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開発途上国のインフラ不足に関する現状は?解決に向けた支援や取り組みも紹介

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安全な水や清潔なトイレ、勉強や仕事で使う電気やインターネット、そして通勤に使う道路など。私たちの周りに整備されているインフラは、生活や経済発展に不可欠な存在です。しかし、世界にはこれらのインフラが不足している国や地域があります。この記事では、開発途上国のインフラの現状や取り組みを紹介します。

開発途上国のインフラ不足の現状

JICAによると、インフラが不足している国や地域のほとんどが開発途上国だと指摘しています。インフラの整備は主に、

  • 政府予算による公共投資
  • 公共投資を支援するためのODAや国際金融機関による支援
  • 民間資金の活用

によって行われますが、開発途上国では政府予算が少なく、そもそも投資できる額が少ないのです。そのため、支援を待つしかない状態となっており、インフラがなかなか整備されない現状があります。

インフラ整備率

インフラ整備率とは、その国や地域で生活や産業を支えとなる基盤がどのくらい整っているかを示します。開発途上国のインフラ整備率は、高所得国の平均と比較すると約10分の1まで劣っています。

さらに国際連合広報センターは、世界人口の約4分の1が電気インフラがない未電化地域で暮らしていると発表しています。これは最低限の電気を使えない人々の割合のため、料理や暖房といった目的で電気を使えない人口はさらに多いと推測されます。

また、どんな天気にも耐えられる耐水性・耐熱性を備えた道路にアクセスできない人口は、世界で約20億人以上、衛生的な水には約21億人という状態にあります。

インフラ需要の拡大

このような背景のなかで、近年では人口増加に伴い、開発途上国を中心に都市化が進んでいます。上の経済産業省が作成した図は、1950年以来の主要新興国・地域の都市化の様子と、今後の予想を表しています。

中国や東南アジア、インド、サブサハラアフリカは今後急速に都市化を進めると予想されており、同時に、電力・運輸・建設などインフラの需要が高まります。

インフラが不足することで起きる問題

インフラが不足すると、

  • 生活水準が下がる
  • 経済発展の妨げとなる

といった問題が発生します。

生活水準が下がる

インフラが不足すると、安全な水や食糧へのアクセスがなくなったり、病院や学校に通えなくなったりします。基本的な社会サービスにアクセスできないと、生活の質が下がり、貧しい生活を余儀なくされます。また、何時間も歩いて水を汲みに行かなくてはならなかったり、夜は暗くて学習ができなかったりすると、子どもたちの将来の選択肢が狭まってしまいます。

また、国際電気通信連合(ITU)が発表した2022年の統計によると、世界の約29億人がインターネットにアクセスできない環境下で暮らしており、その約9割が開発途上国です。ユニセフは、インターネットにアクセスできないことは、子どもや若者の間でデジタル格差を引き起こし、近代経済の中で競う力を培えなくなると指摘しています。

経済発展の妨げとなる

インフラの不足は、その国や地域の経済発展の妨げとなります。ビジネスにおいて、新しい技術や起業アイディアが出てきたとしても、必要な設備が整っていなければ実現は難しいでしょう。

世界銀行の調査によると、停電の多い南アジアの停電による損失は、年間売り上げの6.6%に及びます。高所得各国では停電による損失は1%以下に止まることからも、この差を埋めていく必要があります。

【関連記事】【2023年版】発展途上国とは?開発途上国との違いや貧困問題、日本の支援・できることを解説

開発途上国のインフラ不足解決に向けた支援や取り組み

開発途上国や地域の開発は、政府開発援助(ODA)を中心に行われています。政府開発援助とは、開発途上国の経済や社会の発展を資金や技術協力を通して行う協力のことです。日本の政府開発援助は、技術協力を中心にアジアやアフリカ各国を支援しています。

