#SDGsを知る

GDW(国内総充実)とは?GDPとの違いや世界・日本の最新動向も

イメージ画像

GDWという言葉を聞いたことはありますか?近年、注目を集めているこの指標は、私たちが目指すべき社会の姿を、新たな視点から照らし出すものです。

経済成長至上主義が揺らぐ現代、GDPでは測れない国民の「幸福度」の数値化を試みたのがGDWです。日本でも、政府がGDWの重要性を指摘し、国の豊かさを表す指標として導入に向けた検討が進められています。

GDW(国内総充実)とGDP(国内総生産)の違い、世界や日本のGDWに関する動向を確認しておきましょう。

GDW(国内総充実)とは?

GDW「Gross Domestic Well-being」の略で、日本語では「国内総充実」と訳されます。これは、従来の経済指標であるGDP(国内総生産)とは異なり、国民一人ひとりの「Well-being(幸福度)」を重視した指標です。

GDWは充実度の指標

GDWを測る指標は、まだ研究開発の途中と言えます。しかし、現状では、

  1. 家計と資産
  2. 雇用と賃金
  3. 住宅
  4. 仕事と生活(ワークバランス)
  5. 健康状態
  6. あなた自身の教育水準・教育環境
  7. 交友関係やコミュニティなど社会とのつながり
  8. 生活を取り巻く空気や水などの自然環境
  9. 身の回りの安全
  10. 子育てのしやすさ
  11. 介護のしやすさ・されやすさ

などが個人的な側面の指標と考えられています。また、

  • 経済的な繁栄:GDPや国民の所得水準、雇用率などの経済指標
  • 社会的な側面:教育水準、健康状態、社会的つながりや安全など、人々の生活や社会的側面を測る指標
  • 環境の健全性:自然資源の持続可能な利用、環境保護、気候変動への対応など、環境の健全性を評価する指標

などの社会的な要素も、指標となります。

GDWは、これらの要素を総合的に考慮して、国の繁栄や幸福度を測るための総合的な指標として位置付けられています。

【満足度・生活の質に関する指標群】

Well-beingとは

Well-being※とは、単に物質的な豊かさだけでなく、個人の心理的・身体的な健康、社会的つながり、環境の質など、総合的な幸福感を表す概念です。これまでの古い概念では、幸福は単に経済的な成功や物質的な豊かさによって定義されていました。

※Well-beingは他にもwellbeingと表記されることもあります。(意味は同じです)

【幸福度の指標】

Wellは、

  • 良く
  • 十分に
  • しっかりと
  • 元気・健康な

などの意味があります。また、beingは、

  • 存在
  • 生存
  • 人生
  • 生き物

を意味し、「human being」と書けば「人間」となります。このことから、Well-beingとは、人々が充実した幸せな日々を送ることとも捉えることができます。

Well-beingと従来の価値観の違い

従来の価値観では、経済的な成功や豊かさを追求することが幸福の鍵とされてきました。GDPが重視されていたのも、この価値観が要因と言えるでしょう。

しかし、この考え方は、物質的な豊かさだけが幸福につながるという偏った視点からのものでした。そのため、すべての人が幸せになれなかったという面があり、幸福を物質的な側面だけで測ることに限界があると考えられるようになってきたのです。

新しい価値観であるWell-beingの視点では、個人の幸福は経済的な成功だけでなく、心の充実や社会的なつながり、環境の健全性など、幅広い要素によって影響を受けると考えられています。このような総合的な視点から、「個々の幸福」や「社会全体の幸福」を追求することが重要とされています。

GDWは、従来の経済指標にとらわれず、総合的な豊かさを追求する新たな視点を提供します。金銭的・物質的豊かさよりも精神的・環境的な豊かさを求める人が増えてきた現状から考えても、今後ますますGDWは社会を考える上で重要な指標となるでしょう。*1)

【関連記事】ウェルビーイングの意味を簡単に解説!5つの要素や福祉や教育の事例も紹介

GDWとGDPの違い

GDW(国内総充実)GDP(国内総生産)は似た言葉でありながら、異なる概念を表します。GDPは経済活動の規模を示す指標であり、一般的に国の物質的な豊かさや成長を評価する際に重要な要素です。

