるようになる場合も多くあります。

次の章では、統合失調症の原因に迫っていきます。*1)

統合失調症の原因

統合失調症の原因は完全には解明されていませんが、遺伝的要素や脳の化学物質のバランスの乱れなど、複数の原因が関与していると考えられています。現状、統合失調症の原因として考えられているものを確認してみましょう。

遺伝的要因

統合失調症の患者の家族に、統合失調症の患者が多いという研究結果があります。つまり、統合失調症は遺伝的要因が関与していると考えられています。統合失調症の遺伝的要因は、特定の遺伝子ではなく、複数の遺伝子が複雑に絡み合って影響を与えている可能性があるといわれています。

環境的要因

統合失調症の発症に影響を与える可能性がある環境的要因としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 妊娠中の母親の感染症(インフルエンザなど)
  • 出産時の酸素欠乏
  • 低体重での出産
  • 母体と乳児の血液型不適合
  • 薬物乱用
  • ストレス

これらの環境的要因が、遺伝的要因の存在下で発症のリスクを高めると考えられています。

神経伝達物質の異常

統合失調症の発症には、脳内の神経伝達物質のバランスの変化が関与していると考えられています。ドーパミンという神経伝達物質の異常が統合失調症の症状と関連しているという説が有力です。

また、セロトニンやグルタミン酸といった神経伝達物質の異常も統合失調症と関連している可能性が研究で示唆されています。

以上のように、統合失調症の原因には遺伝的な要因環境要因神経伝達物質の異常などが複合的に関与し、それぞれが統合失調症の発症に影響を与える可能性があります。

ただし、統合失調症の原因や発症メカニズムについてはまだ完全には解明されておらず、研究が進行中です。次の章では、統合失調症の治療とはどのようなものかを理解していきましょう。*2)

統合失調症の治療について

統合失調症の治療は、

  • 薬物療法
  • 精神科リハビリテーション

の2つを組み合わせて行うことが一般的です。症状が重い場合、必要に応じて、

  • ECT(Electro Convulsive Therapy:電気けいれん療法)

が行われる場合があります。

薬物療法

薬物療法は、統合失調症の治療の中心となる方法です。抗精神病薬と呼ばれる薬剤を用いて、症状の改善や再発の予防を図ります。

抗精神病薬には、

  • 定型抗精神病薬
  • 非定型抗精神病薬

の2つの種類があります。薬物療法は、統合失調症の症状を改善し、再発を予防するために非常に有効な方法です。

しかし、副作用が出ることもあるため、医師の指示に従って服用することが大切です。

定型抗精神病薬

定型抗精神病薬は、脳内にあるドーパミンという神経伝達物質の働きを抑えることで、陽性症状に効果を発揮します。

非定型抗精神病薬

非定型抗精神病薬は、ドーパミンだけでなく、セロトニンなどの他の神経伝達物質の働きも抑えることで、陽性症状に加えて陰性症状や認知機能障害にも効果を発揮します。

精神科リハビリテーション

精神科リハビリテーションは、統合失調症の症状や生活上の困難を改善するために、生活リズムや社会生活のスキルを身につけることなどを目的とした治療です。

  • 作業療法:日常生活動作や社会生活技能を身につけることを目的とした治療
  • 言語療法:コミュニケーション能力や言語能力を改善することを目的とした治療
  • 認知行動療法:認知や行動のパターンを理解し、それを修正することで症状を改善することを目的とした治療
  • 家族療法:家族と協力しながら、患者の症状や生活上の困難を改善することを目的とした治療

などが代表的な例です。精神科リハビリテーションは、薬物療法だけでは改善が難しい症状や生活上の困難を改善するために効果的な方法です。

ECT(電気けいれん療法)

ECTは、重いうつ病や躁病、統合失調症などの精神疾患の治療に用いられます。特に、薬物療法や精神療法で効果が得られない場合や、自殺の危険性が高い場合に用いられますが、危険性がないわけではありません。

主な副作用として、

  • 記憶障害(短期記憶障害、長期記憶障害)
  • 頭痛
  • 吐き気
  • 筋肉痛
  • 不安
  • 混乱

などを招くことがあります。これらの副作用は、ECTを繰り返すほど重度になる傾向があります。このため、ECTでの治療は、危険性と有効性をよく理解した上で、慎重に検討して行う必要があります。

早期介入の重要性

統合失調症は、早期に適切な治療とサポートを受けることが非常に重要です。早期介入によって、症状の悪化を防ぎ、患者の生活の質を向上させることができます。

また、早期の治療やサポートによって、将来のリスクを減らし、統合失調症の影響を最小限に抑えることができます。症状が現れたら、できるだけ早く医療専門家に相談し、適切な診断と治療を受けることが重要です。

どのように統合失調症の人をサポートすればいい?

