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FGM(女性性器切除)とは?なぜ行われるのか・現状と後遺症などの悪影響

FGM(女性性器切除)とは?なぜ行われるのかやSDGsとの関わり個人にできることも紹介

FGM(女性性器切除)の問題をご存じですか?はじめて聞いたという方もいれば、名前は聞いたことがあっても詳細は知らないという方も多いと思います。

今回の内容は、体を傷つける行為の描写があるため、少しショッキングかもしれません。なぜこのような残虐なことが行われているのか、筆者も理解に苦しみました。しかし、実際に今も世界で起きている問題であり、国際社会が協力して解決していかなければいけないものです。

日本にいる私たちもFGMという問題に目を背けず、何が起きているのかを知り、できることをしていきましょう。

FGM(女性性器切除)とは

女性性器切除(Female Genital Mutilation / Cutting、以下FGMまたはFGM/C)とは、アフリカや中東、アジアの一部の国で行われている、女性の外部生殖器の部分的または全体的な切除をする慣習です。古代エジプト時代にはすでに始まっていたとも言われています。

現在でも極めて強い社会的な規範に支えられており、幼児期から15歳頃までの少女に行うことが多いです。
大人の女性になるための通過儀礼とされ、結婚の条件になっている場合もあります。しかし、FGMには医学的な根拠は一切なく、女性への肉体的および精神的な損害が大きく、利益はないと言われています。

ユニセフ(国際連合児童基金)がFGMについて紹介する動画をご覧ください。かつてFGMの施術を行っていた女性が体験を語っており、現地の様子が伝わってくる映像です。

FGMの4つのパターン

世界保健機関(WHO)は、FGMを以下4つの大きなパターンに分類しました。

  1. 陰核の一部または全部の除去
  2. 陰核と小陰唇の一部または全部の除去
  3. 大陰唇、小陰唇の切除した上で、開口部を縫合して膣口を狭小化(尿と月経血を逃がすための小さな開口部が残されています)
  4. その他の女性性器への損傷全般

では、FGMを行うと女性の体にはどのような影響があるのでしょうか?

FGMが行われるとどうなる?後遺症は?

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FGMは不衛生な環境で、麻酔や鎮静剤もなしに行われることが多く見られます。施術行為は、医療的な訓練を受けていない地域の伝統的な助産師、薬草師、当人の親戚などの女性によって行われます。

FGMは女性の肉体に大きな負担となり、長期間にわたって悪影響をおよぼします。具体的にどのような症状があるか、見ていきましょう。

激しい痛みや高熱

FGMを行うと大量出血や高熱が出る危険性があります。施術中の激痛はもちろん回復まで長期間痛みが続き、排尿痛や性交時の激痛など、その影響は長期におよびます。

感染症

破傷風やHIVなど各種感染症のリスクが増えます。

生理不順

FGMは生理不順を含む月経困難症など、生理の問題も引き起こします。また、生理の度に激痛がある場合もあります。

精神的なダメージ

FGMを行う際は、何人もの大人に手足を押さえつけられて施術されるため、女性は非常に大きな恐怖を味わいます。FGMは体への痛みだけではなく、精神的にも大きな負担となり、うつやPTSD(心的外傷後ストレス障害)の要因になり長期的に苦しむ女性も多くいるのです。

最悪死に至るケースも

手術中のショックで意識不明になったり、最悪死に至ることもあります。また、FGMが起因した難産による死亡も発生しています。

このように、FGMは女性の心身に甚大な悪影響をおよぼします。施術直後だけではなく、長期的な後遺症に悩まされる女性も多くいるのが現状です。

FGMの世界の現状

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日本では全く聞き慣れないFGMですが、世界での状況はどうなっているのでしょうか。

世界30カ国で2億人以上が経験している

FGMは、現在30か国で2億人以上の女性が経験していると言われています。FGMを受けた女性の半数は、エジプト、エチオピア、インドネシアの3か国に集中しているのです。

