2021年7月、名古屋市の在日本大韓民国民団や韓国学校の施設が放火される事件が起こりました。8月にも、京都にあるウトロ地区(在日コリアン集住地区)が同一犯により放火されています。逮捕・起訴されたのは22歳の青年で、懲役4年の判決を受けました。これは人種や民族などへの偏見や憎悪を動機とする犯罪であり、日本で実際に起きている人種差別です。
そもそも人種差別とはどのようなものなのでしょうか。この記事では、世界で見られる人種差別、世界と日本の現状、人種差別をなくすための条例や法律、取り組み、私たちができること、そして最後にSDGsとの関係を解説します。
人種差別とは
人種差別とは、人種の違いを理由に、政治的・経済的・文化的・社会的な権利を差別することです。「人種」とは一般的に、皮膚の色や骨格、毛髪などの身体的特徴による区分を言います。一方、言語や宗教、信仰、習慣などの文化を共有する集団を表すのが「民族」です。本来、人種と民族の意味は異なりますが、「人種差別」を問題にする際は、多くの場面で同義として扱われています。
それでは、世界ではどのような人種差別が見られるのか、次の章で確認しましょう。
[参考]世界5カ国の人種・民族の構成
日本をはじめ、世界の人種問題を考える際、国の総人口に占める人種・民族の割合を頭に入れておくとイメージしやすくなるでしょう。アメリカ、オーストラリア、南アフリカ、中国、日本の5カ国の状況をまとめたのが次の表です。
■人口に占める人種・民族の割合[1]
アメリカ | 白人61.6%、黒人またはアフリカ系12.4%、2人種以上のルーツを持つ人10.2%、アジア系6.0%、先住民1.3% |
オーストラリア | 英国系33.4%、オーストラリア系20.7%、アイルランド系5.3%、中国系4.8%、スコットランド系3.8%、イタリア系3.2% |
南アフリカ | 白人81.4%、カラード(白人と黒人の両方をルーツに持つ人など)8.2%、白人7.3%、ほか[ii] |
中国 | 漢族91.6%、チワン族1.3%、フイ族0.8%、ほか |
日本 | 自国籍96.3%、外国籍1.9%(中国0.5%、韓国・朝鮮0.3%、ベトナム0.3%、フィリピン0.2%、ブラジル0.1%、ほか)※ |
中国などのように、総人口の大半を同じ人種・民族で占める国もあれば、アメリカなどのように、半数あまりかそれ以下の割合で人種・民族が構成されている国もあります。人種差別はそれぞれの国の異なる事情を背景に起きていることも、この問題を読み解く1つの鍵になるでしょう。
世界で見られる人種差別
世界で見られる人種差別は、さまざまな場面で起きています。そのうち5つの場面を取り上げてみましょう。
雇用
採用や雇用条件、昇進、解雇などの場面において起きるのが、雇用における人種差別です。人種を理由に「採用されない」「賃金が低い」「昇進ができない」などが問題になっています。
例えば、フランスの労働省が過去に行った調査では、企業の採用時、マグレブ出身のアラブ人とアフリカ出身の黒人よりも、フランス出身の白人の応募者を優遇したケースが全体の70%に達したと発表しました。[iii]日本でも、仕事を探した経験のある外国人は、「外国人であることを理由に就職を断られた」(65.6%)、「同じ仕事をしているのに賃金が日本人より低かった」(69.1%)と回答しています。[iv]
差別を受けている人種は、雇用において不利な状況に置かれている実態を知ることができます。
教育
公立・私立学校や大学などへの入学選考の際に起こるのが、教育の分野における人種差別です。人種を理由に入学選考から漏れるなどの事例を指します。
奴隷廃止後も黒人差別の続いたアメリカでは、黒人などの少数派の人々に大学入学などの機会を積極的に与える「アファーマティブ・アクション(積極的差別是正措置)」を行ってきました。しかしこれまで「白人に不利であり、逆差別だ」として連邦最高裁判所で争われてきた経緯があります。そして2023年、この措置に対して「人種を考慮することは平等ではない」として憲法違反であるとの判決がくだされました。[v]
教育における平等とは何かという問いは、複雑な問題を含んでいます。
住居
家屋やアパートの賃貸や購入の際に発生するのが、住居に関する人種差別です。具体的には、「入居を断られる」といったケースがあります。
オーストラリアでは、住居を賃貸または購入する際に「人種差別を経験した」人の割合が増えていると言います。特にアジア出身のオーストラリア人の59%が人種差別を受けていると答えています。[vi]また、日本でも、住む家を探した経験のある外国人の56.8%が、「『外国人お断り』と書かれた物件を見て諦めた」と回答しています。
