#インタビュー

ウォータースタンド株式会社|最も大切なステークホルダーは『未来の世代』 30億本のプラスチックボトル削減に挑戦!

ウォータースタンド株式会社 本多さん・小野さん インタビュー

マーケティンググループ グループ長 本多 和平

高校時代に単身アメリカへ留学する。その後、19歳で国際NGO団体CIESFカンボジアに勤務し、発展途上国における教育支援と産業人材育成に従事。2017年当社入社。経営企画部マーケティンググループ グループ長としてデジタル活用による事業拡大と社会課題解決に取り組んでいる。

ESG推進室 室長 小野 優雅子

大手信用調査会社、IR専門印刷会社のESG報告アドバイザーなどを経て2020年当社入社。ESG推進室室長としてサステナビリティ経営の推進と社外とのエンゲージメントに取り組んでいる。

introduction

未来の世代のために、より良い地球環境を引き継ぐことが最大のミッションというウォータースタンド株式会社。「ボトルフリープロジェクト」をはじめ、様々なSDGsの活動に取り組んでいます。

同社のコア事業は、水道直結のウォーターサーバー「ウォータースタンド」のレンタル。赤ちゃんのミルク作りがラクにできるなど子育て世代に強く支持され、『2021年度日本子育て支援大賞(一般社団法人 日本子育て支援協会主催)』も受賞しています。この「ウォータースタンド」が社会問題の解決に直結していることが、SDGsに取り組むにあたって最大の強みだと言います。

今回は、同社のSDGsへの取り組みと「ボトルフリープロジェクト」について本多さんと小野さんにお話をうかがいました。

自分たちにできるのは、ストローでもレジ袋でもなく、プラスチックボトルの削減と気づいた

–まずはじめに、御社の事業内容をお聞かせください。

小野さん:

弊社は水道直結のウォーターサーバー「ウォータースタンド」のレンタルをコア事業とし、社会環境をより快適にするサービスを提供しています。

創業は1969年です。当初は、モップや玄関マットなどのレンタルをするダストコントロール事業を展開していました。お客様とお話をするうちに、コピー機のリサイクルトナーやボトルウォーターなど、事務所で使う商品のご要望が多くなり、幅広い商品を扱うようになりました。

その中でボトルウォーターの取り扱いをきっかけに、水道水浄水型のウォーターサーバーも同時に扱うようになりました。

そして2018年、会社を全国展開すると同時に「ウォータースタンド株式会社」と会社名を改め、ウォーターサーバーのレンタル事業を主軸にオフィス向けサービス事業などを展開しています。

–では続いてSDGsの取り組みについてお聞かせください。

最初にSDGsを意識して取り組みを始めたのはいつでしょうか、また何かきっかけはありましたか。

小野さん:

2018年に弊社の代表がイベントに参加し、SDGsのゲームを体験したのが取り組みの始まりです。

その後、社内でもゲーム体験をしたのですが、それによってSDGsへの理解が深まりました。そこから自分たちの事業をSDGsの観点から見直すことになったんです。

   

《SDGsカードゲーム体験》

当時は「ボトルウォーター」と「ウォータースタンド」両方を扱っていましたが、SDGsの観点などはあまり考えたことがありませんでした。

しかし、2つの商品を同時に扱っていたことで違いがよくわかったんです。

 宅配の「ボトルウォーター」は再利用ができる「リターナブルボトル」とワンウェイの「使い捨てボトル」があります。

使い捨てボトルは言うまでもありませんが、再利用できるリターナブルボトルも、作られる過程・水を詰める過程・配達する過程で多くのCO2を排出します。

その点、水道直結型ならボトルを作るところから配達までの工程でのCO2削減になります。

SDGsに取り組むうえで、弊社ではストローやレジ袋を大きく減らすことはできませんが、「ウォータースタンド」の事業でプラスチックボトルを削減できるのではないか、という大きな気づきがありました。

また、「ボトルウォーター」は月に複数回お客様の元にうかがい、12リットルの重いボトルを何本も届けなければなりません。女性にはなかなか難しいこともあり、男性が車で配達をしていました。

一方、水道直結の「ウォータースタンド」は、お客様はボトルの在庫も、宅配を待つ必要もなく、弊社としても6ヶ月に一度のメンテナンスでの訪問になり、女性も担当できます。 

事業を継続する上で、顧客、従業員共に満足度が高いのは「ウォータースタンド」でした。

 《メンテナンスの様子》

この気づきをきっかけに、宅配のボトルウォーター事業からは撤退しました。

今後、世界では水や資源が不足するという状況が予測される中、プラスチックボトルやCO2削減にも繋がる「ウォータースタンド」は、日本の水のスタンダードになるのではないかと考えています。

