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地産地消とは?メリット・デメリットと日本の取り組み例をわかりやすく解説

地産地消のメリットとは?SDGsとの関係や地域の取り組みをわかりやすく紹介

「地産地消」という言葉は以前から目にする機会がありますが、近年は特にSDGs目標の達成に深くかかわる取り組みとして、注目を浴びています。

日本政府も長らく地産地消の活動を推進しているほど、これからの社会において大切な要素です。

今回は、地産地消とは何か?にはじまり、メリットや実際に行われている取り組みを紹介します!

実際に全国で取り組まれている事例を見ながら、地産地消について学びを深めていきましょう。

目次

地産地消とは?

地産地消とは地域で生産された農林水産物をその地域で消費する活動
出典:スペースシップアース

地産地消とは「地域で生産された農林水産物を、その地域で消費する活動」のことです。

「地域生産」と「地域消費」をつなげた略語です。

例えば、

  • 農産物:野菜や果実、お米など
  • 家畜農産物:肉や乳製品など
  • 水産物:魚介類、海藻類など
  • 林産物:木材、チップなど

というように、さまざまな分野で使われます。

地産地消を英語でいうと?

地産地消は英語で、「Local food production and consumption」「Production and consumption of local food」と言われます。

日本、海外問わず、自分が住んでいる土地で生産活動を行う作り手から商品を購入することで、地域の経済活性化や、輸送エネルギーの削減につながります。

さらに近年は、地産地消にもとづいた「6次産業」の動きが広まってきています。

地産地消と6次産業の関わり

では、6次産業とは一体どのようなものでしょうか?詳しく見ていきましょう!

6次産業とは

6次産業とは、「第1次産業から第3次産業までを集約し、豊かな資源の活用・新たな付加価値を生み出す活動」を指します。

農林水産物の生産は「第1次産業」に含まれますが、生産品の加工を行う「第2次産業」、販売を担う「第3次産業」をつなげる動きが活発です。

この3つの数字を掛け合わせた産業が、6次産業ということになります。

では、地産地消と6次産業には、どのような関係があるのでしょうか?

地産地消と6次産業の関係

これまでは、それぞれの産業内完結し、農林業者は生産まで、それを加工するのは加工業者、売るのは販売元と役割分担されていました。

それに対して6次産業は生産者である農林漁業者が加工から販売までを一括して行うのです。これにより農閑期や漁閑期は加工や販売業務にあたれるなど、所得が向上したり、地域内での新たな雇用を産むきっかけとなります。

また、野菜や果実のような新鮮な商品だけでなく、傷モノを利用してジャム・漬物といった加工品も開発すれば、生産物を無駄なく活用することができます。

地元産の商品バリエーションが広がることは、地産地消をサポートしたい消費者にとってもうれしいポイントです!

このように、6次産業は地産地消とも深いかかわりを持つ活動だといえます。

次に地産地消のメリットについて解説していきます。

地産地消のメリット

地産地消のメリット
・費用や環境負荷を抑えられる
・新鮮な食材を購入できる
・地域の活性化につながる
出典:スペースシップアース

実は地産地消のメリットを受けられるのは生産者の方だけではありません。
消費者にとってもメリットのある地産地消について確認していきましょう。

メリット①流通にかかる費用や環境負荷を抑えることができる

日本は、食料自給率が低くたくさんの食品を輸入に頼っています。
輸入に頼るということは、

  • 外国生産地から日本への輸送
  • 日本に到着後、全国各地に輸送

など、輸送に関わるエネルギーを大量に消費してしまいます。

対して、地産地消は地域内で完結することがほとんであるため、輸送に関わるエネルギー消費は少なくて済みます。

近年では、二酸化炭素を中心とする温室効果ガスによって地球温暖化が進んでいる現状がある中で、地産地消を推進することは、環境保全にもつながるのです。

さらに輸送にかかるコストも削減できるので、生産者の所得が高くなるのもメリットです。

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メリット②新鮮な食材を購入できる

地産地消は生産された食べ物が地元で販売されるため、鮮度が保障されています。

鮮度が高い食品は基本的に味が良く栄養価が高いと言われています。
地産地消が広まることで、多くの人が新鮮な食材を手に取りやすくなります。

メリット③地域の活性化につながる

地産地消は生産者と消費者の距離が近いのが特徴です。

また個人間のやり取りだけでなく、農協や地方自治体の取り組みに中高生などの若い世代が関わる事例もあります。
このような事例が増えることで経済が循環し地域全体の活性化にもつながります。

