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open educational resources(OER)とは?活用事例も

open educational resources(OER)とは?活用事例も

インターネット上には、誰もが無償で利用できる教科書や講義のビデオ、ワークシートなどの教材があります。これらは私たちの学びをサポートしてくれる力強い味方です。今回は、その中でも教材に修正や改変を加えられる「open educational resources(OER)」(「オープン教材」)を取り上げます。主に大学などの高等教育機関が提供しているOERですが、どのような特徴があるのでしょうか。目的や歴史、重要性や具体的な活用方法、OERを提供する団体のリンク集、SDGsとの関係について解説します。

open educational resources(OER)とは

open educational resources(OER)とは「オープン教材」という意味で、作成者が利用者に修正や改変を認めている無償の教材のことです。作成者は著作権の一部、もしくはすべてを放棄しているため、誰もが自由に利用できます。代表的なOERは次のような教材です。

OERの例

  • 教科書
  • 講義のビデオ
  • シラバス
  • プレゼンテーションのスライド
  • ワークシート
  • 図表など

OERを提供している団体は、主に大学や大学院です。日本をはじめ、アメリカを中心に世界で広く利用されています。

目的

OERの主な目的は、

  1. 教育の効果を高めること
  2. 地理的、社会的、経済的な理由により学ぶことが困難な人に学習機会を与えること
  3. 研究分野に関するさまざまな視点に触れることで教育の質を向上させること

です。

OERは自主的な学習ができるほか、授業前の学習や補助教材として活用できます。また、さまざまな機関から提供されるため、異なる視点を踏まえた上で、より良い教育を行うことが可能です。その結果、知識の習得や学力の向上、考える力を身に付けるなどの教育効果が期待できます。また、多くの人が学習機会を得られれば、平等な社会の実現につながるでしょう。

OERはこれらの目的に加えて、大学の広報に利用する狙いもあります。

OCWとの違い

OCWとは、オープンコースウェア(open courseware)の略で、大学や大学院などから提供された教材をインターネット上に無償で公開する活動のことです。アメリカのマサチューセッツ工科大学(MIT)が、2003年にシラバスやノート、テストなどを公開したことから始まりました。(構想の発表は2001年)OERがオープン教材であるのに対して、OCWは活動自体を指します。

この活動は、2005年に200を超える大学が参加したOCWコンソーシアムが創設されたところから始まりました。日本では2006年に、日本オープンコースウェア・コンソーシアム(JOCW:現在はOEジャパン)が設立されています。OEジャパンは現在、正会員13大学、準会員3非営利機関など、賛助会員6企業などから成り立つ日本最大の団体です。(2023年11月30日現在)

OERの歴史

OERの歴史は、「オープンエデュケーション(open education:OE)」の活動の流れをくんでいます。オープンエデュケーションとは、インターネットを通じてあらゆる人に学習機会を提供することを目的とした活動です。OERが生まれる前からその後を確認していきましょう。

1990年代:eラーニングの始まり

1990年代、インターネットが広く利用されるようになり、大学教育にeラーニングが導入されます。eラーニングとは、インターネットを通じて学習する方法のことです。1990年代後半には、アメリカのコロンビア大学やイェール大学などの一部の大学が連合して、教育コースを販売するウェブサイトが開設されました。そしてコロンビア大学は1999年、イギリスのロンドン大学と共に、遠方に住む人々に向けて講義資料やスライドショー、ストリーミング配信を有料で提供しました。しかしこのプロジェクトは、コンテンツ制作の費用を賄うことができず3年で終了します。[i]

教育コンテンツをオープン化するeラーニングは、2000年代のOERの誕生とオープンエデュケーションの発展に影響を与えたと考えられています。

2000年代:オープンエデュケーション(open education:OE)の発展

OEの本格的な始まりは、2003年に学習コンテンツを無償で公開したOCWであるといわれています。公開当初、OCWには500余りのコースがありましたが、2006年には1,400に達し、現在はほぼすべてのコースにおいて受講が可能です。[ii]シラバスやスライド、講義資料などのOERを提供しており、誰もが無償で入手できます。OCWの取り組みは、今やアジアをはじめヨーロッパなど、世界に広がっています。

日本では、2006年にJOCW(現OEジャパン)が立ち上げられました。現在は、東京大学をはじめ、北海道大学、放送大学など、13の国立や私立大学が参加しています。JOCWは、日本におけるオープンエデュケーションの推進とOERの普及・促進の寄与を目指し、国内に向けて情報提供を行っています。

