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Gold Standard(GS)とは?特徴やメリット・デメリット、導入企業事例も

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持続可能な未来を切り開く鍵、Gold Standard(GS)を知っていますか?Gold Standard(GS)は現在急速に市場が成長しているカーボン・クレジットの国際的に認知度の高い認証機関です。

カーボン・クレジット市場におけるGold Standard(GS)の重要性を、仕組みからしっかりと理解しておきましょう。信頼できるクレジット認証機関と評価されるGold Standard(GS)の特徴やメリット・デメリット、導入企業事例をわかりやすく解説します。

Gold Standard(GS)とは

Gold Standard(以降GS)とは、気候変動対策と持続可能な開発の目標を高いレベルで実現するための革新的な基準を掲げており、国際的に認知度が高く、信頼性の高いカーボン・クレジット※認証機関と評価されています。

2003年にWWFやその他の国際NGOによって設立されたこの機関は、環境保全と社会的責任の完全性を高め、プロジェクトが生み出すポジティブな影響を信頼できる方法で測定、報告、検証することを目指しています。GSはカーボン・クレジットの中でも、特に近年注目されているボランタリー・クレジット※に分類され、その厳格な基準と多様な方法論は、国際的に高く評価されています。

【カーボン・クレジットの大まかな分類】

カーボン・クレジット

温室効果ガスの排出削減・吸収量を1トンあたり1クレジットとして計量化し、取引可能な証書にしたもの。

【カーボン・クレジットの考え方】

【関連記事】カーボンクレジットとは?仕組みや種類、ビジネスの活用事例、個人で取引可能?

ボランタリー・クレジット

国連や政府の規制に基づくものではなく、企業や個人の自主的な取り組みとして購入されるカーボン・クレジット。ボランタリー・クレジットは、以下の2つの側面から定義される。

  1. 民間認証機関による認証に基づいて発行されること
  2. 法的な排出削減義務の履行ではなく、自主的な取り組みとして購入されること

【関連記事】ボランタリー・クレジットとは?種類や日本の現状、購入方法も

立ち上げ背景

2000年代初頭、地球温暖化問題は深刻化していました。当時、国連主導のカーボン・クレジットとして、「クリーン開発メカニズム(CDM)」が存在していましたが、以下のような問題がありました。

環境への悪影響

CDMプロジェクトの中には、環境保護に貢献する一方で、意図せず環境に悪影響を与えてしまったケースがありました。例えば、

  • 森林伐植
    CDMプロジェクトの中には、森林を伐採してプランテーションを造成したり、水力発電ダム建設のために森林を伐採したりするケースがありました。これらのプロジェクトは、森林破壊による二酸化炭素排出量の増加や、生物多様性の減少などの問題を引き起こしました。
  • 水資源枯渇
    水力発電プロジェクトは、CDMプロジェクトの中でも比較的多く実施されています。しかし、水力発電ダムの建設は、河川生態系の破壊や、下流地域の水資源枯渇などの問題を引き起こす可能性があります。
  • 土壌汚染
    バイオマス発電プロジェクトでは、バイオ燃料の生産過程で農薬や化学肥料が使用されることがあります。これらの化学物質は、土壌や水質汚染を引き起こす可能性があります。

などが、問題として報告されました。

地域社会への悪影響

CDMプロジェクトの中には、地域住民の土地を強制的に取得したり、住民の意見を十分に聞かずに実施したりするケースもありました。このようなプロジェクトは、地域住民の生活や文化を破壊する可能性があります。

透明性の欠如

CDMは当時、プロジェクトに関する情報公開が不十分でした。CDMでは、プロジェクトの概要や排出削減量などの情報は公開されていましたが、その詳細な情報や、環境影響評価の結果などは非公開であるケースが見られました。

CDMでは、プロジェクトの開始後に情報が公開されるケースが多く、事前評価や意思決定に役立てることが難しい状況だった上に、情報の信頼性を検証する十分な仕組みがありませんでした。

カーボン・クレジット市場が成長し始める中、このようなCDMの問題を解決し、より効果的で持続可能な気候変動対策と開発を促進するための枠組みを提供するカーボン・クレジットの認証機関として、GSは立ち上げられました。*1)

