「気候変動の緩和策と適応策の違いは?」と聞かれて、すぐに答えられますか?
将来の私たちの社会の運命を左右する重要な課題、気候変動について、正しい知識を持ち、具体的な対策を知っておくことはとても重要です。
この記事を読んで、気候変動への緩和策と適応策の具体的な違いを理解し、地球温暖化の影響を最小限に抑えるための取り組みについて知っておきましょう。将来に役立つ情報や私たちにもできることなども、わかりやすく解説します。
まずは気候変動について確認
気候変動とは、地球温暖化が原因で起こる長期的な気温や気候の変化のことです。地球温暖化の主な原因は、人間の活動によって放出される温室効果ガスです。
【地球温暖化と温室効果ガス】
増え続ける温室効果ガス
現在の温室効果ガスの濃度は過去200万年で最高水準であり、排出量は増え続けています。その結果、地球は1800年代後半と比べて1.1℃温暖化しました。
過去10年間は最も気温が高い10年間であり、気候変動の影響として
- 干ばつ
- 水不足
- 森林火災
- 海面上昇
- 洪水
- 氷の融解
- 暴風雨
- 生物多様性の減少
などが深刻な問題となっています。気温上昇は単なる問題の始まりに過ぎません。
地球は全てのものが直接的、または間接的に関連し、影響し合うシステムであり、ある分野の変化が他の分野にも影響を及ぼす可能性があります。その結果、地球のシステム全体に影響を及ぼす可能性があるのです。
【GOSATによる世界のCO2濃度分布観測結果】
気候変動の影響
気候変動は私たちの健康、食料生産、住まい、安全、仕事に影響を与える可能性があります。特に小島嶼国や開発途上国の人々は既に気候変動の影響を受けやすくなっています。
このような地域の中には、海面上昇や塩水の浸入により移住が必要となり、長期の干ばつにより飢饉のリスクが高まっている場所も多くあります。今後、気候変動によって生じる自然災害や環境変化によって居住地を追われる「気候難民」の数が増えると予想されています。
【1986年~2005年平均気温から予想される将来の気温上昇】
1986年から2005年までの平均気温からの気温上昇は、地球全体で約0.8℃と推計されています。将来の気温上昇については、厳しい温暖化対策をとった場合と、現状程度のままで進んだ場合で大きく異なります。
現状程度のままの温暖化対策で進んだ場合
もし、現状程度のままの温暖化対策で進んだ場合、2030年までに地球の平均気温の上昇が産業革命前と比べて2℃を超えると予想されています。これは、気候変動の影響がさらに深刻化することを意味します。
この場合、気候変動によって、
- 海面上昇が加速
- 異常気象が頻発
- 生態系が壊滅的な打撃を受ける
など、地球環境は深刻なダメージを受ける可能性があります。
厳しい温暖化対策をとった場合
もし、厳しい温暖化対策をとった場合、2030年までに地球の平均気温の上昇を産業革命前と比べて1.5℃未満に抑えることができます。厳しい温暖化対策をとっても、地球温暖化を完全に止めることはできませんが、対策をとることで、気温上昇のペースを遅らせたり、気候変動の影響を軽減したりすることができます。また、温暖化対策は、新たな産業の創出や雇用の創出にもつながります。
このように、私たちは地球温暖化対策に世界全体が全力で取り組む必要があります。地球の未来を守るためには、個々の行動だけでなく、政府や企業、国際社会全体が力を合わせて温暖化対策に取り組むことが重要です。
世界が目標を同じ方向に揃え、私たちが一丸となって取り組めば、地球の将来をより持続可能なものにすることができます。そのためには、
- 気候変動緩和策
- 気候変動適応策
の2つはどちらも重要です。まずは、気候変動の緩和・適応とは何か正しく理解しておきましょう。*1)
気候変動緩和策・適応策とは
気候変動対策には大きく緩和策と適応策の2つのアプローチがあります。この緩和と適応は、互いに補い合う関係にあります。
