#SDGsを知る

アースアワーとは?目的・効果と日本の取り組み事例・イベントを解説

イメージ画像

2023年3月25日20:30〜21:30の60分間、「東京タワー」や横浜の大観覧車「コスモクロック21」の明かりが一斉に消えました。毎年各地で行われるこの消灯は「アースアワー」と呼ばれており、世界最大の環境イベントとして知られています。部屋の明かりを消してひとときを過ごせば、個人でも参加できるイベントです。

この記事では、アースアワーの目的や参加方法、歴史、世界や日本で行われた過去のイベント、効果、SDGsとの関係について解説します。イベントの趣旨や内容を知り、次回のアースアワーに参加してみませんか?

アースアワーとは

アースアワーとは、同じ日・同じ時刻に明かりを消して、地球温暖化防止と生物多様性保全への意思を表明する世界最大の環境イベントです。世界100カ国以上で活動している環境保護団体「世界自然保護基金(WWF)」が2007年から毎年開催し、現在では190以上の国と地域が参加しています。

アースアワーの日の消灯は、日付変更線に近い南太平洋諸国から始まり、地球をぐるりと1周して「消灯リレー」をつないでいきます。2023年には、コロッセオ(イタリア)、エッフェル塔(フランス)をはじめとした世界中のランドマークのほか、日本では東京タワーや横浜ベイブリッジなどの施設・企業が参加しました。

いつ行われる?

アースアワーは、毎年3月の最終土曜日、現地時間20:30〜21:30の60分間行われます。3月下旬は、北半球と南半球がそれぞれ春分と秋分の頃であり、日没の時刻がほぼ同じです。このため、現地時間の同じ時刻に明かりを消すと、地球全体を見たときに「消灯リレー」がつながれていく視覚的な効果があります。※[i]

※2024年のアースアワーは3月23日土曜日20:30〜21:30です。

アースアワーの目的

アースアワーの目的は先述の通り、緊急の課題である地球温暖化防止と生物多様性保全への意思を表明することです。

地球の気温は、二酸化炭素などの温室効果ガスの影響により上がり続けています。IPCC(国連気候変動に関する政府パネル)は、もし気候政策を導入せずに化石燃料に依存した場合、世界の平均気温は2100年までに最大で5.7℃上昇するという予想を発表しました。※[ii]地球温暖化は、海面水位の上昇だけでなく、水不足やインフラ機能の停止など、社会にも深刻な影響を及ぼします。

また生物は、開発や乱獲、地球温暖化による環境の変化により、減少・絶滅の危機にひんしています。2022年12月に開催されたCOP15では、「2030年までに生物多様性の損失を食い止め、プラスに回復の軌道に乗せる」という目標が策定されました。この目標は、自然を再興するという意味の「ネイチャーポジティブ」と呼ばれています。

アースアワーは、地球温暖化防止やネイチャーポジティブを達成するために個人や企業、コミュニティー、町や都市、国全体が参加して、「地球を守る」という意識を高める世界的な運動として位置づけられています。※[iii]

参加方法は?

アースアワーに参加するためには、WWFの東京事務所である「公益財団法人世界自然保護基金ジャパン」(WWFジャパン)のサイトから申し込みをします。企業や施設、地方自治体やコミュニティー、個人でも申し込みが可能です。部屋の明かりを消して星を眺める、早めに寝るなど、消灯して過ごします。

アースアワー2023では、参加者が地図上に表示され、全国の参加状況を知ることができました。地図上のポイントをクリックすると、参加者名などが分かるようになっています。

■アースアワー2023参加リスト

匿名で申し込むことができるので、個人情報を知られることはありません。また、アースアワーのポスターやバナーをダウンロードできるので、自治体や企業などは、自サイトで取り組みを紹介するために利用することも可能です。

※2023年9月12日現在、「アースアワー2024」の申し込み受付は開始されていません。

アースアワーの歴史

アースアワーは、環境保護団体「世界自然保護基金(WWF)オーストラリア」の地球温暖化防止キャンペーンの一環として2007年にスタートしました。もともとは、WWFオーストラリアが地球温暖化対策を模索していた2004年、広告会社であるレオバーネット社と出会い、2005年に「巨大なスイッチオフ(The Big Flick.)」というプロジェクトを計画したことが始まりです。2006年には、フェアファクス(Fairfax)社とシドニー市長がイベントのサポートに加わりました。2007年のアースアワーには、220万人のシドニー市民と2,100の企業が参加して大きな話題になりました。

■2007年以降の日程と主な内容と出来事※[iv]