このようにメリットの多い地産地消ですが、デメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。

地産地消のデメリット

さまざまなメリットをあげてきましたが、地産地消にはデメリットもあります。

例えば生産者は今まで以上の能力や労働力が求められるようになります。
また、人件費が高騰することによって販売価格が上がってしまう可能性があるので消費者にとってもデメリットになります。

それぞれについて詳しく解説していきます。

デメリット①生産以外の能力・労働力が必要になる

地産地消に取り組むためには、生産者が販売や宣伝を行う必要があります。
生産者は生産以外の能力を獲得するため学んだり、新しく人を雇う必要があります。

さらにコストをかけて導入しても確実な収益につながる保証がないため、利益が出ない恐れがあります。
安定した利益を出すまでのハードルが高い点は生産者にとってのデメリットとなっています。

デメリット②価格が高騰する可能性がある

流通にかかるコストが抑えられるので地産地消は手に取りやすい価格で販売されることが多いです。
しかし、大量生産が難しい側面があるので大量生産された輸入品と比べると価格が高い場合もあります。

また、地産地消は人件費などのコストが新たにかかるため価格が高騰する可能性もあります。

ここまで地産地消のメリット・デメリットを確認してきました。
実際、地産地消はどのような形で取り入れられているのでしょうか。
地産地消の事例を紹介します。

地産地消の事例①】直売所・道の駅

直売所(農産物直売所)とは販売場所周辺でつくられた農産物・加工品を中心に扱う店舗です。

生産者自身、もしくは農業組合のような団体が運営している場合が多く見られます。

道の駅とは、道路沿いに建てられた大型施設のこと。

従来は主にドライバーに向けた休憩場所のような存在でしたが、今では地域振興を目的に、農産物直売所や飲食店・温泉といったスペースを設けるところが増えています。

どちらの場合も、地産地消を意識した商品ラインナップで、その土地でしか味わえない個性あふれる農産物に出会える点が特徴です。

メリット|生産者の所得向上や、消費者の利便性アップ

一般財団法人都市農山漁村交流活性化機構(まちむら交流きこう)の発表によると、季節限定の店舗を含む直売所は、2017年時点で2万を超える数が存在します。

直売所は古くから経営を続けるところも多く、半数以上は開店後10年が経過している事実から、地元の人々にとって大切な食糧調達の場であることが分かります。

以下の図は、まちむら交流きこうが行なった「直売所の解説目的(上)」と「直売所を開設・運営して生じた効果(下)」を示すグラフです。

直売所の開設前に目的としていた「生産者の所得向上」が、開設後に実現できているケースが多く見られます。

ほかにも「地域の振興」や「地域の拠点づくり」に対して、直売所が大切な役割を果たしていることが分かる調査結果です。

また売り上げの面も前回調査より上昇し、通年の平均客単価が960円から1,115円と好調に見えますね。

デメリット|人件費の高騰も

一見するとメリットばかりのように見える直売所ですが、実は経営面で多くの課題を抱えているのが現実です。

たとえば、先ほど「売り上げが上昇している」と述べましたが、一方で人件費の上昇も著しく、全体の利益が下がっていると回答する店舗も少なくありません。

ほかにも、

  • 運営組織側の高齢化
  • 生産者の高齢化
  • 季節・時間帯によって商品が不足
  • 出荷量、出荷頻度の減少

地産地消の事例②】スーパーなどの量販店

スーパー・量販店のような大規模なお店=同品質の商品を扱う場所、というイメージを持つ方も多くいるかもしれません。

近年は、地産地消に取り組むスーパー・量販店も増えていますが、実際はどのような状況なのでしょうか。

通常、スーパーには国内外からの商品が並び、そのほとんどが卸市場・企業から仕入れた商品です。

こちらの円グラフは、国土交通省が調査した「農業経営体による農産物の直接販売における販売先別年間販売金額 (2019年)」の結果です。

農業経営体とは

一定の耕作面積と収入を持つ農家個人または農家集団を指す。

引用元:国土交通省

年間販売金額の35%が「卸売市場」、27.9%が「小売業」に流れている事実から、生産者の売り上げが、卸市場を経由してスーパーなどの販売先から得ていることが分かります。