【気候変動の緩和策・適応策の関係】
気候変動緩和策
気候変動緩和策とは、気候変動の原因となっている地球温暖化を抑えるために、温室効果ガスの排出量を減らすことを目的としたアプローチです。気候変動緩和には大きく分けて
- 温室効果ガスの削減:再生可能エネルギーの利用やエネルギー効率の向上
- 二酸化炭素の吸収量拡大:森林や海洋による温室効果ガスの吸収量を増やす
の2つの方法があります。具体的には、
- 再生可能エネルギーの利用(GHG削減)
- エネルギー効率の向上(GHG削減)
- 森林の保全・保護(GHG吸収)
- 植林(GHG吸収)
などが挙げられます。気候変動を緩和する取り組みを実施することで、温室効果ガスの排出を減らし、気温上昇や気候変動の進行を抑えることができます。
【関連記事】ゼロエミッションとは?推進理由や日本の取組事例、私たちにできることも
気候変動適応策
気候変動適応策とは、すでに起こっている気候変動や、将来的に予想される状況に対応することを目的としたアプローチです。気候変動への適応の取り組みは、地域の気候・土地の特性や気候変動の影響に応じて適切に行う必要があります。
具体的には、
- 海岸線の防潮堤の建設(洪水・津波対策)
- 農作物の品種改良(高温・干ばつ対策)
- 水資源の管理(洪水・干ばつ対策)
- 災害時の避難計画の策定
などが挙げられます。
また、適応策は単独で行うだけでなく、緩和策との連携や地域住民の理解を深めて協力体制を築くなど、多角的で広範囲にわたるアプローチが重要です。
【2つの気候変動対策 緩和とは?適応とは?】
気候変動の緩和によって、気候変動の進行を抑えつつ、同時に気候変動への適応により備え、被害を抑える取り組みを実施することで、将来の地球環境と私たちの社会をより持続可能なものにすることができます。次の章ではまず、具体的な気候変動緩和策を見ていきましょう。*2)
具体的な気候変動緩和策
気候変動緩和策は、主に地球温暖化を抑制する取り組みです。代表的な例を日本政府の政策と企業の取組から確認しましょう。
日本政府の気候変動緩和への取り組み
【将来のカーボンニュートラルな社会】
日本政府は「2050年カーボンニュートラル」を掲げ、気候変動緩和のためにさまざまな分野での取り組みを進めています。中でも代表的なものには「グリーン成長戦略」と「GX(グリーントランスフォーメーション)」があります。
グリーン成長戦略
【2050年カーボンニュートラルの実現のためのロードマップ】
日本政府が掲げるグリーン成長戦略とは、環境に配慮した社会の構築と経済成長の両立を目指す取り組みです。具体的には、
- 再生可能エネルギーの導入拡大:太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーの導入を拡大し、化石燃料の使用を削減する。
- 省エネ技術の開発:省エネ技術を開発し、エネルギーの消費量を削減する。
- 森林の保全:森林は二酸化炭素を吸収する役割を果たす森林を保全することで、気候変動の進行を抑制する。
- エネルギー効率の向上:エネルギー効率の高い設備や機器を導入し、エネルギーの消費量を削減する。
- 循環型社会の構築:資源を循環利用することで、廃棄物の量を削減する。
- 環境に配慮した産業技術の開発:環境に配慮した産業技術を開発し、新しい産業を創出する。
などが挙げられます。これにより、地球温暖化防止に貢献しつつ、新たな産業の育成や雇用の拡大を目指しています。
【グリーン成長戦略「実行計画」の14分野】
グリーン成長戦略は、
- 地球温暖化への対応を経済成長の機会と捉える
- 積極的に気候変動への対策を行う
- 産業構造や社会経済の変革をもたらす
- 日本経済の次なる大きな成長につながる
- 持続可能な社会の実現
という考えに基づいています。政府はこのために、政策でできること全てを行う方針で、直接的な温室効果ガス削減への取り組みだけでなく、民間からの投資促進や、雇用の創出、循環型経済※の構築などにも取り組んでいます。