また、2億人のうち、15歳未満の少女は4,400万人で、その割合はガンビア56%、モーリタニア54%、インドネシア49%となっています。FGMは5歳になる前に行われることも多く、大人になってから生理のトラブルなどのきっかけで、自分がFGMを受けていたことを知る女性もいます。

FGMは女性の権利侵害であり子どもへの虐待であると、国際社会では強い非難の声が上がっています。

FGM経験者はアフリカ地域に集中している

以下は、世界でFGMを受けた15~49歳の女性の割合を示す世界地図です。

世界でFGMを受けた15~49歳の女性の割合を示す世界地図
引用元:unicef

主にアフリカに集中しており、一部中東やアジアの国々でも見られます。15~49歳までのFGMを受けた女性の比率が高い国は、ソマリア98%、ギニア97%、ジプチ93%です。この3か国では90%以上の女性がFGMを受けており、その比率はかなり高いものとなっています。

確実に女性の体に悪影響をおよぼすFGMですが、このように世界ではまだ多くの人々が古き慣習を続けているのです。では、なぜ医学的根拠がないものを、人々はいまだに続けているのでしょうか?次はその理由を見ていきましょう。

なぜFGMが行われる?

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FGMを行っている国や地域では「女性は結婚するまで処女を保ち、結婚して家庭に入るもの」という観念が深く根づいています。男性の妻となる資格を得るためにはFGMを受けなければいけないという、女性を男性の従属物として考えるような男性優位の思想も見え隠れしているのです。

FGMを行うことで、女性の性的衝動を抑制し、女性のセクシュアリティを管理するという目的もあります。女性が性行為に快楽を感じることを悪とし、FGMをすることで女性が結婚するまで純潔や処女を保てるという考えのもとに行われてるのです。

法律で禁止されているが慣習が優先されることも

現在、アフリカのFGMが行われている28か国中22か国では、法律により禁止されています。しかし、法律を作るだけでは、長い歴史の中で人々の間に根づいた意識を変えることができていないのが現状です。

FGMが法律だけでは根絶できない理由には、以下のようなものがあります。

  • 根深い迷信と誤解によりFGMが必要だと考えている人がまだ多くいる
  • 法の執行が不十分で、施術が行われても通報ルートがなく、取り締まりも行われない
  • 法律で禁止されていること自体を知らない場合もある
  • 伝統的な慣習について意見することすらタブーとなっている地域もある

FGMが伝統として深く根づいている地域では、一方的な法律による規制だけではFGMを根絶することができないのです。FGMについて人々が話し合う場を設けたり、正しい知識を教育する機会が必要です。

FGMをしなければ社会的排除の存在に

FGMを受けなければ結婚できない、一人前の大人として認められないなどの社会認識があります。そのためFGMを受けないと差別されたり、非難されたりしてコミュニティの中で排除され、生きていけなくなってしまうのです。

さらに、女性が結婚を通して男性に経済的に依存することで生計を立てていくことが常識となっている地域では、FGMは女性が生きていくための手段にもなります。FGMを受けなければ女性は経済的にも生活できないのです。

FGMは減少しているが根絶できてはいない

以下はFGMを行っている30か国で、FGMを受けた15~19歳の女性の割合(2020年)を示すグラフです。

FGMを行っている30か国で、FGMを受けた15~19歳の女性の割合(2020年)を示すグラフ
引用元:unicef

過去30年間で、49%から34%に減少しています。以下のように、大きな成果をあげている国もあります。

  • ブルキナファソ 1980年89%→2020年58% 減少率31%
  • ケニア 1984年41%→2014年11% 減少率30%
  • リベリア 1983年72%→2013年31% 減少率41%

一方、FGMの実施率が世界一高いとされているソマリアでは、いまだに合法で、大きな成果もあげられていません。その理由の一つに、人々の意識が変わっていないことがあるでしょう。