Gold Standard(GS)の特徴

GSは、気候変動対策と持続可能な開発における革新的な基準として、その

  • 信頼性
  • SDGsへの貢献
  • ジェンダーに配慮した設計
  • 透明性と公平性

の高い基準により、他のボランタリー・クレジットと一線を画しています。

信頼性の高い基準

GSは、堅牢性が高く、カスタマイズ可能な設計により、気候変動対策と持続可能な開発の取り組みに対する信頼性の高いクレジット認証機関とされています。このことからGSは、

  • 環境と地域社会の保護に重点を置きプロジェクトが意図しない悪影響を回避
  • リスクを最小限に抑えるための強力な保護手段

などを提供します。

持続可能な開発目標(SDGs)への貢献

GSは、単なる排出削減にとどまらず、SDGs目標達成への貢献にも強いこだわりを持っています。GSのクレジット認定では、少なくとも3つのSDGs目標に対してポジティブな影響を与えることが求められます。

幅広いSDGs目標達成に向けて利益をもたらすことで、GSは気候変動対策を超えた社会的価値を創造しています。

ジェンダーに配慮した設計

GSでは、ジェンダー平等と女性のエンパワーメントを重視しています。認定されるすべての活動は、ジェンダーの観点から社会全体の状況を考慮し、ジェンダー平等および女性のエンパワーメント要件に準拠する必要があります。このアプローチにより、GSは、プロジェクトが地域社会に与える影響をより公正かつ包括的に評価することを目指しています。

透明性と公平性

GSは、ISEAL※のコードに準拠した最初の気候変動中心の基準として、透明性、公平性、利害関係者の関与、苦情処理などの高い基準を設定しています。これにより、GS認定プロジェクトは、そのプロセスと成果において高い信頼性と説明責任を確保しています。

ISEAL(International Social and Environmental Accreditation and Labelling Alliance)

社会的および環境的課題に取り組む組織が持つべき基準や認証プロセスを確立し、信頼性を高めるための国際的な枠組み。GSの信頼性の高い認証もISEALの枠組みに準拠している。

これらの特徴は、GSが環境保全と社会的責任の完全性を高めるための強力なツールとして活用される理由を明確にしています。

Gold Standard(GS)の認証プロセス

GSは他のカーボンクレジット制度と比較して、

  • 社会的、環境的利益を最大化することに重点を置く
  • ステークホルダーの参加を促進する独自のアプローチを採用している

などの特徴があります。この認証プロセスによって、プロジェクトが環境保護やSDGs目標にどのように貢献しているかを明確にし、その影響を正確に測定することを目指しています。

GSの認証プロセスを確認していきましょう。

【GS認証を受けたクレジット発行までの流れ】

① プロジェクトの企画

GS認証を目指すプロジェクトは、まず、その目標、範囲、予想される影響などを明確にする必要があります。この段階では、プロジェクトがGSの基準に適合しているかどうか、そしてそのプロジェクトが社会や環境に対してポジティブな影響を与える可能性があるかを検討します。

②方法論の選択と適用

GSの認証プロセスでは、プロジェクトの影響を正確に測定するための方法論が重要です。プロジェクトは、GSが認める既存の方法論を選択するか、または新たな方法論を開発して申請する必要があります。

この方法論は、プロジェクトの種類や目的に応じて適切なものを選ぶ必要があり、その後、GSによる承認を受ける必要があります。

③ステークホルダーの参加

GSは、プロジェクトの計画と実施において、地域社会や関係者の参加を非常に重要視しています。プロジェクト企画段階で、関係者との協議を行い、意見や懸念を収集することが求められます。このプロセスを通じて、プロジェクトが地域社会に受け入れられ、より大きな影響を生むことができるようになります。

④監査と検証

プロジェクトの計画と方法論がGSの基準に適合していることが確認された後、独立した第三者の検証検証機関による監査が行われます。この監査は、プロジェクトが計画通りに実施され、予想される影響が実際に達成されているかを確認するためのものです。このプロセスを通じて、プロジェクトの信頼性と透明性が保証されます。

⑤認証と登録

監査を通過したプロジェクトは、最終的にGSによって認証され、公式に登録されます。これにより、プロジェクトはGS認証を受けたことを公に示すことができ、カーボンクレジットを発行し、市場で販売することが可能になります。

