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ベレン宣言とは?具体的な内容や必要とされる背景も

「地球の肺」と呼ばれ、地球全体の生物・環境にとってかけがえのない存在、アマゾンの熱帯雨林。しかし、森林破壊は止まらず、先住民の権利や生物多様性が奪われているのが現状です。

この問題解決に向けて、アマゾン地域の8ヵ国(ACTO)が協力し「ベレン宣言」が採択されました。では、ベレン宣言とは、どのような内容なのでしょうか?

本記事では、南米の大きな一歩、ベレン宣言について、具体的な内容や必要とされる背景などもわかりやすく解説します。

ベレン宣言とは

アマゾンの熱帯雨林は、地球全体の気候変動を抑制し、多様な生物の宝庫として重要な役割を果たしています。しかし、森林伐採違法な採掘は止まらず、その生態系や先住民の権利が危機に瀕しています。

この問題に立ち向かうため、アマゾン地域の8カ国が協力し、発表したのが「ベレン宣言」です。ベレン宣言は、2023年8月にブラジルのベレンで開催された 第4回アマゾン協力条約機構(ACTO)首脳会議で、

  • 先住民や地域社会の権利保護
  • 生物多様性の保全
  • 伝統的知識の尊重

などを訴え、協力して具体的な取り組みを実施するために採択されました。

【世界の森林面積の国別純変化 (2010〜2015年、年平均)】

アマゾン協力条約機構(ACTO)とは

ベレン宣言を理解するには、アマゾン協力条約機構(ACTO)を知っておく必要があります。ACTOは、アマゾン地域の8カ国(ボリビア、ブラジル、コロンビア、エクアドル、ガイアナ、ペルー、スリナム、ベネズエラ)が協力して、アマゾンの持続可能な発展を目指す組織です。

アマゾン協力条約機構(ACTO)とベレン宣言は密接に関連しており、ACTOの活動がベレン宣言の理念を具現化する役割を果たしています。

ACTOが中心となりベレン宣言を策定

ACTOは、アマゾン地域のさまざまな問題に対して、加盟国間の協力体制を築き、共同で解決策を模索する組織です。ベレン宣言は、ACTOが長年にわたる議論と検討を重ね、加盟国間の合意のもとに策定されました。

ベレン宣言がACTOの活動指針

ベレン宣言は、ACTOの今後の活動の指針となるものです。ACTOは、ベレン宣言に掲げられた目標達成に向けて、さまざまな取り組みを推進していきます。

ベレン宣言はまた、ACTOのこれまでの活動の成果であり、同時に、今後の活動の出発点でもあります。

ベレン宣言の基本的な内容

ベレン宣言は、先住民族の権利保護と生物多様性の保全を結びつけた具体的なり組みへの宣言です。主な内容として、以下が挙げられます。

  • 森林破壊の防止
  • 先住民の権利保障
  • 生物多様性の保全
  • 持続可能な開発
  • 科学に基づいた政策決定
  • 国際協力の強化
  • 科学に基づいた政策決定

しかし、2023年8月時点では、2030年までに森林破壊をゼロにするという具体的な目標は、全加盟国の合意には至りませんでした。

このように、ベレン宣言は、アマゾン熱帯雨林の保全を目的とした国際協定です。この宣言の実現には、国際社会の連携や市民意識の向上などが重要ですが、その実現にはまだ多くの課題が残されています。

次の章ではベレン宣言の具体的な内容を確認していきましょう。*1️)

ベレン宣言の具体的な内容

ベレン宣言は、アマゾン地域の持続可能な開発と環境保護を目指す包括的な取り組みの指針です。この宣言は、森林保護から先住民の権利保障まで、幅広い課題に対する具体的な行動への意志を示しています。

アマゾンの生態系を守りつつ、地域の発展を促進するという難しいバランスを取るという挑戦への、始まりの宣言と言えるでしょう。ここでは、ベレン宣言の具体的な内容を見ていきましょう。