以下は、FGMをやめるべきだと考える15~49歳までの少女と女性の割合です。

FGMをやめるべきだと考える15~49歳までの少女と女性の割合
引用元:unicef

FGMをやめるべきと考えている人が、タンザニアやトーゴ、ガーナでは90%以上と高い割合であるのに対して、マリやソマリアは20%以下に留まっています。この調査から人々の意識が、国によって大きく異なることがわかります。

ユニセフは「現在の傾向が続けば、2030年までに、さらに1億5,000万人の15〜19歳の女性がFGMを受けることになる見込み」と危機感をつのらせています。FGMを根絶するためには、その国の法律だけに頼るのではなく、人々の意識を根本的に変えるような草の根活動が重要になるでしょう。

FGMに対する国際的な取り組み

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FGMをやめる取り組みが国によってなかなか成果を出せていないことからわかるように、根絶するのは簡単ではありません。FGMは長く続く伝統的慣習であり、人々の意識を変えるのは一筋縄ではいかないからです。

困難な問題であるFGMを解決するためにも、その国だけではなく国際社会からのアプローチも重要になります。そこで、FGMに関する国際的な取り組みを2つ紹介します。

2月6日は国際女性性器切除(FGM/C)根絶の日

2月6日は、国連が制定した「女性性器切除(FGM/C)の根絶のための国際デー」です。

ユニセフ、国連人口基金(UNFPA)およびUN Womenそれぞれの事務局長は、「2030年までにFGMを根絶すること」という共同声明を発表しました。国連も同様の目標を掲げており、国際社会全体での啓蒙活動が行われています。

ユニセフは国連人口基金と協力し、FGM根絶に向けた世界的プログラムを推進しています。各国政府、コミュニティ、宗教指導者、その他多数のパートナーなど、さまざまな関係者と協力してこの問題に取り組んでいるのです。

1万5,000以上のコミュニティでFGM廃絶の公式宣言

2008年以降、20か国の1万5,000以上のコミュニティや区域で、FGMを廃止するという公式宣言が出されました。なかには、かつてFGMの施術を行っていた女性が根絶に向けた啓蒙活動に参加していることもあり、人々の意識の変化がうかがえます。今後も、このような活動が重要となるでしょう。

私たちにできること~寄付~

日本では馴染みのないFGMの問題。ここまでお読みいただいて、衝撃を受けた方も多いと思います。また、自分に何かできることはないかと考える方もいらっしゃるのではないでしょうか。

FGMが発生している場所から、遠く離れた日本にいる私たちにもできることが「寄付」です。日本でも活動する国際的な団体が、広く寄付を募集しています。特に、女性や子どもの権利のために活動している団体を2つ紹介します。

国際NGOプラン・インターナショナル

プラン・インターナショナルは、子どもの権利を推進し、貧困や差別のない社会を実現するために世界70か国以上で活動する国際NGOで、80年以上の歴史を持ちます。特に女性への支援に力を入れており、「女性性器切除から女の子を守るプロジェクト(エチオピア・スーダン)」を行っています。

このプロジェクトでは、

  • 正しい知識を身につける教育
  • ラジオや新聞などを使った「FGM根絶キャンペーン」

など、精力的に活動しています。

プラン・インターナショナルの「ガールズ・プロジェクト」では、少女たちを、差別や偏見、有害な慣習から守るための寄付を呼びかけています。月1,000円~寄付できますので、ぜひ公式サイトをチェックしてみてください。

公益財団法人 日本ユニセフ協会

ユニセフは子どもの権利を守るために、約190か国で活動している国際機関です。子どもの保護や教育、ジェンダーの平等など幅広い支援活動を行っています。日本ユニセフ協会は、ユニセフ本部との協力協定に基づく日本におけるユニセフ支援の公式機関です。

ユニセフでは、

  • マンスリーサポート・プログラム(毎月定額) 月1,000円~
  • ユニセフ募金(1回の募金)