漁業に至っては、50%以上が卸売市場へ渡るのです。

一方、島根県を中心に展開するスーパー「キヌヤ」のように、会員制で生産者を募り、たとえ数点だけだとしても地域の商品を扱うことで、その地の作り手・企業に大きく貢献している例もあります。

特定の地域のみを拠点としているお店であれば、こういった地産地消の取り組みに参入しやすいのです。

スーパーや量販店は、膨大な数の商品を扱っているため、在庫管理がシステム化し、小さな地元の生産者が入りにくい点がデメリットといえます。

そのため、店舗柄が少量ロットの商品を置きたがらない傾向が強いのです。

場所によっては、少量の地元生産品を扱うスーパー・量販店も増えていますが、

  • 卸市場を経由しない仕入れ方法の確立
  • 既存商品とのバランスをどう保つか

などが課題として挙げられます。

まずは店舗周辺の生産者・消費者の声をヒアリングし、地元の特色を生かした商品開発やニーズにあうラインナップの拡充といったところから、少しずつ歩みを進めることが大切です。

その地でつくられた商品が並ぶことで、購入者がスーパーまで足を運ぶ大きな動機付けになるケースもあり得ます。

地産地消の事例③】給食

子どもの食育は、成長期の身体の健康状態を保つために最も重要な取り組みのひとつです。

中でも、大半の子どもたちが多くの時間を過ごす学校での「給食の質」が大切な要素となります。

学校給食の食材は、主に卸市場や青果店から調理場へ運ばれます。

地域によって異なりますが、主な給食の調理法は以下の2つです。

  • センター式
    複数の学校の給食を共同調理場で作って配送
  • 自校式
    学校の校舎内にある調理場で、1つもしくは複数の給食を作る

センター式は、複数校の献立をまとめて決められ一度に調理できる点がメリットです。

自校式の場合、少量ロットで食材を仕入れするため、小規模の生産者との連携が取りやすい場合があります。

このような状況を踏まえて、現状と課題を見ていきましょう。

メリット|地域農業の活性化が期待できる

2007年に制定された学校給食法では、給食の中に地産物を取り入れるよう推進しています。

学校給食は配給量が多いため、地産地消に取り組む自治体の中には「全体の〇%以上を地元産」「特定の素材は地元産を優先」といった形で取り組みを行っている場合があります。

また、愛媛県今治市や、千葉県いすみ市のように、一部の素材を地元のオーガニック素材に切り替える自治体も増えており、より子どもの健康に配慮した取り組みも進んできました。

生産者と給食センター・栄養士といった、さまざまな立場の人が地域ぐるみで取り組み、学校給食における地元素材の安定した供給を目指すことで、農業の活性化へつながるメリットも見られます。