GX(グリーントランスフォーメーション)
GX(グリーントランスフォーメーション)は、先ほどのグリーン成長戦略の一環として、企業や社会全体が環境に配慮した活動を行い、持続可能な社会を実現することを目指す取り組みです。この取り組みでは、温室効果ガス排出量削減や再生可能エネルギーの導入などを通じて、日本経済を「グリーン」に変革することに挑戦しています。
【カーボンニュートラルな産業へ「GX」】
政府は、将来的にも日本が持続的に経済成長を続けるために、社会の仕組みそのものを変えることが必要と考え、GXを重要な取り組みと位置付けています。GXが目指す社会の姿とは、
- 化石燃料が再生可能エネルギーに置き換わる
- 電気自動車や水素自動車が普及し、ガソリンやディーゼル車の利用が減少
- 公共交通機関の利用が促進され、車の利用による渋滞や大気汚染が減少
- 断熱材や省エネ設備の普及により、建物のエネルギー効率が向上
- 太陽光発電や雨水の再利用など、自給自足型の住宅が増加
- リサイクルやリユースの徹底による、廃棄物の削減
- 廃棄物をエネルギーとして活用するバイオマス発電や廃棄物の資源化
- 有機農業や地産地消が一般的となり、農薬や化学肥料の使用が減少
- 食品ロスの削減や食品の持続可能な供給
などの実現によって、環境への負荷が大幅に軽減され経済的にも安定した社会です。また、私たちの日常にとっても、クリーンな環境で健康に暮らせる社会が実現すると期待されています。
【関連記事】GX(グリーントランスフォーメーション)とは?企業の取り組み事例や最新動向も
企業の気候変動緩和への取り組み
次に、企業からは世界的な大企業の取り組みと、中小企業の取り組みをそれぞれ紹介します。
トヨタ自動車の「トヨタ環境チャレンジ2050」
【トヨタの6つのチャレンジ】
トヨタ自動車は、2050年までに二酸化炭素の排出量をゼロにすることを目指し、2015年に世界に先駆けて「トヨタ環境チャレンジ2050」を発表しました。その実現に向けて、以下のような目標に向けた活動を推進しています。
①カーボンニュートラルな社会の実現
- 2050年までに、トヨタ自動車の全ての工場で、カーボンニュートラルな生産を実現
- 社会全体がカーボンニュートラルになるための新たな技術やビジネスモデルの開発
②リサイクル社会の実現
- 2050年までに、トヨタ自動車の全ての車両をリサイクル可能な素材で製造
- リサイクル社会の実現のための車両のリサイクルに必要な技術やシステムの開発
③水素社会の実現
- 水素を利用する車両や社会インフラの開発を進め、水素社会を実現
- 2020年代中に、水素燃料電池車の販売を拡大し、水素社会の普及を促進
④自然環境保全
- 温室効果ガス排出量の削減だけでなく、自然環境保全にも取り組む
- 森林保全や生物多様性の保全など、社員・地域を巻き込んだ活動を推進
⑤循環型社会への貢献
- 製品・サービスのライフサイクル全体にわたって、循環型社会へ貢献
- 製品設計やサービス提供において、廃棄物の削減や再利用を促進
【トヨタの三重宮川山林でのスギやヒノキの人工林の間伐による健全な森づくり】
株式会社艶金
株式会社艶金は、1889年に愛知県尾州で創業した染色整理業社です。現在は、レディース・スポーツ衣料に採用される高機能・高付加価値生地の染色を主力事業としながら、さまざまな製品に自社の環境への負荷を軽減する技術を活用しています。
【コンバース オールスター ノコリゾメ】
2011年には、食品をつくる過程で出る食べもの材料である「のこり」を原料とした染色、「のこり染」を採用したKURAKINシリーズを立ち上げました。このKURAKINシリーズは、農林水産省が協賛する第8回「食品産業もったいない大賞」で最優秀賞を受賞しました。
【昭和62年という早い時期に導入されたバイオマスボイラー】
