2019年9月23日、ニューヨークで開かれた国連気候行動サミットに出席したグレタ・トゥーンベリさん(当時16歳)は、世界のリーダーたちを目の前に涙ながらにスピーチをしました。
「あなたたちは、私たちを失望させている。しかし、若い世代はあなたたちの裏切りに気づき始めています。未来の世代の目は、あなたたちに向けられている。」
なぜグレタさんはここまで熱い思いを言葉にしたのでしょうか?
彼女は、地球温暖化による悪影響を世の中に訴えることで、対策を講じる社会へと変えようとしていたのです。16歳の少女のスピーチを他人ごとで済ませてはいけません。温暖化問題は地球で生活している全ての人たちが関心を持つ必要があるのです。
今、地球温暖化についてあまり知らないという方も問題ありません。以下では、地球温暖化のメカニズムから原因、影響、SDGsとの関係まで紹介していきます。
地球温暖化とは?
地球温暖化とは、主に温室効果ガスの増加が原因で地球の温度が上がっている現象を指します。
二酸化炭素(CO₂)をはじめとする、メタン(CH₄)、亜酸化窒素(N₂O)などの地球温暖化に影響を与える気体のことを温室効果ガスと呼びます。
国立環境研究所による発表によると、2019年度の日本における温室効果ガスの比率は下記の通りです。
- 二酸化炭素:91%
- メタン:2.3%
- 亜酸化窒素:1.6%
世界の平均気温は年々上昇している
実際に地球温暖化の影響で、世界の気温は年々上昇傾向にあります。
上の図は過去100年間の東京とニューヨークにおける年間平均気温の推移です。
東京では、1920年~1950年代までは年間平均気温は14度あたりを示していましたが、60年代に入ると徐々に上昇し始めます。そして90年代以降には、年間平均気温は16度付近が多くなっているのです。
ニューヨークの場合、年によって上下を繰り返していましたが、80年代に入ると徐々に気温が上昇。年間平均気温が6度になるケースは見られなくなりました。
未来の天気予報から見る100年後の気温
このまま気温が上昇し続ければ100年後には、現在よりも最大で4.8℃も上昇すると予測されています。
このように地球温暖化が進むことで、毎年のように全国各地で40度超えが当たり前になってしまうと考えられているのです。
では、なぜ年々気温が高くなっているのでしょうか。
地球温暖化の原因・メカニズムをわかりやすく解説
ここでは温暖化のメカニズムを見ていきましょう!
もともと、地球の空高いところには温室効果ガスが浮かんでおり、地球を暖めてくれています。本来、この温室効果ガスが地球を暖める特性は悪いものではありません。もし、地球に温室効果ガスがなかった場合、地球は太陽からの熱を吸収できずに、-19度の極寒になってしまうと言われています。
適正な量の温室効果ガスがあることで、私たちが生活しやすい温度にまで地球を暖めてくれているのです。
しかし、現在の空には私たちが過剰に排出した温室効果ガスが浮かんでいます。気象庁によると工業化が始まる1750年以前に比べて、2019年には大気中の二酸化炭素濃度が48%増加したと発表しています。
これによって、温室効果ガスの働きが強くなり、地球の温度が上がりすぎてしまい、地球温暖化が起こっているのです。
では、なぜ温室効果ガスが増えているのでしょうか?