デメリット|安定した供給量の確保が課題

気候や農林水産物の生産量などは、地域によってさまざまです。

そのため、品目の豊富さや安定した供給量の確保が課題となっています。

また、子どもたちが口にする農産物は、すでに調理を終えた形で現れるため、どのように「地元産であることの大切さ」をアピールするかもポイント。

口頭での説明や文字情報だけでは、おそらくほとんどの子どもたちにとって印象が薄いでしょう。

給食そのものへの取組にとどまらず、授業や校外学習を通して地域の農林水産物を見学したり、収穫を一緒に体験したりと、別のアプローチを併せることが求められます。

地産地消の事例④】福祉施設

障害を抱える人々が集まる福祉施設では、学校と同様の給食だけでなく、障碍者の支援を目的として、地産地消と深いかかわりと持つ取り組みが見られます。

メリット|農福連携によって相乗効果が期待できる

たとえば、福祉施設と地産地消の両方にかかわる取り組みとして、神奈川県横浜の福祉施設・けやき荘では、施設のそばで農園を開いています。

地元の人々に農園を利用してもらいながら作物を育て、収穫後はけやき荘の入所者に給食として提供。

ほかにも交流イベントを開くなど、地域の人々に楽しんでもらいながら、地産地消にもとづいた食料の生産に取り組んでいます。

また、障害者の人々の自立支援のために、直売所を設けるといった事例も増えています。

岐阜県中津川の社会福祉法人たんぽぽ福祉会では、2014年に産地直売所をオープン。

以降、喫茶店や食堂・加工工場を開設し、すべての場所で障害を抱える人々の雇用機会をつくっています。

農場での生産から販売まで、あらゆる場面で地域に貢献しながら、障碍者の自立支援も担っている例です。

【関連記事】農福連携とは?現状やメリット・デメリット、取組事例も

課題|周囲との連携が不可欠

福祉施設と地産地消の連携には、まわりのサポートが欠かせません。

給食に使用する食材の生産は、すべての量を賄うには大変です。まわりの生産者と協力し、季節や人数規模にあわせて、柔軟な対応が求められます。

障害者の方の自立支援には、通常の労働よりもサポートが必要なので、人手を多く要します。

同時に、障害を抱える人々にとって働く喜びを感じてもらえるよう、さまざまな工夫が必要です。

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地産地消の事例⑤】観光(グリーンツーリズム)

通常の観光では、訪問先の名所を中心に見て回り、町の飲食店や宿泊施設を利用することで、その地の食べものや特産品に触れることができますよね。

しかし近年は、より「文化体験」の面に力を入れたグリーンツーリズムの人気が高まっています。

主に都市無に住む人々が農村地に滞在し、農作業などを体験できる観光方法。

都市部の在住者が、実際に生産の様子を知り、体験することで、普段の暮らしの中で口にする食べものについて学ぶ機会になります。

またグリーンツーリズムを通して、在住者側にとってもその地域の魅力を再発見できることがあり、新たな地産地消のアイディアにつながることもあるのです。

メリット|観光客やインバウンドの獲得にもつながる

もともとヨーロッパのモデルを参考にしてきたグリーンツーリズム。

地産地消の活動が推進される中、グリーンツーリズムでは「地域振興」「地域支援」に視点をおいて展開されています。

お客さんのターゲット層は、主に都市部に住む人々や、海外からの観光客

都市部の人々と農村部に住む人々の交流を深め、その地域の魅力を知ってもらうことで観光業につなげる、という考え方です。

日本でグリーンツーリズムの考え方を広めた先駆者のひとり・山崎光博氏によると、

  1. あるがままの自然の中でのツーリズムであること
  2. サービスの主体が、農家などそこにいる人々の手によること
  3. 農村の持つ様々な自然,生活・文化的なストックを都市住民と農村住民との交流を通して活かしながら、地域社会の活力の維持に貢献するということ

このうち、特に日本のグリーンツーリズムは3番目の要素が強く、ここを軸に展開している、と主張しています。

ヨーロッパでは、農家個人の支援を重視している一方で、日本のグリーンツーリズムは地域全体の支援と活性化がポイントなのです。

実際に日本では、農家や生産者の敷地内で食事・宿泊できるケースは少なく、大半が「農業体験と宿泊施設は別」といった形に。

地域全体を巻き込むためにも、ひとつの場所に留まるのではなく、移動をしながら地域を広く見てもらおう、という意図が強く込められています。

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デメリット|参入障壁が高いことも

日本のグリーンツーリズムは、地域の魅力を再発見でき、全体の活性化につながる点がメリットと言えます。

しかし、視点を変えれば「農家は個人だけではじめるにはハードルが高く参入しにくい事業」という点がデメリットであり、今後の課題だといえるでしょう。

グリーンツーリズムをはじめるには、

  • 体験のためにスペースの確保
  • 宿泊設備の整備

といった施設が必要で、多額な費用を投資しなくてはなりません。

特に農業体験といった活動は、天候に左右されやすく、ビジネスとして軌道に乗るまでにも長い時間が必要です。

過去に政府が提供してきた「都市農村共生・対流総合対策交付金」といった支援策も、主に地方自治体や企業・NPO法人に向けたもの。

生産者自身が持つ豊かな知識や自然資源を、地産地消の今後の活動につなげるためにも、個人への経済的サポートが望まれます。

また、地域全体で持続可能な農業をつづけるためには、ツーリズム参加者を単なる「参加者」で終わらせず、いかにして地産地消の動きへ取りこむか?も大切な課題といえるのではないでしょうか。