具体的には、

  • バングラディッシュに交通インフラを支援
  • インドに資金を貸し付ける有償資金協力
  • ネパールで配水管理業務を行う人材の育成

などを行いました。インフラそのものを支援するだけでなく、技術提供・人材育成にも積極的に取り組んでいます。

参考
外務省 政府開発援助(ODA)国別データ集2017
厚生労働省 水ビジネスの海外展開と動向把握の方策に関する調査検討

【関連記事】ODA(政府開発援助)とは?活動内容・日本の取り組み事例と問題点

質の高いインフラ整備が求められる

制約のある財政状況下では、イニシャルコストを重要視しがちですが、安価で整備を実施し運営や管理に費用がかかってしまっては本末転倒です。そこで、2019年に大阪で行われた※G20プロセスでは、「質の高いインフラ投資に関するG20原則」が作成されました。

  • 開放性・透明性
  • ライフサイクルコストを考慮した経済性
  • 債務持続可能性

の3つを原則に掲げ、包摂性と持続可能性を兼ね備えた質の高いインフラ投資をし、開発途上国の経済発展を支えると宣言しました。さらに、制度改善のために民間企業への投融資奨励の拡大なども提示しています。

※G20

アルゼンチン、オーストラリア、ブラジル、カナダ、中国、フランス、ドイツ、インド、インドネシア、イタリア、日本、メキシコ、韓国、南アフリカ共和国、ロシア、サウジアラビア、トルコ、英国、米国、欧州連合(EU)の首脳が参加する枠組

開発途上国のインフラ整備とSDGs

開発途上国のインフラ整備は、2015年に国連サミットで採択されたSDGs(持続可能な開発目標)に深い関わりがあります。SDGsは、「環境」「社会」「経済」を軸に持続可能な世界を実現することを掲げており、インフラ整備はこの3つ全てと切り離せない存在です。

ここでは特に関わりの深い3つの目標を紹介します。

目標6「安全な水とトイレを世界中に」

sdgs6

目標6「安全な水とトイレを世界中に」は、2030年までに、世界中の誰もが安全な水とトイレにアクセスできることを目標としています。その一方で、水道やトイレにアクセスできない人口は開発途上国に多く、早急なインフラ整備が求められます。特にターゲット6.5では、

6.5

2030年までに、国境を越えた適切な協力を含む、あらゆるレベルでの統合的な水資源管理を実施する。

と掲げており、まさに政府開発援助の取り組みがこのターゲットに当てはまります。

目標7「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」

sdgs7

目標7は、全ての人々が電気を使え、さらにはそのエネルギーも安心で安全に使えるものにするために掲げられています。

ターゲット7.bは以下のように掲げています。

7.b

2030年までに、各々の支援プログラムに沿って開発途上国、特に後発開発途上国および小島嶼開発途上国、内陸開発途上国のすべての人々に現代的で持続可能なエネルギーサービスを供給できるよう、インフラ拡大と技術向上を行う。

また、開発途上国でのインフラ拡大を宣言すると同時に再生可能エネルギーを使う方法の割合を大きく増やすことも宣言しているため、新たに導入するインフラの中でも再生可能エネルギーを増やすといった工夫が求められます。

目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」

sdgs9

記事の前半でも述べたように、インフラの不足は経済発展を妨げます。「産業と技術革新の基盤をつくろう」を達成するには、開発途上国のインフラ整備が不可欠です。ターゲットの一番最初に「強靱(レジリエント)なインフラを宣言しており、壊れてもすぐに復旧できるような強いインフラづくりを宣言しています。

>>各目標について詳しくまとめた記事はこちらから

まとめ

開発途上国では、インフラ不足が深刻で、基本的なサービスにアクセスできない人々がいます。インフラが整うことで、生活水準が上がるだけでなく、企業の生産性が向上し、経済発展にもつながります。

開発途上国のインフラ整備の鍵を握るのは、外からの支援で、資金提供だけでなく技術提供や教育支援が重要です。SDGs達成のためにも、政府開発援助を中心にインフラ整備支援を進めていく必要があるでしょう。

参考文献
JICA「インフラ不足による発展の阻害」
国際連合センター「エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」
ユニセフ「教育危機自宅でネット使えない子ども、13億人デジタル格差が引き起こす教育格差」
外務省 政府開発援助(ODA)国別データ集2017
厚生労働省 水ビジネスの海外展開と動向把握の方策に関する調査検討