温室効果ガスが増えている原因
※温室効果ガスの7割が二酸化炭素ということを踏まえ、ここでは「二酸化炭素排出量」に焦点を当てて見ていきます。
二酸化炭素排出量が増える主な原因としては、
- 火力発電
- 工場による大量生産
- 宅配サービスや家電をはじめとする便利な生活
が挙げられます。
それぞれ順を追って見ていきましょう。
①火力発電
火力発電とは、石炭や石油などの化石燃料を大量に燃やして電気を発生させる発電方法のことです。
火力発電では朝や昼など電力がたくさん欲しいときには燃料をたくさん燃やして多く発電、夜などの電力が必要ないときには燃料を減らして発電量を減らすことができます。
このように燃料の量によって簡単に発電量を調節できるというメリットがあるため、日本の発電の約7割を占めています。(2019年時点)
しかしその反面、二酸化炭素を大量に排出することが問題視されています。
環境省が発表した2019 年度(令和元年度)の温室効果ガス排出量に関する資料によると、発電所や製油所などのエネルギー転換部門から排出される二酸化炭素の量は4億3,300万トンです。
参考までに、二酸化炭素1トンは、杉の木1本が1年間に吸収する量と同じくらいだと言われています。この数値だけ見てもいまいちピンとこない人も多いと思いますが、とにかく膨大な量の二酸化炭素が火力発電によって排出されていることを覚えておくと良いでしょう。
②工場からの排出
続いては工場からの排出です。
グラフを見ても分かる通り、工場を含む産業部門の二酸化炭素排出量は2億7,900万トンであり、エネルギー転換部門に次いで二番目の排出量なのです。
③宅配サービスや家電をはじめとする便利な生活
私たちの生活からも二酸化炭素は排出されています。
Amazonをはじめとする通販は、現代で生活する私たちにとって欠かせないものとなりました。しかし、商品が私たちのもとに届くまでにも自動車や電車が利用され、大量の二酸化炭素を排出しています。
また、ガスコンロや石油ストーブを利用する際には、燃料となるガスや灯油を燃焼することでも、二酸化炭素は排出されます。他にも、冷蔵庫やエアコン、電子機器の充電によって、電気を利用することも、発電所で二酸化炭素を排出しています。
ここまで見てきた3つからわかるように、私たちの生活が便利になる一方で、地球に悪影響を与えているのです。
では、地球温暖化によって私たちは、どのような影響を受けるのでしょうか。
地球温暖化による環境への影響①気候変動
近年、長引く干ばつや豪雨など、世界各地で異常気象が発生しています。
これは温暖化が、地球の気候システムを変えてしまったと考えられているのです。また、それに伴い生態系や海洋への影響見られるようになりました。
温暖化による気候変動の影響は、地域によって異なります。
⑴海に囲まれた地域である日本と、⑵陸に囲まれた地域で別々に見ていきましょう。
気候変動の影響(1)日本では大雨が増えた
もともと1950年~1960年代にかけては大きな災害といえば台風が一般的で、集中豪雨による被害はほとんどありませんでした。
ところが、2000年以降の20年間の間で、気象庁が特別に命名するほどの集中豪雨が10件以上発生しています。
例えば「令和2年7月豪雨」も記憶に新しい災害といえるでしょう。西日本から東日本、東北地方の広い範囲で大雨が降り、長野県や高知県の多い所では総降水量が2,000ミリを超えました。
また、
- 九州南部
- 九州北部地方
- 東海地方
- 東北地方
などの多くの地点で、24、48、72時間降水量が観測史上1位の値を超える、歴史的な大雨となっています。
気象庁が発表した「気候変動レポート2018」によると、大雨が増える原因として、“地球温暖化による気温の長期的な上昇傾向とともに、大気中の水蒸気量も長期的に増加傾向にあることが考えられる”としています。
また、このレポートでは“更に詳細な調査が必要であるが、今回の豪雨には、地球温暖化に伴う水蒸気量の増加の寄与もあった可能性がある”と報告。
はっきりとした結論は出ていないものの、日本における大雨の増加は、地球温暖化が原因となっているかもしれないのです。
気候変動の影響(2)陸に囲まれた地域では、干ばつや森林火災が発生
陸に囲まれた地域、例えばアメリカやカナダでは、干ばつや砂漠化、森林火災などが発生しています。
上記のグラフでは色が濃くなるほど、干ばつの状態がひどくなっていることを示しています。
干ばつとは長い間雨が降らない現象のことです。干ばつは砂漠化の原因のひとつであり、正常だった土地が生活しにくい環境へと変わってしまいます。アメリカでは特に西部の干ばつを問題視しており、(図のオレンジ、赤、濃い赤の部分)その範囲も南から北の国境まで幅広くなっています。
これにより、農業や牧場主の給水手段が限られるだけでなく、極度の乾燥によって山火事や森林火災が発生するなどの問題が出てきています。
地球温暖化による環境への影響②生態系の変化
温暖化によって地球の平均気温が上昇することで、生態系も変化する可能性があります。
例えば、人間を襲うこともある危険な昆虫「ヒアリ」が、日本にもコンテナや貨物と一緒に運ばれてきたことがニュースで報じられたことがありました。
本来ヒアリは南米中部に生息する昆虫ですが、
- 温暖化によって生息可能地域が広がった
- 他の生物たちが温暖化によって減少している
などを理由に世界中で生息地を拡大しています。
日本では冬の気候に耐えられないため数が目立たなくなったと考えられていますが、温暖化によって暖冬になる地域が増えると、冬を越せるヒアリも出てくるかもしれません。
地球温暖化による環境への影響②海洋の変化
温暖化による影響は海洋にも及びます。ここでは海洋酸性化と海面上昇について取り上げます。
海洋酸性化
この海洋酸性化は、世界全体で見られるようになりました。
上図は、1990年1月の海洋表面のpH(水素イオン濃度指数)を示しています。1990年は一部酸性化している海域があるものの、ほぼ全域で弱アルカリ性を示していることがわかります。
続いて、2020年1月のデータを見ていきましょう!
