東京の八丈島や大分の九重火山など、日本は世界有数の火山国です。地熱発電は、それらの火山の熱を利用して発電しています。主要国の地熱の資源量を比較してみると、日本は2,347万キロワットと、アメリカ、インドネシアに次いで世界第3位です。※[1]
エネルギー資源が乏しい日本にとって地熱発電は、持続可能なエネルギーとして注目されており、導入を進めていくべきだとの声が高まる一方、課題も多く残されています。
本記事では地熱発電の理解が深まるよう、仕組み、メリット・デメリット、政府の取り組み、世界と日本の事例などについて詳しく見ていきます!
目次
地熱発電とは
地熱発電とは、地表から深さ数キロメートル以内にある熱エネルギーを使って発電する方法です。地球は体積の99%が1,000℃以上と、膨大な熱エネルギーを持っています。その自然の熱を利用したのが地熱発電です。
では、地熱発電はどのようにして発電されているのでしょうか。まずは地熱発電の仕組みから見ていきます。
地熱発電の仕組み
地球の熱源は、地表から深さ30〜50キロメートルの場所で1,000℃程度あると考えられています。しかし現在の技術では、それだけの深さを掘ってエネルギー資源とすることはできません。
そのため地熱発電では、岩が熱で溶けてたまっている「マグマだまり」と言われている場所の熱をエネルギー源にします。マグマだまりは、1,000℃程度の熱を持っている上に、深さ数キロメートルの比較的浅いところにあるのです。
マグマだまりの多くは、
- 気体が噴き出す天然の噴気孔
- 硫化水素や二酸化硫黄を噴き出す硫気孔
- 温泉
など、 「地熱地帯」と呼ばれる場所で見られます。
それでは、マグマだまりの熱をどのように電力に変えるのか、図を見ていきましょう。
マグマだまりの周辺に水が流れ込むと、地熱貯留層という層がつくられます。地熱貯留層はマグマだまりの熱によって熱せられ、蒸気や熱水になります。そこに地上から掘った井戸(生産井)を通して熱を取り出して発電するのです。
続いて、この仕組みを活用した2つの発電方法について見ていきます!
地熱発電の方法の種類
地熱発電の方法は主に「フラッシュ方式」「バイナリー方式」の2種類です。
フラッシュ方式
ここでは、フラッシュ方式のなかでも一般的なシングルフラッシュ方式を簡単に説明します。
シングルフラッシュ方式は、地熱井から取り出した蒸気と熱水を気水分離器で分離し、蒸気を回転式の原動機であるタービンに供給し、熱水を地下に戻す方式です。
バイナリー方式
バイナリー方式は、地下から取り出した熱の温度が低く十分な蒸気が得られないとき、沸点の低い媒体を加熱して蒸気を発生させ、タービンを回す発電方法です。媒体には、沸点が36℃のペンタンなどが使われます。媒体はタービンを回した後、凝縮器で液化されて再使用されます。
このように、蒸気と媒体の2つの熱を使って発電することから、バイナリー発電(2つの熱による発電)と呼ばれています。
平成9年4月施行の「新エネルギー利用等の促進に関する特別措置法」と「同施行令」で新エネルギーとして定義されている地熱発電は「バイナリー方式」です。※[2]
太陽光発電やバイオマス発電などの再生可能エネルギーのうち、日本の法律で特に普及を推進しているエネルギーのこと
日本の地熱発電が占める割合
続いては、日本の地熱発電が占める割合を確認します。まずは日本全体の電源構成を見ていきましょう。
日本全体の電源構成割合
下の表は、日本全体の電源構成割合(2021年速報)をまとめたものです。
電源 | 2014年 | 2015年 | 2016年 | 2017年 | 2018年 | 2019年 | 2020年 | 2021年 | 備考 |