人種差別は、生活の基盤となる住居を得る場面でも起きているのです。
サービスの利用
サービスの利用に関する人種差別とは、銀行や保険、行政機関のサービス、公共交通・通信サービス、医師などの専門家、レストランや小売店や娯楽施設などの提供するサービスを受けられないことを指します。
アメリカのインディアナ州では、新型コロナウイルスに感染した黒人の女性内科医が、「医師(白人男性)から適切な治療を受けられなかった」「私が白人だったら、こんな経験をせずに済んだはず」と訴えました。(女性内科医は訴えた後に亡くなっています。)[vii]
サービスは、日常生活に必要なことから命に関わることまでの広い範囲を含みます。人種差別により健康や生活を維持できないケースもあるのが実情です。
公共の場所への立ち入り
公園や公共機関の窓口、レストラン、ホテル、ショッピングセンターなどにおいて、人種を理由に立ち入りを拒否される事例があります。
例えば、フランスのパリにあるレストラン兼ナイトクラブで、黒人女性3人が入店を拒否されました。その様子を撮影した動画がTikTokに投稿され、レストラン側に人種差別の疑惑が持たれました。同店は、疑惑を否定するとともに、3人に謝罪したという経緯があります。[viii]
誰もが利用できるはずの場所への立ち入りを拒否する行為は、人種差別と言えるでしょう。
世界における人種差別の現状
さまざまな事例と共に、世界で見られる人種差別を場面別に見てきました。次に、世界の人種差別の現状を確認しましょう。
「アフリカ系の人々のための国際の10年」2015-2024
アフリカを起源とする人々の人権の向上は、世界で大きな課題となっています。自らをアフリカ系と考える人は、アメリカ大陸でおよそ2億人、その他の大陸で何百万人います。これらのアフリカ系の人々は、一定水準の教育、医療、住宅、社会保障を十分に利用できていない状況です。また、司法制度においても差別を受けることが多く、さらに投票率や議席率は伸びていません。
そこで国連は、2015年から2024年を「アフリカ系の人々のための国際の10年」とすることを宣言し、加盟国や市民社会などと共に、「理解・正義・開発」をテーマとする行動計画を実施しています。この活動をアフリカ系の人々への人種差別と闘うためのチャンスと位置づけ、積極的な取り組みを呼びかけています。[ix]
アジア系への人種差別
2020年、新型コロナウイルスは世界的に大流行し、その中でアジア系への人種差別のニュースも聞かれるようになりました。例えばイギリスでは、感染が拡大し始めた4月上旬、人種によって感染率や死亡率に偏りがあることが指摘されるようになりました。イングランド公衆衛生庁によると、バングラデシュ系の致死率は白人の英国人に比べて2倍、中国系、インド系、パキスタン系、その他のアジア系、黒人などでは10〜50%高いことが明らかになりました。
このような背景もあり、アジア人差別や外国人憎悪が急増し、タイ人の会社員が強奪され骨折する事件や、アジア系飲食店などが落書きされたり窓ガラスを割られたりする被害が多発したと言います。全国45の地方警察とイギリス鉄道警察のデータによると、2020年の第1四半期の「中国系英国人/中国人」に対する憎悪犯罪件数は、例年に比べ約3倍に増えました。[x]
ここで紹介した取り組みや事例は多くの中の一部であり、世界では他にもさまざまな人種差別が広がっているのが実情です。
日本における人種差別の現状
日本にも人種差別が存在しています。それに対して政府は、人種差別と戦うあらゆる方策を講じているとし、主に北海道の先住民族であるアイヌの人々や沖縄の人々、在日外国人、難民などへの差別を撤廃するための施策を行っています。[xi]とはいえ、人種差別が完全になくなったわけではありません。実際に起きた事件や判例から、日本における人種差別の現状を見ていきます。
ヘイトクライムの頻発
2021年1月、川崎市の多文化交流施設「川崎市ふれあい館」に、在日韓国朝鮮人の抹殺を呼びかける内容の年賀状が届きました。27日には、爆破と在日韓国朝鮮人に危害を加える予告も届いたと言います。
また同年7月には、名古屋市の在日本大韓民国民団や韓国学校の施設が放火された事件が起こりました。8月にも先の事件の同一犯により、京都にあるウトロ地区(在日コリアン集住地区)が放火されています。