など、さまざまな寄付のプログラムを用意しています。

FGM(女性性器切除)とSDGsとの関わり

圧縮済みSDGs画像

FGMはSDGsとも大きく関わっています。SDGsのどの目標と関わっているか、詳しく見ていきましょう。

SDGsとは2015年に開催された国連総会にて、全加盟国が賛同した国際目標です。2030年までに世界が抱える環境・社会・経済の課題解決と持続可能でよりよい社会を目指しています。地球上の「誰一人取り残さない」ことを誓い、17の目標と169のターゲットが設定されています。

SDGsは国や企業だけが行うものではなく、一人一人が取り組むことも重要とされているのです。

SDGs目標3「すべての人に健康と福祉を」

SDGs目標3では、妊産婦の死亡率を削減すること、性と生殖に関する健康サービスの向上を掲げています。FGMを根絶することは、これらの目標達成に貢献します。

SDGs目標5「ジェンダー平等を実現しよう」

SDGs目標5ではFGMは女性の心身を傷つけ、健康に生きる権利を奪う行為で、明確なジェンダー不平等です。女性が暴力や差別を受けることのない社会の実現のためにも、FGMの根絶が望まれます。

SDGs目標10「人や国の不平等をなくそう」

SDGs目標10では、差別的なならわしをなくし、適切な法律や政策をすすめることを目標にしています。いまだFGMを法的に禁止していない国もあるため、各国が早急に法律を整え、人々の差別意識をなくすよう促すことが求められます。

SDGs目標16「平和と公正をすべての人に」

SDGs目標16では、子どもに対する虐待や暴力を撲滅することを掲げています。FGMを受けるのは、多くが成人前の少女たちです。FGMを撲滅することが目標16の達成に貢献します。

このように、FGMに取り組むことでSDGsの4つの目標達成に貢献できるのです。

まとめ

FGMは、女性や子どもの健康に生きる権利を奪う行為です。詳細な内容を知って、ショックを受けた方もいるのではないでしょうか。

しかし、世界には「伝統だから」「歴史があるから」という理由だけで、今も悪習が残っているのが現実です。このような慣習がなくならない理由に、人々の知識がないこと、教育を受けていないこと、ジェンダーの誤った認識があることが挙げられます。その人個人ではなく、彼らの生きる社会に長く根づいている、これらの慣習や考え方を変えるのは簡単ではありません。

しかし、諦めず地道に人々に語り続けることが重要です。そのためにも、日本にいる私たちは寄付という方法でFGM根絶のための活動を支援しましょう。SDGsの掲げる「誰一人取り残さない」社会を実現するためにも、自分にできることを考え、一緒に行動していきましょう。

参考文献
unicef | ユニセフの主な活動分野|子どもの保護
プラン・インターナショナル | [特集]女性性器切除(FGM)を知っていますか
unicef | 2月6日『国際女性性器切除(FGM/C)根絶の日』世界に広がる悪しき慣習
unicef | 女性性器切除(FGM)
Global News View (GNV) | 女性性器切除(FGM)の激減:その背景には?
28 Too Many | 法とFGM
unicef | 2月6日は『国際女性性器切除(FGM)根絶の日』2030年までに根絶するための行動を
unicef | Female Genital Mutilation/ Cutting: A Global Concern, 2016

この記事の監修者
阪口 竜也 監修者:フロムファーイースト株式会社 代表取締役 / 一般社団法人beyond SDGs japan代表理事
ナチュラルコスメブランド「みんなでみらいを」を運営。2009年 Entrepreneur of the year 2009のセミファイナリスト受賞。2014年よりカンボジアで持続型の植林「森の叡智プロジェクト」を開始。2015年パリ開催のCOP21で日本政府が森の叡智プロジェクトを発表。2017年には、日本ではじめて開催された『第一回SDGsビジネスアワード』で大賞を受賞した。著書に、「世界は自分一人から変えられる」(2017年 大和書房)