株式会社グリーンロード 加藤さん インタビュー
加藤 雄太
取締役 経営企画室 室長1984年生まれ。2008年金沢大学大学院を卒業後、大手システム会社に入社。その後、オールドマーケットである不動産業界にて、IT系の知識を武器にテック系のサービスの立ち上げを行う。「新しい贈り物の文化の創造」を目指しているグリーンロードのビジネスや「人の気持ちを届ける」という理念に共感し、2023年より弊社にジョイン。
introduction
幸せの象徴のような「祝い花」。とはいえ、大規模な祝典などに集まる大量の花飾りは、その扱いや廃棄の際に受け手に大きな負担ももたらします。贈る側と贈られる側の間に立って双方の労力を省き、贈り手個々の気持ちを金銭で募り「ひとまとめの祝い花」にするグリーンロード。フラワーロスやCO₂の削減など、環境課題の解決にもつながるシステムです。
今回は、同社の加藤さんに、慣習を越えた画期的なシステム「matomeru」を中心として、「花と緑」をめぐる様々な挑戦を伺いました。
真に届けたいのは、花や緑に託した「人の気持ち」
–まずは、業務の概要をご紹介ください。
加藤さん:
企業様のお祝い事に際しての「祝い花」や、オフィスなどに置く「観葉植物」を取り扱う会社です。大きな特徴のひとつは、お買い取りであれレンタルであれ、お客様のご要望を取り入れながら、「花と緑」をどう活かして飾るかをプロデュースし、デザインさせていただくことです。
もうひとつの特徴は、花や観葉植物の仕入れ、デザイン、納品、メンテナンス、廃棄など、全てを弊社が一気通貫で手がけさせていただくことです。
具体的には、空間プロデュース事業、グリーンレンタル事業、お祝い花おまとめシステム「matomeru」の運営、花と緑の総合販売ECサイト「withHana」の運営をしています。実店舗も運営しておりますが、9割がBtoBでの事業になります。
その中でも弊社独自のシステム「matomeru」のシステムでは、お祝い事にまつわる「贈る側」「贈られる側」の様々な労力を代行します。お祝い金を募り、祝い花をひとつにまとめて創作することによって、フラワーロスの削減など、環境課題の解決にも様々に寄与する事業となっています。
-掲げるビジョン、ミッションはどのようなものですか?
加藤さん:
経営理念として、「花と緑という媒体を通じて人の気持ちを届ける」という言葉を掲げています。贈られる花や観葉植物は「もの」ですが、そこには人の心やお祝いの気持ちがこもっています。我々がその「人の気持ち」の媒介者となることをとても大切にしており、贈り花のデザインや観葉植物を選定する時も、配送/納品/メンテナンスをし、やがて撤収する時も、すべてがその経営理念に結びついています。
弊社のロゴマークは、マーガレットをモチーフとしています。その花言葉は「真実の愛」「誠実な心」です。ロゴの「交差する二つの花」のデザインは、花と緑を媒体として、人と人、心と心をつなぐ、想いを届けるという弊社の仕事と理念を表しています。手のひらを模した葉のかたちは、人の想いを人の「手」で届けるということを表現しています。
オフィスで気軽に楽しめる、サステナブルなグリーンレンタル
-それでは、空間プロデュース事業から伺います。どのような顧客に、どのような流れで「花と緑のスペース」を作り上げるのですか?
