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アンガーマネジメントとは?実践するための方法やメリット・デメリットも

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「最近、怒りっぽいな…」

「あの人すぐに怒るから付き合いづらいな」

などと感じたことはありませんか?自分自身の怒りをコントロールできないことや、身近な人の怒りへの対処法など、怒りの感情に悩む人は少なくありません。

その対処法の1つとして、「アンガーマネジメント」が重要とされています。まずはアンガーマネジメントについての基本的なことや実践するための方法、メリット・デメリットから、アンガーマネジメントとは何かを正しく理解しておきましょう。

目次

アンガーマネジメントとは

アンガーマネジメントとは、怒りやイライラなどの感情を適切に管理する技術や方法のことです。自己制御やコミュニケーションスキルの向上を通じて、健康的な感情の表現と対処を目指します。

簡単に言うと、アンガーマネジメントは、怒りの感情をコントロールする方法です。怒りは人間の自然な感情ですが、コントロールできないと、

  • 人間関係の悪化
  • 暴力行為
  • うつ病、不安障害などの精神疾患
  • 学業や仕事での成績や効率の低下

などの問題を引き起こす可能性があります。ここでのコントロールとは、制御することを意味します。つまり、あなたが怒りの感情によって動かされるのではなく、あなたが怒りの感情を自分の管理下に置いておけるようにするのがアンガーマネジメントです。

アンガーマネジメントの意義

最新の研究結果によれば、怒りやイライラが長期間続くと、心身の健康に悪影響を与えることがわかっています。例えば、怒りの感情が長期間抑えられずに溜まると、高血圧や心臓病、睡眠障害などのリスクが増えると言われています。

また、社会の風潮としても、怒りやイライラを爆発させることは好ましくない評価を受けやすく、人間関係やコミュニケーションに悪影響を及ぼすことがあります。例えば、怒りの感情が原因で友人や家族との関係が悪化したり、学校や職場でのトラブルが生じたりすることがあります。

これらの問題は、アンガーマネジメントを実践することで解決することができます。つまり、アンガーマネジメントを実践することで、健康的な心の状態を保つことにつながるだけでなく、周囲の人との関係を良好にし、より充実した日常生活を送ることができるのです。

アンガーマネジメントが注目されている背景

アンガーマネジメントは、1970年代にアメリカで開発されました。特に「怒らないこと」を教えるのではなく、怒るにしても後悔しない、「上手な怒り方」を習得することを目指します。

近年、アンガーマネジメントが注目される背景には、現代社会のストレスやプレッシャーの増加があります。特にSNSの普及により、他人との比較や批判的なコメントなど、それ以前にはなかったネガティブな影響を受けることも多くなりました。

また、現代社会では人前で怒りやイライラを爆発させることが容認されにくくなっています。例えば、学校や職場での暴力や暴言は許されませんし、家庭でも家族との関係を悪化させることは避けたいところです。

そのため、怒りやイライラを上手にコントロールする必要性を感じる人が増えているのです。他にも、

  • 価値観の多様化
  • ハラスメントの防止
  • メンタルヘルスの重要性の普及

なども、アンガーマネジメントが重要視される理由として考えられます。怒りは誰にでもある感情ですが、上手にコントロールすることで、自分自身へのストレスを軽減し、周りの人にも悪い印象やストレスを与えずに済むのです。

自分の感情をコントロールする能力:EQ

もう少し踏み込んで説明すると、アンガーマネジメントはEQの一部と言えます。EQは、Emotional Quotientの略で、日本語では「心の知能指数」と訳されます。EQとは、自分の感情を理解し、コントロールする能力のことです。

アンガーマネジメントを身につけることで、EQを高めることができます。

【EQ(Emotional Quotient)】

このように、アンガーマネジメントは怒りやイライラを上手にコントロールするための技術や方法を学ぶことです。自分の感情を理解し、冷静に対処することで、健康で充実した生活を送ることができるのです。*1)

アンガーマネジメントが活躍する場面

アンガーマネジメントが活躍する場面は様々です。アンガーマネジメントが活躍する代表的な場面を見ていきましょう。

学校や職場での人間関係の円滑化

思ったより成績が悪かったり、ミスをしたりなど、学校や職場で何かうまくいかないことがあると、誰でもついイライラしたり、怒ったりしてしまいます。アンガーマネジメントを身につけることで、感情的にならず、冷静に対処できるようになり、人間関係を円滑にすることができます。

家庭内での衝突やトラブルに対応・防止

家庭では、時に衝突やトラブルが起きることがあります。例えば、兄弟姉妹同士のケンカや、夫婦や親子の意見の食い違いなどです。

アンガーマネジメントを身につけることで、このようなトラブルを予防したり、上手に対処したりすることができます。また、アンガーマネジメントは、解決策を見つける力も育てます。

