近年、SDGsやサステナブルな取り組みが注目されるようになり、「自分も何かしよう」と考える人が増えています。しかし中には、「何から始めればよいのだろう」と悩む人もいるでしょう。そこで注目したいのが、「国際認証ラベル」です。
本記事では、国際認証ラベルが注目されている理由や種類、販売している場所などをまとめました。まずは、国際認証ラベルとは何かを知りましょう。
国際認証ラベルとは
国際認証ラベルとは、人や地域、社会、環境に配慮した製品であることを証明する国際的なラベルです。別名「サステナブル・ラベル」とも呼ばれており、第三者機関が安全性や品質などに関する基準を設けて審査を行い、合格した商品のみについています。
国際認証ラベルは何の役に立つ?
現在、世界的に森林破壊や海洋汚染などの環境問題、児童労働や格差などの社会問題など、様々な課題を抱えています。国際認証ラベルが普及し、消費者がラベルのついた商品を積極的に選択できるようになれば、これらの問題の解消につながると期待されているのです。
例えば、「MSC認証ラベル」。このラベルは、ルールを守り持続可能で環境と社会に配慮した漁業によって獲られた水産物や加工品についています。そのため、MSC認証ラベルのついた製品の購入は、過剰漁業の防止や海洋環境と生態系の保護につながります。
国際認証ラベルが注目されている理由
続いては、国際認証ラベルがなぜ注目されているのかを見ていきましょう。
SDGsの目標達成や認証製品を取り扱う事業者の増加につながると期待されている
SDGsは、2015年に開催された国連総会にて、193カ国が賛同した国際目標です。世界中で起きている、環境・社会・経済の課題解決を目指し、17の目標と169のターゲットが設定されました。
17の目標を達成するためには、個人の行動も重要です。そして、個人が取り組みやすいアクションの1つに買い物があり、近年は社会的課題の解決を考慮したり、課題に取り組む企業や団体を応援しながら消費活動を行ったりする「エシカル消費」が求められています。
このような背景もあり、国際認証ラベルのついた製品の普及や適切な管理をする事業者が増えると、環境や社会に配慮していない不適切な製品が淘汰されていくことも期待されているのです。
国際認証ラベル一覧
ここからは、実際に使用されている国際認証ラベルを見ていきます。
国際フェアトレード認証ラベル
国際フェアトレード認証ラベルは、製品に使用される原料の生産から輸出や輸入、加工、製造の過程で、国際フェアトレード基準が守られていることを証明するラベルです。
国際フェアトレード基準では、
- 必ず生産者と適正価格での取り引きを行う
- 奨励金(プレミアム)の保証
- 適切な労働環境や人権保護
- 農薬や薬品の使用削減と適正管理
- 土壌や水源、生物多様性の保護
などが定められています。
そのため、私たちが国際フェアトレード認証ラベルのついた製品を選択することによって、持続可能な生産と公平な貿易を実現し、貧困や環境問題の改善につながるのです。
国際フェアトレード認証ラベルは、
- コーヒーや紅茶(ハーブティー)
- チョコレート
- コットン
- スパイス
- ごま
- 花
- バナナ
- ジャム
- スポーツ用のボール
など、さまざまな製品についています。
最近は、イオントップバリュ株式会社や、日本でも人気のチョコレート「Galler(ガレー)」を取り扱う加藤貿易のように、フェアトレード認証製品を販売する企業も増えています。専用のコーナーが設けられていることも多いため、探してみましょう。
レインフォレスト・アライアンス認証マーク
カエルのイラストが印象的なレインフォレスト・アライアンス認証マークは、生産している農園の持続可能性や農作物の輸入、加工する企業の生産流通の方法やトレーサビリティが確認できることを示すマークです。
このマークは、
- 農園の環境
- 土壌や水を含む天然資源
- 生態系や生物多様性
を守り、労働者の労働条件や家族、地域社会なども含む教育や福祉分野に関する厳しい基準を満たしている農園のみに与えられます。
主に、
- コーヒー
- 紅茶
- チョコレート
- バナナ
- メロン
- ろうそく
などについています。
私たちの身近なものでいうと、ローソンの「マチカフェ」で使用されているコーヒー豆が、レインフォレスト・アライアンス認証のものです。
GOTS認証
Tシャツが描かれたこのラベルは、「Global Organic Textile Standard(GOTS)」と呼ばれており、オーガニック繊維製品の認証ラベルです。衣類や寝具、タオル、ベビーカー、糸、布など、繊維製品全般が対象となります。
ラベルは下記のように2種類あり、左側が原料にオーガニックを95%以上使用した場合、右側が、70%以上95%未満使用した場合です。このように、オーガニック原材料の含有率によって使い分けられています。
またGOTS認証は、原料繊維がオーガニックであること以外に、
- 原材料の収穫から加工、製造、流通まで、すべての過程において環境や社会に配慮している
- 一般製品と混ざっていない、汚染されないように管理されている
などの証明にもなります。
認証基準は厳しく、
- オーガニック繊維を70%以上使用している