一方、GDWは経済的な豊かさだけでなく、社会的・環境的な側面も考慮した指標であり、国民の幸福や環境の健全性など、より包括的な豊かさを測ることができます。

GDPとは

GDPとは、Gross Domestic Productの略称で、国内で生産されたすべての最終財とサービスの市場価値を示す指標です。つまり、国内で作られた商品や提供されたサービスの総額(=付加価値※)の量を表しています。GDPは国の経済活動の大きさや成長率を評価するために使われる重要な数字です。

付加価値

企業が原材料や労働力を使って生産した商品やサービスが、市場での価値を上げる過程で生み出された、原材料費や設備費などの生産コストを除いた利益の部分。生産過程での効率化や技術革新などによって生み出され、企業の収益性や経済成長を分析したり、国の経済活動の活力や成長を示すにあたって重要な要素。

GDPは第二次世界大戦後にアメリカで考案されたもので、当時は戦争の復興を目指して経済成長を促進することが重要視されていました。要するに、GDPは国の経済の大きさを数値で表すものであり、経済がどれくらい活発に動いているかを示す重要な指標なのです。

当時は、世界的に戦争復興のために経済成長を促進することが最も重要だと考えられていました。

【関連記事】GDPをわかりやすく解説!日本のランキング推移や一人あたりはどれくらい?高いとどうなるの?

GDWとGDPの違い

対してGDWはGDPとは異なり、経済活動だけでなく、社会的な側面や環境の健全性など、幅広い要素を考慮した指標です。GDWは国民の幸福や環境の健全性など、より包括的な豊かさを測ることができます。このような総合的な視点から、GDWはGDPだけでは捉えきれない社会的な豊かさを評価するための重要な指標と言えます。

【GDWとGDPの違い】

GDWGDP
正式名称Gross Domestic Well-beingGross Domestic Product
日本語では国内総充実・国内総幸福度国内総生産
対象国民の幸福度、生活水準、環境負荷などを総合的に評価国内で行われたすべての経済活動
算出方法国民の健康、教育、環境、安全などの指標を組み合わせて算出最終財・サービスの市場価値を合計
目的国民の幸福度や生活水準向上のための政策立案経済規模や成長率を把握し、経済政策立案に役立てる
指標としての役割国民の幸福度や生活水準の向上、環境負荷の低減などを分析経済活動の活発さ、生産性の向上などを分析
課題主観的な指標であり、国によって算出方法が異なる無償労働や環境負荷などを完全に反映していない

GDWの向上とGDPの関係

GDWの向上は、GDPの持続的成長にもつながることが研究で示されています。心身ともに健康な人々は、より生産性が高く、病気による医療費の負担も軽減されると考えることもできます。

良い教育を受けた人々は、より高い収入を得ることができ、社会の発展にも貢献できます。そして良好な環境は、人々の健康や幸福度を高め、観光産業などの経済活動にもプラスの影響を与えます。

つまり、GDWの向上は、企業にとっても社会にとってもメリットがあるのです。*2)

GDWが注目される背景

GDPは、国の経済規模を測る指標として広く用いられてきました。しかし、経済成長だけが人々の幸福を保証するものではないという考え方が広まり、近年では、GDPだけでは測れない真の豊かさを追求する動きが活発化しています。

GDWは、近年になってようやく注目され始めた新しい指標です。2007年には、ブータン国王が「国民総幸福量」※という概念を提唱し、世界中に大きな影響を与えました。

国民総幸福量(Gross National Happiness=GNH)

国の繁栄をGDPだけでなく国民の幸福や心の豊かさも含めて測る指標。ブータンは国民総幸福量を重視し、政策決定にも反映させることで、経済だけでなく国民全体の幸福や繁栄を追求する新しいアプローチを示している。

従来の経済観と価値観が生み出した負のスパイラル

従来の経済観は、経済成長こそがすべてという考え方でした。企業は利益を追求し、消費者は物質的な豊かさを求めてきました。しかし、この価値観は、以下のような問題を引き起こしました。

  • 環境破壊:大量生産・大量消費社会は、資源の枯渇や環境汚染を引き起こし、地球環境を悪化させました。
  • 格差拡大:経済成長の恩恵が一部の人々に集中し、貧富の差が拡大しました。
  • 心身の健康問題:長時間労働やストレスは、人々の心身の健康を損ないました。
  • 社会的なつながりの希薄化:物質的な豊かさを追求するあまり、家族や地域とのつながりが希薄化しました。