GSの認証プロセスは、その厳格さと透明性により、カーボンクレジット市場において高い信頼性を確保しています。GS認証を受けたプロジェクトに投資することは、気候変動対策だけでなく、社会的、環境的な利益をもたらす効果的な投資と言えます。*2)

Gold Standard(GS)のメリット

GSのクレジットやシステムを利用すると、どのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは

  • 政府や国連が主導するカーボン・クレジット
  • 他のボランタリー・クレジット

それぞれと比較しながら、GSのメリットを考えていきます。

政府や国連が主導するカーボンクレジットとの比較

政府や国連が主導するカーボンクレジット制度と比較して、GSのクレジットは、プロジェクトの影響をより詳細に測定し、透明性を高める点で優れています。例えば、国連のクリーン開発メカニズム(CDM)は、途上国での排出削減プロジェクトを通じてカーボンクレジットを発行します。一方のGSはこれに加え、プロジェクトが地域社会に与える社会的、環境的な利益も重視します。

このように、GSは気候変動対策における効果だけでなく、プロジェクトが持続可能な開発にどのように貢献するかも評価するため、より包括的なアプローチを取っています。

他のボランタリー・クレジットとの比較

他のボランタリー・クレジット制度と比較して、GSは特に厳格な基準と検証プロセスを有しています。多くのボランタリー・クレジット制度では、排出削減や炭素吸収の効果を証明するための基準が異なりますが、GSはその効果を確実に測定し、報告するための詳細なガイドラインを提供しています。

また、GS認定プロジェクトは、独立した第三者による厳格な監査を受ける必要があり、これにより、投資者や購入者は、そのクレジットが本当に意味のある環境的、社会的影響を生んでいることを確信することができます。

システムの透明性と信頼性

GSは、そのプロセスの透明性とプロジェクトの信頼性において、他のカーボンクレジット制度と一線を画しています。プロジェクトの申請から認証、監査に至るまでの全過程は公開されており、誰もがアクセスして情報を確認することができます。

これにより、GSは市場における信頼性の高い基準として位置づけられ、投資者や購入者からの信頼を集めています。また、GSはSDGsへの貢献を重視しており、その影響は単に温室効果ガス排出量の削減に留まらず、より広範な社会的、環境的な利益に及びます。

つまり、GSは政府や国連が主導するカーボンクレジットとの比較すると、

  • より厳格な基準に基づいて認証されている
  • 持続可能な開発への貢献に重点を置いている
  • 多様なプロジェクトから選択できる

などのメリットがあると言えます。また、他のボランタリー・クレジットと比較すると、

  • より厳格な基準に基づいて認証されている
  • 独立機関による検証が行われている
  • 国際的な認知度が高い

などのメリットがあります。これらのメリットや特徴から、GSは、国連開発計画(UNDP)※や世界銀行などの国際機関からも支持されています。

国連開発計画(UNDP)

1965年に設立された国連の主要な開発期間の1つで、貧困削減、民主主義の促進、危機の防止と復興、環境保護、気候変動対策などの活動を世界170カ国以上の地域で行っている。

Gold Standard(GS)のデメリット・問題点

信頼性と確実性が高い認証制度として評価されているGSですが、いくつかのデメリットや問題点も指摘されています。

認証プロセスの複雑さとコスト

GSの認証プロセスは、その厳格さから非常に複雑であり、多くの時間とコストがかかることが指摘されています。他のボランタリー・クレジットや国連が主導するカーボンクレジット制度と比較しても、GSのプロジェクトが認証を受けるまでの手続きはより煩雑であると言えます。

このため、小規模なプロジェクトや資金力の限られた組織にとっては、GSの認証を受けることが難しい場合があります。また、高いコストは最終的にカーボンクレジットの価格に反映されるため、購入者にとっても負担が大きくなる可能性があります。

効果の実証の難しさ

GSは、プロジェクトが社会的、環境的に持続可能な利益をもたらすことを保証しますが、これらの効果を実証することは容易ではありません。他のカーボン・クレジットにも言えることですが、特に社会的な影響や長期的な環境への貢献を量的に評価することは困難であり、プロジェクトの真の価値を反映しているかどうかについて疑問が残る場合があります。

