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【2023年最新版】ハンガーマップとは?わかることや私たちにできることを紹介

国際連合食糧農業機関(FAO)「Hunger Map」

みなさんは、世界で飢餓に苦しんでいる人々がどのくらいいるのか知っていますか?世界で8億人以上、10人に1人が飢餓状態にあると言われています。今回紹介する「ハンガーマップ」は、世界の飢餓状況について学ぶ際に役立つツールです。ぜひ参考にしてみてください。

ハンガーマップとは

ハンガーマップとは、世界の飢餓(*)状況を一目で分かるように表した地図のことです。世界の農林水産業の発展に取り組む国連の機関「国際連合食糧農業機関(FAO)」が毎年作成しており、オンラインで無料で閲覧することができます。

飢餓とは

飢餓とは、身長に対して妥当とされる最低限の体重を維持し、軽度の活動を行うのに必要なエネルギー(カロリー数)を摂取できていない状態のこと。

参考:国連世界食糧計画(WFP)「世界の飢餓状況」

ハンガーマップリアルタイムとは

国際連合食糧農業機関(FAO)は、ハンガーマップをリアルタイムで発信しています。目まぐるしく変化する世界情勢の中、最新の情報が手に入るのが特徴的です。さらにマップ上の各国をクリックすると、上の図のように地域ごとの詳細が表示されます。

上の例は2023年5月22日時点のウクライナの飢餓状況です。地域別にかなり細かく飢餓状況を確認することができます。

それでは具体的に、それぞれの色が表す意味を確認していきましょう。

色などの見方について

ハンガーマップは、5段階に色分けされています。飢餓状況が最も深刻な地域は、赤色で示されています。赤色の地域では、住人の40%以上が飢餓に苦しんでいるという状況です。続いて濃いオレンジは30%から40%の飢餓率オレンジは20%から30%黄色は10%から20%となっています。

一方で、黄緑色と緑色の地域では飢餓人口は10%以下で、飢えている人が少ないことを意味します。

2023年最新版のハンガーマップからわかること

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2023年5月時点のハンガーマップで赤色に示されている地域は、コンゴ民主共和国、ウガンダ、ナイジェリアといったアフリカ圏に集中しています。また、アフガニスタン、シリア、北朝鮮も同じく赤色で表示されています。

地域で見るとアフリカ圏が多いですが、飢餓人口が最も多い地域はアジアで、5億人以上が飢餓に苦しんでいるWFP国連世界食糧計画は指摘しています。

問題点

ここで発生する問題点は、ハンガーマップだけではその国の現状は分からないという事実です。「国際協力NGOワールド・ビジョン・ジャパン」によると、飢餓の原因には、

  • 紛争
  • 経済の低迷
  • 干ばつや洪水といった自然災害
  • 新型コロナウイルス感染症のパンデミック

などさまざまです。

これらの要因までハンガーマップで知ることはできないので、解決策を見つけるのであればその国の背景をそれぞれ知る必要があります。

なぜ飢餓はなくならないのか

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飢餓の要因が複数あるように、飢餓がなくならない背景にも複数の理由があります。

例えば貧しい地域では、農業を行うための土地や水を確保できず、食料を生産することができないという背景があります。このような国では輸入に食料を頼りますが、経済の悪化や不平等な貿易で十分な食料が入ってこなくなる可能性があるのです。

また、教育が受けられない子供が多い地域では、知識がないために貧困から抜け出せず食料を得られないという悪循環に陥ります。気候変動の場合、主要作物の生産状況が悪化し、農家の収入減少や食糧価格高騰を引き起こします。
このように、飢餓は環境・教育・政治が関わる複雑な問題なのです。

ウクライナ危機が世界の食糧不足を悪化

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飢餓の要因は、上で紹介したような慢性的なものだけではありません。その例がロシアのウクライナ侵攻です。

国際連合食糧農業機関(FAO)によると、ロシアは世界1位、ウクライナは世界5位の小麦の輸出国です。しかし、ロシアの侵略によりウクライナの穀物輸出が滞り開発途上国を中心に食糧危機に陥っているのです。

特にウクライナ産の小麦は先進国で生産される小麦に比べ安く、経済的に脆弱な国ほどウクライナに依存している傾向にあり、供給不足の影響を大きく受けてしまいます。

このように、食糧の輸入先の状況に影響され突発的な飢餓につながるケースもあります。

飢餓をなくすための取り組み

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飢餓はその国や地域だけで解決することは難しく、外からの支援が必要となることが多い傾向にあります。そこで、国連世界食糧計画(WFP)や国連食料農業機関(FAO)といった機関を中心に食糧支援を行っています。

具体的には、

  • 学校給食支援
  • 災害時の緊急支援
  • 母子栄養支援

などの支援を通じて飢餓に苦しむ人々に食料を届けています。

最も重要とされる「自立支援」

飢餓をなくすための取り組みの中でも、自立支援は特に重要です。自立支援とは、地域の人々が自立し生活していけるように支援をすることを意味します。自立支援では、道路や農地の開拓といったインフラ整備だけでなく、農業研修など教育も重要です。