海面のpH(※)は、産業革命前に比べてすでに0.1程度低下していると予測されており、pHの0.1の低下は水素イオン濃度で約26%の増加に相当します。
また、海面で吸収された二酸化炭素は、海の中での循環や生物活動によって海全体に運ばれ蓄積し、海洋内部での海洋酸性化も指摘されています。
海洋酸性化が進む原因として、大気中に排出される二酸化炭素量が関係していると考えられています。
海洋酸性化が進むと、海水中の化学的な性質が変化し、二酸化炭素の吸収率が低下することが予想されています。
海が大気から二酸化炭素を吸収する能力が下がると、大気中に残る二酸化炭素の割合が増加することで、地球温暖化が加速する恐れがあるのです。
また海の酸性化は、
- 植物プランクトン
- 動物プランクトン
- サンゴ
- 貝類や甲殻類
など、さまざまな海洋生物の成長や繁殖に影響が及び、海洋の生態系に大きな変化が起きると考えられています。
実際、近年の研究によって、海洋酸性化がサンゴの成長を阻害することが発表されました。とはいえ、この研究では気候変動や海洋酸性化が生物に与える影響はまだまだ不明な点も多いと記しており、さらなる研究の必要性もあると結んでいます。
海面上昇
海面上昇とは、その名の通り海洋の平均水位の上昇のことです。具体的には、1902年~2010年の間に世界の平均海面水位は0.12~0.21m上昇したとされており、最近の数十年で加速度的に上昇しています。
海面上昇は、温暖化によって海水が温まることによる熱膨張や、氷山、氷床が溶けることが原因とされています。
海面上昇による被害はオセアニアにある島国ツバルにて、目立つ形であらわれています。ツバルは約26平方キロメートルの小さな島国ですが、海面上昇によって沈没するのではないかといわれています。
実際、海面が高くなる満潮の時期には、標高の高い地域が水に浸かってしまうという事態に陥っているのです。このまま温暖化によって海面が上昇していけば、いつか完全にツバルが沈んでしまう危険性があります。
ツバルと同じ島国である日本も例外ではありません。気象庁によると、2020年の日本沿岸の平均海面水位は、平年に比べて87mm高く、統計を開始した1906年以降で最も高くなったと発表しています。
これにより、沿岸部における高潮被害のリスクが増大すると指摘しています。
世界・日本企業の地球温暖化対策に関する取り組み
ここまで読んでわかるように、温暖化による影響は世界的にも無視できないものとなっています。
そんな中、温暖化対策に取り組む企業も増えているのです。ここでは、実際に温暖化対策に取り組んでいる企業を紹介します。
【100%の脱炭素化を宣言】Apple
iPhoneやMacbookなど様々な製品を世界中で展開しているAppleは2030年までに、サプライチェーンの100%カーボンニュートラル(脱炭素化)達成を約束しました。
この取り組みを実現するために、Appleはこれからの10年間の以下のような具体的なロードマップを公開しています。
自社製品には低炭素の再生材料を利用するだけでなく、これまでにない方法で製品のリサイクルにも従事し、可能な限りエネルギー効率が良くなるように努める
「Apple、2030年までにサプライチェーンの100%カーボンニュートラル達成を約束」
Apple本社は100%再生可能エネルギーで運営していくだけでなく、新規の電力プロジェクトをおこし、全てのサプライチェーン全体をクリーンエネルギーに移行させる
「Apple、2030年までにサプライチェーンの100%カーボンニュートラル達成を約束」
世界的な企業がこのような取り組みを行うのは、市民に温暖化対策を積極的に行う姿勢を見せるだけでなく、関連企業にも大きな影響を与えます。
Appleに製品の部品や原材料を供給していた企業は世界各国に70社以上存在しています。この宣言を通してこれらの企業も脱炭素に取り組む流れとなってきたのです。
気候変動に対する取り組みは地球規模で展開する必要があるため、関連企業も巻きこんだ取り組みは、温暖化対策効果的なものといえるでしょう。
【脱炭素の発電事業を目指す】株式会社JERA
株式会社JERAは東京電力と中部電力の火力発電部門が統合して設立されました。
JERAは再生可能エネルギーと、二酸化炭素を排出しない火力発電を利用して、2050年までに二酸化炭素排出量ゼロを目指しています。
従来の石炭による火力発電は、大量に二酸化炭素を排出することが問題視されていました。
この現状を受け、JERAでは燃焼時に二酸化炭素を出さないアンモニアを化石燃料に混ぜ、環境への負荷を軽減してます。最終的にはアンモニアだけを燃料にした二酸化炭素を出さない火力発電所も計画しています。そして、この方法の火力発電を本格的に運用していくことで、2030年をめどに石炭による火力発電所の廃止を目指しているとのことです。
地球温暖化対策として私たちにできること
温暖化対策は、私たち個人も取り組むべき課題です。ここでは、誰でも簡単に取り組める温暖化対策を紹介します。
宅配の再配達をなくす
温暖化対策にはとにかく、二酸化炭素を排出しない生活を心がけることが重要です。そのために、まずは宅配の再発をなくすことからはじめてみましょう!