水力 | 8.00% | 8.60% | 7.60% | 7.60% | 7.80% | 7.40% | 7.90% | 7.80% | 大規模含む |
バイオマス | 1.50% | 1.50% | 1.90% | 2.00% | 2.20% | 2.70% | 3,2% | 4.10% | 自家消費含む |
地熱 | 0.24% | 0.25% | 0.22% | 0.21% | 0.22% | 0.24% | 0.25% | 0.25% | |
風力 | 0.47% | 0.50% | 0.54% | 0.61% | 0.69% | 0.76% | 0.86% | 0.87% | 電力需給データ |
太陽光 | 1.90% | 3.00% | 4.40% | 5.70% | 6.50% | 7.40% | 8.50% | 9.30% | 自家消費含む |
自然エネルギー | 12.10% | 13.80% | 14.70% | 16.40% | 17.40% | 18.50% | 20.80% | 22.40% | |
VRE | 2.30% | 3.50% | 5.00% | 6.30% | 7.20% | 8.20% | 9.40% | 10.20% | |
火力 | 87.90% | 85.70% | 83.60% | 80.80% | 77.90% | 75.00% | 74.90% | 71.70% | 石炭、LNG、石油ほか |
石炭 | 30.20% | 30.20% | 28.20% | 27.80% | 27.60% | 26.50% | |||
LNG | 38.90% | 38.40% | 37.40% | 36.00% | 35.40% | 31.70% | |||
原子力 | 0.00% | 0.40% | 1.70% | 2.80% | 4.70% | 6.50% | 4.30% | 5.90% |
太陽光や風力発電に比べて、地熱発電の割合は0.25%と少なく、電源構成の中でも最も割合が低くなっています。過去の数値を見てみると、わずかな上下はあるものの、過去3年はほぼ横ばいと言えるでしょう。
次に、地熱発電の発電電力量の推移も見てみましょう!
地熱発電の発電電力量
下の表は、地熱発電の発電電力量をまとめたものです。
(単位: 億kWh)
年度 | 2010 | 2011 | 2012 | 2013 | 2014 | 2015 | 2016 | 2017 | 2018 | 2019 | 2020 |
発電量 | 26 | 27 | 26 | 26 | 26 | 26 | 25 | 25 | 25 | 28 | 30 |
2020年の発電量は30億キロワットアワーとなっており、過去10年を見ると、電源構成割合の増加に比例するように、この1、2年で少しずつ増えていることがわかります。
電力の供給量の割合
最後に、電力の供給量の割合について確認していきます。
2019年度の水力を除いた再生可能エネルギー(太陽光、風力、バイオマス、地熱など)のエネルギー国内供給量の割合は8.8%と、前年度2018年の8.2%とほぼ同等の数値です。
過去10年の推移を見ると、2009年度では3.1%だったことから年々増えていることが分かります。※[3]
これは、2011年の東日本大震災以降、原子力発電政策が見直されたことにより、再生可能エネルギーの開発が進んできたためと考えられます。※[4]
しかし、再生可能エネルギーの供給量全体の増加幅に比べて、地熱発電の伸びは小さいのはなぜでしょうか。次に、その理由について地熱発電のメリット・デメリットに触れながら確認していきます。
地熱発電の4つのメリット
まずは地熱発電の4つのメリットについて紹介します。
メリット①高温蒸気・熱水の再利用
地熱発電に使った蒸気や熱水は、農業用ハウスや魚の養殖、地域の暖房などに再利用ができます。