アクセスの制限

GSの認証を受けたプロジェクトは、その信頼性と効果の高さから高い評価を受けていますが、この制度へのアクセスが限られていることも問題点の1つです。例えば、厳格な基準と高いコストが原因で、特に発展途上国や小規模な団体がGSの認証を受けることが難しい場合があるのです。

このように、GSのメリットを享受できるのは、一定の資金力や専門知識を持ったプロジェクトに限られる傾向があり、カーボンクレジットの普及において障壁となっている側面が指摘されています。

これらの課題を理解し、適切に対処することが、カーボン・クレジットをより効果的に、そして公平に活用するための鍵となります。GSの高い信頼性と厳格な基準ゆえの問題点や課題もありますが、今後のカーボン・クレジット市場の成長のためにも、これらの解決となるシステムの開発が求められます。*3)

Gold Standard(GS)のクレジット購入方法

ここでは、GSの大まかな購入方法について、わかりやすく解説していきます。

①排出量を削減する

GSは、クレジットを購入する以前に、まず私たち自身が温室効果ガスの排出量を削減しなければならないと考えています。日常生活でのエネルギー使用の見直しや、公共交通機関の利用、省エネ製品への切り替えなど、小さな変化を積み重ねることで、大きな削減効果が期待できます。

②必要なクレジット量を計算する

自身ができる限りの排出量を削減した後は、残りの排出量について、どれだけのカーボン・クレジットが必要かを計算します。GSでは

  • イギリスに住んでいる人はWWF UK
  • アメリカに住んでいる人はCoolClimate Calculator

の排出量計算ツールを利用することを推奨しています。また、日本では環境省が温室効果ガス排出量を計算するツールを提供しているほか、専門の業者やアプリなどさまざまな方法で計算することができます。

③プロジェクトを選択する

GSのマーケットプレイスでは、さまざまな環境保護プロジェクトから、自身の目的に合ったクレジットを選ぶことができます。風力発電や改良された調理用ストーブなど、プロジェクトによって得られる効果が異なります。そのため、自分の関心や目的に合ったプロジェクトを選択しましょう。

④クレジットを購入する

選んだプロジェクトに基づいて、必要なカーボンクレジットの数を購入します。カーボンクレジットは、大気中から削減または除去されたCO2の1トンに相当するもので、購入はトン単位で行われます。

価格はプロジェクトによって異なりますが、その価値を理解し、より意味のある選択を心がけることが大切です。*4)

Gold Standard(GS)を導入している企業事例

GSは、環境への取り組みを認証する重要なボランタリー・クレジットとして広く活用されています。この認証制度を導入している企業事例として、マイクロソフト出光興産を紹介します。

世界の企業事例:Microsoft(マイクロソフト)

マイクロソフトは、GSの認証を受けたカーボン・クレジットを活用して、さまざまなプロジェクトに投資し、カーボン・オフセットを実現しています。マイクロソフトは、Microsoft Cloud for Sustainability ソリューション※の一環として、「Environmental Credit Service」※ を発表しています。

このサービスは、炭素クレジットの透明性を高め、クレジット作成プロセスを通じて由来を追跡する機能を提供します。マイクロソフトは、持続可能な管理を実現した牧草地の炭素除去クレジットを購入しています。

Microsoft Cloud for Sustainability ソリューション

マイクロソフト独自の、企業が環境への影響を可視化、削減、報告するための包括的なソリューション。データ統合と分析、目標設定と進捗管理、削減対策の実行、報告と開示などで構成されている。

Environmental Credit Service 

マイクロソフトが提供する、企業が環境への影響を軽減し、持続可能な社会の実現に貢献するための革新的なサービス。高品質なカーボン・クレジットの購入、排出量削減目標の達成支援、透明性の高い追跡システム、専門家のサポートなどによって、環境への貢献と同時に、企業の経済活動にもプラスの影響を与えることを目指す。

マイクロソフトは、自社によるすべてのCO2排出に責任を持ち、2030年までに排出量を半減し、排出量以上を除去することを目指しています。

日本の企業事例:出光興産株式会社

【海上油田への再エネ電力供給】

出光興産株式会社は、VerraやGSに認証されたカーボン・クレジットを活用して、原油の海上輸送中の燃料消費に伴うCO2排出量削減を実現する取り組みを行っています。この取り組みは、出光タンカー株式会社が所有する大型原油タンカー「日章丸」を使用し、日本中東間の海上輸送においてカーボンクレジットの環境価値を活用しています。