家庭内でのトラブルは、解決策が見つからずに長引くことがあります。しかし、アンガーマネジメントを学ぶことで、冷静に状況を分析し、解決策を見つけることができるようになるのです。

子育てのストレスを軽減

アンガーマネジメントを身につけることで、怒りを感じたときに冷静に対処できるようになり、感情的になって子どもを叱ったり、怒鳴ったりすることが少なくなります。

また、アンガーマネジメントを身につけることで、子どもとのコミュニケーションが円滑になります。怒りを感じたときに冷静に対処できるようになると、子どもも親を信頼できるようになり、必要な時には親子で話し合うことができるようになるのです。

職場でのパワハラ対策

2022年4月から、職場でのパワハラ※を防止するための法律「改正労働施策総合推進法」(パワハラ防止法)が、中小企業も含めてすべての事業者に適用されるようになりました。アンガーマネジメントは、職場でのパワハラ対策にも有効なスキルです。

パワハラをされる側だけでなく、してしまう側も、アンガーマネジメントを身につけることで、パワハラ予防となり、よりよい職場環境を実現することができます。

パワハラ

パワーハラスメントの略語で、職場で上司など職場の上の立場にある人から、一方的に暴言や暴力をふるわれたり、仕事を押し付けられたりして、精神的・肉体的に苦痛を受けること。

パワハラをされる側にとってのアンガーマネジメント

例えば、上司から怒鳴られたとき、怒りを感じてすぐに反論してしまうと、上司との信頼関係が崩れてしまう可能性があります。しかし、アンガーマネジメントを身につけて冷静に対処できれば、上司の怒りの原因を分析し、上司の立場になって考えた上で、冷静に説明することで、上司を納得させることができます。

パワハラをしてしまう側にとってのアンガーマネジメント

例えば、仕事のミスをした部下に怒りを感じて、つい怒鳴ってしまうことがあるかもしれません。しかし、アンガーマネジメントを身につけて冷静に対処できれば、部下の立場になって考え、部下を成長させるためのアドバイスができるようになります。

介護の仕事では特に有効

介護の現場では、高齢者や病気の方々のケアを行うために、日々多くのストレスやプレッシャーが存在します。このような環境で働く人にとって、アンガーマネジメントは特に有効なスキルです。

例えば、利用者の方が理解できない行動をする、身体的な負担が大きい作業を続けるなど、ストレスの要因はさまざまです。その中でアンガーマネジメントを身につけることによって、自分の感情をコントロールし、冷静に対応することができます。

また、介護の現場では、自己管理もとても重要です。長時間の勤務や身体的な負担などで、自身の健康管理がおろそかになりがちです。

アンガーマネジメントを取り入れることで、自分の感情やストレスに気づき、仕事への意欲やモチベーションが低下したり、うつ病やストレス障害などの心身の不調に陥ったりする前に、適切に対処することができます。

このように、アンガーマネジメントは、様々な場面で活躍します。怒りやイライラをコントロールし、冷静に対処することで、問題をエスカレートさせずに解決することは、あらゆる場面で大切です。

次は、そもそも怒りとは何かについて、理解を深めましょう。*2)

怒りについて理解しよう

アンガーマネジメントを身につけて、怒りの感情をコントロールするためには、まず怒りのメカニズムを科学的に理解することが大切です。怒りのメカニズムを理解することで、怒りがどのようにして起こるのか、そしてどのようにコントロールすればよいのかを理解することができます。

まずは怒るメカニズムを確認

怒りのメカニズムは、大きく分けて以下の3つの段階で起こります。

①刺激の受容

まず、私たちは何か刺激を受けます。その刺激が、私たちの価値観や信念に反するものであったり、自分の利益を害するものであったりすると、怒りの感情が起こりやすくなります。

②脳の反応

次に、私たちの脳は、その刺激を認知評価します。つまり、その刺激をどのように解釈し、どのように評価するかを決めるのです。この認知評価が、怒りの強さや持続時間に影響します。

③行動

最後に、私たちは怒りの感情に基づいて行動を起こします。怒りをコントロールできなければ、暴言や暴力などの攻撃的な行動につながる可能性があります。

近年の研究では、怒りの感情は、扁桃体と呼ばれる脳の一部が重要な役割を果たしていることがわかってきました。扁桃体は、怒りの他に恐怖などの感情を処理する役割を担っています。

また、怒りの感情は、ホルモン神経伝達物質によっても影響を受けます。例えば、アドレナリン※ノルアドレナリンなどのホルモンは、怒りの感情を高める働きをします。

反対に怒りを制御するために重要な役割を果たすのが、セロトニンという神経伝達物質です。セロトニンのレベルが低下すると、怒りの感情が増幅される傾向があるのです。

アドレナリン

交感神経の興奮を促すことで、危機やストレスなどの状況に対処する力を高めるためのホルモン。心拍数や血圧の上昇、呼吸数の増加、筋肉の緊張、血糖値の上昇、注意力や集中力の向上などの変化を起こす。過剰に分泌されると、不安やイライラ、不眠などの症状を引き起こすこともある。