統合失調症の人をサポートするためには、まず病気を理解し、受け入れることが大切です。その上で、日常生活のサポートを行います。

それぞれの希望やニーズを尊重しながら、ゆとりのある生活を送ることがベースとなります。統合失調症の人が、適度に楽しみながら、リラックスすることができる時間を大切にし、無理なく精神科リハビリテーションに取り組めるようにサポートしましょう。

  • 病気は誰のせいでもない
  • 家族は味方
  • 回復に向けたイメージを持つ
  • 医師とこまめなコミュニケーションをとる

などのことを忘れず、相互理解と信頼を保ちながら治療を進めることが重要です。

統合失調症の治療は、人それぞれ、症状や度合いによって異なります。統合失調症の治療は、患者やその家族、医療専門家、精神保健専門家などが協力し、総合的なサポートを提供することが必要です。

統合失調症の治療は、確かに困難な場面も含まれますが、適切なサポートを受けることで、症状の軽減や社会生活の改善に向けた道のりを、それぞれのペースで歩むことができます。治療においては、本人の周囲の人も希望を持ち、前向きに取り組むことが重要です。*3)

統合失調症に悩む人の困難とは

「統合失調症」という言葉を聞いただけでは、多くの人はその深刻さを理解するのは難しいかもしれません。しかし、この病気は患者やその周囲にさまざまな困難をもたらします。

ここでは、統合失調症に悩む人々の困難について理解を深め、その重要性を考えてみましょう。

受診・治療の拒否

統合失調症の症状は、本人が病気であると認識できないことが少なくありません。そのため、受診や治療を拒否してしまうことがあります。

本人の意思に反して治療を強制することは難しいため、家族や周囲の人からの理解と協力が欠かせません。本人の意思を尊重しつつ、治療の必要性を説明し、本人が納得して治療を受けられるような環境を整えることが重要です。

妄想・幻覚

統合失調症の特徴の1つとして、現実と異なる妄想や幻覚が現れることがあります。これは、本人にとって非常に困難な状況であり、その人の日常生活や社会生活に大きな影響を与えることがあります。

妄想や幻覚の症状があると、他人とのコミュニケーションを取る上で大きな障壁となります。そのため、周囲の人々は、患者の感情や経験を尊重し、適切なサポートを提供することが求められます。

生活習慣の問題

統合失調症の症状によっては、日常生活の維持や健康な生活習慣の確立が難しくなることがあります。食事・睡眠・入浴・運動など、健康的な生活が維持できるように、周囲の人のサポートが必要です。

健康的な生活習慣を送ることは、統合失調症の治療において鍵とも言えます。体力が低下したり、他の病気を併発したりしてしまうと統合失調症の治療に支障をきたす可能性があります。

健康への影響

統合失調症は、患者の身体的健康にも影響を与えることがあります。統合失調症の症状が原因で、

  • ストレス
  • 不安症
  • 不眠症など睡眠障害
  • 栄養失調
  • 運動不足

などが、健康に悪影響を及ぼす可能性があります。そのため、統合失調症の人には、身体的健康と精神的健康の両面からのアプローチによるサポートが求められます。

暴言・暴力

統合失調症の人は、症状が原因で突然激しく興奮して、時には暴言を吐いたり、暴力をふるったりすることもあります。これらの行動は、本人だけでなく周囲の人々にも大きな影響を及ぼし、身体的な怪我だけでなく、精神的なダメージを負ってしまう可能性があります。

本人の症状の度合いに応じて、深い理解のもと、極度なストレスや不安を感じないような環境を整えることが大切です。

統合失調症の人が暴れだしてしまったら、周囲の安全を確保して冷静に見守りましょう。興奮が収まらないときのための薬を処方されている場合は、その薬を服用して様子を見ましょう。

