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テラオライテック株式会社 |「事業を通して社会貢献する」理念を貫き、社会問題に徹底して向き合う

テラオライテック株式会社 代表取締役会長  寺尾さんインタビュー

寺尾 忍

1977年12月2日、福井県越前市(旧武生市)生まれ。2000年 福井工業大学 建設工学科を卒業し、3年間県内の設備工事会社に修行。2003年、 寺尾水道(株)※現テラオライテック(株)に入社、2009年、代表取締役社長に就任する。2019年、 社長を弟に譲り、自身は2020年にテラオホールディングス㈱設立 CEOに就任する。社会課題の解決と経済成長の両立を基本理念に、持続可能な社会づくりを目指し、祖業の設備工事業以外にも介護、アパレル、飲食、教育、途上国のインフラ整備支援事業に至るまで幅広く展開している。現在はJOYLET(水と衛生関係のNGO)理事、(一社)日本カーボンニュートラル協会の理事長も務めている。

Introduction

テラオライテック株式会社は、給排水・空調・電気を中心としたインフラ整備等を行っている福井県の企業です。「事業を通して社会貢献する」ことを理念に掲げ、地元福井県のみでなく、世界の水問題を解決するための事業を展開しています。この記事では、海外展開中の事業内容の詳細やそのきっかけとなった出来事、今後の展望などについて、会長である寺尾さんにお話しを伺いました。

「事業を通して社会貢献する」テラオライテック株式会社の取り組み

–本日はよろしくお願いします。まず、テラオライテック株式会社の事業内容を教えてください。

寺尾さん:

給排水・空調・電気を中心としたインフラ設備の工事や、住宅リフォームなどを行っています。また、「事業を通して社会貢献をする」という理念のもと、地域の福祉や教育、在日外国人の支援にまつわる様々な事業も展開しています。そのため、会社のある福井県だけではなく、海外にも拠点があるんですよ。

–海外では具体的にどのような事業に取り組まれているのですか?

寺尾さん:

飲み水や排水の処理で問題を抱えている途上国や後進国が、自立して水の問題を解決するための「ナショナルプライドプロジェクト」を展開しています。

今カンボジアで行っているプロジェクトを例にお話しますね。まずはこちらが初期投資をして現地に新たな産業(食用淡水魚の養殖)を立ち上げます。そこで出た収益をカンボジアの州政府に寄付して、政府にはその資金をもとに上下水道整備の公共工事を計画してもらっています。

–カンボジア政府を巻き込んだ壮大なプロジェクトなんですね。

寺尾さん:

そうですね。実際に工事を行うのは弊社の現地スタッフで、彼らには日本で数年間、技術研修を受けてもらい、工事の際に必要な専門技術を習得してもらっています。

新規産業の立ち上げ、現地の人材育成、収益の寄付による水道設備の改善。このサイクルを回すことで、経済成長を伴いながら水の問題も解決できます。

–寄付などの一時的な支援にとどまらず、現地の人が自立して水の問題を解決し続けられる仕組みを作っているんですね。

寺尾さん:

はい。一方的な支援を行うだけでは次に繋がりません。我々は持続可能性を大切にしているので、資金確保から施工、維持管理まで現地の人が自立して行えることを重視しています。

現地を実際に見て、問題意識が「自分ごと」になった

–海外で自立支援事業を始めた経緯を教えてください。

寺尾さん:

海外の未完成な水道設備を目の当たりにして、ショックを受けたことがきっかけです。

以前私は日本青年会議所※に所属しており、そこで社会貢献事業を行っていました。その活動の一環で海外に行き、水の現状を見たときに、自社にも出来ることはたくさんあると思ったんです。

公益社団法人日本青年会議所(JC)とは

より良い社会づくりをめざし、会員の多数を占める企業の中核を担う人々(管理職や代表取締役など)がボランティアや行政改革などの社会的課題を解決する活動を行っている。※1

もともとうちの理念が「社業を通して地域社会に貢献し、関わる全ての人たちの物心両面の幸福を追求する」ですからね。培ってきた水道工事の技術力を活かせば、水問題の解決を通して、現地の人々の自立支援をできるのではないかと考えました。

「理解を得るのは難しい」途上国支援の現実

–実際に事業を行ったことで、現地の人の反応や環境に変化はありましたか?

寺尾さん:

もちろん水の環境は整いますし、自立支援の仕組みに賛同してくれる方は多いですが、良い反応ばかりではありません。

先ほど例に挙げたカンボジアでは、水道工事の事業資金のために育てていた魚が持ち逃げされてしまったり、利益を水環境の整備に使うのではなく山分けしようという提案をされたりしたこともありました。2022年2月には養殖池周辺の農地が放火されたり、GDT(国税局)から不当な巨額の納税を要求されたりと問題は後を絶ちません。

–非常に厳しい環境の中で事業を行っているんですね。

寺尾さん:

現地で事業を続けるのは、想像以上に大変です。ただ、カンボジアでの生活水準を考慮すれば、未来のことを考えることよりも、今お金を得て生活することを最優先に考えるのは当たり前のことです。

※コロナの影響でロックダウンした支援地区。
職を失い、生活に困っている方にお米や養殖事業で育てた魚を支援。

–乗り越えるべき壁がたくさんあるのですね。そのような状況下でも、カンボジア以外の国にも事業を展開なさっているそうですね。

寺尾さん:

海外でも、本社のある福井県でもそうですが、「事業を通して社会貢献ができる」と信じているから、なんとかここまでやってこれたんだと思います。

現地で実際に状況を見て、その国の人々に何が必要かを判断し、我々の技術力を活かして解決する。地道ですが、その繰り返しなんです。

「本業」として社会貢献をし続けられる会社でありたい

–理念を貫き、社会貢献し続けるのは大変ですよね。何か工夫なさっているのでしょうか。

寺尾さん:

そうですね、社会貢献は膨大なお金が動きますし初期投資もかなりの金額です。

国内外で事業を続けていくためには企業体力が必要ですので、近年積極的に事業の多角化、積極的M&Aを行い事業規模を拡大していることもあり、ホールディングス体制を整えました。

–ホールディングス体制とは具体的にどういうことですか?

寺尾さん:

テラオホールディングス株式会社というグループ会社を設立し、テラオライテック株式会社を含め、様々な事業を行う企業をまとめています。ホールディングス化することで、インフラ事業以外の解決策を提案することも可能になりました。

5年後を目処に100億グループ企業を目指しています。

–グループ企業全体の力で社会貢献事業を行い、持続可能な社会を作っていこうということですね。

寺尾さん:

そうです。目的は、会社を大きくすることではなく、世界の問題にコミットできる企業体力を維持することです。

ビジネスを通じて地域や世界の社会問題を自社で解決し続けられる企業になっていきたいですね。

SDGsは手段ではない。自分事として結果に繋げることが大切

–最後に、読者の方へメッセージをお願いします。

寺尾さん:

たくさんの企業や個人がSDGsを掲げていますが、一番大切なのは結果にコミットすることです。SDGsは企業のブランディングの材料やビジネスの一時的な手段ではないと考えています。

今後、社会問題が解決しSDGsのような目標が必要なくなる未来をつくるために、ここで問題を終わらせるのです。その意志を持って結果を出していかなければいけません。そのように考え、本気で取り組む企業や個人が増えていって欲しいと感じています。

–本日は貴重なお話をありがとうございました!

インタビュー動画

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