森林破壊の防止と回復

ベレン宣言は、アマゾンの森林破壊を食い止めるための具体的な対策を提案しています。主な取り組みとしては、

  • 違法伐採の根絶
  • 森林火災の防止
  • 再生可能エネルギーへの移行

などが挙げられています。
しかし、これらの対策を実施する上では、経済発展と環境保護の両立という大きな課題があります。例えば、

  • 違法伐採に依存している地域の雇用をどう確保するか
  • 森林火災の予防と農業活動をどう両立させるか

など、複雑な問題が存在します。

先住民の権利保障

ベレン宣言では、アマゾンに住む先住民の伝統的な知識や文化を尊重し、彼らの土地の権利を保障することが宣言の重要な柱となっています。これは、先住民が長年にわたってアマゾンの生態系を維持してきた役割を認識し、彼らの知恵を活用しようとする試みです。

一方で、

  • 先住民の権利と近代化の波との折り合いをどうつけるか
  • 先住民の土地権と資源開発の利権をどう調整するか

など、実践面での課題も多く存在します。

生物多様性の保全

ベレン宣言では、アマゾンの豊かな生物多様性を保護し、絶滅危惧種の保全に取り組むことが宣言で強調されています。これは、地球規模の生態系バランスを維持する上で極めて重要な取り組みです。

しかし、

  • 生物多様性の保全と経済活動の両立
  • 特に農業や鉱業などの産業と自然保護のバランス

をどう取るかが大きな課題となっています。また、気候変動が生物多様性に与える影響にどう対処するかも重要な問題です。

持続可能な開発

ベレン宣言は、アマゾンの自然資源を適切に管理しつつ、地域住民の生活水準の向上と経済発展を両立させることを目指しています。これは、環境保護と経済発展を同時に達成するという、持続可能な開発の理念を体現するものです。

ただし、

  • 具体的にどのような産業や開発モデルを推進すべきか
  • 利益をどのように公平に分配するか

など、実施面での課題は山積しています。

科学に基づいた政策決定

ベレン宣言は、科学的な知見に基づいた政策決定の重要性を強調しています。これにより、効果的な保全対策の推進が期待されます。

しかし、

  • 科学的知見と地域の伝統的知識をどのように統合するか
  • 科学的な提言と政治的・経済的な利害をどう調整するか

という難しい課題も存在します。

国際協力の強化

ベレン宣言は、各国政府だけでなく、民間企業、NGO、地域社会など、さまざまな主体が協力して取り組むことを目指しています。これは、アマゾンの問題が一国だけでは解決できない、グローバルな課題であることを認識した上での方針です。

ただし、

  • 国際協力を進める上で各国の主権をどう尊重するか
  • 協力のための資金をどのように調達し公平に分配するか

などの課題があります。

ベレン宣言の実現には、多くの課題が山積しています。違法伐採の根絶や、先住民の権利保障など、解決すべき課題は非常に多いのが現状ですが、ベレン宣言は、アマゾンの未来を懸けた国際的な取り組みの始まりであり、今後の進展が期待されています。*2)

ベレン宣言が必要とされる背景

アマゾンの熱帯雨林は、地球全体の気候変動や生物多様性の保全に重要な役割を果たしています。しかし、森林伐採や違法な採掘などにより、先住民の生活も含めた、アマゾンの生態系が危機に瀕しているのが事実です。

この深刻な状況を改善するために、アマゾン地域の国々が共同で取り組む必要性が生まれ、ベレン宣言が採択されました。もう少し詳しく見ていきましょう。

【アマゾン熱帯林の衛星画像】

ベレン宣言が必要とされた具体的な背景

ベレン宣言が必要とされた背景には、具体的には以下のような問題がありました。

気候変動の加速

アマゾンの森林は、大気中の二酸化炭素を吸収する役割を果たしています。その中で森林破壊が進むと、吸収される二酸化炭素の量が減り、気候変動が加速してしまうという危機感が高まっていました。

【熱帯林のはたらきと、火災などが及ぼす影響】

生物多様性の損失

アマゾンには、地球上で最も多くの種類の動植物が生息しています。しかし、森林破壊によって、多くの種が絶滅の危機に瀕しており、生物多様性の損失が深刻な問題となっています。

先住民の生活への影響

アマゾンには、古くからこの地に暮らす先住民が数多く存在します。森林破壊は、彼らの生活の基盤を奪い、文化の存続を脅かします。

国際社会の注目

アマゾンの環境問題が、地球規模の問題として国際社会の注目を集めるようになりました。特に、気候変動問題への関心の高まりは、ベレン宣言が採択された大きな要因の1つです。