これらの問題は、互いに関連し合い、世界的に負のスパイラルを生み出しました。

人間の幸福と社会の持続可能性

こうした問題を解決するために、人間の幸福と社会の持続可能性を重視した新しい価値観が生まれました。GDWは、こうした新しい価値観に基づいた指標です。

科学的な研究でもさまざまな分野で、このような方向性が支持されており、人間の幸福や社会の持続可能性を追求する取り組みが活発化しています。GDWを理解することは、今後の社会の方向性を考える上で重要な視点となるのです。

GDWは、経済活動だけでなく、社会的な側面や環境の健全性も考慮した指標として、新しい時代における人間社会の豊かさを測るための重要なツールとして位置づけられています。*3)

世界におけるGDWの現状

近年、気候変動貧富の格差拡大といった地球規模の課題への対応が喫緊の課題となっています。こうした課題解決に向け、持続可能な社会を実現するための新たな経済モデルとして、GDWへの関心が高まっています。

国際機関におけるGDWの議論

現在、国際機関においてはGDW(国内総充実)を含めた幸福度や環境指標など、従来の経済指標であるGDP(国内総生産)だけでなく、より包括的な指標を取り入れる動きが見られます。例えば、国連では2030年までに持続可能な開発目標(SDGs)を達成するために、経済的な側面だけでなく社会的・環境的な側面も考慮した指標が重要視されています。

また、OECD※世界銀行などの国際機関も、経済成長だけでなく、幸福度や環境指標を含めた包括的な指標を活用して、より持続可能な発展を促進する取り組みを進めています。

OECD

Organization for Economic Co-operation and Developmentの略称で、経済協力開発機構のこと。国際的な経済政策の協力や政策の分析、経済成長の促進、持続可能な開発の推進などを行っている。

先進国におけるGDWの取り組み

GDWへの取り組みは、先進国でもまだ開発途上の段階と言えます。しかし、近年では国民の幸福度向上を国家目標として掲げ、GDW指標に基づいた様々な政策を実行する国が増えています。

内面的な豊かさを重視する

先進国では経済的な豊かさが一定程度達成されているため、内面的な幸福や調和を重視することが重要です。個人が自己成長や心の平和を追求することが、社会全体の幸福につながります。

政策にGDWを取り入れる

今後、世界では政策立案者や企業リーダーに、経済指標だけでなく、幸福や満足度といった主観的な側面を考慮することが求められます。幸福指標を取り入れることで、社会全体の幸福度を向上させる政策を実現できます。

では、具体的な事例について見ていきましょう。

事例①フィンランド

フィンランドは、世界でも幸福度の高い国として有名です。フィンランドでは2017年に、「Prime Minister’s Office of Wellbeing(首相府ウェルビーイング室)」が設置され、GDW指標に基づいた政策立案と推進を担っています。

具体的には、教育改革、医療改革、社会福祉改革などの政策を実行しています。

事例②イギリス

イギリスでは世界に先駆けて、「Office for National Statistics(国家統計局)」内に「National Wellbeing Team(国民幸福度チーム)」が設置されました。このチームは、GDW指標の開発と研究を進めています。

2021年には、「National Wellbeing Survey(国民幸福度調査)」が実施され、国民の幸福度に関するデータを収集する取り組みが行われました。

途上国におけるGDWの取り組み

途上国では、貧困問題や環境問題への対応が課題となっています。しかし、近年では、持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向け、GDWの理念を取り入れた取り組みが活発化しています。

教育と意識改革を促進する

途上国では経済的な課題や社会的な不平等が依然として存在するため、教育や意識改革を通じて、個人の内面的な成長と幸福感を促進する取り組みが重要です。

持続可能な発展を目指す

途上国では経済成長だけでなく、社会的な発展や環境への配慮も重要です。持続可能な発展を目指すことで、個人の幸福だけでなく、社会全体の調和と繁栄を実現できます。

GDWは、国際的な協力によって推進していく必要があります。そのため、各国間の利害調整や共通の目標設定が課題となっています。

事例①GDW向上に向けたルワンダの取り組み

ジェノサイド後の復興を遂げたルワンダは、女性議員の比率が世界一高い国として知られています。GDW向上のため、政府はジェンダー平等推進政策などを積極的に展開しており、女性の政治参加や経済活動への参画を促進しています。