もし、なかなか落ち着かず、暴れ方がひどくなる場合は、早めに助けを呼び、病院へ相談しましょう。

再発に対する不安

統合失調症は再発しやすい病気です。この特徴は、症状が落ち着いている時でも本人や周囲の人を不安にすることがあります。

  • 医師の指示による薬物療法の継続
  • 精神的なサポート
  • 健康的な生活習慣の維持
  • 再発のサインを見逃さない

などに気を付け、再発への不安をできる限り和らげるようにしましょう。再発のサインを感じた場合は早めに受診し、適切な対処をとりましょう。

このように、統合失調症の人は、不安・孤独・無気力・罪悪感などを抱きやすく、自分の気持ちがまとまらない状態で過ごしています。周囲の人は否定や批判をせずに、寄り添ってあげることを心掛けましょう。

統合失調症を抱えながら暮らすことは、本人にとってもそれを支える人にとっても、簡単なことではありません。また、原因がまだはっきりしないこの病気への正しい理解は、社会として十分とは言えません。

次の章では、統合失調症と私たちの社会について考えていきましょう。*4)

統合失調症と社会

厚生労働省の調べでは、2017年(平成29年)の時点で、統合失調症の患者数は63.9万人と発表されています。しかし、統合失調症の人のなかには医療機関にかかっていない人、途中で治療をやめてしまう人も多く、現在日本にはおよそ80万人ほど、医療機関によっては100万人ほどの統合失調症患者がいると推測しています。

【精神疾患を有する総患者数の推移】

現在の社会では、統合失調症に対する理解がまだ不十分な部分があります。多くの人々が統合失調症についての正しい知識を持っておらず、そのために偏見や誤解が広がっています。統合失調症の人々は、その症状や行動によって、誤解されやすく、孤立感や差別を経験することが多いのです。

統合失調症に対する社会的偏見

社会的偏見は、統合失調症の人々の社会参加を阻む大きな原因となっています。統合失調症の人々は、

  • 危ない人、怖い人というイメージ
  • 仕事や学校で働けない、役立たずだというイメージ
  • 結婚や出産ができない、家族として不適格だというイメージ
  • 統合失調症の人々が自らの病気や症状をコントロールできるという誤った考え方

といった偏見を持たれることがあります。これらの偏見は、差別や孤立を招く原因となります。

社会的偏見との闘い

統合失調症に対する社会的偏見に立ち向かうためには、まず正しい情報を広めることが重要です。統合失調症は、ただの個人の弱さや怠慢ではなく、脳の疾患であり、誰にでも起こりうるものです。

統合失調症の人々は、病気によってさまざまな困難を抱えています。しかし、彼らは決して病気そのものではありません。誰もが、1人の人間として尊重され、理解される権利を持っているのです。

私たちにできること

私たちひとりひとりが、統合失調症に対する理解を深め、行動を起こすことで、社会の偏見をなくすことにつながります。社会に統合失調症に関しての正しい知識を広め、統合失調症の人々が、安心して社会の中で生きられる社会を実現していきましょう。

ここまでさまざまな角度から統合失調症についてみてきましたが、統合失調症にかかったことのない人にとって、統合失調症の人の生活がどのようなものかは想像するのが難しいかもしれません。次の章では統合失調症を抱える人の体験談を紹介します。*5)

統合失調症を抱える人の実際の生活

厚生労働省が提供する「こころの病 克服体験記」から、ある男性の統合失調症体験談を紹介します。

不登校気味だった小学校・中学校時代

ある、統合失調症の経験を持つ男性は、小学生時代から不登校気味で、中学時代も不登校でした。中学生時代には昼夜逆転の生活を送り、夜中に家を歩き回るなど、奇妙な行動をとるようになっていました。

コンビニでのトラブルがきっかけで統合失調症と判明

そんなある日、彼はトラブルを起こしてしまいます。コンビニで「肉まんの味がいつもと違う」と文句を言ったのです。彼は次の日も、肉まんの味が違うと感じました。

そこでまた文句を言ったところ、奥の方でサッと隠れる店員が見えたため、コンビニの店長に、その店員が肉まんに毒を入れたと報告したのです。店長の連絡を受けた母親に連れ戻され、すぐに医療機関を受診すると、統合失調症と診断されました。