- 加工もオーガニックな方法で行う
- 遺伝子組換技術の使用禁止
- 水やエネルギーの使用に関する環境目標の設定
- 毒性のある薬剤の使用禁止
- 衛生的で安全な労働環境の保持
- 搾取や差別のない労働条件
- トレーサビリティ(生産履歴の追跡可能性)が確保されている
などが設定されており、第三者によって審査・認証されます。
日本では、オーガニックコットンの衣類や小物を販売する「PRISTINE」や、GOTS認証を国内で初めて受けた「TENERITA」などが取り扱っています。
MSC認証ラベル
別名「海のエコラベル」とも呼ばれている「MSC認証ラベル」は、水産資源と環境に配慮し、持続可能な方法で獲られた天然の水産物だということを証明するラベルです。主に、水産物や水産物を使用した加工食品などについています。
そしてMSC認証ラベルは、下記2つをクリアすることによって表示できます。
- 漁業認証:環境に配慮した持続可能な漁業のための原則を満たしている
- CoC認証:認証された漁業で獲った水産物を、「CoC認証」を取得した企業が、流通から製造、加工、販売のすべての過程を適切に管理する
現在、世界の水産資源の3分の1は、獲られすぎている状態です。このままでは、将来食べられなくなる水産物が出てくるかもしれません。そういった事態を防ぐために、持続可能な漁業のもと、水産資源を適切に管理していく必要があります。
MSC認証ラベルのついた水産物は、環境に配慮し適切に管理されています。私たちが、認証ラベルのついた製品を選択することによって、海洋環境や水産資源の保全につながるのです。
最近は、イオントップバリュ株式会社や株式会社セブン&アイ・ホールディングスなど、自社製品にMSC認証の水産物を使用する企業も増えています。
ASC認証ラベル
先述したMSC認証ラベルと似ていますが、こちらは「環境と社会に配慮した、責任ある養殖場で育った水産物」であることを示すラベルです。ASC認証ラベルと呼ばれており、水産養殖管理協議会(ASC)が設ける厳しい基準と、加工や流通過程の審査(CoC認証)をクリアすることによって承認されます。
年々拡大している養殖業界ですが、海洋環境の悪化やエサとなる天然水産物の減少、労働条件の問題、周辺地域との関係性など、さまざまな課題を抱えています。ASC認証ラベルの製品を選択することは、環境と社会に配慮した責任ある養殖場を増やし、これらの解決につながるのです。
ASC認証を取得した水産物を取り扱う企業は、株式会社ニッスイやイオントップバリュ株式会社などが挙げられます。
【関連記事】MSCが推進するMSC認証ラベルとは?商品一覧と日本で普及しない理由
FSC認証ラベル
木のマークが目印である「FSC認証ラベル」は、森に生息する動植物や近隣に暮らす住民に配慮し、持続可能な森を維持できるように管理された場所で採れた木材であることを示すラベルです。
森林の管理を認証するFM認証と、加工・流通過程の管理を認証するCoC認証から成ります。
そして、FSC認証製品は主に、
- 木材製品
- パルプや紙製品
- 非木材製品
の3つに分けられます。
身近なものでいうと、
- 製品のパッケージや容器
- 年賀はがき
- 生理用ナプキンやペット用シーツに使用される吸収材
- 飲食店で使用されている持ち帰り容器
- 製品の配送箱
- カミソリの持ち手部分
- 鉛筆(色鉛筆)
などに使用されています。
企業での導入も進んでおり、スターバックス・コーヒーでは、紙コップや持ち帰り用のペーパーバック、ペーパーナプキンなどにFSC認証紙を導入。イケア・ジャパンでは、販売している製品の材料に、FSC認証木材やリサイクル材を使用しています。
【関連記事】FSCとは?メリット・デメリット、FSC認証ラベルがついた商品の紹介も
RSPO認証ラベル
RSPO認証ラベルは、持続可能なパーム油の生産や使用に貢献した製品であることを証明するラベルです。このラベルは、アブラヤシ農園の開発によって起きた熱帯雨林の破壊や、生産国での人権労働問題を改善するためにつくられました。
現在、アブラヤシから採れるパーム油は、
- カップ麺
- お菓子
- パン
- 化粧品やパーソナルケア用品
- 洗剤
- 医薬品
- バイオ燃料
など、幅広く使用されています。
他の植物油に比べて単位面積辺りの収穫量が非常に高いうえに、値段も安いため1990年代から需要が伸びはじめました。そういった理由から、アブラヤシ農園の開発が急速に行われたのです。
しかし、
- 農園の場所を確保するために熱帯雨林や湿地を伐採
- 代々土地を管理してきた先住民や地域住民の同意を得ずに開発を進める
- パーム油工場が温室効果ガスを大量に排出
- 劣悪な環境での低賃金と不当な扱い
- 児童労働
など、多くの問題が発生しました。
RSPO認証ラベルのついた製品を購入する人が増えることによって、持続可能なパーム油製品の生産や購買、利用の促進が期待されます。
日本では、日清食品ホールディングスが、2019年3月から国内すべてのカップヌードル製造工場でRSPO認証油の調達を開始。花王株式会社は使用するパーム油を、2025年までに100%RSPO認証油に切り替えることを目指しています。
国際認証ラベルがついた商品はどこで売っている?