【日本とルワンダの男女格差指数比較】

【関連記事】ジェンダーバイアスとは?身近な例や問題点と解決策を簡単に解説

事例②GDW向上に向けたバングラデシュの取り組み

バングラデシュでは、マイクロファイナンス※の普及により、貧困削減と女性のエンパワーメントによりGDW向上の兆しが見えています。マイクロファイナンスは貧困層の女性に小額の融資を行うことで、起業や家計改善を支援しています。

マイクロファイナンス

貧困層や低所得者に対して小額の金融サービスを提供すること。

  • 小額(数百円から数万円程度の少額の融資や貯蓄)
  • 無担保(担保を必要としない融資)
  • 低金利(高利貸しよりも低い金利)
  • グループ融資(複数人で連帯責任を負う融資)

などの特徴がある。

【関連記事】マイクロファイナンスとは?仕組み・問題点と日本企業の取り組み事例を解説

再生可能エネルギーの導入や循環型経済への移行など、環境に配慮した経済活動を進めることで、経済成長と環境保護の両立を目指します。先進国から途上国への資金援助や技術支援を強化することで、途上国におけるGDWの推進を支援します。

また、政府と民間企業が協力して、GDW推進に向けた取り組みを進めることが重要です。*4)

日本におけるGDWの現状

【日本人の主観的Wellbeing推移】

【日本の生活満足度の推移と前回調査からの変化(年齢階層別) 】
出典:ウェルビーング学会『Well-being Report Japan 2022 ウェルビーイングレポート日本版2022』(2022年5月)

国際機関であるOECDが発表する「Better Life Index」によると、日本のGDW(国内総充実)は2023年時点で38カ国中24位です。これは、日本国民の生活水準が比較的高い一方で、健康やワークライフバランスなどの分野で課題を抱えていることを示しています。

日本の生活満足度とGDW

【日本の生活満足度の推移と前回調査からの変化(男女別) 】

【日本の生活満足度の推移と前回調査からの変化(年齢階層別) 】

上のグラフは内閣府の調査による日本の生活満足度を表した物です。2023年11月時点の総合的な生活満足度は5.79ポイントで、前回調査(2022年2月)からほぼ横ばいとなりました。

男女別では、男性が5.74ポイント、女性が5.84ポイントと、女性の方が依然として高い水準です。年齢階層別にみると、高齢層(65-89歳)が5.96ポイントで最も高く、ミドル層(40-64歳)が5.72ポイントで最も低くなっています。

若年層(15-39歳)は5.79ポイントと、前回調査から統計上も有意に上昇しています。

日本のGDWに関する取り組み

日本においても、近年ではGDPだけでなくGDWを重視した政策や取り組みが進められています。具体的な取り組みとしては以下のような点が挙げられます。

幸福度調査の実施

日本政府が定期的に「幸福度調査」を実施し、国民の生活満足度や幸福度を把握する取り組みが行われています。この調査結果をもとに、政策の評価や改善に活用されています。

SDGsの推進

日本政府は持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けた取り組みを進めており、経済成長だけでなく社会的・環境的な側面も重視した政策が推進されています。

ワークライフバランスの推進

労働時間の短縮柔軟な働き方の促進など、働く人々の生活満足度や幸福度を向上させるための政策が進められています。

地域コミュニティの支援

地域社会のつながり福祉の向上を図るための支援策が展開されており、地域住民の幸福度向上に向けた取り組みが行われています。

戦後の経済発展を経て、日本は高度経済成長を達成し、世界有数の経済大国となりました。近年では、経済指標だけでなく、国民の幸福や環境に焦点を当てた政策を推進し、より持続可能な社会の実現に向けて努力を重ねています。

特に、デジタル社会の実現は、GDWの向上と密接に関係しています。例えば、オンライン教育の普及は、教育格差の是正や生涯学習の促進に繋がり、国民の幸福度向上に貢献します。

また、テレワークの推進は、ワークライフバランスの改善や地方創生に効果があり、持続可能な社会の実現を加速させます。今後、日本はGDWの高い国を目指し、デジタル社会の実現と持続可能な社会の実現に向けた取り組みをさらに推進していく方針です。*5)

GDWに関してよくある疑問

GDWは、近年注目を集めている指標ですが、まだまだ新しい概念のため、多くの人が疑問を抱いています。ここではGDWに関するよくある質問に簡潔に回答します。

GDWってどうやって測るの?