ACTOのこれまでの取り組みとベレン宣言

このような背景の中、ACTOは、アマゾンの持続可能な開発を目指し、加盟国間の協力体制を築いてきました。しかし、

  • 各国の利害対立:経済発展と環境保護のバランスをどのように取るべきか意見が対立
  • 資金不足:各国の財政状況は厳しく、十分な資金を確保することが困難
  • 国際的な連携不足:各国間の協力体制が不十分

など、ACTO各国の経済状況や政治情勢の違いから、具体的な成果を出すことに苦労していました。

ベレン宣言の現状

ベレン宣言は、アマゾン熱帯雨林の保護と持続可能な開発を目指す重要な一歩ですが、課題も多く残されています。この宣言は、地域協力の強化と環境保護の重要性を認識しつつも、具体的な目標設定では各国の立場の違いにより、

  • ブラジルの大統領は、2030年までに森林破壊を終わらせることを共通目標にしようと呼びかけたが、各国の意見の相違により、具体的な数値目標の設定には至らず
  • コロンビアは新たな石油探査の禁止を提案したが、ブラジルはアマゾン川河口での探査を検討しているなど、各国の経済事情や政策方針の違いが浮き彫りになった

など、調整は困難を極めています。

しかし、この宣言には重要な意義があります。アマゾン地域の国々が、気候変動対策における自らの役割の重要性を認識し、協力して取り組む姿勢を示したことは大きな前進と言えるでしょう。

例えば、実施計画の詳細はまだ決まっていないものの、違法な森林伐採や鉱物採掘を取り締まる国際警察組織の設置合意は、具体的な行動につながる可能性の高い重要な一歩です。

今後の展望

今後の展望としては、以下の点が注目されます。

国際舞台でのACTOの発言力強化

アマゾン地域の8カ国が協調して、気候変動対策に関する共通の立場を表明することで、国際社会においてより強い発言力を持つことができます。また、ベレン宣言に基づいた具体的な環境保護や持続可能な開発の取り組みを示すことで、ACTOの実行力と信頼性を高めることを目指します。

具体的には、2025年にベレンで予定されている国連気候変動会議での発言力強化が期待されています。

国際警察組織の具体的な活動内容と効果

2023年8月のACTO首脳会議で、違法な森林伐採や鉱物採掘を取り締まる国際警察組織の創設が、合意に至りました。まだ詳細は決定されていませんが、現時点では以下のような活動を行うと予想されます。

  • 国境を越えた情報共有:各国の警察機関や環境保護団体との連携を強化し、違法活動に関する情報を迅速に共有
  • 合同取り締まり作戦:複数国にまたがる違法活動に対して、協調した取り締まりを実施
  • 技術的支援:衛星画像解析や森林監視システムなどの先端技術を活用し、違法行為の早期発見と証拠収集
  • 能力開発:各国の法執行機関に対して、環境犯罪に特化したトレーニングを提供

ただし、その実効性は各国の協力度合いや資金提供の状況に大きく依存します。

各国の独自の保護目標の進捗状況と地域全体での調整

各国の保護目標とその進捗状況はさまざまですが、以下のような傾向が見られます。

  • ブラジル
    2030年までの森林破壊ゼロを目指していますが、政権交代により政策が大きく変わる可能性があります。
  • コロンビア
    新たな石油探査の禁止を提案していますが、経済的影響を懸念する声もあります。
  • ペルー
    2021年に「気候緊急事態」を宣言し、2050年までにカーボンニュートラルを目指しています。

地域全体での調整は、ACTOを通じて行われていますが、各国の経済事情や政治的立場の違いにより、統一的な目標設定は難しい状況です。今後は、定期的な進捗報告会や共通の評価指標の設定などを通じて、より効果的な調整が求められます。

持続可能な開発と環境保護のバランスをどう取るか

持続可能な開発と環境保護のバランスを取ることは、アマゾン地域の最大の課題の1つです。アプローチとして、以下のようなことが考えられています。

  • エコツーリズムの推進:自然環境を保護しながら、地域経済を活性化
  • 持続可能な農業:森林破壊を伴わない農業手法の導入や、アグロフォレストリーの推進
  • グリーンテクノロジーへの投資:再生可能エネルギーや環境に配慮した製造技術への投資を促進
  • 先住民の知識の活用:伝統的な資源管理方法を現代の開発計画に組み込むことで、持続可能性を高める
  • 国際的な支援メカニズム:炭素クレジット取引※や生態系サービスへの支払い※など、環境保護に経済的インセンティブを与える仕組みの構築
※炭素クレジット取引

温室効果ガスの排出削減や吸収を経済的に評価し、取引する仕組み。

【関連記事】カーボンクレジットとは?仕組みや種類、ビジネスの活用事例、個人で取引可能?