ノルアドレナリン

覚醒や注意力、集中力、記憶、感情、行動などの調節をする交感神経の神経伝達物質。心拍数や血圧の上昇、呼吸数の増加、筋肉の緊張、注意力や集中力の向上、記憶の強化、感情の調整、行動の促進などの役割を果たす。過剰に分泌されると、不安やイライラ、不眠などの症状を引き起こすことがある。

セロトニン

気分の安定、睡眠、食欲、認知機能、学習、記憶などの調節をする、脳や全身の神経系に存在する神経伝達物質。気分の安定、睡眠の質の向上、食欲のコントロール、認知機能の向上、学習と記憶の促進の役割を果たす。セロトニンの分泌が不足すると、不安やイライラ、うつ、不眠などの症状を引き起こすことがある。

怒りの役割

怒りは科学的に見て、私たちが生きるための重要な役割を果たしています。危険を感じたときには、怒りの感情によって攻撃的な行動に出ることで、自分や家族を守ることができます。そのほかの場面でも、怒りによって普段以上の力を発揮できることもあります。

怒りにメリットはあるの?

怒りは科学的観点からも人間に必要な、誰もが感じる感情です。ネガティブなものと考えられがちな怒りですが、メリットもあります。

医学的メリット

怒りを医学的観点から見ると、

  • 血流が良くなる
  • 免疫力が高まる
  • 集中力が高まる
  • ストレス解消になる

といったメリットがあると言えます。怒りによってアドレナリンやノルアドレナリンなどのホルモンが分泌され、血流が良くなることで、免疫力も高まると考えられています。

また、スポーツや勉強で集中力を高めたいときに、適度に怒りを感じることによって、パフォーマンスを向上させることができるという研究結果もあります。

生物学的メリット

次に生物学的な視点から怒りの役割を考えてみましょう。怒りは、

  • 危険から身を守る
  • 自分の権利を主張する

など、生きていくために必要な役割を担っています。例えば、危険を感じたときに怒りの感情によって闘争本能が刺激され、相手を威嚇したり、逃げたりする行動をとることで、身を守ることができます。また、不当な扱いを受けたときに怒りの感情によって反撃することで、自分の権利を主張することができます。

心理学的メリット

心理学的に見ても、怒りにはメリットと言える効果があります。具体的には、

  • 自己主張できるようになる
  • 対人関係を改善する

などです。例えば、怒りの感情をうまく表現することで、自分の意見や考えを相手に伝えやすくなり、自己主張できるようになると考えられています。また、怒りの感情をうまくコントロールすることで、相手を理解し、対人関係を改善することができると考えられています。

つまり、怒りの心理学的メリットを得るためには、アンガーマネジメントが必要なことがわかります。

怒りのデメリット

怒りは、誰もが感じる感情ですが、デメリットも伴います。

例えば、

  • 自分や周りの人を傷つける
  • 人間関係を悪化させる
  • 心身の健康を損なう

などです。誰でも多かれ少なかれ経験があるのではないでしょうか。

例えば、怒りによって暴言や暴力などの攻撃的な行動をとると、自分や周りの人を傷つけてしまう可能性があります。また、怒りの感情が抑えきれず、人間関係に悪影響を与えることもあるでしょう。さらに、怒りの感情が慢性化すると、心身の健康を損なう可能性もあります。

自分の怒りのタイプを把握しよう

ではここで、簡単なテストを行い、自分の怒りのタイプを把握してみましょう。このテスト結果は、あくまで目安ですから、参考程度に取り組んでください。

テストにあたっての注意事項

この診断テストはあなたがどのような怒りタイプに当てはまるかを見つけるためのものです。質問には自分の感じたことや行動を思い浮かべながら、正直に答えてください。

怒りのタイプ診断テスト

各タイプの1〜5の質問に「はい」か「いいえ」で答えてください。最も多く「はい」があったタイプが、あなたの怒りのタイプに近いものです。

【攻撃型】

  1. 怒った時、相手に強い態度をとってしまうことがありますか?
  2. 怒った時、相手を非難したり、批判したくなりますか?
  3. 怒った時、物に当たったり壊したりしたくなりますか?
  4. 怒った時、感情を抑えることが難しいと感じますか?
  5. 怒った時、他人に対する敵意を感じることがありますか?