また、1987年という早い時期よりバイオマスボイラーを活用し、工場内で使用している熱の95%を賄っています。繊維産業における環境負荷の現状や取り組み状況を調査し、業界や地域に対して積極的に情報発信もしています。
これら政府や企業の取り組みは、着実に気候変動への緩和に効果を発揮しています。しかし、気候変動は地球規模の問題であるため、各国政府と企業の取り組みだけでは解決できません。私たちひとりひとりも気候変動について理解を深め、できることから行動することが大切です。
次の章では具体的な気候変動への適応策を確認しましょう。*3)
具体的な気候変動適応策
気候変動に適応するためには、さまざまな分野で取り組みが必要です。代表的な例を見ていきましょう。
農業
農業分野での気候変動適応策は、水不足や異常気象などの影響を受けにくくし、食料生産を確保するために重要です。具体的には、
- 雨水の貯蔵や灌漑施設の整備
- 品種改良による耐熱性や耐乾燥性の強い作物の開発・育成
- 土地利用の見直しによる、地域の気候や土壌に合わせた作物の栽培
- 循環型農業※の推進
などの取り組みにより、予想されるリスクに備え、将来も持続可能な農業を目指しています。
【関連記事】循環型農業とは?メリット・デメリット、実践事例やSDGsとの関係も
水資源管理
気候変動が進むと、干ばつや洪水など水資源の供給量や品質に影響が出ます。そのため水資源の管理は、気候変動への適応において重要な役割を果たします。具体的には、
- 雨水の再利用や浄化施設の整備
- 水の節約による水資源の有効活用
- 洪水対策や干ばつ対策のためのダムや堤防の整備
などの取り組みにより、水資源を管理し異常気象や災害に備えます。
都市計画
気候変動が進むと、都市でもさまざまな自然災害のリスクが高まります。都市計画では、これらの自然災害に備え、被害を最小化するために、都市の構造や機能を設計して、気候変動に適応します。具体的には、
- 緑地の確保や都市緑化の推進
- 高層ビルの建設による都市のヒートアイランド現象※の緩和
- 道路や建物の色や材質の見直しによる熱環境改善
- 交通渋滞緩和や自転車利用の促進による温室効果ガスの排出削減
- 自然災害に備えた避難場所の整備
などが、都市計画による気候変動への適応策です。
【関連記事】ヒートアイランド現象とは?温暖化との違い、影響や対策も
建築・住宅
建築・住宅は、適切な断熱や通気性の確保により、気候変動による温度上昇や自然災害からの保護をするだけでなく、省エネルギー化や再生可能エネルギーの活用によって、地球温暖化の抑制にも貢献します。
- 高断熱・高気密の住宅の建設による省エネ化
- 太陽光発電や地熱利用などの再生可能エネルギーの導入
- 断熱性の高い建物など、気温や湿度の変化に対応した快適な住環境の確保
- 建物の耐震性や耐風性の向上による自然災害への対応
- 雨水の再利用
- 家庭菜園や屋上緑化など、自然との共生を促進する取り組み
などが、建築・住宅分野でできる気候変動への適応策です。
このように、気候変動への適応策は多岐にわたります。気候変動は、すでに起こり始めていて、私たちがどれだけ努力しても、すぐには止まりません。
しかし、気候変動の緩和策ばかりでなく、現在や将来の気候変動の影響に備えることはとても重要です。次の章では気候変動適応策の重要性について考えてみましょう。*4)
なぜ気候変動適応策も必要なのか
【暑さへの適応】
気候変動を抑えるためには、温室効果ガスの排出削減が最も重要です。しかし、過去の排出の影響もあり、一定の気候変動は避けられません。
近年では、異常気象が頻繁に起こり、私たちの生活に影響を与えています。そのため、気候変動に私たちが適応することも重要です。
また、農業などでは、新たな栽培地や品種の開発のきっかけになるかもしれません。気候変動のポジティブな影響も活用する視点も大切です。
気候変動適応策によるメリット
気候変動適応への取り組みによるメリットは、直接的なものと間接的なものがあります。以下に、それぞれ一般的に考えられるメリットを挙げます。