移住を考えている参加者へのプランの提案自治体による補助金の用意といった、次につなげるためのアプローチが求められます。

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地産地消の事例⑥】加工

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農林水産物を加工した調味料や乾物・ジャムといった加工品。

生産者にとっては、生鮮食品としては売れないものを使用でき、消費者にとっては、日持ちがするなど、両者にとってメリットがありつつ楽しめる点が魅力です。

鮮度が命の野菜や魚介類とは違い、遠方まで持ち運びやすいため、お土産・ギフトとしても人気があります。

メリット|より多くの消費者に商品を届けられる

まちむら交流きこうが2018年にまとめた以下の図では、直売所で年間売上額が高い生産者の販売品目を、売上順に示しています。

野菜・果実に次いで高いのが、ジャムや調味料といった農産加工品です。

生鮮食品のイメージが強い農林水産物ですが、加工品は素材の選び方や味つけ・パッケージといった面で他の商品との差別化がしやすく、個性を出しやすいアイテム。

たとえば、小規模農家の多い千葉県いすみ市の「つるかめ農園」では、無農薬・無肥料でお米育てています。

地元の飲食店にお米を提供するほか、米糀やみりん・日本酒のような加工品を販売。

厳選した素材と、シンプルなデザインが目を惹くパッケージは、地元の直売所でも珍しい商品です。

またオンラインショップ販売も行なっているため、どこに住んでいても買い求めることができます。

このように、加工品を含めたさまざまなバリエーションを増やすことで、地元の農林水産物をより多くの人々に届けることができます。

消費者にとっては手に入るチャンスが増え、その地域の魅力を知るいい機会にもなるのです。

デメリット|初期投資などのコストがかかる

農林水産物を加工するには、時間と労力・設備が必要です。

ほかにも、加工品を入れる容器やラベル・梱包材を揃えなくてはならず、準備に初期投資がかかります。

経済的な余裕がないと難しい場合も多く、誰もが簡単にできるわけではないため、加工品生産をはじめる生産者に向けた支援が課題です。

また、個人で設備を用意できない場合は委託先を探すことになりますが、地元企業で探すのが難しかったり、発注ロットが少なさ過ぎてコストが見合わなかったり…。

さまざまな事情や問題を抱える生産者が、加工品に参入しやすい仕組みと環境づくりが求められます。

地産地消の事例⑦】情報関連

地域の魅力を多くの人に発信する場として、重要な役割を果たしているのが道の駅です。

国土交通省によれば、道の駅の年間利用者は2億人を超え、国内外から観光客が訪れています。

2019年時点で1,150以上も存在する道の駅では、地産地消を促すための情報発信・広告活動が重要視されているのです。

メリット|幅広い顧客の獲得が期待できる

地域の魅力を発信する役割を担う道の駅の利用者の多くは、

  • SNSやウェブサイト・メディアを通じて知った
  • 目的地へ行く途中にあったから寄った
  • その地域に住んでいて、定期的に利用している

のように、さまざまな目的で訪れています。

旅行専門メディア・じゃらんが2020年に公表したアンケートによると、道の駅を利用する人の目的は以下のような順位です。

引用元:じゃらん

道の駅は「道路利用者の休憩施設」という軸を持ちながら、今では買い物目的の人が多いことが分かります。

地産地消の発信について考えてみたとき、利用者が知りたい情報は、

  • その地域にしかない農林水産物・商品の魅力
  • イベント・フェアの案内

などが挙げられるのではないでしょうか。

たとえば、じゃらんが発表した「全国道の駅グランプリ2020」で1位を獲得した、宮城県の「あ・ら・伊達な道の駅」のウェブサイトを覗くと、情報が見やすく整理されていて、魅力的な情報発信を行なっていることがわかります。