ネットショッピングの普及によって、宅配便の再配達という問題も注目されているのです。
国土交通省によると、再配達のトラックから排出されるCO2の量は年間でおよそ42万トンと推計されており、地球環境に負荷を与えています。
配達の時間に自宅にいるように努めたり、宅配ボックスや置き配を積極的に利用するだけでも再配達を減らし、温暖化対策につながります。
>>宅配ボックスや置き配に取り組む生駒市の記事はこちらから。
電気の利用量を減らす
発電所の二酸化炭素の排出量については先述しましたが、実際に電気を利用するのは私たちです。そのため、一人ひとりが無駄な電気の利用を減らすことも間接的に温暖化対策になります。
具体的には、
- 利用していない部屋の電気を消す
- 使用していない家電はコンセントから抜き、待機電力をなくす
- 冷房の設定温度を1℃高く、暖房の温度を1℃低く設定し、極力エアコンに頼らないで過ごす
などを意識すると良いでしょう!
プラスチックの利用を減らす
プラスチックは水に強く、耐久力もあるため、梱包材や容器などの使い捨て用品をはじめ、あらゆるところで利用されています。
これらのプラスチックを作る際には、原料として石油や天然ガスが使用されており、生産するにしても廃棄するにしても二酸化炭素を排出してしまいます。
そのため、現在、企業ではプラスチック製のストローから紙製ストローへの転換、レジ袋の有料化など、あらゆる場面でプラスチック利用量の削減に取り組んでいます。
個人としては、
- レジ袋はもらわず、エコバックを使用
- ペットボトルではなくマイボトルを持参する
など、身近なところから始めると良いでしょう!
企業が大規模に行う温暖化対策に比べると、私たちの取り組みは小さいものとも考えられます。しかし、温暖化に対して危機感を持ち、対策を行う空気を作っていくことも非常に大事なことです。
紹介したことはどれもほんの少しのことなので、ぜひ普段の生活に取り入れてみてください。
地球温暖化とSDGs目標13「気候変動に具体的な対策を」
最後に補足として地球温暖化とSDGsの関係も見ていきましょう!
SDGsとは、2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標です。
17個の目標と、それぞれを達成するための具体的な指標である169のターゲットで構成されており、全ての国連加盟国が賛同し、SDGsの達成に取り組んでいます。
ほとんどの目標に環境に関する記載があり、温暖化対策を行うことはSDGsと強い関係があります。
そしてその中でもSDGs目標13「気候変動に具体的な対策を」では気候変動に対する具体的な到達点が示されています。
SDGs目標13では海面の水位の上昇や、世界のあらゆる国で頻繁に起きている豪雨や洪水、猛暑による干ばつなどの気候変動への対応を掲げています。温暖化を抑制するための取り組みを進めていくことで、目標13の達成に貢献します。
まとめ:地球温暖化はみんなが向き合わなければいけない課題
地球温暖化はすでに進んでおり、その影響は確実に広がっています。
地球温暖化を防ぐためには、温室効果ガスをできるだけ排出しない社会を目指す必要があり、私たちにとっても関係のない話ではありません。
地球がこれからも人が住みつづけられるかどうかは、これからの私たちの行動にかかっています。ぜひこの記事をきっかけに、自分ができることから対策を始めてみてはいかがでしょうか!
参考文献
気象庁 二酸化炭素濃度の経年変化
経済産業省 資源エネルギー庁 電力調査統計
気象庁 気候変動監視レポート2018
NOAA Western drought 2021 spotlight: Arizona
WWF Japan 地球温暖化による野生生物への影響
国立研究開発法人 国立環境研究所 地球温暖化と海洋酸性化が日本近海のサンゴ分布に及ぼす影響の予測に初めて成功
気象庁 世界の過去および将来の海面水位変化
気象庁 令和3年報道発表資料