加えてウォータースタンドを設置すると、自然とマイボトルを使うようになるので、無理のない範囲でSDGsに取り組めます。これにより、どんどん活動の輪が広がることを目指しています。

また、顧客に対し2018年からSDGsのアイコン入りの封筒を使ったり、2019年からは弊社の目指す姿と社会課題に向けた活動報告レポート「ウォータースタンドレポート」を発行したりしました。

この「ウォータースタンドレポート」にも書いていますが、弊社では事業運営上のあらゆる意思決定がSDGs達成に貢献することを重要視しています。

しかしこれは、「やったほうが良いからやろう」と自分達を律しているのではなく、「そうしなければ、これから先の未来に事業を継続していけなくなる」と気づいたからなんです。

スウェーデンの研究者ヨハン・ロックストーム博士が提唱する『SDGsのウエディングケーキモデル』では、SDGsの17の目標はそれぞれ上から経済圏・社会圏・生物圏の3つの大きな層にわかれ、ウエディングケーキのような形に密接に関わりあっていると言われています。

SDGsの目標を達成し、最上層の「経済」をうまく回していくためには、パートナーシップとの公正な事業運営、環境に良くないことを見て見ぬふりしないことが大切だと考えています。

出典:ストックホルム大学ストックホルムレジリエンスセンター
参照:ストックホルム大学ストックホルムレジリエンスセンター アニメーション

そのために、最終的な処分に回す廃棄物を極力少なくすることで、環境問題の解決にも取り組んでいます。

商品を弊社でメンテナンスをすることで長く使えるようにし、フィルターや通常の使用を終了した製品本体、その他の部品類は、資源物と廃棄物に分類し処理を行います。

また、サーバー自体や部品がまだ使えるか細かく検証し、リサイクル率の向上も図ります。

–さまざまな取り組みを進められているんですね。SDGsに取り組むにあたり、御社の強みはなんだと思いますか。

本多さん:

SDGsの取り組みに対して、弊社の強みは2つあります。

1つは、コア事業である「ウォータースタンド」のレンタル事業が成長すること自体が、プラスチックボトルの削減につながること。そして従業員も一体となりSDGsの活動に貢献できることです。

2つ目は、「ウォータースタンド」の普及によってマイボトルを使う文化を広めることが、誰もが始めやすいSDGsの取り組みの浸透に貢献できることです。

オリジナルのマイボトルも作っていて、大学や自治体などからオリジナルロゴのマイボトルの注文を受けることもあります。愛着を持ってマイボトルを使ってもらうことで市民や学生の皆さんにもSDGsを自分ごと化してもらえるのではと考えています。

未来への挑戦。給水スタンド×マイボトルの文化を広め、30億本のプラスチックボトル削減へ!

–マイボトルの文化を広める取り組みが「ボトルフリープロジェクト」ですね。どのような取り組みか詳しくお聞かせください。

本多さん:

「ボトルフリープロジェクト」は、より良い地球環境を未来の世代に残すため、2030年までに30億本のプラスチックボトルを削減することを目指して弊社が取り組んでいるプロジェクトです。

プロジェクトを始めた2019年頃は、日本では約250億本のプラスチックボトルが作られていました。

この250億本のうち約10%は、リサイクルされずに燃えるゴミとして廃棄されたり、ポイ捨てされたりしていることを知ったんです。

プラスチックボトルは軽くて丈夫で良い商品ですが、廃棄されてしまうとリサイクルされないまま海洋汚染や環境破壊の原因になると考えられています。

当時はプラスチックボトルの生産は右肩上がりで増えていましたので、先を見据えて10%よりも多い30億本のプラスチックボトルの削減をすることに決めました。

一番最初は社員がマイボトルを使うことから始め、全員にマイボトルを配布することにしました。

それまでは自動販売機も多数設置していましたが、マイボトルを使うようになったことで、使用頻度がどんどん低くなり、最終的には撤去することにしたんです。社員からは、節約にもなると大変喜んでもらいました。

現在は、弊社の水道直結型の「ウォータースタンド」を公共施設や学校などに給水スタンドとして設置し、多くの人にマイボトルを使用してもらうことを目指しています。

給水スタンドの設置は、最初は弊社から「一緒に環境保全に取り組みませんか」と各自治体や学校へ声をかけました。

ウォータースタンドの設置とマイボトルの携帯には理解を得られたものの、実際に一緒に取り組みを始めてもらうまでには時間がかかりました。

その後、最初の1〜2箇所に給水スタンドを設置していただいてからは、たくさんの自治体や学校に導入が決まり、2022年8月末現在では、全国49の地方公共団体・教育委員会と協力して推進しています。