病状が悪化した高校時代

高校時代は薬を飲みながら無理のない範囲で通学していましたが、恋愛トラブルがきっかけで病状が悪化してしまいました。そんな状況の中、「先生に恋するようなバカは学校の恥だから死ね」という声(幻聴)が聞こえたので、彼は2階から飛び降りていまいます。命に別状はありませんでしたが、大けがを負い、そのまま病院に入院しました。その時も、現実と妄想の区別がつかず、拉致されたのだと思い大泣きしたそうです。

入院で病状が改善

そんな彼も、入院して病状が落ち着き同じように心の病を持つ入院患者と「対人トレーニング」や「カラオケ大会」などに参加し、はじめてコミュニケーションの難しさと楽しさを知りました。退院後、本が好きだったことを活かして、大学合格を果たし、病院のデイケアにも通いながら、5年かけて卒業しました。

病気と共存できるように

以前の彼にとって、統合失調症は「突然来て、いつのまにか消えていく謎の病気」だったそうです。しかし、マイペースに病気と共存できるようになった今では「こういう時にやってくるな」とわかり、早めに薬の量を調節するなど、対処ができるようになりました。

体験談の最後に、彼は「病気と自分をよく知れば、だんだん、病気にコントロールされなくなります。」と言っています。また、周囲の人との協力の大切さや、病気をコントロールできるようになりたいという前向きな気持ちも語られています。

彼のまとめの言葉にも、

  • 適切な治療
  • 家族の協力
  • 病気への理解

が、統合失調症の病状改善と病状のコントロールに不可欠であることが語られています。統合失調症でない人にとって、統合失調症の症状は理解するのが難しいことかもしれません。

しかし、この病気について学び、正しい知識を得ることで、統合失調症の人々に偏見を持つことなく、支援することができるようになります。あなた自身、また、あなたの周囲の人に、もし統合失調症のサインが現れたとき、知識があれば早期発見につなげることができるのです。*6)

統合失調症に関するよくある疑問

ここまで見てきて、統合失調症という病気の複雑さ、困難が少しは理解できたでしょうか。この章では、統合失調症に関するよくある疑問に、わかりやすく回答していきます。

統合失調症になりやすい人は?

統合失調症は、遺伝的な要因と環境的な要因の両方が影響すると考えられています。一般的に、統合失調症を発症するリスクが高いとされているのは、

  • 統合失調症の家族歴がある人
  • 一卵性双生児
  • 妊娠中の母親の感染症や栄養不足、出生時のトラブル
  • 幼少期の虐待やネグレクトを経験した人
  • 喫煙やアルコールの多飲
  • 大麻などの薬物使用をしている人

などの条件です。これに、過度のストレスがかかるような環境が重なったとき、統合失調症を発症するリスクが高くなります。

しかし、これらの要因があっても、必ずしも統合失調症を引き起こすわけではありません。統合失調症の発症には複数の要因が絡み合うため、一概に「統合失調症になりやすい人」と特定するのは困難です。

薬で治るの?

統合失調症の治療には、主に薬物療法が用いられます。ただし、薬物療法だけで統合失調症を完全に治すことは難しいと考えられています。

そのため、薬物療法に加えて、心理療法リハビリテーションなどの治療も重要です。

統合失調症とうつ病の違いは?

統合失調症とうつ病は、精神疾患の中でも異なる症状や特徴を持っています。統合失調症は、幻覚や妄想、感情の鈍さ、社会的な離れなどの症状がみられる疾患ですが、うつ病は、悲しみ無気力感興味や喜びの喪失などの症状が中心となる疾患です。

統合失調症は、幻覚や妄想といった症状が中心であり、場合によっては人格の変化行動の異常も見られることがあります。一方、うつ病では、悲観的な考え方自己評価が低下し、自殺願望を持ちやすくなることが特徴です。

統合失調症かもしれないサインは?