出光興産は、大型原油タンカー「日章丸」で日本と中東間の海上輸送を行う際に、カーボン・クレジットを活用しています。具体的には、「日章丸」の航海中に排出される二酸化炭素の排出量を削減するために、GSのクレジットを通して森林保護プロジェクトなどに投資しています。

この取り組みにより、これまでに1万トンのCO2排出量のカーボン・オフセットが実現されました。出光興産は2030年のビジョンとして「責任ある変革者」を掲げ、地球環境や社会課題の解決に向けて積極的に取り組んでいます。

これらの事例は、他の企業にも良い影響を与えることが期待できます。このように、企業がGSを採用することで、地球環境への貢献や社会的影響を最大化し、持続可能な社会の実現に向けてカーボン・クレジット市場の活性化に貢献します。*5)

Gold Standard(GS)とSDGs

GSとSDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)は、密接な関係を持ち、互いに補完し合いながら、より良い未来への道を開拓しています。GSとSDGsは、地球環境保護と社会課題解決という共通の目標を掲げ、異なるアプローチで共通の目標を達成しようとしています。

GSはまた、SDGsとの連携を重視しており、認証プロセスにおいてSDGsへの貢献度評価を必須項目としています。特に関連の深いSDGs目標を確認しましょう。

SDGs目標7:エネルギーをみんなに そしてクリーンに

GS認証を受けたプロジェクトは、再生可能エネルギーの普及やエネルギー効率の向上を通じて、クリーンで持続可能なエネルギーへのアクセスを促進します。例えば、太陽光発電や風力発電などのプロジェクトがこの目標に直接貢献し、地域社会に清潔で安全なエネルギーを提供することで、エネルギー問題の解決に一役買っています。

SDGs目標13:気候変動に具体的な対策を

GSは、中でも目標13「気候変動に具体的な対策を」に具体的な対策を提供し、目標達成に向けて重要な役割を果たしています。GSは、気候変動に関連するプロジェクトを厳格な基準に沿って認証し、二酸化炭素排出削減や再生可能エネルギーの普及などの取り組みを支援しています。

GSの認証を受けたプロジェクトは、信頼性が高く、国際的な支持を得やすいため、気候変動に対する取り組みの効果がより大きくなると言えます。

SDGs目標15:陸の豊かさも守ろう

GSは、森林保護や生物多様性の維持など、陸の生態系を保護し、持続可能な資源管理を推進するプロジェクトを認証しています。これにより、森林破壊の防止や土地劣化の抑制など、陸の豊かさを守るための取り組みが支援されています。

GSの認証を受けたプロジェクトは、陸の生態系への影響を最小限に抑えつつ、社会経済的な利益をもたらす取り組みを行うため、持続可能な陸の管理が促進されます。

SDGs目標17:パートナーシップで目標を達成しよう

GSは、SDGs目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」でも重要な役割を担います。GSは、企業、NGO、政府など、さまざまなステークホルダーと協力し、持続可能な開発に向けた取り組みを推進しています。

また、GSの認証プロセスは、パートナーシップを重視し、異なる組織間での連携や協力を促進するための枠組みを提供しています。異なるステークホルダーが連携し、知識や資源を共有することで、より包括的で効果的な解決策が生まれ、持続可能な社会の構築が進むことが期待できます。

このように、GSは他のカーボン・クレジットに比べて、より包括的で信頼性の高い認証プロセスを持ち、SDGsの目標達成に向けたプロジェクトに積極的に貢献しています。そのため、GS認証は持続可能な開発に取り組む企業やプロジェクトにとって、重要な手段の1つとなっています。*6)

>>各目標に関する詳しい記事はこちらから

まとめ

GS(Gold Standard)は、カーボン・クレジットの中でもボランタリー・クレジットに分類されることや、それぞれのクレジットの特徴をおさえておきましょう。GSは、厳格な基準と透明性の高い認証プロセスにより、SDGsの達成に貢献するプロジェクトを積極的に支援しています。

世界・日本のカーボン・クレジット市場は今後さらなる成長が予想されています。特に、ボランタリー・クレジットの需要は増加する傾向にあり、GSのような信頼性の高い認証機関によるクレジットが注目を集めています。