※生態系サービスへの支払い(PES:Payment for Ecosystem Services)

生態系が提供する恩恵に対して経済的価値を付与し、その保全に対して支払いを行う仕組み。

これらの取り組みを通じて、環境保護と経済発展の両立を目指すことが重要ですが、その実現には長期的な視点と国際社会の継続的な支援が不可欠です。*3)

ベレン宣言と日本の関係

【アグロフォレストリーの父 坂口陞さん】

ベレン宣言は、アマゾン地域の環境保護と持続可能な開発を目指す重要な国際的合意です。日本は、直接的にはこの宣言の署名国ではありませんが、環境保護や持続可能な開発の分野で、アマゾン協力条約機構(ACTO)と協力関係を築いています。

日本とACTOの協力関係

日本は、ACTOとの間で以下のような協力を行っています。

技術協力

日本は、国際協力機構(JICA)を通じて、アマゾン地域の環境保全や持続可能な開発に関する技術協力を行っています。例えば、ブラジルでのアマゾン森林保全プロジェクトでは、衛星画像を用いた森林モニタリング技術の移転を行いました。

資金協力

日本政府は、ACTOの活動に対して資金的な支援を行っています。2021年には、アマゾン地域の持続可能な開発を支援するため、約100万ドルの無償資金協力を実施しました。

研究協力

日本の研究機関とACTO加盟国の研究機関との間で、アマゾンの生態系や気候変動に関する共同研究が行われています。例えば、国立環境研究所は、アマゾンの炭素循環に関する研究をブラジルの研究機関と共同で実施しています。

民間セクターの参画

日本企業も、アマゾン地域での持続可能なビジネスモデルの構築に取り組んでいます。例えば、アマゾンフルーツを輸入するFRUTA FRUTAは、アマゾン・トメアスでの持続可能な農業プロジェクト(アグロフォレストリー)※を支援し、森林破壊を伴わない農業生産の拡大に貢献しています。

【関連記事】フルッタフルッタ|アグロフォレストリーでつなぐ未来とアサイー、そしてブラジルとの絆

日本の貢献と課題

日本のACTOへの協力は、アマゾン地域の環境保護と持続可能な開発に一定の貢献をしていますが、まだ課題も残されています。

日本国内でのアマゾン地域の環境問題に対する認識を広め、持続可能な製品の選択など、消費者レベルでの行動変容を促すことが重要です。また、国や企業レベルで、日本の先進的な環境技術をより積極的にアマゾン地域に移転すれば、環境保護と経済発展の両立に貢献できるでしょう。

今後、気候変動対策がますます重要になる中で、日本とACTOの協力関係はさらに深化していく可能性があります。私たち一人ひとりも、意識を高め、日々の生活の中で環境に配慮した選択をすることで、間接的にアマゾンの熱帯雨林保護に貢献できるのです。*4)

ベレン宣言とSDGs

ベレン宣言の採択にも、国連のSDGs(持続可能な開発目標)が大きな影響を与えています。SDGsが掲げる「誰一人取り残さない」という理念と、環境保護と経済発展の両立を目指す姿勢は、ベレン宣言の基本的な考え方と深く結びついています。

ベレン宣言は、アマゾン地域の持続可能な発展を目指すものであり、その内容はSDGsの複数の目標に貢献しています。関係の深いSDGs目標を見ていきましょう。

SDGs目標6:安全な水とトイレを世界中に

アマゾン川流域の水質汚染は深刻な問題となっています。違法な金鉱採掘による水銀汚染や、都市部からの未処理の排水が、水資源を脅かしています。

ベレン宣言は、水資源管理の重要性を強調し、国境を越えた協力を通じて水質改善に取り組むことを提案しています。これにより、安全な水へのアクセス改善が期待されます。

SDGs目標8:働きがいも経済成長も

アマゾン地域では、違法な森林伐採や鉱物採掘が雇用を生み出す一方で、持続可能な経済発展を阻害しています。

ベレン宣言は、持続可能な開発モデルの構築を目指しています。エコツーリズムの推進や、森林資源の持続可能な利用を通じて、地域経済の発展と雇用創出を両立させようとしています。