国立精神・神経医療研究センターでは、統合失調症のサイン・症状を以下のように紹介しています。統合失調症は、本人には現実に感じられているので、それが病気だとは気が付きにくいといわれています。

周囲の人が気づいて、医療機関にかかることが早期発見のために大切です。

幻覚や妄想のサイン

  • いつも不安そうで、緊張している
  • 悪口をいわれた、いじめを受けたと訴えるが、現実には何も起きていない
  • 監視や盗聴を受けていると言うので調べたが、何も見つけられない
  • ぶつぶつと独り言を言っている
  • にやにや笑うことが多い
  • 命令する声が聞こえると言う

そのほかのサイン

認知機能の障害

  • 日常生活における理解力が低下したり、記憶力が低下して、社会生活における問題解決能力が低下する

会話や行動の障害

  • 話にまとまりがなく、何が言いたいのかわからない・相手の話の内容がつかめない
  • 作業のミスが多い

意欲の障害

  • 打ち込んできた趣味、楽しみにしていたことに興味を示さなくなった
  • 人づきあいを避けて、引きこもるようになった
  • 何もせずにゴロゴロしている
  • 身なりにまったくかまわなくなり、入浴もしない

感情の障害

  • 感情の動きが少なくなる
  • 他人の感情や表情についての理解が苦手になる

引用:国立精神・神経医療研究センター『統合失調症』

統合失調症にかかった有名人は?

歴史的人物や現代の有名人で、統合失調症であったと言われていたり、自身が統合失調症にかかったことを公表している人を紹介します。

ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ(画家)

【ゴッホの「自画像』】

ゴッホは、幼少期から癇癪持ちで、極度の躁鬱状態を繰り返していたと言われています。画家になる前には幾つかの職業にも就きますがどれも上手くいきませんでした。そのため無職状態となり、弟からの資金援助により幼い頃からの趣味であったデッサンを素描していたところ、画家になることを思い立ちました。27歳のときでした。

画家になってからも自身の耳を切り落とすなどの奇行により、サン・レミ精神病院にて療養することとなり、この療養中に彼は代表作である「星月夜」を描き上げました。

ゴッホは、生涯に約900点の絵画を描きましたが、そのほとんどは、精神病院に入院していた時期に描かれたものと言われています。一部の解釈では、彼の絵には、幻覚や幻聴など、精神病の症状が反映されていると言われています。

夏目漱石(作家)

【夏目漱石】

夏目漱石は、日本の近代文学を代表する作家です。代表作には「吾輩は猫である」「坊ちゃん」「こころ」「それから」などがあります。

漱石は若い頃から成績優秀で、周囲から将来を望まれていました。しかし、その重圧からメンタルを病みやすい状態にあったと考えられます。彼は他人にどう思われるか気にしがちでしたが、『自分の人生の目的をつくるのは自分』という考え方にたどりついたことで、文豪になることができたと言われています。

彼が統合失調症であったという確固たる証拠はありませんが、彼の生涯や作品からは、精神的な苦悩を抱えていたことがうかがえます。漱石は、複雑な人間心理を描いた作品を多く残しており、彼自身もまた、強いストレスや抑うつ状態に悩まされていたと言われています。

玉置浩二さん(ミュージシャン)

【玉置浩二さんのアルバム「玉置浩二 Concert Tour 2022 故郷楽団 35th ANNIVERSARY 〜星路(みち)〜 in 仙台〔CD〕」】

日本のミュージシャンである玉置浩二さんは、過去に統合失調症と診断されたことを公表しています。玉置さんは、幻聴や妄想、思考の混乱などの症状に苦しみながらも、治療を受け、音楽活動を続けてきました。彼は治療を通じて症状を管理し、多くのファンに支えられながら、持ち前の音楽性を発揮し続けていることが知られています。

玉置さんは、大学を卒業してミュージシャンとしてデビューし、安全地帯は瞬く間に人気を博しました。しかし、芸能活動を続けるうちに、症状はさらに悪化し、1994年に精神科に入院することになりました。

玉置さんは、2000年に芸能界に復帰し、その類まれな才能を発揮した音楽活動を今も続けています。彼の体験は、統合失調症に悩む人やその家族にとって、大きな希望を与えるものとなっています。

松本ハウス・ハウス加賀谷さん

【松本ハウス・ハウス加賀谷さんの著書『統合失調症がやってきた』】

加賀谷さんの統合失調症の体験は、彼の著書『統合失調症がやってきた』に詳しく記されています。この本によると、加賀谷さんは中学生の頃から、誰もいないはずなのに「臭い」という声(幻聴)に悩まされていました。また、高校生になると、被害妄想や思考障害などの症状も現れるようになりました。

