#インタビュー

株式会社TBM | 環境負荷の少ない新素材とリサイクル技術で、サステナビリティ革命を目指す

株式会社TBM 大場さん インタビュー

大場 健太郎

1982年11月29日、東京都恵比寿生まれ。 15歳の時、沖縄での不法投棄の写真を見て、環境を良くしようと決意。東京農工大学・大学院で環境分野を専攻し、2007年4月に新卒で環境ビジネスベンチャー企業(株式会社レノバ:旧社名リサイクルワン)に入社。環境コンサルティング事業、プラスチックリサイクル工場の立ち上げ、再生可能エネルギーの新規事業開発に従事。リサイクル工場、再生可能エネルギーの事業開発では、一部門の部門長を経験。自身の業務範囲拡大に併せて、マザーズ上場(2017年2月)、東証一部上場(2018年2月)と組織の成長フェーズを経験。2021年8月、再度ベンチャー企業にて、資源循環型社会形成に強く貢献したく、株式会社TBMに参画。株式会社TBMでは、資源循環のモデル構築、リサイクルプラント事業に従事。

introduction

株式会社TBMは、環境配慮型の新素材を開発、製造、販売する会社として、2011年に創業しました。現在では、石灰石を主原料とした新素材「LIMEX(ライメックス)」と、再生材料を50%以上含んだ素材「CirculeX(サーキュレックス)」といった環境配慮型の素材および製品の普及や、資源循環に関連する事業に取り組んでいます。社名「TBM」の由来は、Times Bridge Managementの頭文字。「何百年後も継承され人類の幸せに貢献できる事業を起こしたい、 時代の架け橋になるような会社をつくりたい」という想いが込められています。

今回、「サステナビリティ」を事業として達成することを目指している会社「TBM」に、その取り組み内容、SDGsとの関連性などを伺いました。

創業の経緯と、新素材LIMEX(ライメックス)誕生の背景

-本日はよろしくお願いします。まず、LIMEXはどのようなものか教えてください。

大場さん:

石灰石を主原料とした新素材で、プラスチック・紙の代替製品を製造しています。輸入に頼っている石油と違い、石灰石は日本でも豊富に採取でき、自給自足が可能です。石灰石を活用することで、石油や水、森林などの枯渇リスクが高い資源を守ることができます。

また、原料調達の工程において、石油は多くの熱エネルギーが消費されています。一方、石灰石の調達は石を粉砕して製造されるので、石油に比べてCO2排出量が約50分の1に抑えることが可能です。そのため、石灰石を活用することは、気候変動の問題にも貢献できるんです。

LIMEXを使ってできた商品

-石灰石は日本で採れて、さらに気候変動の問題にも貢献できるんですね!LIMEXはどのように誕生したのでしょうか?

大場さん:

弊社代表の山﨑が、現在のTBMの前身時代に、石灰石を主原料にした紙を作る台湾の会社と出会いました。我々は当初、そこの輸入代理店としてやっていたのですが、その後メーカーとの交渉がうまくいかず、取り扱えなくなってしまったんです。それなら独自に開発しようと。そこから石灰石を主原料として、プラスチックや紙の代替素材として加工できる高い技術を確立し、「LIMEX」を開発しました。

現在、プラスチックの石油由来樹脂は加工しやすく、安いので重宝されています。ただ、原料となる石油には限りがあり、枯渇するリスクが叫ばれていますよね。その一方で、石灰石は世界中に豊富に存在して、枯渇リスクが非常に低い資源だと言われていますが、これまで主原料として使われることは多くなく、有効活用しきれていない鉱物資源でした。

-一度失敗しても、諦めずに自力で開発したのはすごいですね!

目標12「つくる責任つかう責任」に貢献するリサイクル事業

-TBMさんの事業で、SDGsに貢献できている部分はどのようなところでしょうか?

大場さん:

目標12「つくる責任つかう責任」に貢献できていると思います。LIMEXは豊富にある石灰石を使うことで、石油や水の使用量を抑えながら、プラスチックや紙の代替製品を製造でき、また単一の素材と同様に、LIMEX製品はリサイクルが可能な素材です。LIMEXを使い、回収、再生することで、石油や水、森林などの資源を守り、CO2排出量を減らすことが可能です。

LIMEXを使ってできた商品たち

-LIMEXを使うだけで、多くのことに貢献できますね!リサイクル事業にも力を入れていると伺いましたが、どのような内容でしょうか?

大場さん:

2022年の秋頃、神奈川県横須賀市に国内最大級のリサイクルプラントを稼働させる計画を進めています。LIMEXを製造するだけではなく、きちんとリサイクルして、資源を無駄なく循環させるためです。

新工場では、紙やプラスチックなどの他の素材の中からLIMEXのみを自動的に選別できるプログラムを組んでおり、より効率的なリサイクルが実現します。

大場さん:

そして新工場は、LIMEXのリサイクルだけではなく、廃プラスチックのリサイクルも同時に行うことで日本全体のリサイクル技術向上にも貢献することを目指しています。

-それは具体的にどういうことでしょうか?