例えば秋田県湯沢市では、市有の温泉井戸から地熱により熱せられた地熱水を、ミツバやパクチーを水耕栽培する農業ハウスに供給しています。また、牛乳の低温殺菌や農産物の乾燥施設にも地熱水が活用されるなど、産業振興に幅広く役立てられています。※[5]
メリット②持続可能なエネルギーである
地熱発電は化石燃料のように消費して尽きることがなく、地下にある地熱エネルギーの蒸気や熱を利用するため、長期間にわたって供給できます。
日本は高度経済成長期にエネルギー需要量が大きくなり、石油が大量に輸入されるようになりました。1960年度にはエネルギーの58.1%が主に石炭や水力などの国内の天然資源を占めていましたが、それ以降エネルギーの自給率は大幅に減っています。
エネルギー自給率の推移
年度 | エネルギー自給率(%) |
1960 | 58.1 |
1970 | 15.3 |
1973(オイルショック) | 9.2 |
1980 | 12.6 |
1990 | 17.0 |
2000 | 20.3 |
2010 | 19.6 |
2011(東日本大震災) | 11.5 |
2012 | 6.7 |
2014 | 6.3 |
2015 | 7.3 |
2016 | 8.1 |
2017 | 9.4 |
2018 | 11.7 |
2019 | 12.1 |
東日本大震災の影響により原子力の発電がなくなった2014年には、エネルギー自給率が6.3%にまで落ち込みました。その後は再生可能エネルギーの導入や原子力発電所の再稼動が進み、2019年度は12.1%まで上昇しています。
このようにエネルギー自給率が低い状況で、再生可能エネルギーを自国に持つことは大きな意味があります。天然資源が乏しい日本で、地熱発電は貴重なエネルギー資源として期待されているのです。
メリット③昼夜問わず安定した発電を可能に
太陽光発電や風力発電は日照時間や風の有無によって、供給が不安定になるデメリットがあるのに対し、地熱発電は天候に左右されません。そのため、24時間発電することが可能です。
設備利用率を見てみると、地熱発電は83%と他の再生可能エネルギーと比べて飛びぬけて高いことが分かります。
発電設備の発電量が、仮に100%運転しているときの電力量の何%に当たるかを示す数値。
数値が高いほど、運転している時間に多くの電力をつくっていることになり、設備を有効に活用できている指標になる。
設備利用率
電源 | 地熱 | 陸上風力 | 洋上風力 | 太陽光(事業用) | 太陽光(住宅) |
設備利用率 | 83% | 25.4% | 33.2% | 17.2% | 13.8% |
稼働年数 | 40年 | 25年 | 25年 | 25年 | 25年 |
常時発電することが可能で、設備利用率も高いことから、地熱発電は安定した電力の供給ができると期待されています。
メリット④環境負荷が少ない
さらに、環境負担が少ないことも大きなメリットの一つです。
上記のグラフによると、 地熱発電のCO2の排出量は13g-co2/キロワットアワーと、化石燃料などに比べて圧倒的に少なく、原子力発電や水力発電と同じ程度です。
二酸化炭素やメタン、一酸化二窒素、フロンガスなどの温室効果ガスのうち、日本では二酸化炭素排出量の割合が91.7%(2018年)と高くなっています。※[6]
これは、石炭、石油、天然ガスなどの化石燃料を燃焼して発電していることが原因です。地熱発電はクリーンなエネルギーとして、環境問題に貢献できます。
地熱発電の4つのデメリット・課題
ではなぜこのようなメリットがあるのに、地熱発電の開発が拡大していないのでしょうか。
その理由には、地熱発電が抱えるデメリットが関係しています。1つずつ見ていきましょう!