直接的なメリット
①リスク軽減
適応策を実施することで、洪水や干ばつなどの気候変動によるリスクを軽減することができます。適切な防災施設や水資源管理・整備により、被害を最小限に抑えることができます。
②安全確保
適応策により、人々の安全を確保することができます。例えば、高温による熱中症などに備えて、適切な冷房設備や熱中症対策を行い、健康被害を軽減することが重要です。
③経済効果
適応策は経済的なメリットももたらします。例えば、災害が起こる前の防災施設やインフラの整備などの備えにより、被害の削減や復旧にかかる費用を減らすことができます。
間接的なメリット
①環境保護
適応策は自然環境の保護にもつながります。例えば、森林の保全や海岸の再植生などは、気候変動による影響を軽減するだけでなく、生態系の健全性を保つ役割も果たします。
②社会的結束力
適応策の実施は社会的な結束力を高めることができます。共同体や地域のメンバーが協力して適応策を実施することで、危機に対する準備や対応能力を高めることができます。
③持続可能な開発
適応策は持続可能な開発にも貢献します。気候変動によるリスクを軽減することで、社会経済的な安定性を確保し、将来の世代に持続可能な環境を残すことができます。
気候変動適応法の制定
このような背景の中で、日本では2018年に気候変動適応法が制定されました。これは、気候変動による影響に対処するための法律です。気候変動適応法は、
- 適応の総合的推進
- 情報基盤の整備
- 地域での適応の強化
- 適応の国際展開
という4つの柱で成り立っています。国、地方公共団体、事業者、国民が一丸となって取り組むことが重要であり、特に地方公共団体の役割強化が重視されています。
また、国際協力や適応ビジネスの促進も目指しています。具体的には、
- 気象情報の充実
- 土地利用計画の見直し
- 河川や海岸の改修
- 建築物や道路の耐震化
- 農業や林業の対策
などが盛り込まれています。この法律により、気候変動に強い社会を実現するための取り組みが進められています。
【気候変動適応法】
気候変動適応への取り組みは、私たちの生活を守るために不可欠です。政府・地域の自治体・企業ばかりに任せるのではなく、私たちひとりひとりが気候変動適応への取り組みに参加することで、より適応への取り組みによるメリットも大きくなり、より良い未来を築くことができます。
次の章では、気候変動に関して重要な役割を担っている国立環境研究所について紹介します。*5)
国立環境研究所の役割
【国立環境研究所】
国立環境研究所は、1974年に「国立公害研究所」として発足し、1990年に現在の「国立環境研究所」と改称しました。環境情報メディア「環境展望台」として、環境情報の発信も行っています。
国立環境研究所は公的な研究機関として、ますます多様化・複雑化する環境問題の原因の解明と解決策を見出す研究を続けています。このような多くの課題について研究を進め、政府や私たちの、正しい意思決定のための根拠となる科学的知見を提供することが役割です。
【第5期 中長期計画の研究・業務の構成】
国立環境研究所の気候変動の緩和に関する活動
国立環境研究所は気候変動の緩和に向けて、
- 温室効果ガスの排出削減技術の研究開発
- 再生可能エネルギーの普及促進
- 省エネ技術の開発
- 森林保全
- 植林
- 環境教育
などの研究や活動を行っています。また、カーボンフットプリント※の測定・算出により、製品やサービスのライフサイクル全体での温室効果ガス排出量を評価し、低炭素な選択肢を提案しています。
【関連記事】カーボンフットプリントとは?算定方法や課題、企業の取組事例も
国立環境研究所の気候変動への適応に関する活動
気候変動への適応に向けては、
- 気候変動の影響評価
- 気候変動に適応したインフラの整備
- 農業や漁業への適応技術の開発
- 水資源の管理
- 健康への影響の評価
- 防災対策の研究