2022年4月にはコリア国際学園の放火、同年9月の在日本大韓民国民団徳島県本部への脅迫、同月のJR赤羽駅ホーム上の横断幕への落書き事件など、人種や民族などに偏見や憎悪を動機とする犯罪「ヘイトクライム」が頻繁に起きているのが現状です。
違法と判断される事例が発生
人種差別が違法であると判断された判例も、過去から現在まで発生しています。2つの判決を取り上げてみましょう。
無料の資料提供サービスを拒否事件
近年の判例から、サービス利用に関する人種差別を見ていきます。
事案の概要 |
永住権を有する外国籍のX(原告)は、中古自動車販売の加盟店事業等を行うY(被告)に対して、加盟店契約の締結に向けてYの運営するウェブサイトから資料請求を行った。Yの従業員は、「加盟頂く際の審査基準として日本国籍の保有者の方を対象としておりますので外国人の方には資料の送信を見合わせて頂いております」というメールを返信した。Xの差別であるという抗議に対してYの代表者は、「帰化されて国籍を取られた方であれば契約可能ですが、日本国籍の方でも加盟前のヒアリング及び質疑応答、メールやり取り等にて契約内容を履行されない可能性があると判断された方、及び弊社理念を共有できないと判断された方などの場合は弊社における審査基準により加盟契約をお断りする場合がございます」とメールで返信した。 |
裁判所の判断 |
Yを含む株式会社は契約締結の自由があるが、憲法14条1項の規定に照らし合理的理由を欠き、社会的に許容し得る範囲を超えて原告の法的利益を侵害すると認められる場合には、民法上の不法行為に当たる。Yは、広く一般公衆に向けて資料を無料送付する旨宣伝しているのであるから、請求者としては基本的には誰であっても資料送付を受けられるとの合理的期待を抱いているものと認められ、Yは特段の事情のない限り、誠実にこれに応じるのが取引通念上の信義にも適うものと認められる。 |
参照法令等 |
【憲法第14条1項】すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。【民法第709条】(不法行為による損害賠償)第709条故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。 |
この事件は、「広く一般公衆に向けて資料を無料送付する旨宣伝している」にもかかわらず、外国人であることを理由にサービスの提供を拒否した人種差別と言えます。
小樽入浴拒否事件
過去にさかのぼると、小樽市で起きた外国人に対する入浴拒否事件があります。
事案の概要 |
小樽市にある公衆入浴場を経営するA(被告)は、外国人(原告)であることを理由に入浴を拒否した。本件は、憲法14条1項、市民的及び政治的権利に関する国際規約(以下「国際人権B規約」という。)及びあらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約(以下「人種差別撤廃条約」という。)等に反する違法な人種差別であり、これにより人格権や名誉を侵害されたとして、Aと、人種差別撤廃のための実効性のある措置をとらなかった小樽市に対して損害賠償を求めた。 |
裁判所の判断 |
憲法14条1項における法の下の平等は外国人に対しても類推されるものと解すべきである。本件入浴拒否は「合理性のない差別」に該当し、同条項に違反するものである。国際人権B規約26条は、包括的に法律の前の平等を規定している。被告Aは経営維持のために拒否せざるを得なかったというが、私的利益の擁護にとどまり合法的目的には該当しない。したがって本件は、同条に違反する。人種差別撤廃条約は、保障されるべき権利の一つとして「輸送機関,ホテル,飲食店,喫茶店,劇場,公園等一般公衆の使用を目的とするあらゆる場所又はサービスを利用する権利」(5条(f))を掲げているが,本件入浴拒否は,まさに人種差別撤廃条約5条(f)に違反する。ほか |
参照法令等 |
【憲法第14条1項】前判例の通り【国際人権B規約26条】すべての者は、法律の前に平等であり、いかなる差別もなしに法律による平等の保護を受ける権利を有する。このため、法律は、あらゆる差別を禁止し及び人種、皮膚の色、性、言語、宗教、政治的意見その他の意見、国民的若しくは社会的出身、財産、出生又は他の地位等のいかなる理由による差別に対しても平等のかつ効果的な保護をすべての者に保障する。【人種差別撤廃条約5条(f)】締約国は、特に次の権利の享有に当たり、あらゆる形態の人種差別を禁止し及び撤廃すること並びに人種、皮膚の色又は民族的若しくは種族的出身による差別なしに、すべての者が法律の前に平等であるという権利を保障することを約束する。(f)輸送機関、ホテル、飲食店、喫茶店、劇場、公園等一般公衆の使用を目的とするあらゆる場所又はサービスを利用する権利ほか |