【抑制型】

  1. 怒った時、感情を抑え込んでしまうことがありますか?
  2. 怒った時でも、表面上は平静を保つことができますか?
  3. 怒った時、自分の感情を誤魔化すことがありますか?
  4. 怒った時、自分の感情を無視することがありますか?
  5. 怒った時、感情を他人に見せるのが恥ずかしいと感じますか?

【受動型】

  1. 怒った時、言葉や行動で相手に伝えずに、他の方法で表現することがありますか?
  2. 怒った時、相手に対して皮肉を言ったり冷たい態度をとりたくなりますか?
  3. 怒った時、怒った時、他人に嫌われたくないという気持ちが強くなりますか?
  4. 怒った時、相手に責任があると思いがちですか?
  5. 怒った時でも、自分の意見を直接主張するのが苦手ですか?

【自己犠牲型】

  1. 怒った時、自分を責めてしまうことがありますか?
  2. 怒った時、自分の感情を抑えて相手のために行動することがありますか?
  3. 怒った時、自分の感情を無視して相手の要求を受け入れることがありますか?
  4. 怒った時、自分の感情を他人に理解してもらえないと感じますか?
  5. 怒った時でも、他人に迷惑をかけたくないと感じますか?

怒りのタイプの解説

それぞれの怒りのタイプを詳しく見ていきましょう。

【攻撃型】
攻撃型の怒りは、ライオンのような力強さと攻撃性を持っています。ライオンは自分の領域や家族を守るために攻撃的になることがあります。同様に、攻撃型の怒りを持つ人は、自分の利益や意見を守るために攻撃的な態度や言動をとることがあります。

【抑圧型】

抑圧型の怒りは、カメのように内向的で静かな性格を持っています。カメは自分の殻の中に引っ込んで、外部の脅威から身を守ることがあります。同様に、抑圧型の怒りを持つ人は、怒りの感情を内部に溜め込み、自分自身や他人に対して表現することが苦手です。

【受動型】

受動型の怒りは、キツネのような機敏さと狡猾さを持っています。キツネは脅威を感じた場合でも、逃げることや他の方法で対処することがあります。同様に、受動型の怒りを持つ人は、自分自身の怒りを他人に向けて責任転嫁することで、自己主張や感情の表現を避ける傾向があります。

【自己犠牲型】
自己犠牲型の怒りは、犬のような忠誠心と献身性を持っています。犬は主人のために自己を犠牲にすることがあります。同様に、自己犠牲型の怒りを持つ人は、自分の感情や欲求を犠牲にして他人のために尽くす傾向があります。

なお、このテストはあくまで参考の1つであり、全てを決定するものではありません。また、怒りのタイプはとても多様で人それぞれ異なるため、テストの結果はあくまで一般的に見た傾向として捉えてください。

様々なアプローチからあなたの怒りのタイプを理解することで、自己理解や他者との関係構築に役立てていただければと思います。*3)

アンガーマネジメントを行うための具体的な方法

ここからは、実際にアンガーマネジメントを行う際の方法を紹介します。

アンガーマネジメントのための具体的なトレーニング方法は、

  1. 衝動をコントロールする
  2. 思考をコントロールする
  3. 行動をコントロールする

の3つの種類に分けられます。それぞれの一般的な方法を確認しましょう。

①衝動をコントロールする

怒りを感じると、つい感情に任せて衝動的な行動をしてしまうことがあります。しかし、その行動は後になって後悔したり、周囲に迷惑をかけたりすることもあるでしょう。

怒りを感じたときは、まずは自分の衝動をコントロールすることが大切です。

6秒我慢する

怒りを感じたら、まずは6秒間何もしないでください。その間に、怒りの感情が収まってくることがあります。「6秒ルール」と呼ばれ、代表的な方法です。

深呼吸する

深呼吸をすることで、心身がリラックスし、怒りの感情が和らぎやすくなります。ゆっくりと長く息を吐き、深く吐ききったら少し静止し、ゆっくりと長く息を吸い込みます。

この時あなたの心を落ち着ける景色や人、物などをイメージするとさらに効果的です。

その場から離れる

怒りが収まらない場合は、その場から離れて、ひとりで冷静になる時間を作りましょう。衝動的に行動してしまうよりは、場所を変えて心を落ち着けることで、あなた自身の心をコントロールしやすくなります。