2007年3月31日220万人のシドニー市民と2,100の企業が参加。IPCCは、気温上昇の危険性と早急な解決策の必要性を発表
2008年3月29日35カ国、371以上の都市・町が開催。5,000万人以上が参加
2009年3月28日88カ国、4,000以上の都市・町の数億人が参加
2010年3月27日128カ国が参加。コペンハーゲンでCOP15が開催されたが、地球温暖化防止の枠組み合意はなされなかった
2011年3月26日135カ国、5,000以上の都市・町が参加。日本国内では、3月11日の東日本大震災を受け、被災地支援のための節電・省エネを広く呼びかけた。世界各国でも、イベントを通して祈りがささげられた
2012年3月31日150カ国以上、6,500を超える都市・町が参加。日本では前年に続き、被災地への祈りをささげるイベントとして実施された
2013年3月23日150以上の国と地域から、7,000以上の都市・町が参加。ロシアではクレムリンや赤の広場が消灯
2014年3月29日過去最多の162の国と地域から、7,000以上の都市・町が参加。「スパイダーマン」が親善大使に。横浜市が初めて参加を表明
2015年3月28日過去最大の172の国と地域、7,200以上の都市・町が参加
2016年3月19日開催から10年。178の国と地域が参加
2017年3月25日178の国と地域、日本では890の施設・企業・団体が参加
2018年3月24日188カ国、約17,900のモニュメントが参加。東京スカイツリーが初めて参加
2019年3月30日188の国と地域、日本では過去最大の1,443施設が参加
2020年3月28日190の国と地域、日本では1,755施設が参加。新型コロナウイルスの影響により、規模を縮小して実施
2021年3月27日192の国と地域、日本では2,259の施設が参加。コロナ禍によりオンラインを主体に実施
2022年3月26日192の国と地域、日本では7,836の施設が参加
2023 年3月25日190以上の国と地域が参加

2007年から始まったアースアワーは、2024年に開催18年を迎えます。それでは、アースアワーにはどのようなイベントが行われているのかを次に詳しく見ていきましょう。

世界で開催されたアースアワーイベント

アースアワーは現在、190以上の国と地域が参加する世界最大の環境イベントです。その中でも、中国とフランス、インドネシア、ケニアの例を簡単に紹介します。

中国

中国では、北京や上海、深セン、成都、西安、昆山などの各都市で2023年アースアワーのイベントが開催されました。昆山では、政府や組織、大学、企業、メディアなどの代表が集まり、「人と人が共存する持続可能な都市の構築」をテーマにフォーラムが行われたほか、消灯式ではステージパフォーマンスが披露されています。

また、WWF北京の副所長は、「自然をより良い状態にすること」が環境問題の解決策だと述べ、国立公園建設の推進や、二酸化炭素の削減、生物多様性の保全、気候変動の緩和を提唱しました。

明かりが消されたのは、北京のフェニックスセンターや、ショッピングセンターの太古里三里屯、上海江橋万達広場、西安の鐘楼や城壁など、27都市90を超えるランドマークです。このイベントにより、多くの人に自然と環境保護に対する意識を変えるよう訴えています。※[v]

フランス

フランスでは、記念碑や美術館、スタジアムなどの数千の施設がアースアワー2023に参加しました。パリでは、エッフェル塔、ルーブル美術館、ノートルダム寺院、コンコルド広場などが消灯したのをはじめ、ボルドーやグルノーブル、ストラスブールなどの各地域でも行われました。その様子はライブ配信され、食や生物多様性、移動手段、エネルギーなどの環境問題についても話し合われました。また、エッフェル塔に隣接するシャン・ド・マルス公園では、消灯前にWWFフランスの自然保護ディレクターによるインタビューも行われています。

このイベントを通じて、個人の日頃から地球を守るための行動を推進しています。※[vi]

その他の国々

・インドネシアのホテルでは、キャンドルイベントが行われました。(2023年)

・ケニアでは、野生動物と人との衝突問題について考えるイベントが開催されたほか、活動への支援が呼びかけられました。(2023年)

世界で開催されるアースアワーのイベントは、動画やSNSなどでの発信もされており、その活動を身近に感じることができます。

日本でもアースアワーのイベントは開催される?

アースアワーのイベントは、日本でも開催されています。2023年には、東京や横浜、広島にて関連イベントが行われたほか、外食大手や小売、ホテルなどでも、設備や施設の一部が消灯されました。過去にアースアワーに参加した施設や地方自治体、企業の一部を次に紹介しましょう。

東京スカイツリータウン(2018-2022年)

アースアワー2021開催時の様子(引用元:「EARTH HOUR 2021(アースアワー)」開催報告|WWFジャパン)

「東京スカイツリー」は2018年から2022年の間、アースアワーに参加しています。2019年には東京スカイツリーのある街「東京スカイツリータウン」に特設ステージが設けられ、トークイベントやアコースティックライブなどが開催されました。「消灯セレモニー」では、カウントダウンやペンライトアートなどが行われています。

また、会場では「地球温暖化を防ぐ」「持続可能な社会を創る」「野生生物を守る」「森や海を守る」をテーマにしたブースを設置し、楽しく学べる展示や動画、クイズなどが用意されました。日々の生活の中で、環境保全に取り組むためのヒントが得られるようになっています。※[vii]

横浜市(2014-2023年)

「横浜市」は、2014年よりアースアワーに参加しています。市内の施設や市民・企業に消灯を呼びかけ、みなとみらい21地区を中心に実施されました。また、大型複合施設では「EARTH HOUR」(アースアワー)のパネル展示が開催されています。