加賀谷さんは、大学を中退して芸能界入りし、松本ハウスを結成しました。しかし、芸能活動を続けるうちに、症状はさらに悪化し、ついに27歳の時に精神科の閉鎖病棟に入院することになりました。

加賀谷さんは、入院中に、統合失調症の治療やリハビリテーションについて学びました。また、統合失調症の当事者団体に参加して、他の当事者から体験談を聞くこともしました。これらの経験が、加賀谷さんの回復に大きな役割を果たしました。

統合失調症は、完全に治すことは難しい病気です。しかし、ここで紹介したように、適切な治療と支援を受けることで、症状をコントロールし、社会復帰を果たすことは可能です。

統合失調症は、決してひとりで抱え込まなくていい病気です。周囲の人に相談したり、専門機関に相談したりして、なるべく早く、適切な治療や支援を受けましょう。*7)

統合失調症とSDGs

統合失調症への理解とサポートが果たす役割は、持続可能な開発目標(SDGs)において、医療や社会の在り方を深く考え、より良い未来を目指すために重要な位置を占めています。統合失調症を持つ人々が社会において正しく理解され、健康で豊かな生活を送ることができるようにすることは、SDGsの達成に向けた取り組みの一環となります。

特に関係の深いSDGs目標を確認してみましょう。

SDGs目標3:すべての人に健康と福祉を

統合失調症の人々は身体的、精神的な健康や福祉に関してさまざまな困難に直面しています。適切な治療を受けることで、症状をコントロールし、健康的な生活を送ることが可能になります。

そして統合失調症への正しい理解やサポートによって、

  • 早期発見・早期治療の促進
  • 社会復帰の支援

など、社会的な包摂を促進し、福祉を向上させることができます。適切な支援があれば、統合失調症の人々も社会の一員として、自己実現を図ることができます。

SDGs目標4:質の高い教育をみんなに

統合失調症の人々は、学習や就労に困難を抱えることがあります。その中で、統合失調症への理解と支援を充実させることで、当事者の人々の学習や進路選択を継続できるように支援することができます。

また、統合失調症患者の就労支援を通して、就労率の向上が期待されます。就労が進めば、自立した生活を送ることができるようになります。

統合失調症への理解と支援は、SDGs目標4:質の高い教育をみんなに、の実現に欠かせない取り組みです。

SDGs目標8:働きがいも経済成長も

統合失調症患者の就労率は、一般の人口と比べて低い傾向にあります。

統合失調症への理解と支援を進めることで、統合失調症患者が能力や適性に応じた仕事に就き、自立した生活を送れるように支援することができます。また、統合失調症患者が働きやすい職場環境を整えることも重要です。

社会の理解と支援を通して、統合失調症患者が安心して働ける環境を整えることができます。

SDGs目標10:人や国の不平等をなくそう

統合失調症に対する偏見や誤解が根強く残っており、統合失調症の人々は、社会から排除されてしまうことが、現実ではまだ起こっています。その結果、彼らの権利や機会が制限され、不平等が生じることがあります。

統合失調症への正しい理解やサポートによって、統合失調症に対する偏見や誤解を解消し、統合失調症の患者さんが社会で活躍できる環境を整えることで、不平等をなくし、包摂的な社会を実現することに貢献できます。

統合失調症は、適切な理解やサポートによって、病気をコントロールし、社会で活躍できる病気です。統合失調症への正しい理解やサポートを広げ、SDGs目標の達成に貢献しましょう。*8)

>>各目標に関する詳しい記事はこちらから

まとめ

「ストレス社会」と呼ばれる日本では、統合失調症の有病率はおよそ0.7〜1%といわれ、決して少ない数字ではありません。100人に1人くらいは発症してもおかしくない病気なのです。

あなた自身、また、あなたの周囲の人に、もし統合失調症のサインが現れたとき、知識があれば早期発見につなげることができます。

また、統合失調症の人が、病気によって差別や偏見を受けることなく、安心して生きられる社会にすることも重要です。そのためにも、

  • 統合失調症に関する正しい知識の普及
  • 統合失調症の人への支援体制の整備
  • 統合失調症に対する社会的偏見の解消

は欠かせません。この機会に、このような社会的偏見や、病気の存在を正しく理解し、将来の社会がより公正で住みやすいものとなるように行動しましょう!