②思考をコントロールする

怒りを感じるとき、人は「〜すべき」という考えにとらわれやすいと言われています。しかし、その考えが、さらに怒りを増幅させてしまうことがあります。

怒りのために、自分の思考に柔軟さが欠如していることに気づき、広い視野で問題を見直すことで、思考をコントロールすることも大切です。

「~すべき」という考えを捨てる

「〜すべき」という考えは、自分や他人に過度な期待やプレッシャーをかけてしまいます。そのため、その考えを捨てることで、怒りの感情が和らぎやすくなります。

相手の立場に立って考える

相手の立場に立って考えると、その人の行動や言動を理解しやすくなり、怒りの感情が減退することがあります。

物事の捉え方を変える

物事の捉え方を変えることで、怒りの感情が和らぐことがあります。例えば、失敗を「学びの機会」と捉えるなどです。

③行動をコントロールする

怒りを感じたときは、つい感情に任せて衝動的な行動をしてしまうことがあります。しかし、その行動は後になって後悔したり、周囲に迷惑をかけたりする可能性があります。

怒りを感じた時は、自分が怒っていることを自覚し、特に慎重に行動することが大切です。

自分の感情を言葉で伝える

怒りを感じたら、自分の感情を言葉で相手に伝えましょう。ただし、相手を攻撃するような言い方にならないように注意しましょう。

冷静になってから行動する

怒りが収まっていないうちは、重要な決断や行動を控えましょう。少し先の未来にいる冷静なあなたの方が、怒った状態にある今のあなたより適切な判断ができる可能性が高いはずです。

特に若い人には、アンガーマネジメントは身につけるのに時間がかかるかもしれません。しかし、常にここで紹介したことなどを心がけることによって、段々とコントロールできるようになります。とはいえストレスが溜まると、どうしてもイライラしてしまい、怒りやすくなってしまいます。そのため、

  • 自分の怒りの原因を分析する
  • 怒りの感情を溜め込まない
  • 周囲の人に相談する

などを心がけることも大切です。

自分自身への理解を深め、健康的で、過度にストレスをためない生活を心がけましょう。

アンガーマネジメント・トレーニングの実践

ここではアンガーマネジメントのトレーニングに役立つ実践的なものとして、

  • アンガーマネジメントゲーム for teen
  • マインドフルネス
  • 怒りログ

を紹介します。

「アンガーマネジメントゲーム」

アンガーマネジメントゲームは、特に10代の若い人たちが自分の怒りを理解し、適切に管理する方法を楽しく身につけるためのツールです。このゲームは、怒りの感情を認識し、それを適切に表現する方法を学ぶことができます。

プレイヤーは、さまざまなシナリオを通じて互いに対話します。このゲームのシナリオは、日常生活で、怒りを感じる可能性のある状況を模倣しています。

これらの状況にどのように対処するかを考えることで、自己認識と自己制御のスキルを向上させることができます。

【日本アンガーマネジメント協会開発 世界初“怒りのツボ当てカードゲーム” 『アンガーマネジメントゲーム』】

マインドフルネス

マインドフルネスは、自分の感情や思考、体の感覚に対する意識を高める練習です。これは、現在の瞬間に集中し、評価や判断をせずに、ありのままに受け入れることを目指します。

マインドフルネスを身につけることで、以下のメリットが期待できます。

  • ストレスの軽減
  • 集中力の向上
  • 感情のコントロール
  • 自己認識の向上
  • 共感力の向上

マインドフルネスとアンガーマネジメントは、自己認識と自己制御のスキルを向上させるための手法です。マインドフルネスは、自分の感情や思考に対する意識を高め、現在の瞬間に集中します。一方、アンガーマネジメントは、怒りという特定の感情を理解し、適切に表現する方法を学びます。これら二つは互いに補完し合い、より良い自己管理を促進します。

怒りログ(アンガーログ)

怒りログは、自分が怒りを感じたときの状況や感情を記録することで、自分がどんなことに怒りを感じやすいかを理解するためのツールです。これはアンガーマネジメントの一部であり、自己認識と自己制御のスキルを向上させることに役立ちます。

怒りログには、「おこ!ノート」など、日常で感じるストレスを記録することで、手軽に怒りを見える化できるアプリも多数あります。

【「おこ!ノート」のおこ!マップ】

アンガーマネジメントのトレーニングは、すぐに効果が出るというものではありません。継続して実践することで、少しずつ効果が現れてきます。

自分に合ったトレーニングツールや方法を見つけて、毎日少しずつでもいいので実践しましょう。また、トレーニングの成果を記録しておくことで、モチベーションを維持することができるので、是非活用してみてください。

続いては、アンガーマネジメントを実践する際に理解しておきたいメリットを確認していきます。*4)

アンガーマネジメントのメリット

アンガーマネジメントは、あなたの感情のコントロールだけでなく、精神的な成長社会的な関係性の向上にも役立ちます。このようなスキルを身につけることで、あなたは学校や社会で直面する様々な課題に適切に対処できるようになり、日々をより快適に過ごせるようになるでしょう。

個人的なメリット

  • ストレスの軽減
    怒りは、ストレスの原因の1つです。アンガーマネジメントを身につけることで、怒りをコントロールできるようになり、ストレスの軽減につながります。
  • 人間関係の円滑化
    怒りをコントロールできないと、人間関係に悪影響を及ぼすことがあります。アンガーマネジメントを身につけることで、怒りをコントロールできるようになり、人間関係の円滑化につながります。
  • 自己肯定感の向上
    怒りをコントロールできるようになると、自分自身をコントロールできるようになり、自己肯定感の向上につながります。