インスタグラムをはじめSNSの発信にも力を入れていて、積極的に商品をPRしているようです。

>>あ・ら・伊達な道の駅のSNSは以下のリンクから

このように、インターネットの普及が進む現代において、情報発信は地産地消の活動に大きな影響を与えるのです。

課題|人材不足

最も深刻な課題として、情報発信を行う人材の不足が挙げられます。

国土交通省によれば、道の駅の運営母体には、「第3セクター」と呼ばれる団体が増加中です。

第3セクターとは

国や地方自治体と、民間企業が合同で出資・運営を行う組織のこと。

運営にかかる人件費のふりわけがうまくいっていない場合もあり、情報発信にまで人手を回せないところもあるのが現状です。

また、国外から訪れる外国人観光客の需要を狙う一方で、外国言語に対応していない施設が多く、なかなか集客につなげられない点も課題といえます。

地産地消の事例⑧】交流

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地産地消の活動は、地域在住者道理はもちろん、グリーンツーリズムを通じた都市部在住者との交流のほか、地域の生産者と企業・教育機関の連携を高めるきっかけにもなります。

特に、地域で暮らすさまざまな立場との交流は、お互いの活動を知るだけでなく、持続可能な社会・地域コミュニティづくりにもつながる大切なポイントです。

地域活性化につながる

これまでの例に挙げてきたように、学校給食や福祉施設を通じて、地産地消の活動をつなげることが可能です。

また、熊本県宇城市のように、農協と地方自治体が協力して設置した直売所を拠点に、高校生との交流や、親子を対象とした料理教室の開催といった事例もあります。

生産者と消費者の交流にとどまらず、地域のあらゆる機関が参加することで、地産地消の活動が地域全体の活性化に役立つのです。

関係を構築するまでに労力を要することも

当たり前かもしれませんが、交流の上で大切な点は「コミュニケーション」です。

どのようにすれば地産地消につなげられるか?を念頭に置きながら、交流の機会をつくることが大切ではないでしょうか。

自分の地域が持つ魅力や、地産地消の大切さを伝えるには、積極的に地域の人々との交流を持つことが大切です。

そのためにも、いきなり大きな企画を立ち上げる、というよりは、小さな規模からはじめ、時間をかけてすこしずつ交流の範囲を広げていくのがいいかもしれませんね。

地産地消に関連した日本の法案

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日本では、いくつかの法案の中で「地産地消」という言葉を目にすることができます。

今回は、3つの法案について確認しておきましょう。

食料・農業・農村基本計画

食料・農業・農村基本計画は、日本の食料自給や海外への輸出・農業の仕組みなどをとりまとめたものです。

5年ごとに見直し、中長期の視点でプランを立てています。

今回の計画が決まったのは2020年。気候変動や新型コロナウイルスといった状況が後押しする形となって、より持続可能な農業の形を推進する文言が目立つようになりました。

たとえば、「消費者と食・農とのつながりの深化」という項目では「食育や地産地消の推進と国産農産物の消費拡大」と掲げられています。

地域の産物を活かして、学校や病院施設のような場所での食事提供と、食と農をつなげる農業体験・宿泊を通じた食育を推進。

こうした取り組みを通して、生産者と消費者の交流を深めるとともに、安定した食料供給の体制を構築するのが狙いです。

また、地方だけでなく都市で農業を行なう都市型農業の推進によって、日本全国で地産地消の普及を提案しています。

この計画の全容は、こちらからご覧いただけます。

地域資源を活用した農林漁業者等による新事業の創出等及び地域の農林水産物の利用促進に関する法律(六次産業化・地産地消法)

六次産業化・地産地消法は、2010年にできた法律です。

(1)農林漁業者による加工・販売への進出などの「6次産業化」に関する施策

(2)地域の農林水産物の利用を促進する「地産地消等」に関する施策

の2つをバランスよく推し進めて、農林水産業から6次産業へつなげ、地産地消を促すことを目的としています。

特に「3.地域の農林水産物の利用の促進(第3章)」では、以下の8つを基本理念と定めています。

  1. 生産者と消費者との結びつきの強化
  2. 地域の農林漁業及び関連事業の振興による地域の活性化
  3. 消費者の豊かな食生活の実現
  4. 食育との一体的な推進
  5. 都市と農山漁村の共生・対流との一体的な推進
  6. 食料自給率の向上への寄与
  7. 環境への負荷の低減への寄与
  8. 社会的気運の醸成及び地域における主体的な取組を促進