大場さん:

日本のリサイクル率は80%以上あり、高いと思われていますが、その内訳はサーマルリサイクルが約60%を占め、燃料として燃やされているんです。その一方で、プラスチックごみを製品として蘇らせるマテリアルリサイクルは、約20%に過ぎません。さらに、最近までマテリアルリサイクルの約半数が海外へ輸出されていたので、実際の国内でのリサイクル率はかなり低く、日本のリサイクルは遅れていると言われていました。

>>参照:一般社団法人 プラスチック循環利用協会

サーマルリサイクルとは

プラスチックごみなどの廃棄物を燃やした際に得られる熱エネルギーを回収するリサイクルのこと。ごみから固形燃料を製造する、そのままゴミを燃やして発電するなどの方法があります。

大場さん:

新しいリサイクル工場は、これまでごみとして処理されていた廃棄物を製品の材料にリサイクルして新たな製品を生み出すマテリアルリサイクルを行います。第1号工場に引き続き、どんどん国内外に拡大していきたいと思っています。

-リサイクル工場を広げることで、日本のリサイクル率向上に貢献できるんですね!

目標8「雇用の創出」に貢献するLIMEXの製造事業

-TBMさんの事業は、SDGs目標8「雇用の創出」にも貢献するそうですが、具体的にどのような内容でしょうか?

大場さん:

代表の山﨑は被災地支援に対して強い気持ちを持っています。そのため復興支援の一環として、当社の工場を宮城県に建設しました。全従業員230人のうち約半数がこの工場に勤務し、そのほとんどが地元の方を雇用しています。

-LIMEXという新技術が雇用創出に貢献しているんですね。

大場さん:

はい。また、LIMEXの原料である石灰石は世界中にあるので、他国でも雇用も生み出せると考えています。例えば、紙の生産は水資源が近くにないとできないので、工場を建設する地域が限られます。対してLIMEXは、ほとんど水を使わないので、資源の乏しい国でも産業を生み出せる可能性があるんです。今後は、モンゴルや中国、中東などにも進出し、新技術で現地の雇用創出に貢献していきたいと考えています。

-国内だけではなく、世界の雇用創出につながる可能性があるんですね!

TBMの社内意識

-他にも、TBMの従業員様には特色があるそうですね。

大場さん:

当社は、今年創業10周年を迎える若い会社ですが、20代の新入社員から、90代の会長までと、スタートアップ企業では珍しく年齢の幅が広いんです。若手の勢いとパワー、シニアの経験と技術力の高さがかけ合わさっているのが、TBMの特徴だと思います。

-従業員のSDGsへの意識は高いのでしょうか?

大場さん:

当社の事業の特性上、お客様に説明する際にSDGsを絡めてお話する機会が多いんです。そのため、自然と「自分たちがやっていることが持続可能な社会に貢献している」という意識が育まれています。

また、新型コロナウイルスの感染拡大前は、代表やメンバーも海外を飛び回っていましたが、そこで貧困のリアルな場面を体感することも多くありました。従業員の中には、学生時代から途上国での経験を持つメンバーもいます。そのように世界の状況を肌で感じている人が多く、「社会の課題を解決するためにも、ビジネスとしてしっかり成り立たせないといけない」という共通認識があります。

-SDGsや社会問題への取り組みは、「ボランティアでやるもの」というイメージを持っている方も多いですよね。

大場さん:

そうなんです。しかし、代表の山﨑は「ビジネスとして成立させないと持続可能な社会を実現できない」と日頃から言っています。社会問題を解決するためにも、事業と組織を成長させ、より良い世の中に貢献していきたいですね。

-他にも、社内の取り組みはありますか?

大場さん:

社内で「サステナビリティ専属チーム」を作っています。単にSDGsの取り組みをレポートするだけではなく、開発の段階から「これは持続可能なものかどうか、環境負荷低減に貢献するのか」という視点で考えています。

また、「ダイバーシティ&インクルージョン」のチームもあり、国籍、民族性、年齢、障害の有無、性別および性自認や性的指向など、あらゆる多様性を理解し、尊重し合うことを大事にしています。若いメンバーが中心となって活躍しているんですよ。

ダイバーシティ&インクルージョンのメンバー

サステナビリティ革命を起こす

-最後に、今後の展望を教えてください。

大場さん:

昨年8月の創業10周年を機に、「TBM Pledge 2030」という野心的な目標を策定しました。2030年までに、100万トンのLIMEXとプラスチックを50カ国で循環させること。そして、カーボンニュートラルから一歩進んだ「カーボンネガティブ」を目指すことを掲げています。

カーボンネガティブとは

事業活動で排出される温室効果ガスよりも、吸収する量が多い状態のこと。カーボンニュートラルは、温室効果ガスがプラスマイナスゼロの状態なので、カーボンネガティブの方が進んだ状態と言えます。

大場さん:

「サステナビリティ革命を起こす」が当社の合言葉なんです。日本から世界へ、新しい技術・仕組み・価値観を提供し、SDGsへの貢献を通じて、サステナビリティ革命の実現に本気で挑戦しています。目標を達成するために、これからも全従業員が一丸となって取り組んでいきます。

-本日はありがとうございました。

取材 執筆 / あぬ

インタビュー動画

株式会社TBM 関連リンク

>> 株式会社TBM

取材のご相談

取材に関するご相談は下記フォームから受け付けております。

まずはお気軽にお問合せください!