デメリット①建設場所が国立・国定公園や温泉地と重なる
地熱発電はマグマだまりのある火山の近くで開発されます。しかし、日本にある火山の多くは国立公園内にあるため、設備の設置が難しいケースが見られます。
1972年、当時の通産省と環境庁との間で、地熱発電を大沼(秋田県鹿角市)などの6地点に決め、それ以後は国立・国定公園内での地熱開発は行わないとの覚書を結びました。しかし、東日本大震災後の2012年、環境省は「一定の条件に該当する公園の地熱開発を認める」と、条件が緩和されました。※[7]
これを受け、温泉地では「温泉が枯れてしまうのでは」と心配する声も聞かれます。※[8]
そのような事実はこれまで確認されていないものの、地熱発電を開発する際は、町内会や温泉組合に説明して理解を得ることも必要です。
デメリット②発電効率が低い
地熱発電の発電効率が非常に低いこともデメリットの一つです。風力発電の発電効率が25%なのに対して、地熱発電は8%と半分以下になっています。
発電に使われた燃料エネルギーが電気に変換される割合。同量の燃料でより多くの電力をつくることができると、発電効率が高いと言われます。
③開発リスクも高い
開発にはまず、地熱貯留層があるかを探査して、可能性の高い地点を見つけなければなりません。見つかったらそこに井戸を掘り、地熱資源の状況や地熱貯留層の状態を確認します。その結果、事業として成り立つと判断されれば、発電所の建設を開始するという流れです。
井戸の掘削費用は開発費用全体の約3割で、1本当たり数億になるとも言われています。加えて、成功率は3割と非常に低いのです。さらに、運転を開始できても、蒸気量が減って発電出力が低下している地熱発電所もあり、リスクが高いことが課題です。
例えば、3万キロワットの地熱発電所の調査・開発には約73億円かかると試算されており、多額の費用が必要です。※[9]
④建設コストが高い
経済産業省資源エネルギー庁で公表している令和3年の報告書によると、3万キロワットの出力規模をモデルとした建設費は、237億円です。※[10]
風力や水力、太陽光と比べてみましょう。
発電タイプ | モデルプラントの出力規模(キロワット) | 建設費 | 稼働年数 |
地熱 | 3万 | 79 万円/kW⇒237億円 | 30~50年 |
陸上風力 | 3万 | 34.7 万円/kW⇒104億円 | 20~25年 |
中水力 | 5,000 | 33~90 万円/kW⇒17~45 億円 | 40~60年 |
太陽光(事業用) | 250 | 20.8 万円/kW⇒5,200万円 | 20~30年 |
1キロワットあたりの建設費を見てみても、地熱は風力や太陽光の2~4倍です。稼働年数は比較的長めではあるものの、初期費用としては高額と言えるでしょう。
このように、さまざまなデメリットを抱えていることが普及が進まない理由と考えられています。
世界の地熱発電の事例
とはいえ、少しずつではあるものの導入事例も増えています。ここからは、新エネルギーとして認められているバイナリー方式地熱発電所の事例を国外・国内ともにご紹介します。
まずは、地熱の資源量世界第2位を誇るインドネシアからです。
サルーラ地熱発電所(インドネシア)
インドネシアのスマトラ島北部に位置するサルーラ地熱発電所は、世界最大の地熱発電所です。出力は約330メガワット。発電した電力は、インドネシア国有電力会社へ卸売りされます。
インドネシアは、世界有数の地熱源を保有している「地熱資源国」です。政府も地熱を戦略的な電力源として位置付けており、2013年には186万キロワットだった設備容量も、2019年には213万キロワットと、その量を増やしています。※[11]
ナタマリキ地熱発電所(ニュージーランド)
ナタマリキ地熱発電所は、ニュージーランドの北島にある82メガワットの大型発電所です。
国有電力会社マイティー・リバー・パワー社が所有しおり、地熱井は3つ、媒体はペンタンを使用しています。この発電所により、約8万世帯の電力を賄えるとしています。
ニュージーランドでは、事業者がマオリ族の土地所有者や、出資をするマオリ信託と協力して開発を行うケースが増えています。この発電所もマオリ信託とのパートナーシップを結びました。マオリ族といかに信頼関係を築くかが、地熱発電を開発する鍵にもなっています。※[12]
オルカリアIII地熱発電所(ケニア)