集団・社会的なメリット

  • トラブルの防止
    怒りをコントロールできないと、些細な意見の食い違いやコミュニケーションの欠如などからトラブルに発展する可能性があります。アンガーマネジメントを身につけることで、学校や職場でのトラブルの防止につながります。
  • 学校や職場の活性化
    怒りをコントロールできないと、学校のクラスや職場の雰囲気が悪くなる可能性があります。アンガーマネジメントを身につけることで、学校や職場の活性化につながります。
  • 社会の安全と平和
    怒りをコントロールできないと、暴力や犯罪などの社会問題につながる可能性があります。アンガーマネジメントを身につけることで、社会の安全と平和につながります。

アンガーマネジメントによるメリットは、どれも普段の生活で大切なものですね!「怒りっぽいな」と感じる人もそうでない人も、自分自身を知り、より良いセルフケアのためにもアンガーマネジメントを意識してみてください。*5)

アンガーマネジメントのデメリット・課題

次は、アンガーマネジメントのデメリットや課題を確認しましょう。

怒りを抑え込むこととの誤解

アンガーマネジメントの目的は、怒りを抑え込むことではありません。怒りを適切に表現できるようにすることです。怒りを抑え込むことで、ストレスが溜まったり、感情の爆発につながったりする可能性があります。

怒りの原因を探るのが難しいことも

アンガーマネジメントのトレーニングでは、怒りの原因を探ることも大切です。しかし、怒りの原因が複雑で、上手く探り切れないこともあります。その場合、怒りをコントロールすることが難しくなる可能性があります。

継続的なトレーニングが必要

アンガーマネジメントは、継続的なトレーニングが必要です。アンガーマネジメントのスキルを習得するには時間と努力が必要です。

初めはうまくいかないこともありますが、継続的なトレーニングと実践によって徐々に上達していくことができるので、地道に取り組んでいきましょう。

深い自己分析が必要

アンガーマネジメントを成功させるためには、自己分析が不可欠です。自分自身の感情やトリガーを理解し、どのように対処するかを把握する必要があります。

社会全体でのサポートシステムの構築

アンガーマネジメントを習得するためには、サポートシステムが重要です。現在、学校の特別授業などで、アンガーマネジメントを取り上げる例はあります。しかし、現状では学校で継続して時間を確保するのは困難です。

職場での研修の機会を設ける際も、コストと時間がかかります。

アンガーマネジメントは多くのメリットを持つ一方で、この章で紹介したようなデメリットや課題も存在します。これらを理解し、適切な対策を講じることで、より効果的にアンガーマネジメントに取り組むことができます。

アンガーマネジメントは何に役立つ?

アンガーマネジメントは、怒りが原因でトラブルに発展する可能性のあるさまざまな場面で役立つスキルであることが分かってきました。それでは、具体的な場面や事例を通じて、その効果を見てみましょう。

チームプロジェクトでの意見対立

学校や仕事のグループ活動やチームプロジェクトでは、意見が対立することがよくあります。このような時、アンガーマネジメントのスキルがあれば、自分の怒りを適切に表現し、建設的な議論につなげることができます。

スポーツ競技でのフェアプレー

スポーツ競技では、試合の結果や審判の判断に納得できない時、怒りを感じることがあります。アンガーマネジメントのスキルがあれば、その怒りを適切にコントロールし、フェアプレーを保つことができます。

SNSでのトラブル

SNS上で他人から不快なコメントを受けた時や、自分の意見が理解されない時には怒りを感じることがあります。このような時、アンガーマネジメントのスキルがあれば、冷静に対応し、無用なトラブルを避けることができます。

このように、アンガーマネジメントは日常生活の中でさまざまな場面で役立つスキルです。自分自身の感情を理解し、適切に表現することで、より良い人間関係を築き、ストレスフリーな生活を送れるようになります。*7)

アンガーマネジメントに関してよくある疑問

ここでは、アンガーマネジメントに関してよくある疑問についてお答えします。

怒りやすいのは発達障害と関係ある?

怒りやすさは、個々の性格や環境、ストレスレベルなど、多くの要素によって影響を受けます。発達障害を持つ人々は、感情を制御することが難しい場合があり、その結果、怒りやすくなることがあります。しかし、怒りやすさが必ずしも発達障害を意味するわけではありません。

スピリチュアルなもの?

アンガーマネジメントは、感情を理解し管理するための具体的なスキルとテクニックを提供します。これは心理学的なアプローチであり、必ずしもスピリチュアルなものではありません。しかし、一部の人々は、マインドフルネスや瞑想などのスピリチュアルな要素を取り入れることで、アンガーマネジメントを補完することがあります。

意味がないと言われているのはなぜ?