地域の生産者と地元企業が連携し、第1次産業だけでなく、加工・販売を含めた6次産業へ発展させることで、地産地消の促進と新たな事業を結び付けるチャンスが生まれます。

地産地消の推進は、経済面だけでなく環境・社会面にも大きな影響を及ぼし、日本全体で持続可能な社会をつくりあげることができるのです。

農林漁業者等及び関連事業の総合化並びに地域の農林水産物の利用の促進に関する基本方針

こちらは、先述した六次産業化・地産地消法の基本方針です。

基本方針には「農林漁業と関連事業の総合化」とあり、つまり6次産業の促進を意味します。

そして「2.地域の農林水産物の利用の促進」では、都道府県・市町村に向けて、それぞれの実情を考慮したうえで、基本方針に沿った目標の設定を求めています。

直売所や道の駅の利用・学校給食における地元産素材の使用率向上といった取り組みを通して、できるだけ多くの地域に地産地消の活動を広める狙いです。

このように、日本には地産地消に関連する法案整いつつあることがわかります。

では次に、地産地消の取り組みを支援する政策について見ていきましょう。

地産地消に関する国の支援策

日本政府は、地産地消の普及に向けた支援策を用意しています。

ニッポン・フード・シフト

農林水産省が主導する「ニッポン・フード・シフト」は、日本の食の未来を考えるためのプロジェクトです。

グローバル化・簡便化が進む日本の食生活において、特に都市部で暮らす多くの消費者にとって「食」と「農」のつながりを意識しにくいのが現状。

そこで、全国各地で食に関する取り組みを行う生産者・企業を紹介し、立場に関係なくみんなで持続可能な食の未来を考え、行動に移していくように促すのが、ニッポン・フード・シフトです。

このプロジェクトの大きな特徴は、企業や生産者だけでなく、消費者からの意見もオープンに求めている点。

積極的に意見や提案を出し合うことで、現状や課題を洗い出し、日本の未来を一緒に考えていきたいという姿勢が伺えます。

2021年の7月に立ち上がったばかりのプロジェクトで、秋ごろから本格始動の予定です。

今後の活動に、期待が高まります。

ここまで、地産地消についての大枠を見てきました。次からは、地産地消の取り組み事例を先ほどよりも詳しく確認していきましょう。

地産地消の取り組み事例|道の駅の盛り上がりから考える

地産地消の取り組みの中で、大きな役割を果たすのが、道の駅です。

今回は2つの道の駅を挙げ、実際にどのような工夫をしているのかをご紹介します。

【無印良品がプロデュース!】千葉県鴨川市「みんなみの里」

千葉県鴨川市にて、2018年ににオープンした施設。

シンプルな生活雑貨を扱う企業・無印良品が管理しているため、スタイリッシュでオシャレな外観・内装が特徴です。

引用元:鴨川市

見どころのひとつは、やはり産地直売所地元の農家さんから仕入れた野菜や果物・加工品がずらりと並び、朝いちばんに訪れると新鮮な食品が手に入ります。

インテリアには、鴨川で古くに用いられた農具を使用したり、地元の酒蔵による限定の日本酒を販売したりと、地域の特色を上手に活用

地元の人はもちろん、はじめての人・若者も訪れやすく、ゆっくりと楽しめる道の駅です。

また、直売所の隣には図書スペースがあり、無印良品の本をはじめ、さまざまなジャンルの書籍・絵本があるので、子どもから大人までくつろげる点はうれしいポイントです。

なお、鴨川といえば昔から続く棚田が有名。ある棚田では、無印良品や千葉大学といった組織のほか、都市部に住む人に貸し出し制度を行なっており、地元の生産者と消費者が上手に交流できている例だといえるでしょう!

【ここでしか出会えない!にこだわる】道の駅うずしお

道の駅うずしおは、兵庫県淡路島にある人気の道の駅です。

今回、以前道の駅うずしおに携わった株式会社シカケ代表取締役の金山宏樹さんに話を伺いました。

名産の白身魚を活かしたメニューを開発

淡路島近海はプランクトンが豊富に生息し、うず潮ができるほど潮の流れが活発なため、海の幸が豊富な場所です。

特に、サワラやスズキ・しらすのような、白魚がおいしく育つ環境が整っています。

そのような環境のなかにある「うずしお」が特にこだわる施設はレストラン。しかし、今でこそ連日行列を作るレストランですが、金山さん曰く、もともとどこでも食べられるものしかなかったんだとか。