SDGs目標10:人や国の不平等をなくそう

アマゾン地域の先住民は、土地の権利や伝統的な生活様式の維持において、しばしば不平等な扱いを受けています。

ベレン宣言は、先住民の権利保護を重要な課題として取り上げ、彼らの伝統的知識や文化を尊重することを明記しています。これにより、社会的不平等の解消の実現に近づくことが期待されます。

SDGs目標13:気候変動に具体的な対策を

アマゾンの森林破壊は、大量の二酸化炭素を大気中に放出し、気候変動を加速させています。世界銀行の報告によると、アマゾンの森林面積は1970年代以降、約17%も減少しました。

ベレン宣言は、森林破壊を防止し、2030年までに森林破壊をゼロにすることを目指しています。また、再生可能エネルギーへの移行を促進することで、気候変動の緩和に貢献します。

SDGs目標15:陸の豊かさも守ろう

アマゾンは世界有数の生物多様性を誇る地域ですが、森林破壊や違法な野生動物の取引により、多くの種が絶滅の危機に瀕しています。

ベレン宣言は、生物多様性の保全を重要な柱の一つとしています。違法な森林伐採や鉱物採掘を取り締まる国際警察組織の設置を提案し、生態系の保護を強化しようとしています。

このようにベレン宣言は、具体的に活動が始まれば、直接的にも間接的にもSDGs目標にも貢献し、アマゾン地域の持続可能な発展が期待できます。しかし、宣言の実効性を高めるためには、具体的な行動計画の策定と、ACTOをはじめ世界各国の協力関係の強化、そして着実な実施が必要です。*5)

>>各目標に関する詳しい記事はこちらから

まとめ

ベレン宣言は、アマゾン地域の8カ国が2023年8月に採択した、環境保護と持続可能な開発を目指す重要な合意です。この宣言は、森林破壊の防止、生物多様性の保全、先住民の権利保護、気候変動対策の強化など、アマゾンが直面する喫緊の課題に対応することを目的としています。

南米アマゾンが直面する、

  • 急速な森林破壊
  • 生物多様性の損失
  • 先住民の権利侵害
  • 違法な鉱物採掘や伐採
  • 気候変動による生態系への影響
  • 水質汚染

などの深刻な課題に対し、中心となってベレン宣言を採択したアマゾン協力条約機構(ACTO)には、今後さらなる取り組みが期待されています。具体的には、

  • ACTOを中心に、アマゾン地域の国々がより緊密に連携し、環境保護と持続可能な開発のための具体的な行動計画を策定・実施する
  • 衛星監視システムやAIを活用した森林管理など、最新技術の導入による、より効果的な環境保護
  • アマゾンの豊かな生態系を活かしつつ、地域経済を発展させる新たなビジネスモデルの創出
  • グリーンボンドやカーボンクレジットなどの環境保護プロジェクトへの投資を促進する金融商品の活用

などが推進される予定です。

ビジネスや投資の観点からも、

  • エコツーリズム:アマゾンの豊かな自然を活かした持続可能な観光産業の発展
  • バイオテクノロジー:アマゾンの生物多様性を活用した新薬開発や機能性食品の研究
  • 再生可能エネルギー:太陽光や水力を利用したクリーンエネルギー事業の展開
  • 持続可能な農業:アグロフォレストリーなど、森林保護と両立する農業モデルの構築

など、アマゾン地域は大きな可能性を秘めています。また、ベレン宣言やACTOについて知ることは、地球規模の環境問題と経済発展の両立という現代の重要課題を理解する上で非常に重要です。

私たち一人ひとりも、日々の生活の中でアマゾン地域のSDGs目標達成に貢献することができます。例えば、

  • 持続可能な方法で生産された製品を選ぶ
  • アマゾン地域の環境保護団体への寄付や支援
  • SNSなどを通じてアマゾンの現状や重要性を発信する
  • 企業や政府に対し、アマゾン保護のための行動を求める