2つの判例を見てきましたが、裁判所の判断に用いられたのは「憲法第14条1項」「国際人権B規約26条」「人種差別撤廃条約」などの憲法や国際的な条約です。特に「人種差別撤廃条約」は、人種差別を撤廃する条約として大きな役割を果たしているので、次に詳しく解説していきます。
人種差別をなくすための条約や法律
人種差別をなくすための条例や法律はいくつかあります。そのうちの「人種差別撤廃条約」と「人種差別禁止法」について確認していきましょう。
人種差別撤廃条約
人種差別撤廃条約は、前章でも少し触れましたが、あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約です。締約国数は182(2020年10月現在)に上り、日本は1995年に加入しています。25の条文から構成され、人種差別の定義や締約国の基本的義務、人種差別撤廃委員会の設置などが定められているほか、あらゆる人種差別の撤廃に必要な措置をとることを求めています。
人種差別の定義は、第1条1に次のように述べられています。
この条約において、「人種差別」とは、人種、皮膚の色、世系又は民族的若しくは種族的出身に基づくあらゆる区別、排除、制限又は優先であって、政治的、経済的、社会的、文化的その他のあらゆる公的生活の分野における平等の立場での人権及び基本的自由を認識し、享有し又は行使することを妨げ又は害する目的又は効果を有するものをいう。 |
日本においても人種差別撤廃委員会が設置され、人種差別の撤廃のために講じた措置について報告書にまとめられています。[xii]
人種差別禁止法
人種差別禁止法とは、人種差別を直接禁止する法律です。イギリスの「平等法」、オーストラリアの「人種差別禁止法」、フランスの「差別禁止法」「ゲソ法」ほか、スウェーデンの「新差別禁止法」など、先進国を中心に人種差別を禁止する法律があります。
例えばフランスの「差別禁止法」では、禁止される差別として「民族または人種によって、特に社会的保護(広義の社会保障のこと)、健康、福利厚生、教育、サービスなどにおいて差別があってはならない」といった項目から、差別を告発した者の保護についても明確に定めています。[xiii]
日本では、人種差別を禁止する法律はまだありません。法律や人権に関わる人々の間では、ヘイトクライムや人種差別的な言動をするヘイトスピーチを根絶するためにも、人種差別禁止法の早急な制定を求めている状況です。
人種差別をなくすための取り組み
人種差別をなくすための取り組みは、さまざまな国や地域で行われています。世界と日本の事例を紹介しましょう。
【世界】人種差別禁止法の制定
世界では先述の通り、先進国を中心に「人種差別禁止法」を制定して人種差別を撤廃する取り組みを始めています。この動きの1つの特徴として、差別の禁止の対象を人種だけでなく、女性や障がい者、年齢、性的指向などに広げていることです。例えばイギリスやフランス、スウェーデンなどは、人種や女性、障がい者などへの差別禁止法(もしくは平等法)は別々に存在していました。それらを1つにまとめて広範囲の対象に向けた差別を禁止する内容に改定しています。
日本には、「障害者差別解消法」や「男女雇用機会均等法」といった、障がいや性別による差別を禁止する法律があります。また、アイヌの人々への差別を禁じる「アイヌ施策推進法」も2019年に制定されました。しかし、人種まで範囲が広がっていないのが実情です。
【日本】条例により人種差別やヘイトスピーチを禁止する措置
日本では、ヘイトクライムやヘイトスピーチが相次いで起きています。こうした事態に対して各自治体は、条例を施行するなどして差別の撤廃に取り組んでいます。
中でも、全国で初めてヘイトスピーチに刑事罰を盛り込んだのが、川崎市の「川崎市差別のない人権尊重のまちづくり条例」です。条例違反をした者が決められた手続きを行わなければ、刑事告発を行い、50万円以下の罰金を科すとしています。条例が施行された2020年7月以降の3年間、違反件数はゼロという結果でした。
その他にも、大阪市の「大阪市ヘイトスピーチへの対処に関する条例」、沖縄県の「沖縄県差別のない社会づくり条例」など、いくつかの自治体が条例を施行しています。
人種差別をなくすために私たちができること
人種差別をなくすために、私たちができることは何があるのでしょうか。
人種差別について考える