そこで何か特徴のあるものをと考えた末、淡路島の特徴である白身魚を全面に押し出した「白い海鮮丼」を開発。海鮮丼といえば赤身や白身・いくらな色とりどりの海の幸が魅力ですが、「白い海鮮丼」は白身魚だけを並べているので真っ白です。

この斬新なアイディアに加えて、相性のよい地元産のセンザン醤油をあわせることで、さらに地域のカラーを演出しています。

また、高級な焼き肉店のように、産地や魚の名前が書かれたラベルを添えて提供。

この差別化が功を奏し、「白い海鮮丼」目当てに連日大行列をつくるようになり、道の駅全体の売り上げが激増したそうです。

全国にある道の駅では、どこにいっても似たような定番メニューを見かけることが多い中、道の駅うずしおは地域の産物をふんだんに活用することで独自の商品を開発し、来訪者を惹きつけています。

他にも「道の駅うずしお」の運営会社では、淡路島まで来ないと味わえない商品を打ち出して宣伝したり、SNSへ投稿したくなるような「たまねぎチェア」や「たまねぎカツラ」を作成するなど、広報活動の面でも工夫しています。

このような特別感があると、観光で来た人は価値を感じて購買意欲が高まります。「道の駅うずしお」のレストランは安い食堂のような雰囲気ではないかもしれませんが、その「地域独特でスペシャルな商品」があるからこそ、たくさんの人々に淡路島の魅力を感じてもらい、地産地消の取り組みを活発にしているのです。

地産地消とSDGsとの関連性

ここまで、地産地消についてさまざまな角度からお伝えしてきましたが、実はSDGsとも深いかかわりを持っています。

特に、目標8「働きがいも経済成長も」や、目標12「つくる責任、つかう責任」をはじめ、SDGsの概念に通じる部分が多いのです。

SDGs目標8「働きがいも経済成長も」と地産地消

SDGs目標8「働きがいも経済成長も」は、雇用や働き方に関する労働搾取や差別を終わらせ、誰もが働きやすい環境を手に入れるための目標です。

持続可能な経済成長を生み出すため、環境に配慮した生産と消費・観光業の促進も掲げられています。

SDGs目標8と、地産地消の関わりは、以下が挙げられます。

  • 地産地消の活動によって、その地域に暮らす人たちの雇用機会が増える
  • 自分たちが暮らす地域にお金が回り、経済面が安定する
  • 環境に配慮した観光業の促進につながる(グリーンツーリズム)

SDGs目標12「つくる責任、つかう責任」と地産地消

SDGs目標12「つくる責任、つかう責任」は、社会全体で環境に配慮をし、持続可能な形での生産と消費・廃棄システム構築を行うための目標です。

ものづくり全体におけるプロセスの見直しはもちろん、食品ロスやゴミの削減にも努めることが求められています。

SDGs目標12と地産地消には、以下のようなかかわりがあります。

  • その地域の中で生産~消費・廃棄を行うため、輸送時の二酸化炭素排出量を抑えられ、環境にやさしい
  • 地産地消の活動を通して、環境にやさしい生産・消費活動に貢献できます。

二酸化炭素の削減によってほかの生態系を守れるという意味では、SDGs目標14「海の豊かさをまもろう」目標15「陸の豊かさもまもろう」にも通じますね。

SDGs目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」と地産地消

SDGs目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」は、立場を超えて協力し合うことで、効率よくスピーディーな取り組みを促します。

SDGs目標17と地産地消には、以下のような関係があります。

  • 同じ地域に住む人同士がつながることで、持続可能な社会づくりを一緒に進められる
  • パートナーシップで連携することで、ほかのSDGs目標達成にもつながる

このように、地産地消を推進することで、SDGs目標の達成にも貢献できるのです。

まとめ

今回は、地産地消が日本でどのように取り組まれているのか、現状や課題・実例を交えながら見ていきました。

地産地消によって、ひとつの地域が活性化するだけでなく、ひとりひとりの暮らしの質が向上し、地球にやさしい活動ができることから、持続可能な社会づくりに欠かせない要素です。

まずはみなさんが住んでいる地域で、どのような活動が行われているのか、ぜひチェックしてみて下さい。

少しずつ地元のことを知り、自分にできることは何か?を考えて行動すれば、楽しく地産地消に貢献できますよ。