《江戸川区設置のウォータースタンド》

–プロジェクト開始後のプラスチックボトル削減、給水スタンド設置や、取り組みの状況などはいかがでしょうか。

本多さん:

進行状況は順調だと思います。

2022年6月期の使い捨てプラスチックボトルの削減本数は8,846万本、削減した二酸化炭素排出量は9,297t-CO2でした。

プロジェクトの推進には、全国で対応可能な体制の構築が必要です。そこで、 2019年からは全国の営業所でショールームを併設、商業施設内にも出店をし、給水スタンドを設置しています。

《藤沢ショールーム(トレアージュ白旗)》

地方公共団体との協定締結に基づく給水スタンドの設置台数は1,669台(2022年6月末時点)、マイボトルの提供数は8.1万本(2022年6月期)にのぼります。

難しいSDGsの話をしても「じゃあ自分達には何ができるの?」と思われがちですが、「マイボトルの携帯でプラスチックボトルを減らせる」と聞くと、何をしたら良いかわからないところから、一歩踏み出せるのではないでしょうか。

このことが地方公共団体にも支持され、給水スタンドの設置に繋がっていると思います。

学校にも多数の給水スタンドを設置しています。特に小学校では熱中症対策と環境教育の両面で貢献できていると考えています。

給水スタンドを設置するときは、弊社の社員が出前授業を行い、どうして給水スタンドが設置されたのか、どうしてマイボトルを使うと環境に良いのかなどを考えるきっかけにしてもらっています。子ども達には、色々な選択肢がある中で、どうしてその行動をとるのかということを考えられるようになって欲しいと思っています。 

小学校で給水スタンドを使っていた児童の環境への興味が育ち、高校生や大学生になったとき、給水スタンドを使うのがスタンダードになってくれればとの思いで設置しています。

《小学校での出前授業の様子》

パートナーシップとの結びつきが、より良い未来の環境作りを加速させる

–従業員の方々の働き方についてもお聞かせいただけますか。

本多さん:

2021年4月から全社員がスーパーフレックス制度を選択できるようにしました。

2021年6月末時点でのスーパーフレックス制度利用率は95.7%です。

週40時間の中で自分でスケジュールを立てて業務につきます。出社をしてもしなくても良く、事前に休みの申請なども必要ありません。

どの部門も特に決められた就業時間はないので、週40時間の枠さえ守れば1日休むことも、就業中に抜けた後、仕事を再開することもできます。

時間を自由に使えるので子育て中の方々をはじめ、従業員からの評判は非常に良いですね。

皆さん同じ部門や地域の仲間とうまく協力しながら働いています。

–では最後に、今後の展望をお聞かせください。

本多さん:

「パートナーシップ」が2022年・2023年度の大事なポイントです。

「2030年までに30億本のプラスチックボトル削減」はチャレンジングな目標です。

周りの皆さんとのパートナーシップを最大限に利用して、皆で一緒に目標を達成していきたいと思っています。

2022年8月には一般社団法人Social Innovation Japn(ソーシャル イノベーション ジャパン)が運営するmymizu(マイミズ)と戦略的パートナーシップを締結しました。

mymizuは日本初の無料給水アプリを使い、日本全国1万1,500か所以上の飲食店や施設などで、無料でマイボトルに給水ができるスポットを展開しています。

このように、志が同じ企業や団体と共同でプロジェクトを推進することで、取り組みを加速させたいと考えています。

《mymizuとの戦略的パートナーシップ締結》

また、今まで結びつかなかったような異業種の会社とのパートナーシップも結んで行きたいと考えています。

例として2022年11月にアサヒユウアス株式会社とパートナーシップ協定を結びました。

アサヒユウアス株式会社はアサヒグループホールディングス株式会社がサステナビリティ事業の展開のために作った会社で、間伐材とプラスチックから何度も使えるエコカップ・マイボトルを作るなど、持続可能な社会の実現を目指している会社です。

《アサヒユウアス株式会社との戦略的パートナーシップ締結》

今まで使い捨てプラスチックボトルを使う業種と弊社は、ライバル関係にあるとみなされていました。

しかし現在は、使い捨てプラスチックボトルを使う会社も、今後は使い捨てボトルを大量生産・大量消費するビジネスモデルの継続は難しいと考えています。

このように、今まで結びつきがないと思われていた業種ともこれからは連携して、一緒に取り組みを行いたいと思っています。

弊社のミッションにもあるように、最大のステークホルダーは「未来の世代」 。

より良い地球環境を引き継ぐために、取り組みを続けていきます。

–本日はお忙しい中、貴重なお話をありがとうございました。

関連リンク

ウォータースタンド株式会社HP:https://waterstand.jp/

コーポレートサイト:https://waterstand.co.jp/