GDWを測る方法はいくつかありますが、一般的には以下の3つの方法が用いられます。

  • アンケート調査:国民の幸福度や充実度に関する質問への回答を集計
  • 客観指標:健康寿命、教育レベル、経済格差などの客観的な指標を用いる
  • 主観指標:幸福度や充実度を直接尋ねる主観的な指標を用いる

これらの方法を組み合わせることで、より多角的なGDWの測定を目指しています。しかし、GDWは比較的新しい概念であり、その測定の方法は今後も研究開発されていくと予想されます。

世界ランキングはある?

OECD(経済協力開発機構)は、毎年「Better Life Index」という指標を発表しており、これは各国のGDWを比較する指標として広く用いられています。2023年版のランキングでは、北欧諸国が上位を占めています。

2023年版のBetter Life Indexにおいて、日本は24位となっています。

都道府県別ランキングは?

現状、都道府県別のGDWランキングは正式には公表されていません。しかし、いくつかの研究機関が独自にGDW指標を算出し、都道府県間の比較を行っています。

これらの研究によると、都市部と地方部ではGDWに格差があることが指摘されています。都市部は経済活動が活発で、教育や医療などのサービスも充実していますが、地方部は人口減少や高齢化などの課題を抱えています。

Well-being Initiativeって何?

Well-being Initiativeは、GDWの普及と促進を目指す国際的な取り組みです。OECDや世界銀行などが中心となって推進しており、各国政府や企業、市民社会などが参加しています。

Well-being Initiativeでは、GDWの測定方法に関する研究や、政策提言、啓発活動などが行われています。

GDWの高いブータンはGDPも高いの?

ブータンは、世界でもトップクラスのGDWを誇る国として知られています。一方、GDPは世界でも低い水準です。

つまり、ブータンは経済的な豊かさよりも、国民の幸福度や充実度を重視した政策を進めているのです。

GDWって本当に重要なの?

GDWは、持続可能な社会を実現するために非常に重要です。従来の価値観のまま、経済的な豊かさだけを追求すると、環境破壊格差拡大などの問題が今後も生じる可能性があります。

一方、GDWは、国民の幸福度や充実度を重視することで、こうした問題の解決に貢献することができます。

GDWは個人にも関係あるの?

はい、関係あります。GDWは、個人の幸福度や充実度にも影響を与えるからです。自分の仕事や生活、人間関係などを振り返り、GDWを高めるための工夫をしてみるのも良いでしょう。

個人のGDWを高める方法としては、例として以下のようなことが挙げられます。

  • 自分の好きなことをする
  • 大切な人と過ごす
  • 自然に触れる
  • 社会貢献活動に参加する
  • これまでしたことのない新しい経験をする
  • エシカルな消費を心がける

GDWとSDGs

GDWとSDGsは、一見異なる概念のように見えますが、実は密接な関係を持ち、持続可能な社会の実現という共通目標に向かって相乗効果を発揮します。

国や企業、団体が社会的責任を果たし、持続可能な社会を築くためには、GDWとSDGsの理念を組み合わせて活動することが重要なのです。

GDWと関連の深いSDGs目標

とくにGDWと関わりの深いSDGs目標は、以下のものが挙げられます。関わりの深い目標が多いことからも、GDWとSDGsが共通の目標に向かうものであることがわかります。

  • SDGs目標3:すべての人に健康と福祉を
  • SDGs目標4:質の高い教育をすべての人に
  • SDGs目標8:働きがいのある人間らしい仕事と経済成長をすべての人に
  • SDGs目標10:人や国の不平等をなくそう
  • SDGs目標11:住み続けられるまちづくりを
  • SDGs目標12:つくる責任 つかう責任
  • SDGs目標13:気候変動に具体的な対策を
  • SDGs目標16:平和と公正をすべての人に
  • SDGs目標17:パートナーシップで目標を達成しよう

企業経営におけるGDWとSDGsの統合

企業経営において、GDWとSDGsの視点を導入することは、

  • 従業員の幸福度向上
  • 企業価値の向上
  • 顧客満足度の向上
  • 社会貢献の実現

など、多くのメリットをもたらします。具体的には、

  • 従業員の健康と福祉を促進する制度や環境の整備
  • 多様な人材が活躍できる職場環境の構築
  • 環境負荷低減への取り組み
  • 地域社会への貢献活動

などが、企業にできる取り組みの例です。GDWとSDGsは、持続可能な社会を実現するための相乗効果が期待できる概念です。

私たちひとりひとりが社会の一員として、これらの概念を理解し、より良い未来を創造するという共通の目標に向かって、自分のできることからアクションを起こすことが大切です。*6)