農業技術が進んでいる日本は、飢餓で苦しむ開発途上国に豆類や芋類の生産性向上のための技術提供をアジア・アフリカ各地で行っています。この活動も、自立支援の事例です。

参考:農林水産省「平成31年度ODA予算等概算決定の事業概要」

飢餓をなくすために私たちができること

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私たちができる支援は、世界の飢餓の現状を正しく理解するところから始まります。ハンガーマップを参考に、どの地域で飢餓が深刻なのかを学び、飢餓の原因を学びましょう。

また、飢餓の状況を知る上で、食料廃棄量について学ぶことも大切です。国際連合食糧農業機関の報告書によると、世界では生産された食料の約3分の1が廃棄されています。日本でも1年間に約612万トンの食料が捨てられ、その量は日本人1人がお茶碗1杯分のごはんを食べられる相当のものになります。

食料廃棄について現在の状況が続けば、先進国内で食料が捨てられ続け、必要な地域に届かないままとなってしまいます。まずは、余ってしまいそうな食品はフードバンクを利用し寄付するなど、食品ロスを減らす工夫をしましょう。

参考:農林水産省「食品ロスの現状」

支援は継続的に

食品ロスを減らす他に、金銭的な支援をすることができます。

現在世界では、飢餓問題を解決すべく、国際機関や多くのNPO、NGOが活動を行っています。例えば「認定NPO法人国連WFP協会」は、緊急時や飢餓が深刻な地域に食料支援を届けています。また、「ハンガー・フリー・ワールド」は、飢餓に苦しむ国々の政府や企業、地域社会に研修を提供し、自立支援を行っています。

これらの活動に必要な費用の一部は寄付でまかなわれていることも多く、金銭的な支援間接的に飢餓に苦しむ人々を助けることにつながります。災害や紛争時の「緊急支援」や子供たちのための「学校給食プログラム」、「母子栄養支援」など、寄付の使途を選択して支援ができる団体も多く、寄付したお金がどこで使われるかが分かるので安心です。

可能であれば継続的に行うことで、大きな支援となるでしょう。

ハンガーマップとSDGsの関係

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ハンガーマップは、持続可能な開発目標(SDGs)と大きな関わりを持っています。

SDGsとは、2015年9月の国連サミットで採択された世界共通の目標です。環境問題・差別・貧困・人権問題といった課題を解決することを目標とし、17のゴールと169のターゲットで構成されています。置き去りになる国や人々が出てこないよう、「誰ひとり取り残さない」ことを原則にしています。

目標2「飢餓をゼロに」

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17のゴールの2番目には飢餓をゼロにというゴールが掲げられています。具体的には、

”飢餓を終わらせ、食料安全保障および栄養改善を実現し、持続可能な農業を促進する。”

ことを目標としています。

言葉が難しいので3つのポイントをまとめると、

  1. 飢餓をなくすこと
  2. 全ての人々が十分な栄養を摂ることができること
  3. 持続可能な農業を確立すること

まず飢餓をなくすためには、飢餓とは何か、どの地域で深刻なのか、どうやって解決するかを学ばなくてはなりません。そこで役立つのがハンガーマップです。ハンガーマップを通して正確な情報を知ることでアクションにつながります。

「飢餓をゼロに」の達成は、他の目標にも関わる

飢餓を撲滅することは、SDGsの他の目標達成にも大きく関係しています。

例えば飢餓に苦しんでいる家庭では、幼い子どもたちが食料確保のために家庭のために働かなければならず、教育を受けられません。これは、飢餓の撲滅無くして目標4「質の高い教育をみんなに」の達成はできないことを意味しています。

sdgs4

他にも、飢餓は環境問題や平等な貿易とも関わりが強く、目標13「気候変動に具体的な対策を」や目標10「人や国の不平等をなくそう」などの達成に関わっています。

まとめ

ハンガーマップを見ると、世界には飢餓に苦しむ人々がたくさんいることが一目で分かります。その背景には紛争や環境問題、不平等な貿易など、さまざまな課題が存在します。

緊急支援と自立支援を通してこれらの問題を解決することは、SDGs全体のゴール達成に関わります。

誰ひとり取り残されない社会を作るためにも、飢餓問題について向き合い、私たちにできることから始めたいですね。

参考

国際連合食糧農業機関(FAO)「Hunger Map」
国連世界食糧計画(WFP)「世界の飢餓状況」
国際協力NGOワールド・ビジョン・ジャパン「飢餓の解決策は?飢餓の現状と原因を知ろう」
国際連合食糧農業機関(FAO)
農林水産省「平成31年度ODA予算等概算決定の事業概要」
農林水産省「食品ロスの現状」