オルカリアIII地熱発電所は、ケニアの首都ナイロビの北西にある150メガワットの発電所です。この地域はオルカリア火山体の地熱を利用した発電所がいくつかあり、ケニアを代表する地熱地帯として知られています。
オルカリアIIIを含むいくつかの地熱発電所の敷地のうち80キロ平方メートルは、ヘルズゲート国立公園に指定されており、森林と低木が生い茂るサバンナです。キリンやシマウマ、ヒヒなどの野生動物が見られます。※[13]
日本の地熱発電の事例
日本では、温泉地に地熱発電所が建設されるケースが多く、温泉と発電所見学などの観光に力を入れている例も見受けられます。
最初に、日本最大の地熱発電所から紹介します。
八丁原バイナリー発電所(大分県)
八丁原バイナリー発電所は大分県の南西部、阿蘇くじゅう国立公園や耶馬日田英彦山国定公園の山々に囲まれた場所にあります。発電規模は2メガワット。近くにはフラッシュ方式の発電所1・2号機があります。
八丁原バイナリー発電所のフラッシュ方式2基を合わせた出力は110メガワットと、地熱発電の規模は日本最大です。年間の発電電力量は 約8万メガワットアワーで、20万キロリットル相当の石油が節約できます。※[14]
霧島国際ホテル地熱発電所(鹿児島県)
霧島国際ホテル地熱発電所は、1971年に創業したホテルで、霧島温泉地区にあります。3本の温泉井戸から地熱蒸気を取り込み、媒体はイソペンタンを利用して発電。出力は220キロワットです。
発電した電力は、ホテル内の給湯と暖房だけでなく、排水処理装置や浄化槽のファンなどにも使われています。温泉熱を利用することにより、重油代や電気代のコストダウンにつながり、大きな経済効果を生み出しています。※[15]
土湯温泉16号源泉バイナリー発電所(福島県)
福島県の北部にある土湯温泉16号源泉バイナリー発電所は、東日本大震災後から地熱発電などの自然エネルギーによる発電を進めてきました。出力は400キロワット。地熱発電の特徴である安定発電により、売電収入を得ています。
この発電所の特徴は、発電により排出された温水を使ってエビの養殖事業に取り組んでいる点です。高い水温を好む東南アジア原産のオニテナガエビは、日本で養殖すると多額の費用がかかるものの、温水を利用することでその問題も解消できます。※[16]
地熱発電普及に向けた日本政府の取り組み
このように国内外問わず導入事例は見られるものの、今後、より安定して発電するためにも導入、拡大を加速させていく必要があります。
そこで国では、令和3年度予算として29.7億円を投じて、「地熱・地中熱等導入拡大技術開発事業」を行っています。この事業の主なポイントを3つ見てみましょう。
地熱発電導入拡大に関する技術開発<委託・補助>
地熱貯留層を探索して見つからないリスクや、発電所の設備利用率の低下に対する対策、国立・国定公園といった開発など、以下の項目について委託や補助を行いサポートしています。
- 地下構造を詳細に調査し、開発リスクを減らす探査技術の開発→探査制度高度化
- 長期的に発電出力を安定させるための評価・管理技術の確立→出力低下の回復と未然防止
- 開発規制地域外から、国立・国定公園内に斜め堀りする大偏距掘削(だいへんきょくっさく)技術や、環境への影響を把握する技術を開発→国立・国定公園の大偏距掘削技術と環境影響把握
革新的地熱発電の技術開発(EGS)<委託>
地熱発電の拡大に向けて革新的技術を検証するため、以下について支援しています。
- 地熱貯留層のない地域でも地熱発電を可能とする革新的技術の検証
- 超高温・高圧の状態にある流体でも地熱発電を利用できるよう、資源の状態を把握
- 地下の構造をモデル化して地震波を解析
国は、令和7年度までの事業で、革新的な地熱発電技術の実現に向けて課題を抽出し、基盤技術の確立などを行うとしています。
再エネ熱利用に係るコスト低減技術開発<委託・補助>
設計から導入・運用まで、事業の中で必要な各分野と共同して技術開発を行うことを委託や補助で支援しています。
- 令和元年度から5年間の事業で、トータルコスト20%低減を目指す
- 業界・ユーザーが連携してコスト削減を普及させる
- 設計を最適化させるなど、導入を拡大させるような共通基盤技術開発に取り組む
国は、投資資金の回収機関を14年(令和12年までに8年に短縮化)にすることを目指すとしています。※[17]
地熱発電の普及はSDGsの目標達成につながる
最後に地熱発電とSDGsの関係について確認しましょう。