この時期からOERが広がり、活用されるようになったと言えるでしょう。

2019年:ユネスコの「オープン教育資源(OER)に関する勧告」の採択

OERがさらに広く知られるようになったのは、2019年に採択されたユネスコの「オープン教育資源(OER)に関する勧告」といわれています。ユネスコは、「すべての人々が情報や思想を求める権利、教育を受ける権利」があるとして、OERの促進を求めました。この勧告の中で、OERは次のように定義されています。

オープン教育資源(OER)の定義(抜粋)

オープン教育資源(OER)とは、パブリック・ドメイン(※)となった、又はオープンライセンスの下で公開されている著作権のあるあらゆる形式及び媒体の学習、教育及び研究の資料であって、他の者による無料のアクセス、再使用、別の目的のための再利用、改訂及び再配布を認めるものをいう。[iii]

(出典:ユネスコ「オープン教育資源(OER)に関する勧告」)

パブリック・ドメイン

著作権の保護期間が終了したり、放棄されたりした知的著作物について、誰もが自由に利用・複製・配布・翻訳、改変、販売などができる状態を指します。

日本を含めた193の加盟諸国がオープン教育資源(OER)の提供に取り組み、政策の策定や能力開発、計画の支援などを行っています。[iv]このユネスコの勧告により、今後さらにOERの活用が進められていくでしょう。

OERの重要性

ユネスコの「オープン教育資源(OER)に関する勧告」もあり、OERの重要性は今後ますます高まると予想されます。さまざまな視点がある中でも、2つのポイントを挙げて見ていきましょう。

パンデミックのような不測の事態への対応

世界に蔓延した新型コロナウイルスにより、学生たちが一時期大学に通えなくなる事態が起きました。また、経済活動が停止したことでアルバイトが減り、苦しい状況に追い込まれる学生もいました。これを受けてアメリカの教育省は、OERを活用して無料で質の高い教材を学生に提供することを戦略に掲げました。そこで2020年からアメリカの連邦政府が支給した762憶ドル規模の救済金(HEERF)や州からの救済基(GEER)がOERに充てられ、学生の学習環境を守る措置を採ったのです。

例えば、ウィスコンシン州のチペワバレー工科大学は、HEERFを利用して新しい看護の教科書を作成しました。これにより学生は、年間38,000ドル以上の出費を抑えることができると試算されています。オープンに共有できるOERを生かして全国の大学生に広がれば、さらに多くの学生が救われます。[v]

OERは、どこでも授業を受けられる上、経済的な負担がない点が特長です。パンデミックのような状況になったとき、重要な役割を果たすと言えるでしょう。

グローバル化に対応した人材育成やイノベーションの創出

日本は以前から、少子高齢化やグローバル化、新興国との競争の激化などの問題に直面しています。こうした問題を解消して将来的に発展していくためには、変革を行うことが必要です。そこで文部科学省は、2012年に「大学改革実行プラン」を公表し、社会の変革エンジンとなる大学改革に乗り出しました。国は、「グローバル化に対応した人材育成」や「研究力強化・世界的な研究成果とイノベーションの創出」などを大学政策の基本方針「大学ビジョン」に掲げて取り組んできました。[vi]

これらを実現するためには、時代の早い変化に対応する教材が不可欠です。OERは改変や再編集ができるほか、機関を超えた迅速な対応ができます。新しい知識や情報をOERによって得られれば、時代に即した人材の育成や研究力の強化にもつながるでしょう。

それでは、OERをどのように活用したら良いのでしょうか。具体的な活用方法を次に見ていきましょう。

OERの具体的な活用方法

OERの具体的な活用方法については、いくつかのサイトで紹介されています。その中でも、「北海道大学オープンエデュケーションセンター」と小中高生向けの「NHKフォースクール(NHK for School)」のサイトを参考に見ていきます。

北海道大学オープンエデュケーションセンター

「北海道大学オープンエデュケーションセンター」は、情報通信技術を活用した教育・学習の支援を行うとともに、OERを活用した教育改善を推進しています。サイトには、OERの①つくる②つかう③学ぶ、を支援する情報が掲載されており、教材作りのサポートや使い方のヒントを提供しています。

「①    つくる」では、大まかな流れが分かるほか、実際に制作を行ったレポートが公開されています。

「②    つかう」では、「補助教材」「アクティブラーニング」「反転授業」の3つの方法が事例と共に紹介されています。

「補助教材」

「③    学ぶ」では、OERを入手できるサイトのリンクや内容の例が公開されています。

「作成方法が分からない」「利用するイメージが湧かない」という人でも具体的な活用例などからOERを身近に感じることができるサイトです。

NHKフォースクール(NHK for School)