などの研究や活動を行っています。そのほか、海水温度や海洋酸性化などの調査を行い、気候変動への適応策の立案に役立てています。
気候変動は、地球規模で大きな影響を与える問題です。このような大きな問題ほど、私たちひとりひとりが正しい知識をもって取り組むことが重要です。国立環境研究所の研究や活動を参考に、気候変動対策に貢献しましょう。
次の章では、気候変動の緩和策・適応策のために私たちにできることを具体的に紹介しています。*6)
【関連記事】海洋酸性化とは?原因や生物に与える悪影響をわかりやすく解説
気候変動の緩和策・適応策に関して私たちにできること
気候変動の緩和策と適応策に分けて、それぞれ私たちにもできることを確認しましょう。
気候変動緩和策のために私たちができること
気候変動の緩和策は、主に温室効果ガス削減や森林保護などの活動です。
- 家庭での節電や省エネライフスタイルの実践
- 自転車や公共交通機関の利用促進
- 食料ロスの削減や食事内容の見直し
- プラスチックごみの削減やリサイクルの徹底
- 森林保護や自然環境保護活動への参加
など、これらの活動は少しづつの取り組みを広げることにより、大きな変化につながります。
気候変動適応策のために私たちができること
気候変動適応策は、私たちひとりひとりが関心をもって取り組むことによって、気候変動による影響下でも健康を損なわずに生活したり、いざ異常気象による災害が起こったときなどに命を守ったりする重要なものです。
- 省エネ設備や再生可能エネルギーの利用
- エネルギーの節約・水の節約を心掛ける
- 食料自給率を上げる
- 地域の特性を理解し自然災害に備える
- リサイクルやごみの分別の徹底
- 都市緑化や自然環境保護活動への参加
- 気候変動や自然災害に関する知識を身につける
などが私たちにできる気候変動適応策です。また、例えば「自然災害に備える」には、
- 避難場所を決めておく
- 防災グッズを準備する
- 地震や津波などの訓練に参加する
など一般的なことのほかに、自分の環境に合った適切な備えを考える必要があります。知識やアイデアだけ増えても、実際に行動しなければ効果がないため、ぜひチャレンジしてみてください。
気候変動への適応策は適切な方法で、優先順位の高いこと・できることから確実に取り組みましょう。
次の章では気候変動の緩和策・適応策とSDGsの関係について考えていきます。
気候変動への緩和策・適応策とSDGs
気候変動緩和策・適応策は、
- SDGs目標13「気候変動に具体的な対策を」
にとても深く関係しています。気候変動緩和策は、地球温暖化を抑制するため、温室効果ガスの排出削減を目的としています。
一方、気候変動適応策は、主にすでに起こっている気候変動への対策ですから、災害リスク管理や水資源管理など、すぐには止まらない気候変動による異常気象や災害などへの備えとして、今の時代を生きる私たちには必須の取り組みです。
これらの取り組みは、SDGsの目標13を達成するために必要なものです。また、気候変動緩和策・適応策は、SDGsの他の目標とも密接に関連しています。
例えば、再生可能エネルギーの利用は、SDGs目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」にも関連していますし、水資源管理は、SDGs目標6「安全な水とトイレを世界中に」にも関連しています。
【気候変動 緩和と適応の関係】
気候変動の緩和策と適応策は、どちらも地球の未来を守るために欠かせない重要な取り組みです。SDGsの目標へ微理解を深めるとともに、気候変動緩和策・適応策とSDGsとの関係を理解し、私たちの行動や意識を変えて行動を起こすことが、今後の持続可能な社会の実現につながります。*7)
まとめ
気候変動緩和策は、地球温暖化を抑えるために温室効果ガスの排出を減らす取り組み、一方、気候変動適応策は、既に起きている気候変動に対応するための対策です。私たちは気候変動という大きな課題に直面していますが、すでに多くの解決法を知っています。