最後に、国際認証ラベルがついた商品がどこで売られているのか確認しましょう。
スーパーマーケット
食料品や日用品を販売しているスーパーマーケットの中には、イオンや日本生活共同組合連合会(コープ)のように、国際認証ラベルのついた製品を取り扱っている店舗も増えています。MSC/ASC認証ラベルや国際フェアトレード認証ラベル、RSPO認証ラベルなど、さまざまな認証ラベルのついた製品が置いてあるため、手に入れやすいでしょう。
コンビニ
カップ麺やチョコレート、海鮮系の加工食品、コーヒーなどが手に入るコンビニも、国際認証ラベルのついた製品を購入できます。例えば、セブンイレブンの「ハイカカオチョコレート」には、国際フェアトレード認証ラベルが、ファミリーマートでは、ファミチキを購入した際に入れる袋に、FSC認証を受けた紙を使用しています。
専門店
国際認証ラベルの製品を専門に取り扱うお店もあります。その代表的なものが、国際フェアトレード認証ラベルです。近年、フェアトレードの普及活動が世界的に進んでおり、地域全体で普及活動を行う「フェアトレードタウン」も誕生しています。
フェアトレードタウン認定の基準の中には、「人口1万人あたり、フェアトレード認証製品を扱うお店が、1店舗以上存在しなければならない」というものが含まれています。そのためフェアトレードタウンには、認証製品を置くお店や専門店が多いのです。
現在、日本でフェアトレードタウンに認定された都市は、
- 熊本県熊本市
- 愛知県名古屋市
- 神奈川県逗子市
- 静岡県浜松市
- 北海道札幌市
- 三重県いなべ市
の5つです。
住んでいる方は、国際フェアトレード認証ラベルのついた製品を手に取りやすいと思うので、探してみてください。
【関連記事】フェアトレードタウンとは?日本と世界の取り組み事例、メリットを解説
公式サイトから検索・注文する
各認証ラベルの公式サイトから、販売しているお店や場所を検索する方法もあります。サイト内の、「認証商品の紹介」や「認証を受けた企業や店舗の紹介」などと書いてあるページを探し、検索してみましょう。
まとめ
世界的に人や地域、社会、環境に配慮した製品であることを証明する国際認証ラベルは、SDGsやサステナブルな取り組み、各分野が抱える問題などによって、近年注目が高まっています。アクション自体も、「国際認証ラベルのついた製品を選択するだけ」のため、「何をすればいいのかわからない」「忙しくてもできるアクションが知りたい」という人にもおすすめです。
まずは、どのような国際認証ラベルがあるのか、なぜつくられたのか、その背景まで知りましょう。そうすることによって、「ただ、社会貢献につながるから購入する」から、「どのような問題の解決につながるから、この認証ラベルのついた製品を購入する」となります。
自分が行っているアクションに、どのような意味や効果があるかを理解することによって、アクション自体の重みも変わってくるはずです。
〈参考文献〉
エシカル消費とは|消費者庁
日本各地のフェアトレードタウン運動|Fair Trade Forum Japan
持続可能な資源利用と環境汚染の防止|株式会社ファミリーマート
MSC海のエコラベル商品|日本生活協同組合連合会
2022年の活動|花王株式会社
持続可能な調達|日清食品グループ
RSPO(持続可能なパーム油のための円卓会議)認証について|WWFジャパン
木が優れた素材であるさまざまな理由|IKEA
水産エコラベル|株式会社ニッスイ
森も人も持続可能に。スターバックスが選んだ「FSC®認証」とは?|Starbucks Coffee Company
MSC認証水産物を広める企業の取り組み|Marine Stewardship Council
MSC「海のエコラベル」とは|Marine Stewardship Council
サステナブル・ラベルを知ろう!|一般社団法人日本サステナブル・ラベル協会
fairtrade-Million Action campaign|Fairtrade Label Japan
国際認証とサステナブル・ラベルから見る、オーガニック市場の現在と将来展望|一般社団法人日本サステナブル・ラベル協会