カーボン・クレジット市場の成長は、地球環境や人間社会にポジティブな影響をもたらすことが期待されています。クレジット取引を通じて、温室効果ガス排出削減や持続可能な開発への投資が促進され、気候変動や生物多様性の保全などの課題に対処するためのプロジェクトが資金をより獲得しやすくなるでしょう。

GSをはじめ、カーボン・クレジットについての正しい知識を身につけ、積極的にカーボン・クレジット市場に参加することで、世界のさまざまな場所での環境や社会を改善するプロジェクトへの支援ができるのです。また、企業・団体・個人などの、努力しても削減しきれない温室効果ガスの排出量をカーボン・オフセットという形で相殺する手段は、今後さらに社会に広がっていくでしょう。

カーボン・クレジット市場は、地球環境と人間社会の未来を大きく左右する重要な市場です。あなたもこの新しい市場に興味を持って、その活性化の支援につながる行動を始めてみてはいかがでしょうか。*7)

<参考・引用文献>
*1)Gold Standard(GS)とは
Gold Standard『Launch of “Funding Beyond Value Chain Mitigation – Step by step guidance for organisations taking responsibility for their emissions』
Gold Standard『Gold Standard Marketplace:Support high integrity projects』
Gold Standard『Our Standard』(2024年3月)
経済産業省『ー国内外におけるクレジット活用拡大動向についてー』(2021年3月)
経済産業省『カーボン・クレジット・レポートの概要』(2022年6月)
カーボンクレジットとは?仕組みや種類、ビジネスの活用事例、個人で取引可能?
ボランタリー・クレジットとは?種類や日本の現状、購入方法も
*2)Gold Standard(GS)の特徴・Gold Standard(GS)の認証プロセス
環境省『海外 VER の概要』
Gold Standard『Certification Process』(2024年3月)
Gold Standard『The Standard Structure』(2024年3月)
*3)Gold Standard(GS)のメリット・Gold Standard(GS)のデメリット・問題点
日本総研『カーボン・クレジットがもたらす効果と課題~効率的な脱炭素と家計の脱炭素意識の醸成に向けて~ 』(2022年7月)
NRI『GX(グリーントランスフォーメーション)の実現を支えるカーボンクレジット・排出量取引』(2023年3月)
日本CSR普及協会『カーボンクレジット取引の法的その他の問題点』(2022年5月)
経済産業省『カーボン・クレジット・レポートの概要』(2022年6月)
*4)Gold Standard(GS)のクレジット購入方法
Gold Standard『How to Reduce your Climate Impact and Contribute to Sustainable Development』(2024年3月)
*5)Gold Standard(GS)を導入している企業事例
Microsoft『2022年環境持続可能性レポート』
Microsoft『ネット・ゼロ達成のための炭素除去市場を実現するシステムの開発』(2021年12月)
Microsoft『2030 年までにカーボンネガティブを実現』(2020年1月)
Microsoft『Environmental Credit Service で炭素クレジットの透明性を高める』(2022年11月)
Microsoft『物流業界における Sustainability Transformation〜CO2 削減に向けて〜Volume.1 (全 3 回)』(2023年1月)
Microsoft『マイクロソフトにおける炭素除去の取り組み』(2022年3月)
日本経済新聞『「自主的オフセット」広がる マイクロソフトなど 温暖化ガス実質ゼロへ』(2020年12月)
idemitsu『カーボンニュートラル、気候変動対応』
idemitsu『当社グループ初のカーボンニュートラル海上輸送を実施 カーボンクレジットを活用し、日本~中東往復の航海で発生するCO2約1万トンをオフセット』(2021年11月)
idemitsu『環境マネジメント』
*6)Gold Standard(GS)とSDGs
経済産業省『SDGs』
Gold Standard『Gold Standard Digital SDG Impact tool.A one stop solution for reporting, quantifying and verifying SDG impacts.』
Gold Standard『We are all about impact』(2024年3月)
*7)まとめ
環境省『金融機関向けポートフォリオ・カーボン分析を起点とした脱炭素化実践ガイダンス』(2023年3月)
環境省『カーボンプライシングの活用に関する小委員会(第18回) 議事録』(2021年11月)
環境省『成長志向型カーボンプライシング構想について』(2023年2月)
CDP『SBTの観点からカーボンプライシングを考える』