しかし、最も重要なのは、私たちひとりひとりが正しい知識を持ち、効率的な行動や将来のためになる選択をすることです。気候変動に関しても、情報を正しく理解し、科学的なデータや専門家の意見に基づいて行動することが大切です。
また、小さな取り組みの堅実な積み重ねが大切です。あなたが気候変動について正しく理解し、エネルギーの節約や再利用、持続可能なライフスタイルの選択など、日常生活でできる小さな取り組みを続けることが重要です。
気候変動を抑制し持続可能な未来を築くために、自分の行動に意識を向け、小さな一歩から始めてみましょう。あなたの小さなアクションは、いつの日か大きな力となります。
〈参考・引用文献〉
*1)まずは気候変動について確認
環境省『COOL CHOICE 授業、セミナーで使える地球温暖化学習コンテンツ』
環境省『COOL CHOICE 地球温暖化の現状』
ipcc『The Intergovernmental Panel on Climate Change』
資源エネルギー庁『温暖化は今どうなっている?目標は達成できそう?「IPCC」の最新報告書』(2022年11月)
国土交通省『令和4年版国土交通白書 概要』
気象庁『気候変動』
文部科学省 気象庁『日本の気候変動2020』(2020年12月)
気象庁『気候変動監視レポート 2022』(2023年5月)
*2)気候変動緩和・適応とは
JCCCA『IPCC第5次評価報告書特設ページ 緩和・適応とは』
環境省『ecojin’s EYE「緩和」と「適応」』(2022年9月)
ゼロエミッションとは?推進理由や日本の取組事例、私たちにできることも
環境省『気候変動対策』
国土交通省『国土交通省における地球温暖化緩和策の取組概要』
気候変動適応情報プラットフォーム『気候変動と適応』
*3)具体的な気候変動緩和策
経済産業省『2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略』
経済産業省『グリーン成長戦略(概要)』(2021年6月)
国土交通省『カーボンニュートラルの実現に向けた国土づくり参考資料』
資源エネルギー庁『カーボンニュートラルに向けた産業政策“グリーン成長戦略”とは?』(2021年5月)
資源エネルギー庁『カーボンニュートラルに向けた産業政策“グリーン成長戦略”とは?』(2021年5月)
経済産業省『知っておきたい経済の基礎知識~GXって何?』(2023年1月)
GX(グリーントランスフォーメーション)とは?企業の取り組み事例や最新動向も
TOYOTA『6つのチャレンジ 人とクルマと自然が共生する社会を目指して走り続ける』
TOYOTA『森づくりー木を切って育てるー』
TOYOTA『トヨタ自動車、「トヨタ環境チャレンジ2050」を発表』(2015年10月)
KURAKIN『のこり染を採用したCONVERSE ALL STAR Ⓡが発売』(2023年5月)
Tsuyakin『環境への取り組み バイオマスボイラー』
環境省『中小規模事業者向けの脱炭素経営導入事例集』p.62~p.65
*4)具体的な気候変動適応策
循環型農業とは?メリット・デメリット、実践事例やSDGsとの関係も
農林水産省『農林水産省気候変動適応計画(概要)』(2021年10月)
農林水産省『令和3年地球温暖化影響調査レポート』(2022年9月)
*5)なぜ気候変動適応策も必要なのか
気候変動適応情報プラットホーム『気候変動の影響への適応ってなんだろう???』
気候変動適応情報プラットホーム『気候変動と適応』
環境省『気候変動適応の方向性について』
*6)国立環境研究所の役割
国立環境研究所『国立研究開発法人 国立環境研究所』
国立環境研究所『沿革』
カーボンフットプリントとは?算定方法や課題、企業の取組事例も
*7)気候変動への緩和策・適応策とSDGs
経済産業省『SDGs』
環境省『1 気候変動対策』p.18