(引用元:NHK for School

NHKフォースクールは、小中高生向けの教育番組をインターネット上で公開するサービスです。「理科」「社会」「国語」などの教科から学びたい番組を視聴します。授業の予習や復習、補助教材として活用できるほか、自主的な学習にも役立ちます。

(引用元:NHK for School

このサービスの特徴は、生徒だけでなく教員向けの情報も提供していることです。「先生向け」のスイッチをオンにすると、指導要領や教科書から、知りたい項目のコンテンツを検索できます。教材や資料としてコンテンツを利用した授業を組み立てることが可能です。

【付録】OERを提供する団体のリンク集

OERを知るためには、実際に利用してみるのが一番です。そこで、世界と日本で発信されているOERのリンク集をいくつか選んで作成しました。さまざまな機関から提供されているOERをぜひ体験してみてください。なお、修正や改変などが一部制限されているコンテンツが含まれている場合があります。各サイトの利用規約に従って利用してください。

世界

日本

大学

小中高

OERとSDGs

sdgsロゴ

最後に、OERとSDGsの関係について確認していきます。OERは、SDGsの6つの目標に関係があります。それぞれの目標達成には、OERが貢献しています。

目標4「質の高い教育をみんなに」

目標4は、誰もが受けられる公正で質の高い教育をすべての人々に提供することを掲げています。この目標には、初等・中等教育が無償であることや、 大学を含む高等教育を手頃な価格で受けられることも含まれています。

目標5「ジェンダー平等を実現しよう」

目標5は、ジェンダー平等を実現し、誰もが能力を発揮できることを目指しています。情報技術(ICT)の活用を積極的に行うことで、この目標を達成するとあります。

目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」

経済発展と人々の幸せには、インフラの構築や持続可能な産業が必要です。これを実現するためには、イノベーションとそれを生み出す情報技術(ICT)が欠かせません。

目標10「人や国の不平等をなくそう」

目標10は、年齢、性別、障がい、人種、民族、出自、宗教、経済的地位やその他の状況にかかわらず、すべての人に社会的・経済的・政治的に参画する力を与えるとしています。そのためには、誰もが受けられる平等な教育が不可欠です。

目標16「平和と公正をすべての人に」

目標16のターゲット16.10には、国内法規や国際協定に従い、誰もが情報を利用できるようにし、基本的自由を保護するとあります。これは、知りたい情報を誰もが得られる社会を目指すと言えるでしょう。

目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」

目標17では、SDGsの目標達成に向けたグローバルな協力体制を促進することを求めています。

OERは、誰もが平等に質の高い教育を無償で受け、そこで身に付けた能力を社会の中で発揮することを可能にします。また、インターネットというグローバルな環境では、国境を超えてOERを共有できます。OERとSDGsには、こうした深い関係があることも忘れてはならないでしょう。

>>各目標に関する記事はこちらから

まとめ

open educational resources(OER)とは「オープン教材」という意味で、利用者が修正や改変のできる無償の教材のことです。OERの主な目的は、①教育の効果を高めること②地理的、社会的、経済的な理由により学ぶことが困難な人に学習機会を与えること③研究分野に関するさまざまな視点に触れることで教育の質を向上させることです。

またOERは、パンデミックのような状況が起きても学業の継続が可能であること、グローバルな人材やイノベーションを創出できることが特徴です。さらにSDGsにも貢献できることから、OERは今後ますます重要性が高まると予想されます。付録にOERを提供する団体のリンク集を作成したので、ぜひ体験してみてください。

<参考文献>
[i] 「オープンエデュケーションにおける学習への導引─中学・高校におけるオープン教育リソース(OER)の動向─」森本治子著
[ii] 「日本におけるオープンコースウェアの現状と課題・展望」福原美三著
[iii] オープン教育資源(OER)に関する勧告:文部科学省
[iv] Open Educational Resources | UNESCO
[v] COVID-19により高まったOERの重要性と連邦政府や州からの救済金を活用したOER導入に関する成功事例(記事紹介) | STI Updates | 科学技術情報プラットフォームLeveraging OER to Meet Student Basic Needs with COVID Relief Dollars – SPARC
[vi] 文部科学省「大学改革実行プラン~社会の変革エンジンとなる大学づくり~」平成24年6月