知識を広める、周囲に気を配るなど、あなたが無理なくできることからで構いません。また、あなたの世界を広げるために、このような知識を学び続けることを心がけてください。

より良い社会は、正しい知識によってつくられるのです。

<参考・引用文献>
*1)統合失調症とは
国立精神・神経医療研究センター『統合失調症』
厚生労働省『統合失調症』
厚生労働省『e-ヘルスネット 統合失調症』
厚生労働省『精神障害(精神疾患)の特性(代表例)』
厚生労働省『統合失調症患者の状態と退院可能性』
大塚製薬『統合失調症ABC 3.病気の経過と症状は?』
大塚製薬『脳科学から見た統合失調症』
*2)統合失調症の原因
NHK『統合失調症 病名の歴史と3つの症状』(2023年9月)
NHK『統合失調症の原因と症状チェック、なりやすい人とは』(2021年7月)
大塚製薬『脳科学から見た統合失調症』
国立精神・神経医療研究センター『統合失調症』
京都府『〈統合失調症〉 統合失調症とは』
厚生労働省『統合失調症(とうごうしっちょうしょう)』
*3)統合失調症の治療について
神奈川県立精神医療センター『修正型通電療法(m-ECT)』
大塚製薬『回復を促す家族の接し方』
大塚製薬『お薬について 1.抗精神病薬はどんなお薬ですか?』
厚生労働省『家族や友人が統合失調症になったとき』
NHK『統合失調症の再発率と治療法、薬とリハビリを組み合わせた方法とは』(2022年7月)
厚生労働省『こころもメンテしよう 統合失調症』
*4)統合失調症に悩む人の困難とは
NHK『これだけは知ってほしい!統合失調症の悩み・困りごと(前編)症状 周囲との関係』(2020年5月)
NHK『これだけは知ってほしい!統合失調症の悩み・困りごと(後編)不安 社会に向けて』(2020年5月)
ncnp病院『第2章 精神障害をもつ人の生活の困難の特徴』
*5)統合失調症と社会
厚生労働省『精神疾患を有する総患者数の推移 参考資料』p.3(2022年6月)
厚生労働省『精神障害(精神疾患)の特性(代表例)』
日本障害者リハビリテーション協会 情報センター『ある統合失調症患者の地域生活』(2007年9月)
アステラス製薬『ご家族のための統合失調症との向き合いかた』
*6)統合失調症を抱える人の実際の生活
NHK『“殺してしまうかもしれない” 追い詰められる統合失調症患者の家族』(2022年6月)
高橋 清久『第2章 精神障害をもつ人の生活の困難の特徴 』
大塚製薬『統合失調症とは』
厚生労働省『僕の統合失調症体験』
厚生労働省『病気(統合失調症)を認めない母との1年間』
木村 由美, 天賀谷 隆『統合失調症を持つ人の家族の体験の様相』(2020年)
*7)統合失調症に関するよくある疑問
国立精神・神経医療研究センター『統合失調症』
WIKIMEDIA COMMONS『VanGogh 1887 Selbstbildnis』
WIKIMEDIA COMMONS『Natsume Soseki photo』
Amazon『【Amazon.co.jp限定】玉置浩二 Concert Tour 2022 故郷楽団 35th ANNIVERSARY 〜星路(みち)〜 in 仙台〔CD〕(メガジャケ付)』
Amazon『統合失調症がやってきた (幻冬舎こころの文庫)』
大塚製薬『活き活き暮らすためのQ&A』
厚生労働省『当事者・家族等による、精神障害者に対する理解促進等に資する普及啓発方法の開発』
厚生労働省『精神保健及び精神障害者福祉に関する法律と精神保健福祉行政の現状について』(2023年)
厚生労働省『こころの耳Q&A』
日本精神神経学会『テーマ1: 統合失調症とは何か』
産経新聞『片田珠美(136)玉置浩二さんも苦しんだ…「倫太郎」にはなれない精神科の現状』(2015年5月)
大塚製薬『【特別企画】すまいるナビゲーターに松本ハウスがやってきた!』
*8)統合失調症とSDGs
経済産業省『SDGs』