「日本における人種差別の現状」の章では、2021年に起きた同一犯による2件の放火事件に触れました。名古屋と京都の在日コリアンに対するヘイトクライムです。逮捕されたのは当時22歳の青年でした。
NHKではこの被告と接見して、事件の動機や背景を取材しています。被告は手紙で「私自身、コロナの影響で業務増加等の問題も重なり、数か月で離職せざるをえなくなりました。完全に金銭的、時間的余裕を失い、ためらう理由がなかったことも、行動の一因としては大きいと思います」と自身の生活状況を告白し、「在日コリアンや韓国・朝鮮の人に、疑心や嫌悪感がある」「ヘイトという形で国民の不満をうさ晴らしするには、一役かったと思っています」と述べています。[xiv]
たった1人の動機からはすべてを知ることは難しいのも事実ですが、心のありようを知ることで人種差別はどうして起こるのか、私たち一人一人が自身に向き合い、問いかけていく必要があるのではないでしょうか。
人種差別とSDGs
最後に、人種差別とSDGsの関係について確認していきます。人種差別は、目標10「人や国の不平等をなくそう」に関係があります。
目標10「人や国の不平等をなくそう」
目標10「人や国の不平等をなくそう」は、年齢、性別、障がい、人種、民族、出自、宗教などにかかわらず、社会的・経済的・政治的な参画を推進することを掲げています。また、差別的な法律や政策を撤廃し、機会均等を確実にすることを目指しています。
人種差別は、雇用や教育、住居など、さまざまな場面で起きています。不平等に扱われている人々が、こうした場面で機会を均等に持つことができれば、社会的・経済的・政治的な参画も可能になるでしょう。そのためには、法律や政策の整備も必要です。人種差別の撤廃に取り組むことは、SDGsの貢献につながります。
まとめ
人種差別とは、人種の違いを理由に、政治的・経済的・文化的・社会的な権利を差別することです。主に、雇用や教育、住居探しなどの場面で起きています。世界ではアフリカ系やアジア系など、さまざまな人種への差別がありますが、日本においてもヘイトクライムが頻発している状況です。
人種差別をなくすための条約や法律には、日本も加入している国連の「人種差別撤廃条約」や、他国が制定している「人種差別禁止法」があります。一方日本では、人種差別やヘイトスピーチを禁止する条例を自治体単位で制定しているのが実情です。
また人種差別は、SDGsの目標10「人や国の不平等をなくそう」に関係があります。人種差別の撤廃に取り組むことは、SDGsの貢献につながります。私たち一人一人が人種差別に向き合い、何ができるのかを考えることが大切です。
<参考文献>
[1] 総務省統計局「世界の統計2023」
[ii] ジェトロ「2022年の国勢調査発表、人口6,200万人を超える(南アフリカ共和国) | ビジネス短信 ―ジェトロの海外ニュース」
[iii] 労働政策研究・研修機構(JILPT)「採用時に人種・民族で差別―大規模調査であらためて浮き彫りに(2008年3月)」
[iv] 公益財団法人 人権教育啓発推進センター「外国人住民調査報告書 - 訂正版(平成29(2017)年6月)」
[v] 大学が入学選考で黒人など人種考慮は違憲” 米連邦最高裁 | NHK | アメリカ人種差別問題
[vi] アジア系には家を貸したくない(豪・人種差別調査)|ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト
[vii] 「人種理由に適切な治療拒否された」と主張の黒人医師、新型ウイルスの合併症で死亡 – BBCニュース
[viii] 仏パリの高級レストランに人種差別疑惑 非白人の入店拒否か 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News
[ix] アフリカ系の人々のための国際の10年(2015-2024) | 国連広報センター
[x] ヒューライツ大阪(一般財団法人アジア・太平洋人権情報センター)「英国における新型コロナウイルス感染拡大とアジア系コミュニティの状況」
[xi] 外務省「人種差別撤廃条約第10回・第11回政府報告」(2017年7月)
[xii] 外務省「人種差別撤廃条約第10回・第11回政府報告」(2017年7月)
[xiii] 国立国会図書館調査及び立法考査局 外国法の立法(2008.7)「【フランス】 差別禁止法の制定」
[xiv] 求められるヘイトクライム対策 京都ウトロでの放火事件で、なぜ22歳の青年は火をつけたのか – インクルーシブな社会のために – NHK みんなでプラス