地熱発電を開発・推進していくことで、SDGsの17の目標のうちの特に2つに貢献できます。
目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」
目標7は、すべての人が電気を使えるようにするだけでなく、その電源が環境の負担の少ないクリーンな再生可能エネルギーであることが求められています。
これまで見てきたように、地熱発電は地下の熱を使った自然のエネルギーです。バイナリー方式で熱水や蒸気を再利用することで、資源を有効に活用できるため、地熱発電を推進していくことは目標7の達成につながります。
【関連記事】SDGs7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」の現状と取り組み事例、私たちにできること
目標13「気候変動に具体的な対策を」
目標13は、気候変動の解決に向けて具体的な対策をとることが掲げられています。
地熱発電の二酸化炭素の排出量は、化石燃料よりも圧倒的に少ないため、気候変動に有効な対策として導入を推進していくことで、目標13に貢献できます。
【関連記事】SDGs13「気候変動に具体的な対策を」の現状と取り組み、私たちにできること
まとめ
地熱発電の仕組みから、メリット・デメリット、事例などを見てきました。地熱発電は再生可能エネルギーとして有望ですが、導入を拡大していくためには立地条件やコストなどのリスクもあります。
そのなかで、2011年の東日本大震災以降は原子力政策が見直されたこともあり、政府も地熱発電の開発を推し進めています。
今後、地熱発電の導入を広めていくためにも、今ある課題を克服しながら取り組みを進める必要があるでしょう!
<参考文献>
江原幸雄・野田徹郎著「地熱工学入門」東京大学出版会
西山孝・別所昌彦共著「統計データからみる地球環境・資源エネルギー論」丸善出版
鈴木保雄編著「再生可能エネルギー有効利用の最前線-最新技術の実態調査を踏まえて-」一般財団法人エネルギー資源学会
※[1] 経済産業省資源エネルギー庁「もっと知りたい!エネルギー基本計画④ 再生可能エネルギー(4)豊富な資源をもとに開発が加速する地熱発電」
※[2] 平成九年政令第二百八号 新エネルギー利用等の促進に関する特別措置法施行令
※[3] 経済産業省資源エネルギー庁「エネルギー白書2011」
※[4] 鈴木保雄編著「再生可能エネルギー有効利用の最前線-最新技術の実態調査を踏まえて-」
※[5] 独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構[JOGMEC]「地熱モデルPROJECT 秋田県湯沢市」
※[6] 全国地球温暖化防止活動推進センター「データで見る温室効果ガス排出量(日本)」
※[7] 環境省「国立・国定公園内における地熱開発の取扱いについて(お知らせ)」
※[8] 観光経済新聞「【地熱開発の問題点 温泉クライシス6】地熱発電と温泉との共生について 大山正雄」
※[9] 経済産業省資源エネルギー庁「資源・燃料分科会 地熱資源開発の現状について」、「NEDO再生可能エネルギー技術白書第2版」
※[10]経済産業省資源エネルギー庁「総合資源エネルギー調査会 発電コスト検証ワーキンググループ 各電源の諸元一覧」
※[11] 経済産業省資源エネルギー庁「エネルギー白書2016」、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構地熱資源情報「国を挙げて行う、壮大な地熱開発計画(インドネシア)」、経済産業省資源エネルギー庁「エネルギー白書2021」
※[12] 自然エネルギー財団「報告書 ニュージーランドにおける地熱発電-日本への教訓 ―」
※[13] 環境省 地熱発電事業に係る自然環境影響検討会(第5回)資料「地熱発電事業に関する補足情報収集
※[14] 九州電力「八丁原発電所」リーフレット
※[15] 経済産業省資源エネルギー庁「再生可能エネルギーとは」、鈴木保雄編著「再生可能エネルギー有効利用の最前線-最新技術の実態調査を踏まえて-」一般財団法人エネルギー資源学会
※[16] 公益財団法人自然エネルギー財団「自然エネルギー活用レポート No.14 地熱発電が被災した温泉地に活力もたらす-福島県・土湯温泉で排熱をエビの養殖にも-」
※[17] 経済産業省資源エネルギー庁「地熱・地中熱等導入拡大技術開発事業」