アンガーマネジメントが「意味がない」と言われることがあるのは、その効果が個々の経験や取り組み方に大きく依存するためです。また、怒り自体は自然な感情であり、それを完全に抑制することは不可能であるという観点からも、「意味がない」と感じる人もいます。

自分がアンガーマネジメントを実践する必要があるかの診断方法は?

アンガーマネジメントに特定の「診断方法」はありません。しかし、心理カウンセラーや精神保健専門家と話すことで、自分自身の怒りのパターンやトリガーを理解することが可能です。

アンガーマネジメントの研修は受けられる?

多くの場所で、個人やグループ向けのアンガーマネジメントの研修が提供されています。これらの研修では、怒りの理解やコントロールのための具体的なスキルや戦略が教えられます。また、オンラインの研修プログラムもあります。*8)

アンガーマネジメントとSDGs

sdgsロゴ

アンガーマネジメントは、自己認識と自己制御のスキルを向上させるための重要な手段であり、SDGsとも深い関連性があります。SDGsは、地球上のすべての人々が平和で豊かな生活を送るための目標であり、アンガーマネジメントはその実現に向けたツールの1つです。

アンガーマネジメントに特に関連の深いSDGs目標を確認しましょう。

SDGs目標3「すべての人に健康と福祉を」

アンガーマネジメントは、ストレスや不安を軽減し、心身の健康を向上させることに直接貢献します。例えば、怒りを適切に管理することで、心臓病や高血圧などのストレス関連疾患のリスクを減らすことができます。

SDGs目標4「質の高い教育をみんなに」

アンガーマネジメントは、教育の一部として取り入れることができ、生徒たちが社会的スキルを向上させるのに役立ちます。これにより、学校内での人間関係や学習環境が改善され、より良い教育成果が期待できます。

SDGs目標16「平和と公正をすべての人に」

アンガーマネジメントによって、怒りを適切に管理することで、個々人が平和的な対話を維持し、公正な判断を下す能力が向上します。また、アンガーマネジメントは、社会全体の平和と公正にも寄与します。それぞれの個人が自分自身の感情を理解し、適切に表現することで、より良い社会を築く土台となるからです。*8)

>>各目標に関する詳しい記事はこちらから

まとめ

「和を以て貴しとなす」

という言葉があります。アンガーマネジメントは、自分自身の感情をコントロールすることで、周りの人たちと円滑なコミュニケーションを図り、和を大切にする社会を築くためのスキルです。

アンガーマネジメントは、自己認識自己制御のスキルを向上させ、自分自身の感情を適切に表現するための重要な手段です。これは、私たち個人にだけでなく、社会全体に対しても多大な利益をもたらします。私たち一人ひとりが自分自身の感情を理解し、適切に表現することで、より良い社会を築くことにつながるからです。

  • 学校や職場での対人関係
  • 家庭内でのコミュニケーション
  • スポーツや趣味の活動

アンガーマネジメントは、私たちが直面するさまざまな課題に対処するためにとても役に立ちます。現代社会では、

など、日常生活の中でさまざまな場面で、怒りに任せた衝動的な行動を控え、合理的に判断することが求められるからです。

未来へ向けて、アンガーマネジメントはますます重要性を増していきます。現代社会におけるストレスの問題は深刻であり、今後、怒りを適切に管理することで、より良い人間関係を築き、ストレスフリーな生活を送ることがますます社会的に重要になるためです。

あなたがアンガーマネジメントに取り組むことを心から応援します!怒りという感情に向き合い、それを理解し、適切に表現することで、あなた自身の成長とストレスの少ない日々、さらには社会全体の発展に貢献することができます。

アンガーマネジメントは、あなたの未来をより充実させ、明るく輝かせる鍵です。ぜひ、自身の成長を楽しみながら、気長に挑戦してみてください!