など、少しの意識で無理なくできることもあります。

アマゾンは地球の肺と呼ばれ、その保護は私たち全人類の未来に直結しています。ベレン宣言を通じて、世界的にアマゾン地域への関心を高め、持続可能な未来の実現に向けて行動を起こすことが、今まさに求められているのです。

私たち一人ひとりの小さな行動が、遠く離れたアマゾンの豊かな自然を守り、地球全体の環境を保全することにつながります。同じ地球の上、アマゾンの未来も、私達の未来もつながっているのです。

<参考文献・引用文献>
*1)ベレン宣言とは
環境省『森と生きる』(2016年2月)
OCTA『QUEM SOMOS? OTCA』
International Society of Ethnobiology『ベレン+30 宣言』
在ブラジル日本国大使館『大使館情報』(2023年9月)
文部科学省『第6回国際成人教育会議「行動のためのベレン・フレームワーク(仮訳)」(2009年12月4日)について』(2009年12月)
環境金融研究機構『国連気候変動枠組み条約第30回締約国会議(COP30)、ブラジルのアマゾン地域の都市ベレンで開催決定。気候変動加速の象徴でもある「アマゾン」で、気候危機打開の再確認を目指す(RIEF)』(2023年5月)
*2)ベレン宣言の具体的な内容
OCTA『Saiba como trabalhamos』
Reuters『アマゾン流域8カ国が首脳会議、森林破壊阻止の共通目標で合意ならず』(2023年8月)
Reuters『ブラジルで地域8カ国が首脳会議、アマゾン保護の政策立案目指す』(2023年8月)
日本貿易保険『第 97 回 OECD カントリーリスク専門家会合の結果とブラジルの概況 』(2023年11月)
*3)ベレン宣言が必要とされる背景
JAXA『熱帯林の減少』
気候変動適応プラットホーム『熱帯で進む森林破壊や火災に関する報道を目にします。このまま南米アマゾンや東南アジアの森林が失われると、地球規模ではどのような影響があるのでしょうか?』
環境省『生物多様性民間参画ガイドライン(第3版)-ネイチャーポジティブ経営に向けて-』(2023年7月)
BBC『アマゾン地域の8カ国が森林保護で共同宣言 目標では合意できず』(2023年8月)
日本経済新聞『アマゾン保護へ国際警察 ブラジル、近隣国と合意めざす』(2023年8月)
日本経済新聞『アマゾン近隣国首脳、違法伐採監視へ国際警察組織』(2023年8月)
日本経済新聞『ブラジル、アマゾン保護で近隣国と協力 国際警察合意へ』(2023年8月)
日本経済新聞『アマゾン近隣国首脳、違法伐採監視へ国際警察組織』(2023年8月)
Newsweek『アマゾン流域8カ国が首脳会議、森林破壊阻止の共通目標で合意ならず』(2023年8月)
熱帯森林保護団体『アマゾンの破壊の現状』
気候変動適応情報プラットホーム『熱帯で進む森林破壊や火災に関する報道を目にします。
このまま南米アマゾンや東南アジアの森林が失われると、地球規模ではどのような影響があるのでしょうか?』
BBC『アマゾンの森林伐採、2023年前半で約34%減少 ブラジル政府』(2023年7月)
森 豊彦『アマゾンの熱帯の現状と動向』
*4)ベレン宣言と日本の関係
FRUTA FRUTA『Agroforestry』
国際協力銀行『ブラジルと日本、資源大国と技術立国の共』(2024年7月)
外務省『アマゾン奥地での調査と衛星データで炭素量を解明~ ブラジルの熱帯林保全に協力 ~』
国際協力機構『ブラジルに対する日本の協力の足跡』
国際協力機構『日本と中南米』
日本ブラジル中央協会『日本人が興したアマゾンの農業革命-トメアスのアグロフォレストリー』(2013年11月)
日本経済新聞『[社説]南米と互恵関係を深めよ』(2024年5月)
日本ブラジル中央協会『特集 アマゾンとアグロフォレストリー』
日本経済新聞『日本の中南米外交、再活性化へ 資源確保と食料安保に力』(2024年1月)
経団連『中南米における政治情勢の変化と日本の中南米外交』(2022年3月)
文部科学省『資料3 南米ワーキンググループで出された主な意見等』(2012年11月)
*5)ベレン宣言とSDGs
国際連合広報センター『SDGsのポスター・ロゴ・アイコンおよびガイドライン』