横浜市は2050年までに脱炭素化を目指す「Zero Carbon Yokohama」宣言の実現に向け、2023年のアースアワーを通じて温暖化防止と生物多様性保全のメッセージを発信しています。さらには、市民に対しても「美しい地球の未来を想い」「電気を消して過ごす60分」という動画を配信し、可能な範囲での消灯を呼びかけました。※[viii]

モスバーガー(2020年・2023年)

LEDキャンドルをともした店内(2023年)(引用元:モスバーガー公式サイト|【東京・神奈川】「EARTH HOUR 2023」に参加しました | 地球とともに | モスの森

ハンバーガーチェーン店「モスバーガー」は2023年のアースアワーに、10社20ブランドの外食チェーンと合同で参加しています。東京都・神奈川県の254店舗(一部の店舗を除く)では、夕方から夜にかけての1時間、ライトの消灯や消費電力の少ないLEDキャンドルの使用をして営業をしました。

また、地球環境について考えるきっかけとして、アースアワーをポスター掲示によって呼びかけました。これからも、外食各社との協力により、持続可能な社会の実現に向けた取り組みを実施していく予定です。合同で参加した他のブランドには、びっくりドンキーやタリーズコーヒー、ロイヤルホストなどがあります。※[ix]

アースアワーの効果と貢献内容

アースアワーは、消灯や環境に関連するイベントなどを通じて個人や企業、政府などが環境問題について話し合いを行い、行動につなげることが理想です。この結果、運動を主催するWWFは、これまでの成果として次の事項を挙げています。

  • WWFウガンダが、世界で初めてアースアワーの森をつくった
  • アルゼンチンでは、2013年のアースアワーにより、国内340万ヘクタールの海洋保護区に関する上院法案の可決に関わった
  • マダガスカルでは、数千台のまきストーブが家庭に配付された
  • インドでは、電気のない3つの村に太陽光発電による照明が設置された
  • タイと台湾では、学校向けの教育プログラムが開始された
  • アメリカでは、ガールズスカウトが数万個のLEDライトを設置した※[x]

日本においても、著名人をゲストに招いたトークやライブイベント、SNSなどによる発信を通じて、人々の環境への意識を高めることに貢献しています。

アースアワーとSDGs

最後に、アースアワーとSDGsの関係について確認していきます。アースアワーは、目標13「気候変動に具体的な対策を」、目標15「陸の豊かさも守ろう」に関係があります。

目標13「気候変動に具体的な対策を」

目標13「気候変動に具体的な対策を」は、気候変動を緩和するための対策や、影響に関する教育・啓発などを行うことを目標に掲げています。

アースアワーは、個人や企業、コミュニティー、町や都市などが参加して、地球温暖化防止への意思を表明し、「地球を守る」という意識を高める世界的な運動です。明かりを消すことや、その他のさまざまなイベントを通じて人々が気候変動の知識を深め、どのように行動したら良いのかを考えるきっかけになります

目標15「陸の豊かさも守ろう」

目標15「陸の豊かさも守ろう」は、陸の生態系を保護・回復することや、生物生態系の保全、絶滅危惧種の保護を掲げています。

アースアワーは、生物多様性の保全も目的の一つです。WWFジャパンは、特集サイトを作成して、自然を再興する「ネイチャーポジティブ」を広く知ってもらう取り組みを行っています。生物の生態系の現状を伝え、一人一人が理解して対処することを呼びかけています。

まとめ

アースアワーは、同じ日・同じ時刻に明かりを消して、地球温暖化防止と生物多様性保全への意思を表明する世界最大の環境イベントです。毎年3月の最終土曜日、現地時間20:30〜21:30の60分間行われます。2007年から始まったこのイベントは、2024年に18年目を迎え、参加している国と地域は190以上にのぼります。日本でも地方自治体や企業、過去には東京スカイツリータウンなどの多数の組織や施設が参加してきました。もちろん、コミュニティーや個人でも参加することが可能です。

アースアワーは、気候変動対策や生態系保全を目標にするSDGsにも貢献しています。一人一人が地球を守る意思を表明し、それを多くの人と共有できるのがアースアワーです。年に1回のアースアワーに参加して、環境問題への認識をあらためて確認してみませんか?

参考
※[i] WWF|Join One Of The World’s Largest Movements for Nature | Earth Hour 2023  “FAQs | Earth Hour
※[ii] 環境省| 地球環境・国際環境協力 | IPCC「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第6次評価報告書(AR6)サイクル
※[iii] WWFジャパン「EARTH HOUR(アースアワー) 2023 Switch off.
※[iv] EARTH HOURの軌跡|WWFジャパン
※[v] WWF China|2023地球一小时全国多地举办,为地球献出一小时!点亮希望,推动改变
※[vi] Earth Hour 2023 | WWF France
※[vii] WWFジャパン「EARTH HOUR 2019 @ TOKYO SKYTREE TOWN®|イベント情報
※[viii] 横浜市「EARTH HOUR 2023 in 横浜
※[ix] モスバーガー公式サイト|【東京・神奈川】「EARTH HOUR 2023」に参加しました | 地球とともに | モスの森
※[x] WWF|Join One Of The World’s Largest Movements for Nature | Earth Hour 2023  “FAQs | Earth Hour