〈参考・引用文献〉
*1)アンガーマネジメントとは
厚生労働省『心理的安全性に基づくパワーハラスメント防止対策』
神戸新聞社『中学高校生にどうやって「アンガーマネジメント」を伝えるのか』(2019年8月)
日本アンガーマネジメント協会『はじめての方へ アンガーマネジメントとは?』
アンガーマネジメントジャパン『アンガーマネジメントについて』
山形県『アンガーマネジメントについて』
東京女子大学『”怒り”とのつきあい方ーアンガーマネジメントー』(2019年7月)
東京人権啓発企業連絡会『小林浩志:「アンガーマネジメント」を職場に取り入れる意義とその概念』(2016年3月)
*2)アンガーマネジメントが活躍する場面
埼玉県『養介護施設従事者等における高齢者虐待防止について』
日本アンガーマネジメント協会『日本アンガーマネジメント協会が“教育現場における教師と子供の怒りの実態”に関する調査結果を発表! 2019年4月、中学校の道徳の教科書に「生命尊重」「いじめ防止」に繋がるテーマのひとつとしてアンガーマネジメントを掲載!』(2019年2月)
文部科学省『暴力行為のない学校づくりについて(報告書)』(201年7月)
鹿児島県総合教育センター『児童生徒のためのアンガーマネジメント』(2022年10月)
寺坂 明子, 稲田 尚子, 下田 芳幸『小学生を対象としたアンガーマネジメント・プログラムの有効性:学級での実践に向けた小集団での予備的検討』(2021年)
宮城 政也, 喜屋武 享『中学校特別活動におけるアンガーマネジメント教育の効果―ストレスマネジメント,アサーティブネス・トレーニングを取り入れた授業実践―』(2018年)
石川県『体罰のない学校づくり STOP 体罰』(2014年4月)
福田 誠『問題行動の未然防止に向けた生徒支援に関する研究-中学校におけるアンガーマネジメントプログラムの実践を通して-』
厚生労働省『第7回「職場のパワーハラスメント防止対策についての検討会」議事録』(2018年1月)
厚生労働省『心理的安全性に基づくパワーハラスメント防止対策』
日経メディカル『「パワハラ」と「指導」の線引きは?』(2022年7月)
国土交通省『「船員の働き方改革」の取組事例 コーウン・マリン株式会社』
日経DVD『アンガーマネジメントでパワハラを根絶する 怒らないのではない。伝え方を変えるだけ』(2018年4月)
兵庫教育大学発達心理臨床研究センター『教員に生起する怒り感情への対人関係の影響─児童生徒・保護者・同僚との関係性からの省察─』(2022年3月)
*3)怒りについて理解しよう
文部科学省『心のケアの基本 1.心のケアとストレス・マネジメント』
文部科学省『心の外傷とその対応』
文化庁『「琴線に触れる」の意味』(2012年9月)
中村 多見『子どもの怒り経験と怒り表出に関する研究-教師に怒りを感じた場合について-』(2005年2月)
新潟県『第3回子どものメンタルケア事例検討会ミニレクチャー 「学校で暴言暴力が頻発している小学生の事例」-「怒り」の達人になろう -』
日経Gooday『脳科学から「怒り」のメカニズムに迫る! カチンと来ても6秒待つと怒りが鎮まるワケ』(2016年7月)
日経Gooday『“怒る脳”を鎮める「脳内物質」でイライラ解消!』(2016年8月)
朝日新聞『怒りは生存に必要な感情だ このやっかいな気持ち、科学的にみると』(2019年6月)
日経メディカル『脳科学的に見た「怒り」の発生メカニズム』(2023年1月)
鈴木 はる江『感覚と情動から心身相関を考える』(2008年9月)
日本アンガーマネジメント協会『怒りは原始脳から』(2012年3月)
山根 一郎『怒りの現象心理学』
日本学術会議『攻撃性(暴力)の脳内機構』
*4)アンガーマネジメントを行うための具体的な方法
日本アンガーマネジメント協会『世界初“怒りのツボ当てカードゲーム”『アンガーマネジメントゲーム』5月5日に発売!』(2018年4月)
Google Play『アンガーログでストレスを可視化:おこ!ノート』
小澤 優璃『感情制御方略とマインドフルネスがアンガーマネジメントに及ぼす影響』
滋賀県総合教育センター『アンガーマネジメント・プログラム スタートブック』(2014年3月)
飯村 誠一『「レジリエンス」しなやかな心で』
日経Gooday『考えるトレーニングで「怒り体質」は徐々に変わっていく』(2016年7月)
*5)アンガーマネジメントのメリット
日経Gooday『怒りやすい人は病気になりやすい? 思いに任せた「怒り」は百害あって一利なし』(2016年7月)
日本アンガーマネジメント協会『はじめての方へ アンガーマネジメントとは?』
*6)アンガーマネジメントのデメリット・課題
福田 誠『問題行動の未然防止に向けた生徒支援に関する研究-中学校におけるアンガーマネジメントプログラムの実践を通して-』
*7)アンガーマネジメントは何に役立つ?
内閣府『キレやすい子への理解と対応』
文部科学省『第2節 暴力行為,いじめ,不登校等の解決を目指して 3.子どもの情動(注)やこころの発達等に関する科学的解明と教育等への応用について』
文部科学省『2.しつけ・子どもの非行』
福岡県高等学校体育連盟『怒りのマネジメント』
仙台市教育委員会『体罰・不適切な指導防止ハンドブック』(2023年4月)
*8)アンガーマネジメントとSDGs
経済産業省『SDGs』