>>各目標に関する詳しい記事はこちらから

まとめ

GDWは、従来の経済指標であるGDPとは異なり、国民一人ひとりの幸福度や充実度を重視する新しい指標です。経済的な豊かさだけでなく、心身の健康、教育、仕事、時間、人間関係、環境など、多様な側面から幸福を追求します。

世界では、GDWを推進することで、持続可能な社会の実現を目指しています。各国政府は、このために環境問題への対応、社会福祉制度の充実、教育の質向上など、さまざまな取り組みを進めています。

日本は、世界トップレベルの長寿国であり、社会福祉制度も充実しています。しかし一方で、人口減少や経済停滞といった課題も抱えています。

これらの課題克服に向け、イノベーションによる経済活性化、環境問題への取り組み、女性や高齢者の活躍推進など、国家レベルでのGDW向上に向けた取り組みを加速させていく必要があります。

企業や団体レベルでは、GDWの視点を導入することで、従業員の幸福度向上、企業価値の向上、顧客満足度の向上、社会貢献の実現など、多くのメリットをもたらします。また、個人の理解と行動も重要です。

私たちひとりひとりが、持続可能な社会の実現に向け、自らの力を発揮することで、より良い未来を築いていくことができます。GDWとSDGsの理念を心に留め、日々の行動に反映させることで、社会人として、そして1人の人間として、より充実した人生を送ることができるでしょう。

<参考・引用文献>
*1)GDW(国内総充実)とは?
内閣府『第2章 Well-being に関する指標群』(2021年9月)
ウェルビーイング学会『ウェルビーイングレポート日本版2022』
内閣府『Well-beingに関する取組』
日本経済新聞『GDWについて』
GLOBAL WELLBEING INITIATIVE『Establishing a More Global Understanding of Wellbeing Through Research』
第一生命経済研究所『ここが知りたい『国民全体の幸せの指標、GDW(Gross Domestic Well-being)に注目』』(2022年2月)
*2)GDWとGDPの違い
日本銀行『GDP、実質GDP』
内閣府『国民経済計算(GDP統計)』
国民生活センター『経済規模ってどういうもの?』
*3)GDWが注目される背景
東洋経済ONLINE『いま再び「幸福」が社会的テーマになっている理由』(2021年9月)
dentsu『「いい会社」の定義を考える。Well-being Initiative始動』(2023年11月)
*4)世界におけるGDWの現状
ANZA『日本より女性進出が進んでいるルワンダ』(2022年8月)
ジェンダーバイアスとは?身近な例や問題点と解決策を簡単に解説
THE WORLD BANK『ルワンダ:農村開発と社会的保護の拡大を通じて脆弱性の軽減と市民の社会・経済参加を促進』(2019年10月)
マイクロファイナンスとは?仕組み・問題点と日本企業の取り組み事例を解説
外務省『バングラデシュ小規模金融(マイクロ・クレジット)を活用した貧困緩和への支援』
経済産業研究所『第10回「融資は何に使われたのか? マイクロファイナンスと貧困層の起業支援」』(2008年7月)鈴木 弥生『バングラデシュ農村の社会開発―BRAC による貧困女性の組織化』(2011年)
外務省『ノーベル平和賞を受賞したグラミン銀行を支えた日本のODA』
*5)日本におけるGDWの現状
ウェルビーング学会『Well-being Report Japan 2022 ウェルビーイングレポート日本版2022』(2022年5月)
OECD『より良い暮らし指標(Better Life Index: BLI)について』
OECD『Japan』
内閣府『満足度・生活の質に関する調査報告書 2023 ~我が国の Well-being の動向~』(2023年7月)
日経BP『ウェルビーイングの向上を、パッとしない日本の“起死回生の一手”に』(2024年1月)
日本経済新聞『GDW 四半期調査発表』
朝日新聞DIGITAL『【世界幸福度ランキング】日本の幸福度、2023年は47位に上昇 トップは6年連続の…』(2023年3月)
*6)GDWとSDGs
経済産業省『SDGs』
日本経済新聞『GDWについて』