加藤さん:
オフィスの移転やリニューアル、ハウスメーカー様が新しいモデルルームを作る時など、様々な状況で「緑を入れたい」場合、植物への専門知識がある弊社にご依頼があります。そこからは、コンサルティング的な話し合いを重ね、「このような空間にしたい」というお望みに添って、その実現方法やデザインのご提案をします。
コンセプトが決まると、それに応じてさらに詳細なデザインを行い、ご希望に添う植物のスペースを創り上げます。狭い面積であっても、壁面グリーン(Wall green)といって、壁に観葉植物を配して緑を楽しむことも可能です。
また、店舗のディスプレイで空間プロデュースをさせていただく際には、ブランドや商品のコンセプトに合わせた装飾で、お客様を迎えるおもてなしの気持ちを表現します。イベントプロモーションやパーティーなどでは、ステージやブースを装飾し、華やかさを演出します。お客様のご意向を反映し、契約期間中のメンテナンス、終了してからの撤収もすべて弊社が行います。
-グリーンレンタルについて伺います。システムのご解説に合わせ、依頼側やSDGs視点からのメリットもお聞かせください。
加藤さん:
グリーンレンタル事業は、基本的に観葉植物を対象とします。企業様のオフィスや不動産系のモデルルームなどにご依頼をいただくことが多いですね。ご予算に応じて、お好みの観葉植物をご提供し、基本は二週間ごとにメンテナンスを行います。契約終了時は、他の事業と同様、撤収や廃棄まですべて弊社が行います。
ご依頼側のメリットは、植物の専門知識を持たなくても、水やりや剪定などのケアも不要で緑を楽しんでいただけることです。本来のお仕事を損なう労力を削減することができますし、職場にグリーンがあることで、従業員様の心の癒しにもなり得ます。
「グリーンが人に及ぼす影響」の実証研究も様々に進んでいます。現在、グリーンをオフィスに取り入れることで、どのように従業員様の仕事へのモチベーション、満足度、癒し効果に変化があるかなどの研究も共同で進めています。
グリーンが実際に従業員様の心身の健康を維持することができれば、私たちとしても嬉しい限りです。
弊社のグリーンレンタル事業では、SDGs的な視点にも力を入れています。花ですと短期間で廃棄になる量がきわめて多く、フラワーロスとして問題化されてもいます。観葉植物の場合、うまく管理すれば数か月~数年の単位で長く楽しむことが出来ます。弊社では、契約が終了した植物を捨てることはせず、状態に応じてではありますが、温室で養生して元気な姿に戻し、再び送り出します。サステナブルな循環ができる点で、グリーン類は非常に有益です。
また、観葉植物には、水やりの頻度、日当たりを好むか好まないか、剪定の必要性の有無など、様々な個性があります。専門知識がないままに、単に好みでグリーンを買い求めた結果、扱いを誤って早々に枯らしてしまうことがままあるんです。その点、弊社のグリーンレンタルでは、そのオフィスのどの場所に置くかを見定め、そこに適した植物をチョイスすることができます。メンテナンスの成果もありますが、その意味でもロスを削減できています。
「贈る側」「贈られる側」「環境課題」のすべてがハッピー
-次に「matomeru」について伺います。お中元、お歳暮を始め、儀礼的な贈答文化が昔から根付いている日本において、ステークホルダーの祝いの気持ちをお金で募り、「ひとまとめの祝い花」としてすべてを代行する、というのは画期的なシステムですね。その発想はどこから生まれたのでしょうか?
加藤さん:
リアルな「花屋」でもあるからこそ、見えてくる背景がありました。例えば、大企業様で何か大きな祝い事があった場合、100鉢レベルで胡蝶蘭が一度に届く、というようなこともあります。弊社は胡蝶蘭を扱う花屋でもあるため、そのような現場に立ち会う事も少なくないのですが、その状況が、贈る側にとっても贈られる側にとっても、様々な時代背景の中で必ずしもハッピーとは言い切れない、ということです。
また、祝い花定番の胡蝶蘭は、とても綺麗ですし、もらうと大変嬉しいものではあるのですが、鉢も大きく、土の量も多いため、廃棄する処分費と労力も多大にかかってしまうという面も持ち合わせています。
そのような中で、祝い花を贈る側の企業様、贈られる側の企業様、その双方へのヒアリングを重ねたのですが、率直な想いを様々に伺えました。贈る側からは、「花の相場がよく分からない」「贈るタイミングが難しい」「祝い事が終わってすぐに捨てられるともったいない」などが多く聞かれました。
贈られる側からは、たくさんの花飾りを置くスペースがない、会社のイメージに合わない場合がある、きれいな状態を保つメンテナンスや廃棄処分に労力やお金を使う、多忙な中でお礼状などの手配が大変、などの反応が主なものでした。
贈る側も贈られる側も、双方にとって良い「祝い花」とは?という問いを追及した結果、ひとつにまとめる新時代の祝い花システム「matomeru」が誕生しました。
-システムの内容を詳しく教えてください。
加藤さん:
祝い事のある企業様とのご契約が成立した段階で、その企業様専用の「お祝い受付窓口ページ」を開設します。企業様は、通常は祝い事の案内状をステークホルダーに出しますので、そちらに「matomeru」のご説明と「お祝い受付窓口ページ」のURLを添えさせていただきます。
贈り主様に対する「matomeru」のご説明では、「お祝いの気持ち」が最も有効に生きるシステムであることを伝えます。かつ、フラワーロスの削減や、環境保全団体への寄付へつながる事など「環境課題の解決」にもつながる旨を記し、贈り主様にご賛同いただける要因のひとつとなっています。
お祝い金の額については、1万円、3万円、5万円など、他にも自由に設定する事が可能です。かつ、どの企業様がどのプランを選択したかは、祝われる側の企業様にリストとして開示されます。従来の日本の美徳として、金額の分からない個々の祝い花のほうが慎ましいと見る向きもあるかもしれません。ですが、実情としては、このシステムは企業様双方から大変好評をいただいています。ビジネスの観点から言えばきわめて合理的だからです。
ひとつにまとめた祝い花のオブジェの横には、お祝い金出資企業様のご芳名をボードか札のかたちで展示させていただきます。「お祝い受付窓口ページ」には、参加企業様からの祝い金がどのような贈り物となったかをご報告するページもあり、写真なども添えた詳細をご覧いただけます。結果のご報告も個々にさせていただきます。
お祝い金総額の使い方はそれぞれであり、すべてを「祝い花」とする場合もあれば、一部をそこに当てて、残りはオフィスのグリーンレンタルを選ばれたり、寄付に回されたりと様々です。コストゼロで様々な楽しみ方をご選択いただけることも好評で、ここをオフィスのグリーン化の第一歩とされる企業様も少なくありません。
現在、150社を越える企業様にご利用いただいております。アンケートの結果、贈る側、贈られる側、双方の満足度はきわめて高いものとなっています。
古い慣習を越える「お祝いプラットフォーマー」を目指す
-古くから続いてきた慣習の変革ですね。単なる合理化ではなく、双方にとって最もハッピーなかたちという点でも感動的です。SDGsの視点からの貢献についても、もう少し詳しくご紹介いただけますか。
加藤さん:
フラワーロスの削減に関しては、最も貢献度が高いと思います。「祝い花が集まりすぎて、置くスペースがなく、早々に廃棄となる」ことを防ぎますが、それ以外にも、様々なロス削減につながっています。
例えば、胡蝶蘭は大変高価な花ですが、大きさが均一でなかったり、花の向きが揃わなかったり、小さくても傷があったりすると、廃棄される運命にあります。ところが、弊社の「ひとつにまとめた祝い花」では、花の集合体として創作しますので、一鉢では廃棄扱いとなる胡蝶蘭も、存分に活かすことができます。もちろん、すべての花においても同様です。そのために、一部の花の生産者様と連携していますが、その数をもっと増やしたいところです。
展示が終わった祝い花のうち、まだ元気な花々は、花束にして社員様にお持ち帰りいただいていますが、しおれて廃棄する花やグリーンの二次利用も検討中です。まだ模索中ではありますが、花やグリーンの廃棄を徹底的になくして循環させていくことを目指しています。
大規模な祝い事では、祝い花の輸送回数も莫大です。例えば100鉢のための100回の輸送が一度で済むことで、CO₂を大きく削減できます。鉢や土についても、同様に大幅に廃棄を削減できています。SDGsの「つくる責任つかう責任」が果たせていると自負しています。
職場の「緑視率」を増やすことによる社員様の心身への貢献や、それらの植物の世話や様々な対応を代行することでも、皆様の働く環境の整えになっていると感じています。
-最後に、今後の展望をお聞かせください。
加藤さん:
「matomeru」は非常に合理的であり、かつ様々なロスを削減できるシステムですので、今後の日本の祝い花の「スタンダード」にしたいと本気で考えています。先駆者として、〈お祝いといえば「matomeru」〉となるようなプラットフォーム化をしていきたいんです。
「祝い花」のみならず、他のかたちにおいても、祝い事についてなら「matomeru」に様々な選択肢がある。そのような「お祝いプラットフォーマー」になろう、と話し合っています。
ひと昔前は、結婚式の引出物も、あえて嵩の大きな物を用意したりして、もらう側は、苦労して持ち帰っても不要で廃棄、などということがままありました。今の最先端では、紙のカタログさえ越えて、小さなカード一枚の「QRコード」という「引出物」も出てきました。スマホでラインアップを見て、好きな物をオーダーできるわけです。
慣習的な美徳という文化はまだありますが、使う側からは時代に合わないということが多々あります。今の時代に合わせ、SDGsも考慮しながら、お祝いの仕方もカスタマイズしていくことを目指しています。
-「祝い花」の慣習を越えられたプロセスにリスペクトを感じます。今日はありがとうございました。
株式会社グリーンロード公式HP:https://green-road.co.jp/
オンラインショップ公式HP: https://with-hana.jp/
matomeruトップページ:https://matomeru-oiwai.jp/